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<ネタバレ>映画紹介で「考察型」と書いてあるのがいかにも面倒臭そうに見える。実話をもとにしたとされているが、もとの事件から取ったのは場所と騒霊現象が起きることくらいで、他はほとんど創作だろうという気がする。
12月の話とはいえ雰囲気は確かに「ミッドサマー」だろうが(見てないが)、死への恐怖を扱ったという点では高橋洋脚本・監督の「恐怖」(2009)に近いかと思った。要は登場人物の発言のとおり、霊も死後の世界も存在するので死ぬのは怖くない、という考えが根底にあるようで、確かに自分が存在しなくなると思うと底知れない怖さを感じるというのはわからなくはない。
死んだら何もなくなるという信念を持つ人は多いのかも知れないが、しかし現実問題として古今東西の伝統社会で死後の世界はあると信じられてきており、これは根拠がどうとかいうよりも、そう思いたがるのが人類共通の心理だからと取れる。それならそれを素直に受け入れても構わないのであって、主人公が何の義理で頑なに死後の世界を認めないのか個人的には全くわからない。どうせ死ぬときはみな一人なので、客観性も合理性もなく気持ちの問題と割り切って、自分が安心できる適宜の考え方を選べばいいではないか。その考えに他人を巻き込もうとしなければいいだけのことである。
死への不安を解消するためには、例えば劇中人物も若干触れていた(多分)ように、臨死体験をした人々が死を恐れなくなったと言っていることを知るのはいい。向こうへ行ってしまった家族や知人が迎えてくれると思うのも安心できる要因と思われる。また無難なのは既成の大宗教に合わせることで、例えばキリスト教徒の人々なら天国へ行こうと思うのだろうし、また仏教一般でいう輪廻転生を想定すれば少なくとも今回だけで終わりにはならない。あるいは阿弥陀如来を信じて称名念仏していれば西方極楽浄土に行けるとか思えばとりあえず安心できる。
そこで大事なのは当然ながら、死への恐怖を悪用する変な教団に取り込まれないことである。劇中では登場人物にカップで何か飲ませる場面があったので、薬物で精神を操作するか何かしていたと思われる。そういう面ではカルトを扱った映画だろうが、実は教祖と信者(住人)のほとんどがすでに心霊だったというのが特色ではないか。人を集めていた動機は不明だが、来世へ行けない寂しさを紛らわすためというようなことかも知れない。
真面目に作ってあるのは認めるが、娯楽としての面白味は特に感じない。映像が全体的に茶色がかっていて、薄汚れたしょっぱい印象(醤油が染みついたような)だったのも好きになれない理由だった。点数は前記「恐怖」を5点にしたのでそれより下げておく。
なお登場人物の関係では、若手女子が可愛く見える場面は特にない(アイドルホラーではない)。個人的には山谷花純さんと飯田祐真さんのキスシーンがあったのが意外で、一般向けの見どころともいえないが自分としては注目点だった。[良:1票]