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《ネタバレ》 北野武の“戦国版『アウトレイジ』”というか“戦国版『日本統一』”といった感じでしょうか。戦国武将たちの国盗り合戦をヤクザ組織の抗争を透写したようなストーリーテリングは、たしかに北野武にしか許されないプロットだったなと思います。『アウトレイジ』で山王会の若頭に出世したのに大友=たけしに復讐されて散った加瀬亮に織田信長を怪演させるので余計に『アウトレイジ』味が感じさせられるのですが、いっそのこと三浦友和・西田敏行・塩見三省あたりまでキャスティングしたらと思ったりしたけど、いくら何でもやり過ぎか(笑)。でも三浦友和は明智光秀には適役のような気がします。■“全員悪人”という『アウトレイジ』のキャッチコピーを引き継いだような武将たちのキャラ付けなんだけど、羽柴秀吉=たけしがここまで悪辣なキャラを演じたというのは北野映画で初めてなんじゃなかろうか。たけしって自作ではヤクザや刑事などのいかにもワルと世間ではイメージされるキャラを演じているけど、ワルなのにどこか人情味があったりお人好しな部分がどの役にもあるんだよな。北野武という人は突き詰めるとナルシストだと自分は分析していてそれがたけしが主演する北野映画には独特の臭みがあると感じるのですが、本作では徹底的にずる賢くて冷酷な秀吉となって今までのパターンからついに脱皮したと思います。だけど彼の年齢を考えるとちょっと遅きに失したの感もあります。でも秀長=大森南朋との掛け合いには往年のビートたけしらしさが見えて面白かったです。また大島渚の影響なのか武士=男色の世界が強調されてまるでBL映画的な様相を呈していますが、百姓出自で無類の女好きだった秀吉にはまったく理解の及ぶ世界ではないという対比は面白い観点だったと思います。■難を言えばやはり極端に走り過ぎた信長像となるでしょうね。終始尾張弁でがなり捲るサイコパスに過ぎないという感じで、いくら何でもあわや天下布武を成し遂げようとしていた傑物にはとうてい見えない。せめて本能寺ではカッコよく果てるのかと思いきや、これまた予想をはるかに超えた最期、これじゃ光秀がいくら血眼になっても信長の首が見つかるわけないですね(笑)。■けっきょく本能寺の変は秀吉が仕組んだというのが北野説となるわけですが、考えてみると『アウトレイジ』で山王会や花菱会の城壁を突き崩せなかった大友=たけしが、ついに雪辱を果たして天下を盗る物語だったとも解釈できるんじゃないでしょうか。
【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2024-09-09 22:03:01)
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