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《ネタバレ》 「ラース・フォン・トリアーがサイコ・キラー映画を撮った」ということで身構えて鑑賞いたしましたが、正直言って今まで観た彼の作品の中では不快感は低めだった感じです。冒頭に「この映画はラース・フォン・トリアーの作品を彼の許諾のもとに編集したものです」というテロップが出るのでこれはソフィスティケートされたバージョンなのかと勘ぐってしまいましたが、思うに彼の作品の特徴は普通に見えるキャラの行動が観る者を不快にさせるのであって、本作の様に始めからおかしいと判っている人間の行動を見せられると意外とインパクトが弱いのかもしれません。それでもジャック=マット・ディロンの狂気の行動と語られる理屈というか自己分析はおぞましく、とくに自分の妻子を狩りの獲物にして撃ち落とした鳥と一緒に並べるところには嫌悪感が抑えられませんでした。ジャックとまるで精神分析医のように対話するブルーノ・ガンツが実はあっちの世界の存在でした、ってのは想像通りでしたが、エピローグの二十分での地獄めぐりの訳わからなさこそが監督の鬱の映像化なんでしょうが、こういう表現に関するセンスはデヴィッド・リンチの足元にも及ばないと感じます。けっきょく最もインパクトがあったのは凍結した死体をくみ上げて作った“ジャックが建てた家”というわけでしたが、こういうことを平気で撮っちゃうのがラース・フォン・トリアーたる所以なんでしょうね。
【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-05-28 21:34:45)
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