4.《ネタバレ》 どうしても「永遠の0」との比較が入ってしまいます。原作、スタッフ、キャスティングの骨格が酷似してますからね。
「永遠の0」はあの原作を見事な脚本でまとめ近年稀に見る感動の名作として私の心の中に刻まれた作品でした。その逸材が立ちはだかる中で期待とあの脚本を描き切れるのだろうかという思いがありました。
「永遠の0」は戦争というテーマに今までにない視点で挑んだ映画でした。今回の「海賊とよばれた男」はビジネスをテーマとした映画です。ビジネスや経営者などを題材として映画は邦画、洋画問わず沢山あります。最近見た映画では「スティーブ・ジョブズ」などとても心に残り本当に凄い人であり変人だったんだなぁということが伝わってくる映画でした。
この「海賊とよばれた男」は原作を読んでおりました。その中でこの映画に感じることはCDアルバム的に言うとベストアルバムやオムニバスアルバム的な感じを受けました。一つ一つが短編のドラマの集積という感じです。終わり方もいかにも日本らしいお涙頂戴的な終わり方でした。何を命題としてどう描きたかったのか一つの芯を感じずらい描き方ではなかったかと思う。
短編的に繋がっていくので唐突な部分が多々有る。「永遠の0」は一つの基軸がしっかりしているのでブレずにその積み重ねが最後の感動をさらに盛り上げた。
木田氏が出て来た時、原作を読んでない方と見に行ったのですがあの人ってなんであんなにお金出してくれるの?と鑑賞後質問されました。そりゃそ判らないよな・・・と思いました。
原作自体が結構なボリュームがあるのでこの映画も「青年期」「壮年期」「晩年期」的に3部構成ぐらいにしても十分楽しめるものではないだろうか。むしろその方が無理なくしっかり描けると思う。逆に言えばよくぞこの原作のボリュームをこの1作品にまとめたともいえなくもない。
この手の映画を描く時に邦画のクセというかお決まり的に家族愛や友情、人情的なものを無理に盛り込んでくるように感じます。それは人として共通の「情」なので盛り込めば単純に感動や涙を誘うと思いますが今回のこの作品では最後にそのようなシーンで締めくくってましたが私はなんか冷めてしまいました。映画の中で積み上げて来た集結がラストに来るべきではと感じるからです。鐵造は結局ユキに対して何か無念な思いを抱いたのかな?あそこに秘めた製作者の意図、セッセージをどう捉えるべきなのか・・・国岡氏はやはり木田氏の後ろ盾がなくてはあそこまで行かなかったとも思う。その辺のことがとてもさらっとしておりあまり重要視されていないのもチョット残念。また鐡造氏は晩年かなり社会貢献もしている。
このように人物像しては人材育成や組織のマネジメント、度胸や器量の大きさなどとてもスケールの大きい人物なのにラストがちょっと・・・です。
これが洋画に勝らない部分なのかな・・・こぢんまりした小義ではなく大義をもっと描ければ世界に羽ばたく映画にもなれると思う。