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ザ・チャンバラさんのレビューページ
プロフィール
コメント数 32
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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21.  闇金ウシジマくん 《ネタバレ》 
Season1では視点人物である片瀬那奈の存在が大きく、一般人とほぼ近い彼女の感性こそがド底辺の特殊な世界と視聴者との間の橋渡しをしていたのですが、彼女を失ったseason2以降は視聴者の感情の受け皿がなくなっています。これは痛い損失でした。また、群像劇に近かったseason1とは対照的にエピソードの数が絞られており、正攻法の努力もせずに漠然と芸能界入りの夢を見て地獄に落ちる中田のエピソードが核とされている点も、私にとってはイマイチでした。芸能界に憧れる若者という一般人とはかけ離れた個性を持つ中田よりも、サラリーマンや主婦がちょっとしたきっかけからドツボにはまっていくseason1のようなエピソードの方が闇金というテーマには合っていたかなと。 ただし、良かった点もあります。パチンコ中毒者の様子がかなり克明に描かれていたり、「You、○○しちゃいなよ」と某大手芸能事務所社長のような口ぶりで若い男をたぶらかすG10(ゴトー)というキャラクターが登場したりと、普通のテレビ番組では考えられないような危険な描写にまで踏み込んでいるのです。この作り手達の根性には恐れ入りました。
[テレビ(日本ドラマ)] 6点(2017-01-31 01:02:12)
22.  闇金ウシジマくん 《ネタバレ》 
登場人物は全員キャラが立っているし、複数エピソードを同時進行させるという構成をとりながらも、そのすべてのエピソードが面白いという神業的な内容となっており、このseason1を基礎として長期シリーズ化したことにも納得がいきました。 金に絡んだドロドロを題材としつつも、時に人間の良い部分を見せるという匙加減も素晴らしく、特に久美子と健介のエピソードにはかなり感動させられました。高額に膨れ上がった借金の返済ができなくなった健介は、恋人の久美子を沖縄の風俗に売るか、自分自身がロシアンマフィアに売られて漁船で死ぬまで働かされるかの選択を迫られ、久美子を売るつもりで彼女の部屋を訪れます。すると、前々から自分が欲しがっていた高額なスニーカーを誕生日プレゼントとして久美子が買ってくれていたことに気付き、自分の不義理を反省。健介は黙って漁船に乗る道を選択しました。ゲスな人間が人間性を垣間見せる一瞬の輝きほど美しく感動的なものはありません。本作は、そうしたものがちゃんと描けているので素晴らしいのです。
[テレビ(日本ドラマ)] 8点(2017-01-31 01:01:35)
23.  マルコ・ポーロ
全10話に9,000万ドルもの製作費がかけられただけあって、ルックスの説得力は桁違い。都市、宮殿、衣装、武器、調度品など画面に映るものすべてに手抜きがなく、その時代の再現に成功しています。ファーストカットを見ただけで「これは並の時代劇ではない」ということが伝わってくるほどの迫力であり、第1話は画面に映るものに見とれているだけで1時間が経過してしまいました。 最近の海外ドラマとしては珍しくテンポはゆったりとしており、クリエイター達は矢継ぎ早な展開で視聴者を楽しませることよりも、凝りに凝った美術をじっくりと見せることを優先したようです。その結果、5話までは話がほとんど進まず、時に退屈させられた点はマイナスでしたが。 もうひとつ本作が特殊なのは、カンフーマスターがマルコ・ポーロに稽古をつけたり、忍者軍団がフビライ暗殺に送り込まれたりといった誤った東洋文化のアイコンが豪快にぶちまけられていることであり、重厚な時代劇の合間にこうした俗っぽいものを見させられるため、高級中華料理とサッポロ一番を同時に食べさせられているかのような不思議な感覚を抱かされました。サッポロ一番もおいしいので決して悪い気はしませんでしたが、珍しい崩し方をするものだと思いました。 また、個性や行動原理が不明確な登場人物が何人か居た点も気になりました。例えばコカチン王女。権力争いに翻弄される悲劇の美女としての一面と、恋人を殺害してでも現在の地位を守ろうとする狡猾な策略家としての一面とが交互に披露され、結局彼女は何を考えているのかがサッパリわかりません。またクトゥルン姫も、初登場時にマルコ・ポーロを逆ナンして即騎乗位で青姦となかなか豪快なところを見せるものの、その後はマルコ・ポーロとの接点はほとんどなく、それどころかビャンバと恋に落ちて婚約までするために、あの青姦には一体何の意味があったんだろうかと思ってしまいます。 良い点も悪い点もある癖の強いドラマですが、見るべき点は多いため引き続きシーズン2と番外編も鑑賞したいと思います。
[テレビ(吹替)] 7点(2016-12-15 17:21:21)
24.  Billions
近年のアメリカテレビ界はどんな職業でも堂々たる娯楽作に仕立て上げることに強みを発揮していますが、本作ではヘッジファンドをテーマに据えています。毎回、難解な金融用語が登場するために若干敷居を高く感じられるのですが、実際にはそれらはあくまで雰囲気作りのための装飾のようなものであり、その意味を特に理解しなくてもドラマは問題なく理解できます。こうした作りの堅実さはさすがだなと感じました。 インサイダー取引や市場操作といった犯罪行為に手を染めながら巨額の利益をあげるヘッジファンド創設者と、その不正を暴こうとする検事のバトルがこのドラマの軸となるのですが、そこに大上段に構えた正義や、社会啓蒙的なメッセージなどはなく、負けず嫌いの男2人が双方消耗しながら泥仕合を繰り広げる様が延々と展開されます。中盤以降になってくると当事者達も視聴者もそもそものバトルの目的すら忘れがちとなってくるのですが、この不毛さ、熱い応酬戦の裏側にある突き放した冷たさこそが本作の味であり、ある種のコメディとしても機能しています。 また、本作の強みは主人公二人が非常に魅力的なことであり、視聴者はそのどちらにも感情移入しながらドラマを見ることができます。ヘッジファンド創設者であるボビー・アクセルロッドは一時期のホリエモンの如く札束で他人の頬を叩くようなマネをしており、表面上はイヤらしい成金そのものなのですが、その背景には彼自身の貧しい生い立ちがあり、一連の過激な行動は支配階層への復讐行為であることが明らかになると、視聴者は彼のすべてを肯定したくなります。二手先三手先を読んだ上での行動に、相対した人間の心の奥底を見透かしているかのような言葉遣い、スリムな体形にラフなファッションと、彼のすべては洗練されており、多くの人が憧れるダークヒーローとして造形されています。演じるダミアン・ルイスは次期ジェームズ・ボンドの最有力候補とも言われている人物なのですが、彼の雰囲気や風貌はこのダークヒーロー役に見事にハマっています。 対する検事・チャック・ローズはウォール街では知られた名門一族の出身にして、一流大ロースクール卒、公判では生涯無敗を誇るNY検事局のトップにして、次期NY市長候補とも言われているエリート中のエリート。しかし、そんな華麗な経歴とは裏腹に彼の見た目は普通のおじさん、日常生活も地味なもので、庶民的な中華料理屋のテイクアウトを食べながら残業をしたり、奥さんの稼ぎがないと私立学校に通う子供の学費を払えないと言って悩んだりと、サラリーマンっぽさ全開なので思わず感情移入してしまいます。また、勝負に執着して熱くなりすぎる余り墓穴を掘ることがたまにあるという人間臭い部分もあって、終始冷静で超人の如く振る舞うアクセルロッドとは何もかもが対照的なキャラクターとなっています。 残念ながら本シーズンでは二人の勝負の決着は着かないのですが、この魅力的なキャラクター達が健在なのであれば来シーズン以降にも大いに期待ができます。
[テレビ(吹替)] 8点(2016-12-15 17:20:25)
25.  ジ・アメリカンズ
スパイものと言うよりもホームドラマだったシーズン1から一転して、シーズン2は毎回のように主人公夫妻にミッションが下されるスパイアクションものとなっています。展開の速さは前シーズンの3倍ほどになっているため毎回ハラハラドキドキさせられ、娯楽作としては極めて優秀なのですが、その一方で「潜入スパイという特殊な立場にいる人たちも私たちと同じような平凡な悩みを抱えてるんですよ」という本シリーズの骨子とも言える倒錯したドラマがかなり弱くなっている点は残念でした。 祖国から下されるミッションをこなしつつも、旅行業者や家庭人としての体裁を保たねばならない。しかも身近にいる従業員や子供達からも不信感を抱かせないような振る舞いをしなければならない。ゆったりとした前シーズンでは視聴者にさほどの違和感を抱かせなかったものの、矢継ぎ早な展開が多い上に、フィリップがターゲットと偽装結婚をして2つの家庭を行き来するという設定までが加わった本シーズンにおいてはさすがに無理が生じており、「この人たち、いつ寝てるんだ」状態になっています。娯楽性を追いかけすぎるあまり、リアリティが犠牲になっているのです。ご近所さんがFBI捜査官という設定に至ってはほぼ忘れ去られており、フィリップ・エリザベス夫妻の物語とスタン捜査官の物語が完全に別個のものとなっている点も残念でした。 本シリーズの重要なアイデンティティが失われつつあるシーズン2でしたが、シーズン3ではどの程度建て直しができるのかに注目です。
[テレビ(吹替)] 6点(2016-12-15 17:19:17)
26.  ジ・アメリカンズ 《ネタバレ》 
スパイの日常生活を描くという点で『トゥルーライズ』に近いコンセプトの作品であり、私はてっきり本作をブラックコメディだと思っていたのですが、これが極めてシリアスなドラマとして作られていました。以下の通り劇中には笑うしかないような状況が多数登場するのですが、安易に笑いへ逃げることなく真剣なドラマとして作品を構築した辺りに、本作のクリエイター達の志とスキルの高さを感じました。 スパイの手口は基本、色仕掛け。仕掛ける方も仕掛ける方なら、落とされる方も「脇が甘すぎるんちゃいまっか」と言いたくなるレベルなのですが、新聞沙汰になった現実の機密漏洩事件も色仕掛けにハマった結果のものが多く、人間が一番抗えないのは性欲だということがよく分かります。本作の主人公達も当然色仕掛けを基本戦略としているのですが、ジェームズ・ボンドのように相手が美女ということは現実にありえなくて、彼らはおじさん、ブス、ド変態を夜な夜な相手にして機密情報を聞き出しています。スパイの方々の努力には頭が下がります。 ただし、偽装結婚とは言え20年も生活を共にすればお互いへの愛着が生じ始めている中でパートナーがターゲットとの関係を持っているのだから、時に心穏やかではいられなくなります。本作はホームドラマでもあり、偽装結婚が次第に本当の愛情に変わろうとするが、特殊な職務の中でまた現実に引き戻されるという綱渡りの夫婦関係が面白さのひとつとなっています。もうひとつ面白いのが、そのような特殊状況に対する男女間の反応の違いを描いていることで、奥さんの方は旦那がよその女と関係を結んでも「仕事だから頑張って」と割り切っているのに対して、旦那の方は自分の奥さんがよその男に抱かれることに抵抗を示しており、ドSのヘンタイ野郎に傷つけられた日には、任務そっちのけで「そいつをぶっ殺してやる」と激高します。メンタルにおける適応能力は男性よりも女性の方が上ということが如実に描かれているのです。 そんな彼らのお隣には、FBI防諜部員とその家族が引っ越してきます。まさに彼ら潜入工作員を追っている人間がお隣さんになり、さらには家族ぐるみの付き合いを始めるという非現実的な設定を作品に持ち込んでいるのですが、これをお笑いにすることなく視聴者から自然に受け入れられる形にまとめた辺りに、本作の出来の良さがあります。同時に、現実に存在した潜入工作員達がいかにうまくアメリカ社会に溶け込んでいたかをこの辺りの展開で象徴的に見せており、なかなかうまいものだと感心しました。 ただし、このFBI防諜部員単独のドラマについては多少説得力に欠ける部分があることが残念でした。彼は職務に没頭しすぎる余り家族との関係が悪くなり、他方で二重スパイとして抱き込んだKGB職員の女と親しくなり、最後には男女の関係を結んでしまうのですが、この展開はさすがに飛躍しすぎでした。色仕掛けに引っかかるのは素人であり、しかも相手をスパイと知らずに引っかかるのに対して、彼は潜入捜査の経験もあるバリバリのプロであり、しかも相手の女はKGB職員であることが事前に分かっているのだから、そんな相手に心を許して恋に落ちるなんてことはリアリティに欠けます。
[テレビ(吹替)] 7点(2016-09-26 18:15:00)
27.  ブラッドライン
真綿で首を絞められるように緩やかに崩壊していくことがこのドラマの味なんですよねぇなんてシーズン1ではレビューしましたが、続くシーズン2は一転して怒涛の展開を迎えます。そこいらの海外ドラマを凌ぐほどの勢いでサスペンスとドラマが疾走し、シーズン1が序章に過ぎなかったと言えるほどの急加速を見せるのです。その圧倒的な勢いと熱量には圧倒されたし、二転三転しつつも破綻を来さない緻密な作りには感心させられました。 前シーズンのクライマックスにてジャックはダニーを殺害したものの、直後にジャックが心臓発作を起こしたことから偽装工作が不完全なものとなっており、そこにはいくつもの綻びが残っていました。他方、地元の名士であるがゆえにレイバーン家には様々な思惑を持つ者が出入りしており、そうした者たちに思わぬことからダニー殺害に係る糸口を掴まれそうになります。そうして問題が起こる度にレイバーン3兄弟は付け焼刃での対応を迫られるのですが、良かれと思ってとった行動が余計に穴を大きくしたり、かと思えば、ある人物による要らん行動が巡り巡って良い結果をもたらしたりと、展開がまるで読めないため見ているこちらまでが冷や冷やさせられます。 そんなギリギリの状況下でレイバーン3兄弟は精神的に疲弊していくのですが、芸達者揃いのキャスティングゆえにそのやつれっぷりも見事に表現されています。「あの時、お前が〇〇したのが悪いんだろ!」という血縁者同士の罵り合いは極めてリアルで、関係の悪い家庭内でしばしば見られる光景がまんま切り取られています。”Bloodline”というタイトルは、本作でも健在なのです。ただし、この3兄弟がいるのは殺人や麻薬取引が発覚するか否かという非常事態の真っただ中。親の介護や遺産で揉めることが関の山と言える普通の家庭とはまったく状況が違うのです。どれだけムカついても、自分は巻き込まれただけだと思っていても、運命共同体である3人は支え合わねば全員で倒れることとなるのですが、極度の疲労と緊張感の中で正常な判断能力を失っていき、最終的にはバラバラに分解して崩壊を待つしかないという状況にまで追い込まれます。この3人には、限定ジャンケン開催中に内輪揉めを起こす仲間に向かってカイジが言った「一頭のライオンが三つに分かれて生きてけるかって言ってんだ!」というセリフを送りたくなりました。 また、前シーズンでは「どうやらマイアミで事業に失敗したらしい」ということしか語られなかったダニーの過去が明らかにされ、それに伴いダニーの元嫁(『オブリビオン』でトム・クルーズの相手役を務めたアンドレア・ライズブローが脱ぎまくってます!)とその彼氏(ジョン・レグイザモが脱ぎまくってます!って、こちらは有難くないか)、そしてダニーの息子・ノーランが新キャラとして登場します。特にスポットを当てられるのがノーランなのですが、彼は父・ダニー同様、家族からまともな愛情を受けられなかったことで道を踏み外す一歩手前にいます。サスペンス面でもドラマ面でも彼が本シーズン最大のキーパーソンであり、彼を救うのか、ダニー同様に放り出してしまうのかという選択がレイバーン家の命運を左右することとなります。彼のドラマは大変に見応えがあったし、回想場面においてそもそもダニーが里帰りをするきっかけを作ったのがノーランだったことも明らかにされ(ダニーが里帰りしなければ、レイバーン家は表面上は幸福なままでいられた)、本作は複雑な因果に包まれたドラマであることがさらに強調されます。
[テレビ(吹替)] 8点(2016-07-11 13:03:05)
28.  ブラッドライン
Netflixにて鑑賞。 家業であるホテルの式典にあたり、トラブルメーカーらしい長男が久しぶりに実家に戻ってきた。この長男がせっかくの式典をぶち壊しにするのではないかという緊張感と、「こういう困った身内いるよなぁ」と多くの人が実感できる絶妙なレベルに調整された不快感、そして、その後の家族の破滅を匂わせる不気味なフラッシュフォワードと、大したことが起こるわけでもないのに、第一話はかなり引きの強いエピソードとなっています。このプロローグで、私は完全に心を掴まれました。 車寅次郎とゲイリー・オールドマンを合わせたような長男ダニーを演じるのは、『アニマル・キングダム』で見た目は普通だが性根が完全に腐りきったキ〇ガイを演じて全世界を震え上がらせたベン・メンデルソーン。メンデルソーンは本作でも怪物ぶりを披露しているのですが、同時に、ある不幸な事件によって人間性を歪められた被害者であるということや、家族との関係修復に彼なりに努力しているものの、当の家族にその思いを受け取ってもらえず挫折しているという多面性も見事に表現しており、その演技の幅の広さには驚かされます。名優揃いの本作においてメンデルソーンの知名度は劣っているものの、ドラマ内における存在感は出演者中でも突出しており、全13話を通じてほぼ彼の独壇場となっています。本作のファンだというスピルバーグは新作” Ready Player One”の主演にメンデルソーンを抜擢しましたが、その抜擢も当然と言えるほど、本作でのメンデルソーンの演技には鬼気迫るものがあります。 本編は、緩やかに崩壊へと向かうある家族の現在の物語を通して、彼らの現在を作り上げている過去の事件が薄皮を剥がすように明かされていきます。どれだけ憎み合っても離れることのできない家族という因縁が、真綿で首を絞めるように全員を不幸にしていくという何とも暗いドラマであり、刺激的な事件や意外性ある展開とは無縁の内容であるため通常の海外ドラマと比較するとテンポが遅いものの、脚本・演出・演技のすべてのレベルが高いため退屈はさせられません。
[テレビ(吹替)] 7点(2016-06-28 17:33:02)
29.  FARGO/ファーゴ 《ネタバレ》 
1996年にアカデミー脚本賞を受賞した名作『ファーゴ』とタイトルと舞台を同じくしているものの、映画版と交錯する設定を一点だけ持つ以外は年代も登場人物も別物であり、本作は続編でもリメイクでもありません。そのため、映画版を未見であっても本作の鑑賞にあたって特に問題はなく、名作の看板を借りながらも間口の広い作品となっています。 主人公は田舎町で保険セールスマンをやってるレスター・ナイガード。レスターは40歳になった今でも高校時代のイジメっこから侮辱と暴力を受け続け、しかもそれに対して何もやり返せないという、超絶気の弱い男です。ただし一定の自尊心は残っているのか、「あんな奴と揉めても仕方ないから好きにさせてんだよ」なんて言って自分自身を納得させています。そんなレスターですが、病院の待合室で出会った謎の男(正体は殺し屋ローン・マルヴォ)から「あんた、そこまでされて怒らないの?」と言われ、「そのイジメっこ、代わりに俺が殺してあげようか」と冗談なのか本気なのか分からない提案を受けます。そして数日後、イジメっこが本当に殺されてしまうので驚くのですが、この一件をきっかけにレスターは本能のままに生きるマルヴォに感化され、それまで抑え込んできた自我が一気に開放されてどんどんバイオレンントな方向へと突き進んでいきます。稼ぎが悪いだの、役立たずだのとさんざん自分をバカにしてきた奥さんを撲殺し、イジメっこの巨乳の奥さんを寝取り、イケメンで金持ちで美人の奥さんをもらってる自分の弟を犯罪者に仕立て上げようとします。まさにやりたい放題なのですが、視聴者はアウトローと化したレスターの姿からある種の爽快感を得られます。 平凡な中年がバイオレンスに目覚めてむかつく連中を片っ端からなぎ倒していく様は『ブレイキング・バッド』のウォルター・ホワイトに通じるし、ルールや常識に囚われず自由に生きる殺し屋マルヴォは『ハウス・オブ・カード』のフランク・アンダーウッドを彷彿とさせます。むかつく相手を容赦なくなぎ倒すことで視聴者をスカっとさせるという傾向が近年のヒットドラマに見られますが(日本で大ヒットした『半沢直樹』も同様)、本作はその傾向をきっちりと踏まえて作られているので面白くて当然なのです。 さらには、イジメっこは隣町のマフィアに関係した人物だったことから、その殺害を抗争と勘違いしたマフィアが殺し屋を送り込み、殺し屋vs殺し屋の血みどろの展開を迎えます。ボンクラ中年が覚醒する物語と、殺人マシーンが暴れ回る話という、僕らの大好きなものがふたつもぶちこまれた超贅沢な内容で、中盤以降はドラマからまったく目が離せなくなります。 また、コーエン兄弟は脚本や演出に直接関与していないものの、兄弟特有のブラックなユーモアは本作でも健在であり、上記の通りかなりハードな内容でありながら語り口には独特の間があって、とんでもないところで笑わせてきます。この辺りの空気感の作り方も絶妙であり、秀作が多い近年の海外ドラマの中でも、本作は頭ひとつ抜けた出来だと思います。
[DVD(吹替)] 9点(2016-05-25 00:33:03)
30.  ハウス・オブ・カード 野望の階段
最近のハリウッドは中国市場向けの超大作か低予算のドラマしか作られなくなり、大人の鑑賞に耐えて、かつ、それなりの娯楽性も確保された中規模予算の作品が壊滅状態になっています。その影響から、思うように作品を撮れなくなった映画界の人材がテレビドラマへ移動するという現象が起こっているのですが、そんな中でもとびきり豪華な布陣で製作されているのが本作です(ネット配信のみでテレビ放送されていない本作をテレビドラマと呼ぶべきかどうかは微妙なところですが)。 デヴィッド・フィンチャーとケヴィン・スペイシーが製作総指揮を務め、フィンチャー、ジェームズ・フォーリー、ジョエル・シュマッカーといったハリウッドの一流監督達が各話の演出を手掛けるという、史上最高とも言える人材により支えられているドラマなのです。これだけのメンツが揃えば視聴者側の期待も否応なしに高まるところだし、しかも本作は有料会員向けサービスの目玉コンテンツとして位置付けられていたこともあって「普通に面白い」程度では許してもらえない作品なのですが、本作にはそうして極限にまで高まった期待にきっちり応えるだけのクォリティが確保されているのが凄いところ。知的で面白く、そして深いのです。 主人公・フランク・アンダーウッドは剛腕で党をまとめあげる縁の下の力持ち的な役割を担ってきたという、イケイケ時代の小沢一郎みたいな政治家です。ギャレット・ウォーカーの大統領選に協力して見事ウォーカーを当選させたものの、協力の前提条件として約束されていたはずの閣僚ポジションが与えられなかったことから、ウォーカー大統領を失脚させるための策略を巡らせます。ただし、上司である大統領の首を直接取りに行くような危険な方法はとらず、表面上は忠実な部下として有能なところを見せながらも、こっそり裏で手を回してウォーカー肝いりの政策を潰したり、子飼いの議員を狙い撃ちにして破滅させたりといった陰湿な方法をとるのが面白いところです。そして、その過程をわかりやすくするために「ほら、バカが騙されたぞ」みたいな感じでフランクが第4の壁を越えて視聴者にホンネで話しかけてくるという演出が施されているのですが、ケヴィン・スペイシーの芸達者ぶりと相まって、これがまた面白いのです。 フランクはモラルをまったく持たない悪人なのですが、多くの視聴者は彼の非道に拍手喝采します。それは、フランクの戦いはまんま企業のヒエラルキーに当てはめて見ることが可能であり、ソリの合わない上司と自分を押し殺して付き合ったり、同期に先を越されたり、パっと出の若手からの突き上げを受けたり、社外から求められる責任に応えたりといった、世の中間管理職が抱えるストレスがこのドラマではまんま表現されているからです。ただし普通のサラリーマンと違うのは、自分の顔に泥を塗った相手をフランクは決して許さず、時間をかけてでも必ずやり返しにいくということ。しかも、自分の手は汚さないよう巧妙に小細工をしながら。そして、まんまと術中にはまって消えていくライバルに対して「騙されたお前が悪いんだ」と捨て台詞を吐く。こうした一連の過程が、このドラマに強烈なカタルシスを生んでいるのです。 また、モラルがないゆえに世の真理を突いた発言をフランクがすることも本作の見所となっており、実生活でも使いたくなる名セリフに溢れています。 ・権力の階段を上るゲームにルールはひとつだけ。狩るか狩られるかだ ・ライオンはシマウマを食べる前に許可なんて得ない ・権力者にノーと言うのは勇気がいる。だが敬意を勝ち取るには効果的な手だ ・正体を暴けば相手を言いなりにできる
[DVD(吹替)] 8点(2016-05-25 00:31:54)
31.  ベター・コール・ソウル
Netflixにて鑑賞。 『ブレイキング・バッド』の安易な便乗企画かと思っていたのですが、そこは天下のNetflixだけあってスピンオフでも一切手を抜かず、『ブレイキング・バッド』と同等のクォリティを維持しています。 一見するとインチキ臭い風貌でムダなおしゃべりが多く、何かにつけて「金、金」とうるさい印象はあるものの、ソウル・グッドマンは常に依頼人のために最善を尽くす男だったし、ウォルターやジェシーがどれだけ暴走してもまぁ何とかなってきたのは、彼がブレーンとして付いていたおかげだと言えます。本作に登場するのは弁護士になりたての頃のジミー・マッギル(ソウル・グッドマンの本名)ですが、当時のジミーは時系列的に後となる『ブレイキング・バッド』のソウル・グッドマンとは対照的に、弱者に味方する正義漢にして、筋が通れば無償での仕事も引き受ける熱血漢。本作では善良なジミー・マッギルが闇落ちしてソウル・グッドマンになるまでの物語が描かれます。 とにかく素晴らしいのがジミー・マッギルの人物像であり、前述の通りの正義漢ではあるものの、軽口を叩いたり、大きな目的のために小さな悪事を働いたりするため、正義の押し売りになっていないという点が絶妙でした。また、金が欲しいという本心は『ブレイキング・バッド』の頃と変わらないものの、本作のジミーは情に負けて損な仕事を引き受けてしまう人情家であり、頑張ってもなかなか報われない姿が笑いと哀愁を誘っています。ジミーを『ブレイキング・バッド』とはかけ離れた立ち位置に置きながらも、きちんと繋がった人物像としている点も素晴らしく、「ウォルターが変貌しすぎで、もはや別人格」との批判が一部にあった『ブレイキング・バッド』の反省はきちんと活かされているようです。 『ブレイキング・バッド』の良かった点も本作には活かされています。『ブレイキング・バッド』はキャラクター劇であり、息詰まる展開や、意外なドンデン返しという要素はあえて希薄にし、キャラクター達の物語をじっくり描くことで成功したドラマでしたが、本作も基本的には同様の路線を歩んでいます。ドラマの中心にあるものはあくまで人情劇であり、視聴者を煽るような急展開を入れていません。そのことが、本作に心地よいテンポと空気感をもたらしています。
[テレビ(吹替)] 8点(2016-05-24 09:08:19)
32.  ブレイキング・バッド 《ネタバレ》 
昔、『天国に行けないパパ』という映画がありまして、自分は末期がんだと勘違いした刑事が、家族に金を残すために殉職しようとするがなかなかうまくいかず、それどころか捨身であるがゆえに多くの手柄を挙げてしまうというコメディだったのですが、本作からはそれに近い印象を受けました。 主人公は小市民で戦闘能力は限りなく低いが、死への恐怖が薄いために度胸とハッタリを武器にマジのヤクザ相手に善戦し、数々の危機を乗り切ってしまうという痛快さ。また、ハードな現場に不慣れな者が、右往左往しながら事態への対応を手探りで考えていく姿の滑稽さ。こうしたものがしっかりと描かれており、笑ってハラハラさせる上質なエンターテイメントとして仕上がっています。特に、クレイジーエイト殺害に係る一連の展開は当シリーズの本質をよく表現したもので、ウォルターとジェシーはクレイジーエイトを捕えるもののその殺害には消極的で、本来は敵である彼を殺さないで済む理由を必死に探そうとする倒錯したやりとりが笑わせました。ウォルターとクレイジーエイトは一時的に打ち解けてほのぼのとさせるものの、ヤクザの世界はそれほど甘いものではなく、最終的にはクレイジーエイトを殺さざるをえなくなるという冷酷な着地点もよく考えられており、二人が片足突っ込んだのは修羅の道であることを視聴者に対して強烈に印象付けます。本作における人の死は軽いものではなく、それは生き残った者の心に確実に傷を残していきます。こうした倫理観も本作の味となっています。 また、本作はホームドラマでもあり、アメリカの医療制度の問題点や、終末医療のあり方を考えさせる社会派な一面もあります。さらには、組織論や意思決定論といった経営学的なモチーフがそれとなく登場することもあり、製作者の知見がたっぷりと込められた見応えあるドラマとなっています。他のアメリカドラマと比較するとビックリ仰天するような急展開はなく、勢いという点では見劣りするのですが、安易な視聴者サービスを排除したゆえの堅実な作りには好感が持てます。
[DVD(吹替)] 7点(2016-05-24 09:06:29)
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