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ザ・チャンバラさんのレビューページ
プロフィール
コメント数 32
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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21.  ハウス・オブ・カード 野望の階段 《ネタバレ》 
野望の階段を登りつめて国の頂点に立ったフランクのその後。最高権力を握った途端にフランクは勢いを失い、それまでは「大統領になるんだ」という目的の下結束してきたアンダーウッド夫妻が、実は目指していたゴールが違っていたことが露呈して分裂を始めます。攻めに攻めていた1・2シーズンから一転してフランクが防戦一方となった本シーズンでは作品全体の雰囲気が大きく変わっており、また完全な公人となり24時間の監視に晒されたことでフランクが裏工作に動くような展開もなくなったために、かなり真っ当な政治ドラマに落ち着いています。前シーズンまでのトーンが好きだった私としては最初の数話にはあまり乗れなかったし、中弛みしているエピソードもあったため序盤はイマイチだったのですが、それでも終盤できっちり盛り返す辺りは、さすが名物ドラマです。 終盤にて、フランクは多くの取り巻きを失います。これを裸の王様状態になったフランクの自業自得として見ることもできますが、私はフランクに大きく感情移入できました。どいつもこいつも大統領に一方的な期待ばかりを募らせ、望んだ見返りを得られないと見るや「私のことはどうでもいいのか」などと言って離れていく。権力者になって受けられたものは敬意ではなく文句ばかりで、これではフランクもイヤになるでしょう。 まずシャープ。シーズン2にてフランクの抜擢人事によって党内の要職に就いた彼女は、フランクからすれば当然に駒となるべき存在です。しかし、彼女は大統領選で窮地に立たされるフランクとダンバーを品定めし、副大統領職という餌を提示されたことでようやくフランク側に立つ決断をするという恩知らずな態度をとります。その割に、駒として使われたことにブーブー文句を言い、自分の心情に配慮しろなどとお門違いなことをぬかすものだから、フランクも堪らないわけです。まず情を失ったのはシャープの方であり、そこから先は取引というシビアな形で二人の関係が進み始めた。駒となることへの対価は副大統領職の提示で済んでおり、餌を見せることで渋々付いてきているような部下の心情にまでなぜ配慮しなければならないのか。フランクのイライラには、とても共感できました。 次にレミー。元はフランクのスタッフとして働きながらも、敵対者側のロビイストに転職。シーズン2では完全な敵に回っていたにも関わらず、クライアントであったレイモンド・タスクが倒れるやまたフランクの元に戻ってくるという究極の風見鶏でありながら、フランクは大統領補佐官に就けるという実に温情ある対応をします。しかし、彼はフランクに対する恩義などビタ一文感じていない様子で、同じく恩知らずのシャープの逆切れに同調して再びフランクの元を去っていきます。こいつも最悪、出て行かれて正解でした。 最後にクレア。フランクを応援する様は糟糠の妻のそれではなく、自己実現の手段であったことはシーズン1の頃より分かっており、今シーズンではいよいよ彼女も自分の目的のために動き出すのですが、そのタイミングがことごとく最悪。まず彼女は国連大使を目指しますが、大統領の妻が国連大使になるという権力の集中など世論の理解の範囲を超えており、当然議会では否決をされます。ここで諦めればいいものを、旦那にねだりその権力を使って無理やり大使就任するものだから、ただでさえ低い旦那の支持率に悪影響を与えます。しかも、大使でいる間は私情を捨てて公務に徹するべきなのに、肝心の場面では妻に戻って大統領の指示に従わないため、彼女の存在がフランクのアキレス腱となります。彼女もシャープと同じく情と利の両方を求めてくるため、実にめんどくさいのです。クレアの要求に耐えかねたフランクが、「ある時は君を平等なパートナーとして見られる理解ある男で、ある時は君をリードできる頼もしい男。それを君の気分に応じて都合よく使い分けろって言うのか!」とブチ切れる場面では拍手喝さいでした。よく言った、フランク。 ただし、大統領という立場では実質的に離婚という選択肢が残っていないのがフランクの辛いところ。そして、クレアは旦那の弱みをよく理解していて、容赦なくそこを攻撃してきます。シーズンクライマックスでは旦那の選挙戦における重要局面においてスキャンダルを起こそうとするという、最悪の行動に出ます。あなたは共倒れって言葉を知らないのか。女性って、男が一番困るであろうタイミングで騒動を起こすと脅迫し、自分の言うことを聞かせようとしますね。絶対にうんとは言えない状況で「じゃ、離婚よ!」とか言ってくるうちの嫁を見ているようで、実に複雑な気持ちになりました。がんばれ、フランク。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-06-01 23:55:53)
22.  ハウス・オブ・カード 野望の階段 《ネタバレ》 
前シーズンにて野望の階段をひとつ上がったフランクの次なる戦いが描かれるシーズン2ですが、作品の趣はかなり変わったように感じました。前シーズンでは自分より格下の者を掌で弄びながら野望を実現させていたフランクですが、戦いのスタージがワンランク上がったことで自分と互角もしくはうわ手の敵が相手となり、フランクが状況を意のままに操るという前シーズンにあった爽快感はかなり失われました。この点で、シーズン1がお気に入りだった私としては多少の失望がありました。 ただし、米中の財界の大物を敵に回しての戦いには緊張感があったし、そんな陰での死闘を表にはまるで出さず、上司たる大統領に忠臣として取り入ろうとするフランクのイヤラしさは相変わらず見ていて楽しく、世界中の中間管理職がフランク・アンダーウッドの振る舞いに拍手喝采したのではないでしょうか。 ついに大統領に野望が発覚した後、大統領とフランクが主導権争いを繰り広げるラスト2話の盛り上げ方は非常に素晴らしく、それまで着々と準備してきたカードを一斉に切っていくという総力戦感や、すべてのカードを切りつくし運を天に委ねるしかなくなった瞬間の焦燥感などが見事に演出されています。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-06-01 23:54:53)
23.  闇金ウシジマくん 《ネタバレ》 
開始当初よりかなり攻めていたこのシリーズも、season3ではヤバさがMAXに到達しています。働き盛りの年齢なのに、仕事をしたくないからと言って安易に生活保護を受給しようとする小瀬ちん。案の定断られると、今度は某左翼政党の運動家らしき人物を引き連れて市役所に乗り込み、「揉めると面倒くさいから支給しとくか」という理由で生活保護を勝ち取ります。さらには、一般社会で生きていけない無職を上から目線でこき使うNPO法人の代表者までを登場させ、世間一般では正義とされている人々の化けの皮を剥がしていきます。また、顔は綺麗なのだが明らかに知的障害のある希々空や、バッチリ入れ墨の入っているヤクザ・柏木など、今のテレビでは映すことをためらうようなサブキャラもどんどん投入。よくぞここまで踏み込んだものだと感心しました。 そして本シーズンの核となっている上原まゆみの洗脳エピソードですが、こちらも地上波で放送されたものとは思えないほどのエグさでした。占い師に頼りがちな心の弱さを突かれて生活をどんどん浸食されていき、結婚詐欺師に家族もろとも家を乗ってられてしまうまゆみ。ヤクザ者同士の暴力や殺人は頻繁に登場してきたこのシリーズですが、一般人がここまで明確な犯罪行為に巻き込まれるエピソードは珍しく、その衝撃度はかなりのものでした。また、結婚詐欺師役を演じる中村倫也のねちっこい演技や、アイドル出身とは思えないほど気合の入った熱演(ラスト2話はほぼ下着姿)を見せた光宗薫の努力もあって、一秒たりとも緊張感が途切れることがなかった点も高評価です。前シーズンまではAV女優を多く使っていたために演技力には目を瞑る必要があったこのシリーズですが、本シーズンに関してはそうした見る側の匙加減が不要だったことは有難かったです。 問題は、どのエピソードにもウシジマがほとんど絡んでいなかったという点であり、私は山田孝之の演じるウシジマが大好きなので、彼の活躍をもっと見たいところでした。さらには、season1では硬派だった柄崎のキャラがどんどん壊れていったことや、高田が空気同然の存在感だったこともマイナスであり、カウカウファイナンスの面々は総じてうまく動かせていません。綾野剛に至っては本編にまるで関与しておらず、彼の登場シーンはファンのための顔見せ程度だった点も残念でした。
[テレビ(日本ドラマ)] 7点(2017-01-31 01:03:09)
24.  マルコ・ポーロ
全10話に9,000万ドルもの製作費がかけられただけあって、ルックスの説得力は桁違い。都市、宮殿、衣装、武器、調度品など画面に映るものすべてに手抜きがなく、その時代の再現に成功しています。ファーストカットを見ただけで「これは並の時代劇ではない」ということが伝わってくるほどの迫力であり、第1話は画面に映るものに見とれているだけで1時間が経過してしまいました。 最近の海外ドラマとしては珍しくテンポはゆったりとしており、クリエイター達は矢継ぎ早な展開で視聴者を楽しませることよりも、凝りに凝った美術をじっくりと見せることを優先したようです。その結果、5話までは話がほとんど進まず、時に退屈させられた点はマイナスでしたが。 もうひとつ本作が特殊なのは、カンフーマスターがマルコ・ポーロに稽古をつけたり、忍者軍団がフビライ暗殺に送り込まれたりといった誤った東洋文化のアイコンが豪快にぶちまけられていることであり、重厚な時代劇の合間にこうした俗っぽいものを見させられるため、高級中華料理とサッポロ一番を同時に食べさせられているかのような不思議な感覚を抱かされました。サッポロ一番もおいしいので決して悪い気はしませんでしたが、珍しい崩し方をするものだと思いました。 また、個性や行動原理が不明確な登場人物が何人か居た点も気になりました。例えばコカチン王女。権力争いに翻弄される悲劇の美女としての一面と、恋人を殺害してでも現在の地位を守ろうとする狡猾な策略家としての一面とが交互に披露され、結局彼女は何を考えているのかがサッパリわかりません。またクトゥルン姫も、初登場時にマルコ・ポーロを逆ナンして即騎乗位で青姦となかなか豪快なところを見せるものの、その後はマルコ・ポーロとの接点はほとんどなく、それどころかビャンバと恋に落ちて婚約までするために、あの青姦には一体何の意味があったんだろうかと思ってしまいます。 良い点も悪い点もある癖の強いドラマですが、見るべき点は多いため引き続きシーズン2と番外編も鑑賞したいと思います。
[テレビ(吹替)] 7点(2016-12-15 17:21:21)
25.  ジ・アメリカンズ 《ネタバレ》 
スパイの日常生活を描くという点で『トゥルーライズ』に近いコンセプトの作品であり、私はてっきり本作をブラックコメディだと思っていたのですが、これが極めてシリアスなドラマとして作られていました。以下の通り劇中には笑うしかないような状況が多数登場するのですが、安易に笑いへ逃げることなく真剣なドラマとして作品を構築した辺りに、本作のクリエイター達の志とスキルの高さを感じました。 スパイの手口は基本、色仕掛け。仕掛ける方も仕掛ける方なら、落とされる方も「脇が甘すぎるんちゃいまっか」と言いたくなるレベルなのですが、新聞沙汰になった現実の機密漏洩事件も色仕掛けにハマった結果のものが多く、人間が一番抗えないのは性欲だということがよく分かります。本作の主人公達も当然色仕掛けを基本戦略としているのですが、ジェームズ・ボンドのように相手が美女ということは現実にありえなくて、彼らはおじさん、ブス、ド変態を夜な夜な相手にして機密情報を聞き出しています。スパイの方々の努力には頭が下がります。 ただし、偽装結婚とは言え20年も生活を共にすればお互いへの愛着が生じ始めている中でパートナーがターゲットとの関係を持っているのだから、時に心穏やかではいられなくなります。本作はホームドラマでもあり、偽装結婚が次第に本当の愛情に変わろうとするが、特殊な職務の中でまた現実に引き戻されるという綱渡りの夫婦関係が面白さのひとつとなっています。もうひとつ面白いのが、そのような特殊状況に対する男女間の反応の違いを描いていることで、奥さんの方は旦那がよその女と関係を結んでも「仕事だから頑張って」と割り切っているのに対して、旦那の方は自分の奥さんがよその男に抱かれることに抵抗を示しており、ドSのヘンタイ野郎に傷つけられた日には、任務そっちのけで「そいつをぶっ殺してやる」と激高します。メンタルにおける適応能力は男性よりも女性の方が上ということが如実に描かれているのです。 そんな彼らのお隣には、FBI防諜部員とその家族が引っ越してきます。まさに彼ら潜入工作員を追っている人間がお隣さんになり、さらには家族ぐるみの付き合いを始めるという非現実的な設定を作品に持ち込んでいるのですが、これをお笑いにすることなく視聴者から自然に受け入れられる形にまとめた辺りに、本作の出来の良さがあります。同時に、現実に存在した潜入工作員達がいかにうまくアメリカ社会に溶け込んでいたかをこの辺りの展開で象徴的に見せており、なかなかうまいものだと感心しました。 ただし、このFBI防諜部員単独のドラマについては多少説得力に欠ける部分があることが残念でした。彼は職務に没頭しすぎる余り家族との関係が悪くなり、他方で二重スパイとして抱き込んだKGB職員の女と親しくなり、最後には男女の関係を結んでしまうのですが、この展開はさすがに飛躍しすぎでした。色仕掛けに引っかかるのは素人であり、しかも相手をスパイと知らずに引っかかるのに対して、彼は潜入捜査の経験もあるバリバリのプロであり、しかも相手の女はKGB職員であることが事前に分かっているのだから、そんな相手に心を許して恋に落ちるなんてことはリアリティに欠けます。
[テレビ(吹替)] 7点(2016-09-26 18:15:00)
26.  ブラッドライン
Netflixにて鑑賞。 家業であるホテルの式典にあたり、トラブルメーカーらしい長男が久しぶりに実家に戻ってきた。この長男がせっかくの式典をぶち壊しにするのではないかという緊張感と、「こういう困った身内いるよなぁ」と多くの人が実感できる絶妙なレベルに調整された不快感、そして、その後の家族の破滅を匂わせる不気味なフラッシュフォワードと、大したことが起こるわけでもないのに、第一話はかなり引きの強いエピソードとなっています。このプロローグで、私は完全に心を掴まれました。 車寅次郎とゲイリー・オールドマンを合わせたような長男ダニーを演じるのは、『アニマル・キングダム』で見た目は普通だが性根が完全に腐りきったキ〇ガイを演じて全世界を震え上がらせたベン・メンデルソーン。メンデルソーンは本作でも怪物ぶりを披露しているのですが、同時に、ある不幸な事件によって人間性を歪められた被害者であるということや、家族との関係修復に彼なりに努力しているものの、当の家族にその思いを受け取ってもらえず挫折しているという多面性も見事に表現しており、その演技の幅の広さには驚かされます。名優揃いの本作においてメンデルソーンの知名度は劣っているものの、ドラマ内における存在感は出演者中でも突出しており、全13話を通じてほぼ彼の独壇場となっています。本作のファンだというスピルバーグは新作” Ready Player One”の主演にメンデルソーンを抜擢しましたが、その抜擢も当然と言えるほど、本作でのメンデルソーンの演技には鬼気迫るものがあります。 本編は、緩やかに崩壊へと向かうある家族の現在の物語を通して、彼らの現在を作り上げている過去の事件が薄皮を剥がすように明かされていきます。どれだけ憎み合っても離れることのできない家族という因縁が、真綿で首を絞めるように全員を不幸にしていくという何とも暗いドラマであり、刺激的な事件や意外性ある展開とは無縁の内容であるため通常の海外ドラマと比較するとテンポが遅いものの、脚本・演出・演技のすべてのレベルが高いため退屈はさせられません。
[テレビ(吹替)] 7点(2016-06-28 17:33:02)
27.  ブレイキング・バッド 《ネタバレ》 
昔、『天国に行けないパパ』という映画がありまして、自分は末期がんだと勘違いした刑事が、家族に金を残すために殉職しようとするがなかなかうまくいかず、それどころか捨身であるがゆえに多くの手柄を挙げてしまうというコメディだったのですが、本作からはそれに近い印象を受けました。 主人公は小市民で戦闘能力は限りなく低いが、死への恐怖が薄いために度胸とハッタリを武器にマジのヤクザ相手に善戦し、数々の危機を乗り切ってしまうという痛快さ。また、ハードな現場に不慣れな者が、右往左往しながら事態への対応を手探りで考えていく姿の滑稽さ。こうしたものがしっかりと描かれており、笑ってハラハラさせる上質なエンターテイメントとして仕上がっています。特に、クレイジーエイト殺害に係る一連の展開は当シリーズの本質をよく表現したもので、ウォルターとジェシーはクレイジーエイトを捕えるもののその殺害には消極的で、本来は敵である彼を殺さないで済む理由を必死に探そうとする倒錯したやりとりが笑わせました。ウォルターとクレイジーエイトは一時的に打ち解けてほのぼのとさせるものの、ヤクザの世界はそれほど甘いものではなく、最終的にはクレイジーエイトを殺さざるをえなくなるという冷酷な着地点もよく考えられており、二人が片足突っ込んだのは修羅の道であることを視聴者に対して強烈に印象付けます。本作における人の死は軽いものではなく、それは生き残った者の心に確実に傷を残していきます。こうした倫理観も本作の味となっています。 また、本作はホームドラマでもあり、アメリカの医療制度の問題点や、終末医療のあり方を考えさせる社会派な一面もあります。さらには、組織論や意思決定論といった経営学的なモチーフがそれとなく登場することもあり、製作者の知見がたっぷりと込められた見応えあるドラマとなっています。他のアメリカドラマと比較するとビックリ仰天するような急展開はなく、勢いという点では見劣りするのですが、安易な視聴者サービスを排除したゆえの堅実な作りには好感が持てます。
[DVD(吹替)] 7点(2016-05-24 09:06:29)
28.  ヴァイキング~海の覇者たち~ 《ネタバレ》 
かなりシンプルだったシーズン1とは対照的に、当シーズンでは北欧とイングランドを行ったり来たりで、しかも立ち位置がコロコロと変わる登場人物が何人かいて、シーズン全体を眺めた時のイベントの詰め込み方がアメリカドラマに似てきたなぁという印象を受けました。いかにじっくりと見せるかに重きが置かれていたシーズン1のテンポも好きだったんですけどね。 イングランド内での権力闘争にヴァイキングの軍事力を利用しようとするウェセックス王と接近したり、一方で味方であるはずのホリック王との関係に亀裂が入り始めたりと、本シーズンでは敵味方のボーダーレス化が本格化するのですが、そこに「どうなる!?ラグナル」という緊張感が伴っていないために、製作者の意図とは裏腹に、あまりハラハラさせられませんでした。ピンチになれば駆けつけてくれるラゲルサ、素直なビヨルン、寡黙だが心強いロロと、ラグナル陣営が盤石すぎて負ける気がしないのです。また、これは歴史ものならではのハンデなのですが、ラグナル・ロズブロークとその息子たちがこの時点では死なないことは分かっているため、何が起こっても「ま、どうにかして解決しちゃうんでしょ」という目で見てしまう点もマイナスでした。この先どうなるのかというサスペンス要素で引っ張るよりも、人間ドラマに重きを置くべきだったと思います。 また、そのドラマ部分がとにかく雑という点も気になりました。シーズン前半ではすっかりヴァイキングの一員となりイングランドの同胞を殺しまくっていたが、中盤ではアッサリとキリスト教の聖職に復帰し、後半ではまたヴァイキングに戻っていくというアセルスタンが一体何を考えているのか分からなかったり、前シーズンでラグナルの不貞によって家を去ったラゲルサとビヨルンが、何のわだかまりも見せずラグナル勢に再合流することが不自然だったりと、そこにあるべき感情がすっ飛ばされていることが結構多いのです。新キャラ・ポルンに至っては、最初はビヨルンの好意を迷惑がっていたはずなのに、いつの間にかビヨルンとラブラブになり、彼のお母さんラゲルサを目指して剣術の稽古を始めるほどの健気さを見せていたものの、後半では突然ツンデレキャラになるという、同一人物とは思えないほどの不安定さで、この人物をどう理解すればいいのか悩みました。 IMDBなどではこのシーズン2のスコアはかなり良いのですが、私はシーズン1よりも落ちる出来だと感じました。とはいえポテンシャルの高いシリーズなので、続くシーズン3にも期待していますが。
[テレビ(吹替)] 6点(2017-08-20 10:26:22)
29.  エクスパンス-巨獣めざめる- 《ネタバレ》 
映画・ドラマ・アニメを含めたすべてのSF作品の中でも最上位クラスの作品だと思っている作品として『バトルスター・ギャラクティカ』があるのですが、Syfyチャンネルがそのギャラクティカ以来久し振りに手掛けた宇宙ものが本作『エクスパンス』ということで、大変な期待の下での視聴となりました。 で、結果なのですが、物語もビジュアルも確かに作り込みが凄い。巨大なスペースコロニーから小道具ひとつに至るまで何一つ手抜きがなく、宇宙移民が始まって数世代が経過してくたびれてきた世界というものを、ほぼパーフェクトに視覚化できています。また物語も硬派な空気を終始維持できているし、いざ戦闘が始まれば圧倒的なテンションの見せ場が繰り広げられ、本作のメイン視聴者であると見られるギャラクティカのファンが要求するものは、とりあえず提示できています。 問題は、とにかく内容がわかりづらいこと。失踪した富豪令嬢を追うコロニーの刑事、正体不明の敵に攻撃された貨物宇宙船の生き残り、地球の国連大使が主人公となるのですが、シーズン佳境までほとんど接点を持たないこの3名が別々に謎解きをしているので、彼らが何をしているのかをしばしば見失いそうになります。 また、前述の通り個々の見せ場のクォリティは高いものの、最近のアメリカドラマとしては珍しく見せ場の数がとにかく少なく、何事も起こらないまま終了する回もザラにあるため、見続けるためには時に忍耐が必要となります。なお、謎の多くは解明されないままシーズン最終話を迎え、本シーズンが序章に過ぎなかったことが判明するのですが、今後このシリーズがどうなっていくのかには大変興味をそそられる一方で、この構成ではシーズン単独での評価はどうしても低くなってしまいます。複数のシーズンをまたぐ壮大なサーガを描きつつも、個々のエピソードの満足度も高いものだった「バトルスター・ギャラクティカ」や「ゲーム・オブ・スローンズ」などと比較すると、本作では全体構成のために個別エピソードが犠牲にされているという印象を持ちました。
[テレビ(吹替)] 6点(2017-08-05 22:50:38)
30.  ハウス・オブ・カード 野望の階段 《ネタバレ》 
シリーズのショーランナーを務めてきたボー・ウィリモンが本シーズンより降板したとのことですが、その抜けた穴の大きさを実感させられるシーズン5でした。面白いことには面白いのですが、普通に見られる平均作レベルに落ちてしまったという印象であり、非常にポテンシャルの高い本シリーズに要求される水準には達していません。 本シーズンは大統領選が描かれる前半パートと、フランクが過去に犯してきた不正や犯罪行為がついに周知のこととなり追及に晒される後半パートに大分されますが、どちらのパートにおいても「フランクが追い込まれる→ありえない対応策で危機を乗り切る」という展開に単調さがあり、危機また危機で煽れば煽るほど緊張感が失われるという負のスパイラルに陥っています。致命的だったのはフランク側の対応策に知性や意外性が欠けていたことであり、臭い物にはフタをする、都合の悪い奴は殺すという対応は本シリーズに求められているものからはかけ離れています。勢いと緻密さが奇跡的な配合となっていた前シーズンから緻密さが抜け落ちてしまったという印象であり、ボー・ウィリモンの偉大さをつくづく感じさせられました。 また、シリーズの名物であった視聴者に対する語り掛けも随分と様変わりしています。節目節目で一言二言毒のある発言をすることが本シリーズにおける語り掛けの良さだったのですが、本作では視聴者相手にダラダラと状況説明をするようになり、もはや「世にも奇妙な物語」のタモリみたいになっています。こちらでもかなり興を削がれました。 キャラクター劇としてもイマイチで、何人かのキャラクターが別人のようになっています。 まずフランク。確かに彼は腹に一物持った悪人ですが、それでもその最終目標は「自分の手でレガシーを作ること」であり、実際にシーズン3では福祉政策の大転換に挑んでいました。達成のための手段を選ばないという姿勢にこそ問題はあれど、そもそもの目標は公益性を伴ったものであり、だからこそ視聴者はこの人物を愛していたはず。しかし本シーズンではそうした目標すら失い、ただ権力にしがみつくだけの私利私欲の塊と化しています。挙句に、自分は表舞台から消え去り、国民人気のあるクレア政権に対する院政を敷いて権力を維持すると言い出す始末であり、これではシリーズを通して彼が批判してきた金の亡者達と大差ありません。最低限の美学すら失ったフランクを、私は支持できませんでした。 次にクレア。彼女とトム・イェイツの関係性は欲求不満を紛らわせるための愛人という上から目線のものであり、その冷徹さの中にこそ彼女の超越性が宿っていたというのに、本作ではトムにハートまで持っていかれた様子を見せるために、彼女の魅力が随分と失われています。トムはトムで、自分の立ち位置を瞬時に理解する知性を持ちながらも、退廃性に身をゆだねてフランクの犬・クレアの愛人に成り下がっているという実に味のあるキャラクターだったはずなのに、本作では単なるエロキャラに見えてしまっています。挙句に、あのみっともない最期ですから、魅力あるキャラに随分と勿体ない扱いをしたものだと残念な気分になりました。 そして、一番変化が激しかったのが選挙参謀・リアン・ハーヴェイであり、融通の利かないキレ者だったはずの彼女が、本作では「私を切らないでください」と懇願するだけの被害者キャラに成り下がっています。強者同士の蹴落とし合いが見どころの本作に、弱者キャラは不要です。
[テレビ(吹替)] 6点(2017-06-15 22:41:06)
31.  闇金ウシジマくん 《ネタバレ》 
Season1では視点人物である片瀬那奈の存在が大きく、一般人とほぼ近い彼女の感性こそがド底辺の特殊な世界と視聴者との間の橋渡しをしていたのですが、彼女を失ったseason2以降は視聴者の感情の受け皿がなくなっています。これは痛い損失でした。また、群像劇に近かったseason1とは対照的にエピソードの数が絞られており、正攻法の努力もせずに漠然と芸能界入りの夢を見て地獄に落ちる中田のエピソードが核とされている点も、私にとってはイマイチでした。芸能界に憧れる若者という一般人とはかけ離れた個性を持つ中田よりも、サラリーマンや主婦がちょっとしたきっかけからドツボにはまっていくseason1のようなエピソードの方が闇金というテーマには合っていたかなと。 ただし、良かった点もあります。パチンコ中毒者の様子がかなり克明に描かれていたり、「You、○○しちゃいなよ」と某大手芸能事務所社長のような口ぶりで若い男をたぶらかすG10(ゴトー)というキャラクターが登場したりと、普通のテレビ番組では考えられないような危険な描写にまで踏み込んでいるのです。この作り手達の根性には恐れ入りました。
[テレビ(日本ドラマ)] 6点(2017-01-31 01:02:12)
32.  ジ・アメリカンズ
スパイものと言うよりもホームドラマだったシーズン1から一転して、シーズン2は毎回のように主人公夫妻にミッションが下されるスパイアクションものとなっています。展開の速さは前シーズンの3倍ほどになっているため毎回ハラハラドキドキさせられ、娯楽作としては極めて優秀なのですが、その一方で「潜入スパイという特殊な立場にいる人たちも私たちと同じような平凡な悩みを抱えてるんですよ」という本シリーズの骨子とも言える倒錯したドラマがかなり弱くなっている点は残念でした。 祖国から下されるミッションをこなしつつも、旅行業者や家庭人としての体裁を保たねばならない。しかも身近にいる従業員や子供達からも不信感を抱かせないような振る舞いをしなければならない。ゆったりとした前シーズンでは視聴者にさほどの違和感を抱かせなかったものの、矢継ぎ早な展開が多い上に、フィリップがターゲットと偽装結婚をして2つの家庭を行き来するという設定までが加わった本シーズンにおいてはさすがに無理が生じており、「この人たち、いつ寝てるんだ」状態になっています。娯楽性を追いかけすぎるあまり、リアリティが犠牲になっているのです。ご近所さんがFBI捜査官という設定に至ってはほぼ忘れ去られており、フィリップ・エリザベス夫妻の物語とスタン捜査官の物語が完全に別個のものとなっている点も残念でした。 本シリーズの重要なアイデンティティが失われつつあるシーズン2でしたが、シーズン3ではどの程度建て直しができるのかに注目です。
[テレビ(吹替)] 6点(2016-12-15 17:19:17)
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