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レビュー情報
《ネタバレ》 知っている俳優も少なく、低予算らしい作りの映画で、大して期待しないで見に行ったところ、意外に見応えがありました。ピエール瀧/リリー・フランキーという本職の俳優でない二人が、見事に悪人を演じきっており(特にリリーの方は、上映前の『そして父になる』の予告でのいい人と好対照で面白かった)、暴力がエスカレートしていく様をうまく表現していました。実在の事件を元にしているものの、あまりの残虐性にかえってリアリティのない話でしたが、記者の取材から実際の事件を浮かび上がらせる倒叙法は、それなりに説得力を持たせる構成でした。しかしある意味で、二人の殺人鬼を差し置き、この物語で最も凶悪に描かれたのは「ジャーナリストによる暴力」でしょう。山田孝之演ずる記者は、「人を殺した人間が、脳天気に生を愉しむのは許せない」という青臭い正義感のためだけに、認知症の母も妻に押しつけ、ペンの力を大義名分に、殺人犯や頭脳犯を追い詰め、目前で参考人をも死に追いやってしまう。物理的な暴力こそ用いないものの、ジャーナリストはそうした力を持ってしまっている。その意味で、冒頭の被害者の父によるメディアスクラムへの不満も、伏線になっていました。余談ですが山田・池脇の夫婦役は、一昨年の『指輪をはめたい』を少し思い出しました。
【蛇蟇斎狐狸窟】さん [映画館(邦画)] 7点(2013-09-30 08:24:25)
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