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静かに心に染み渡る名作だ。ガンバリズムの日本人には理解しにくいかもしれないが、イタリアという国は人を急かさない。人生を急かない。喪失感にうなだれ、迷い、傷つけあいもし、前に進めなくなっている家族を、監督は温かく肯定している。そんな家族の閉塞感に小さな小さな出口を開けたもの。それが、息子がガールフレンドに送った写真---自室で楽しそうにポーズをとる息子の写真--だ。まだまだ子供だと思っていたあの息子が恋を?息子を慕ってくれる少女がいたなんて?写真に写る息子の部屋で微笑んでいるのは、確かに知っているのに、どこか家族の知らない息子だったのだ。もちろん、それを語るセリフは1つもない。だが、伝わってくるのだ。息子が死んだ瞬間から凍てついていた時間が解け出す・・・。死んだ子の年を数えていては生きていけないのだ・・・そんな諦念。ゆっくりと、喪失感と折り合いをつけていけばいい。ラストシーン、ジェノバ。美しい夜明けの海岸に打ち寄せる波をただ見つめる家族の後姿。セリフは娘の「ここどこ!?今日は試合だっていうのに!」だけ。 これ以上に、この家族の時間が動き出すことを予感させる素晴らしいセリフはない。そして、少女が1人でなく見知らぬ少年と旅立つことも、暗示だ。息子は間違いなく、少女の胸に生きていたが、それは大切にしまわれる過去であるということ・・・。父親が、そのことに触れかけてやめるのも、憎い演出だ。
【ルー】さん 8点(2002-11-23 12:20:23)(良:1票)
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