3.《ネタバレ》 合衆国最初の銀行強盗であり列車強盗でもあるジェシー・ジェームズと、彼に憧れる若者ロバート・フォードの愛憎劇。派手なアクションはなく、渋めの人間ドラマに仕上がっている。冴えない青年暗殺者フォードは、ジョン・レノン殺害犯のチャールズ・ホイットマンを髣髴とさせる。
個人的には波長が合っていたのでそんなに気にならなかったけれど、この淡々とした語り口は冗長と批判されても仕方がないだろう。西部開拓時代の寒々とした空気が美しく表現されており、とくに列車の灯が暗闇を切り裂いて近づいてくる場面では、どんな傑作が始まるのかとわくわくした。
しかし脚本がちょっと、問題ありだった。ある部分では必要以上に丁寧に描写し、その割りに変なところを説明だけですませる。端的にいえば下手。なので別に複雑な話でもないのにすんなり入ってこない。主人公の心情を、それもクライマックスだというのに第三者のモノローグで説明してしまうのには、ちょっと呆れた。
それでも作品に見応えを与えているのは、素晴らしい俳優陣のおかげだろう。ブラッド・ピットは台詞のない場面でも表情と仕草だけでジェシー・ジェームズを創り上げている。アフレックの演技は冒頭ではちょっとわざとらしい気もしたけれど、ストーカー気質の青年の薄気味の悪さはよく出ていた。この映画のやたらと長い間がすべて成功しているとは思わないが、良いと思える場面では必ず役者が貢献している。
タイトルになっている暗殺の場面は痛ましい。恐怖と焦燥感に背中を押されるように引き金を引くボブ、人を疑うことに疲れ、半ば覚悟して背中を向けるジェシー・ジェームズ。英雄と称えられた男の最後を、寂しいくらいに人間らしく描いている(ただ、子どもを出すのはちょっぴりあざといと思った)。
欠点も目立つが、ブラッド・ピットに敬意を表してちょっと甘めの8点。 【no one】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-09-07 11:32:48) |