2.東京は中央区京橋(きょうばし)にある「東京国立近代美術館フィルムセンター」にて開催中の、溝口健二特集上映会にて鑑賞。
この特集上映においては、フィルムセンター所蔵の溝口作品を、なんと34作品も上映する。
溝口特集としては、まさに究極の数と質である。
今回は、その上映ラインナップの中でも特に貴重な作品の一つであろう『藤原義江のふるさと』を鑑賞した。
本作は、サイレントとトーキーが混ざったものであった。
トーキーだと思ったら、突然サイレントになったり、またトーキーに戻ったりする。
日活初のトーキー作品である本作は、そんな実験段階にあった作品なのであろう。
藤原義江という著名なオペラ歌手の、いわば伝記的作品である。
オペラ自体に造詣がないので、その辺からして入り込めず、しかも上に書いたような独特のセリフ回しや、“パート・トーキー”作品であることも手伝って、あまり楽しむことができなかった。
しかしながら、その後の溝口作品の基礎となるべくシーンやカメラワークも各所に見受けられ、特に、ダイナミックで溝口独特のカメラワークは、本作においても楽しむことができた。
それと当時の洋館の造りとかインテリアとか、映像的にも楽しめる箇所がいくつかあった。
フィルムセンターの上映環境は非常に素晴らしく、特にこういった古い日本映画の上映については、まさに最適の映画館だと思われる。
古典的な日本映画に常についてまわる“セリフの聴き取りにくさ”が極力緩和されており、恵比寿ガーデンシネマとは雲泥の差であった。