| 作品情報
レビュー情報
《ネタバレ》 実験的な映画を撮るかと思えば『スクール・オブ・ロック』みたいにメジャーで王道的な作品もこなしちゃうリチャード・リンクレイターの、どちらかと言うと彼らしいかなり捻った笑えない(これは良い意味です)実録コメディです。 テキサス東部の田舎町で葬儀屋の助手を勤める40手前の独身男バーニーは、町の誰からも善人と認められて愛されていた。彼は町随一の資産家の未亡人に気に入られて同居する様になるけど、この未亡人はバーニーとは真逆で恐ろしいまでに性格がねじ曲がっていて町中の人から憎まれていた。このバーニーをジャック・ブラックが演じるのですが、良い人を説得力ある演技で好演するけど彼のことですからなんか胡散臭さがつきまとっちゃうんです。これも監督の計算通りなんでしょうが、最後まで観るとどうもゲイみたいだけどそれ以上におかしなところは見られない。どうも現代社会では度を越した善人=変人と言うことになる、という一種の問題提起なのかもしれません。未亡人マージョリーは、もう笑っちゃうほどイメージ通りのキャスティング、シャーリー・マクレーンです。最初は良き友人同士だった二人も、マージョリーが本性を剥きだしにしてバーニーをこき使う様になってきて、とうとう彼はマージョリーを衝動的に射殺して冷蔵庫に死体を隠します。 この映画は実際の町の人たちが語るバーニーの想い出を繋ぐ形で進行するモキュメンタリー風の演出が特徴です。殺人が発覚して裁判になりますが、なんせ町中の人がバーニーを擁護しているんですから、その中から選出される陪審員は無罪の評決を出す可能性が高い。そこで検事は裁判を70キロも離れた隣の郡に変更しちゃいます。ここでは当然のごとく有罪判決が下り、あわれバーニーは終身刑を宣告されてしまいます。テキサスは全米屈指の厳罰司法の州ですけど、それにしても終身刑とはキツイですね、日本でしたら懲役10年ぐらいでしょう。そこら辺は、裁判所の違いで無罪か終身刑という両極端な判決が出る可能性があるというアメリカ裁判制度の矛盾を監督は指摘したかったのかもしれません。地方検事役はマシュー・マコノヒーでこれが実に可笑しいキャラで、この映画の中でいちばん笑わしてくれます。 けっきょくバーニーはほんとはどんな人間だったのかという疑問には何も答えてくれずに映画は終わるのですが、それでもいろいろ考えさせてくれる作品の様な気がします。ラストにバーニー本人とジャック・ブラックが刑務所で面会している映像が流れるのですが、なぜだかギョッとさせられるものがありました。
【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-05-08 23:27:24)
S&S さんの 最近のクチコミ・感想
|