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黒澤明監督の生きるを見てこの映画を思い出したのでこちらも再見したのですが、今見直すと欠点が目立つ映画ですね。主人公ウォルト・コワルスキーは偏屈ジジイとしてある程度客観的な目線を持ち込んで描かれてはいますが、彼のアメリカ人としてのプライドは最後まで尊重されておりそのために物語が都合良く展開しているように見えてしまいます。物語上警察の介入が排除されているのは西部劇的シチュエーションをやりたいんでしょうけどやっぱり不自然です。モン族との交流もアメリカ人の自尊心を満たすために都合よく使われてるだけのような感じがします、ウォルトが彼らの文化から何かを学ぶのではなくあくまでアメリカの精神が受け継がれるわけですから。ウォルトの家族はいかにも嫌な連中で彼らの立場に理解を示すわけでもなく平等な描き方とは言えません。この映画で直接悪さをするのは同じモン族や黒人だけで白人側の差別発言は軽いジョーク扱い、イタリア系やポーランド系というマイノリティを選んではいますがここでも危うい線引きをしているように見えます。しかしながらこうやって現代の目線から重箱の隅をつつくような真似をしても不公平ではありますね、こういう映画の積み重ねがあってこそ現代の多様性尊重の風潮もあるのです。一番この映画の価値を下げてるのはこの映画が結局クリント・イーストウッドの遺作にはならなかったという歴史的事実かもしれません。
【Сакурай Тосио】さん [インターネット(字幕)] 5点(2023-04-09 22:12:00)
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