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《ネタバレ》 小津映画ってのは“家族愛”を謳い上げたものでは決して無いのですよね。高い評価を耳にして家族の繋がりって素晴らしい的な思いをしようとこの作品に臨んだら強烈な目にあいますな。半世紀以上も前の作品にしてこの普遍性、リアリティ。「それを言っちゃあおしまいよ」な生々しい家族の姿を小津監督は全く遠慮なくさらけてくるわけで、誰でも作中の誰かの気持ちが手に取るようにわかるのでは。杉村春子演じる茂子、この長女が特筆ものの存在で、彼女のあまりのドライさに末娘が憤慨。そこへ義姉の原節子がおっとりと諭すのです。「でもね、大人になると仕方のないことなのよ」。若い純粋な憤りも尊いけれど、原節子の理屈にも、ひいては茂子たちの態度にも一理あり。特に長女にしてみれば、酒癖の悪い父親にうんざりしてきたりと、若い妹の知らない苦労もあったかもしれず、ほんと家族など一言で断じることは難しいものでしょう。熱海の海岸で、並んで背を丸くして座っている老夫婦の姿が美しく、泣けてくるほどでした。
【tottoko】さん [ビデオ(邦画)] 9点(2013-08-04 01:03:07)
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