1.《ネタバレ》 各所批評サイトでの微妙な評価に観ようか観まいか迷っていたのですが、今日行ってきました。
単なる昭和30年代博覧会になっていたら、お安い人情物語になっていたら、なれ合いコントのつなぎ合わせになっていたら・・・様々な危惧を抱いていたのですが、全ては杞憂でした。
各登場人物のエピソードが前作を引き継ぎ、丁寧な脚本と構成で無理なく物語を紡いでるではないですか。
急遽続編の製作が決まり、時間もなかったはずなのに、種の巻き方、複線の張り方、その引き取り方、ラストへ向かう盛り上げも見事です。
確かに、ストーリーテリングはある種王道であり、既視感あるエピソードの積み重ね。安心感はあるけれど、奇をてらった斬新さは無いかも知れません。
しかしこの映画には他にはないパワーを感じます。邦画の水準を突き抜けたVFX、画面の隅々に神経の行き渡った美術、小道具大道具の配置、照明、音響、演じる俳優の輝き、それを纏め上げる演出の見事な采配からそれを感じるのです。
何よりも人間に対する限りない信頼と愛情が全編に溢れています。
そうするともう、重箱の隅突きはプロの批評家に任せておけばいい、この世界にどっぷりと浸り、彼らの生き様や気持ちの移ろいに一緒に笑い、涙したいと思ってしまうのです。
晴れて結ばれたあの3人は、鈴木オートの家族は、エンドロールが終わっても、確かに生き続けていると感じます。もしかしたら2007年の今も、同じ日本の空の下で成長した六子や淳之介がどこかで暮らしているかも知れない、そうであるなら幸せであって欲しいと願わずにはいられない、劇場からの帰り道、そんな気持ちにさせてくれる映画です。
本作はどの俳優陣も入魂の演技でしたが、特に小日向文世の存在感は素晴らしい。おそらく本作に最も貢献したキャラクターは、冷徹な会社社長川渕康成と、彼を演じた小日向文世であると思います。彼の存在が本作を単なるお涙人情物語に終わらせないスパイスになった。そのさじ加減も絶妙でした。
文句なしの10点を献上致します。