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《ネタバレ》 手描きの絵による動画の風情を出し尽くすことを目標としたような映像。鑑賞中より、後からジワジワと効いてくるような味わいがありました。「おとぎ話」の世界を崩さず、それでいてモダンな表現で、とても見応えがありました。
私が知るかぐや姫は、求婚者の失敗を高所から見下ろしつつ老夫婦との別れに涙する不可解な人物でした。絵巻物の平安美人のように表情の無い人です。そこにスッキリした解釈とプロフィールを与えて貰ったというのが率直な印象です。本作の彼女は珍宝に目を輝かせ、甘言の求愛に動揺し、訃報に心を痛めます。それらの表現は細やかでしたが、敢えて言うと常識的な反応だと思います。彼女の内面は「普通の人」なのです。そんな彼女の感情が最も解放されるのが野山を駆け巡っているとき。それは彼女の唯一の自由で、私には自然への讃歌と云うよりも籠の鳥が得た束の間の大空だったと感じられました。 幸せの探究とは極めてパーソナルな価値観の具現であり、特別な存在になるほど周囲との摩擦も増えて達成が難しくなります。彼女は老翁が用意した高貴な姫様コースには反抗したけれど、月世界の頭目には逆らえなかった。地上での記憶を失くすことは「タケノコ」&「かぐや姫」の死と同義で、彼女の自由や幸せ求める闘いは敗北したと記憶されるべきなのでしょう。 親が考える子の幸せと本人が望む幸せのギャップは世代や時代を越えた普遍性を持つのかもしれません。そのギャップをかぐや姫側の視点から描いたという意味で、「竹取(の翁媼の)物語」ではなく「かぐや姫の物語」でした。個人的には月世界の住人も振り切って望む未来を手にして欲しかったのですが、さすがにそれでは違う物語になってしまいます。でも、そう思えたこと自体がテーマだったのかなと云う感想です。 ちなみに、都の邸宅でかぐや姫の付き人をやっているマンガみたいな顔付きの女の子の表情が楽しくて、登場カットごとに心躍りました。 【アンドレ・タカシ】さん [映画館(邦画)] 7点(2013-12-12 01:29:25)(良:1票)
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