1981年生まれの自分にとっては、今作こそが物心ついて初めて .. >(続きを読む)
1981年生まれの自分にとっては、今作こそが物心ついて初めて“鑑賞”したゴジラ映画であり、だからこそ思い入れが強い部分も大いにあろうが、ゴジラシリーズの「最高傑作」という個人的な評価が揺るがない作品だ。
“VSビオランテ”と銘打たれてはいるが、この映画の構図は、まさしく“ゴジラVS人間”であり、大怪獣を生み出してしまった人類そのものの葛藤が主題となっていることが、「怪獣映画」として秀逸な要素だと思う。
愛する人を失った喪失感に伴い天才科学者が怪物を生み出してしまうというストーリー展開は、古くは“フランケンシュタイン”以来のSF的古典であり、人間の破滅を描く上での王道であろう。
弱き人間は、一時の悲しみや恐れにより、数多くの悲劇を生み続けてきた。
戦争、差別、貧困……、人間社会の悲劇は、常に人間そのものが導き出してきたものだと思う。
1954年に生まれた「ゴジラ」という怪獣映画は、ゴジラという大怪獣そのものの恐怖と同時に、人間自体の恐怖と愚かさを描いたからこそ、世界中の人々にとって衝撃的だったのだと思う。
そういったこの怪獣映画の精神みたいなものをきちんと汲み、新しいドラマを生むことに至ったことが、今作が成功した最大の要因だと思う。
“VS人間”という構図においては、登場人物のキャラ立ちが見事だった。
正義感に溢れた主人公とヒロインを中心に、方向性を見誤った天才科学者、国防に尽力する叩き上げの自衛官に、若きエリート士官、そして超能力少女。
それぞれのキャラクターがそれぞれの役割を全うし、群像を構築しているからこそ、今作は何度観ても面白味に溢れているのだと思う。
そして勿論、ゴジラそのものの造型の格好良さも素晴らしい。
対峙するビオランテも含め、強大で恐ろしさに溢れる大怪獣の造型に辿り着いたことこそが、シリーズ全体における今作の価値を更に高めている。