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《ネタバレ》 ロバート・マクナマラといえばベトナム戦争を象徴するような人、たしか当時は「冷酷漢」「ファシスト」などさんざんな言われようでしたが、こうやって老いた姿を見ると意外なほど誠実で知的な人物のように見えます。彼の最大の功績(?)は戦争の運営に経営的な手法を導入したことでしょう。「戦争みたいな重要なことは軍人には任せられない」という名言を残したのはたしかクレマンソーだったと記憶していますが、その戦争をフォードの社長に指揮させたのはすごいことです(もっともケネディに請われて国防長官に就任した時点ではまだベトナムはアメリカの戦争とは言えない段階でしたが)。 前半はなんだか自らのサクセスストーリーを語っているだけという印象しかありません。それでもその中にも見逃せないポイントはあります。マクナマラは大戦中あのカーチス・ルメイの幕僚だったんです。口には出しませんでしたが、マクナマラはルメイの冷酷な戦争運営から絶対に影響を受けていますね。「彼は狂人だった」とまで酷評する部下までいるルメイを、さすがに好意的に語ってはいませんが決して否定していないところからも推測できます。ベトナム戦争についてはもう自己弁護のオンパレードです。彼の弁明で腹が立ったのは、東京大空襲やベトナムでの枯葉剤作戦について「一晩で民間人10万人を焼き殺してはいけないと規定している戦争法規は存在しない」「枯葉剤を散布することは戦争法規で禁止されていない」とシレッと開き直ったことで、「もしそういうことが法律的に禁止されていたなら、私は決して実行しなかった」とまですました顔で言うんですから、もう開いた口がふさがりません。観ている最中から「マクナマラとアイヒマンはどこが違うんだろう?」と真剣に悩んでしまいました。 この映画は“マクナマラが語る11の教訓”という構成になっていますが、この中で彼は面白いことを言っています。曰く「都合の悪い質問は無視する」。つまりこの映画の中でも彼は不都合な質問には沈黙していたわけで、それを許してしまった監督は厳しく言えば能力不足だったと言わざるを得ません。もし監督かインタヴュアーがマイケル・ムーアかオリヴァー・ストーンだったらと思ったりしましたが、それじゃあきっとマクナマラが拒否したことでしょうね(笑)。
【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-08-31 22:40:14)
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