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《ネタバレ》 製作された98年は本作の他にご存じ『アルマゲドン』も公開された、言うなれば彗星衝突の当たり年だった訳です。ジェリー・ブラッカイマー節が炸裂の『アルマゲドン』と違ってこっちは女性監督、ストーリー自体も真面目というか群像劇っぽく撮っているのが特徴でもあります。もともとは51年の『地球最後の日』のリメイク企画があり、そこにアーサー・C・クラークの彗星衝突がテーマの『神の鉄槌』を映画化しようとしていたスピルバーグが乗っかったみたいな感じ、でも出来上がりは『地球最後の日』的な要素が強くなってアーサー・C・クラーク風味はほとんどないそうです。 シリアスに撮っているから目立たないけど、本作も『アルマゲドン』に負けず劣らずの突っ込みどころがあります。彗星発見からわずか一年であんな凄い宇宙船を秘密裏に準備できるとは大したもんで、さらに彗星衝突までの一年で100万人を収容できる地下都市が建設出来たなんて、さすが偉大なるアメリカ合衆国です(苦笑)。なるほど、『地球最後の日』の地球脱出ロケットをあの地下都市に置き換えたって訳ですが、ロケットに乗れた40人を100万人に拡大しただけで、つがいの動植物を運び込んだりしてまたもやノアの箱舟の再現でした。彗星は一回目の核爆発で大小に分かれて、けっきょく先に小の方が大西洋沖合に落下します。そして大津波が北米大陸を襲う訳ですけど、白亜紀の恐竜絶滅につながったディープインパクトのシミュレーションと比較すると、溶けた岩石などの爆発がもたらす熱の描写が皆無なのはどうなんでしょう。まあその答えは、この脚本は彗星衝突がもたらす災厄をノアの箱舟の大洪水の暗喩としているんですよ。『地球最後の日』ほど酷くないけど、この映画も宗教色が強めの感があります。あと80万人はくじ引きで選ぶと言っても、この必要な人間と不必要な人間を選別するという一神教的な発想が、確かにそれは理屈としては正しいとしても自分にはとても不快に感じてしまいます。こういうハリウッドのディザスター映画ではまるで米国だけが地球の文明みたいな感じになり、あとの世界がどうなろうと知ったこっちゃない、USAだけが存続するなら地球は救われたという発想も透けていますよ。全世界が平等に滅びるという結末のハリウッドのディザスター映画は、『エンド・オブ・ザ・ワールド(2012)』しか観たことがないですよ。 オスカー受賞俳優が四人も出演というキャストはけっこう豪華ですが、やはり印象深いのはモーガン・フリーマンの大統領でしょう。実はハリウッド映画で黒人俳優が大統領を演じたのは彼が初みたいで、その後他作品で下院議長、副大統領、そして再び大統領を演じ、ワシントン政界の要職をすべてこなした偉業を達成しています。確かに大統領を演じさせたら、いにしえのヘンリー・フォンダかモーガン・フリーマンかというぐらいのイメージを確立しています。べたになり過ぎずに泣かそうとするところは『アルマゲドン』より上品なんで評価したい。マクシミリアン・シェルとティア・レオーニの父娘が津波に飲み込まれてゆくところはさすがにジーンときました。でも彗星衝突の際には海水は瞬時に吹き飛ばされて津波が起こるはずで、到来前に引き潮が起こるというのはちょっとヘンですけどね(笑)。
【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-01-22 21:34:12)★《新規》★
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