87.《ネタバレ》 英国の司法界史上最大の汚点とされるギルドフォード・パブ爆破事件と冤罪によって苦しめられた人々の姿を描いた作品。
刑務所と法廷劇が絡んだ作品といえばマーク・ロッコの「告発」もあるが、俺はこの作品の方が惹かれるものがあった。
爆破事故からはじまるこの物語は、1970年代の北アイルランドの騒動から幕を開ける。
定職にも付かず警察相手に挑発を繰り返す若者たち。
家族のために望んだ一時の天国、テロを疑われ一気に地獄へ。
IRA暫定派(アイルランド共和軍暫定派)は、イギリスにいまだ支配される北アイルランドを取り戻そうとテロを続ける。
標的な基本軍人だが、エスカレートするテロリズムは一般市民すら巻き込んでいく。
事件を何としても解決したい警察もまた、苛立ちや焦り、さらには事件を喰い止められない事によって世間の目が気になって気になってしょうがない。
焦りは冷静な判断を失わせ、狂気と化した警察は誤認逮捕が発覚しても隠蔽しようとする。
疑わしきは罰せよ・・・着せられた無実の罪。
世の中が腐れば、警察も腐る。その逆もしかりだ。
耳を引っ張るやつは凄い痛いんだよなあ。悲痛な表情が辛そうだ。
遂にはその家族にまで手をだし、マフィアのように「親を殺す」と脅迫までやってのける。
若者は「地獄に堕ちろ!」と哀しみと怒りをぶつけるが、届かない虚しさ。
やりもしない罪をでっちあげねばならない苦しみ、“妥協”が地獄から逃れる唯一の選択。だが、一度押された烙印は一生その人間を苦しめる。意思を貫くか、妥協するかは貴方しだいだ。
IRAのジョーの暴れ振りが凄まじい。火炎放射器まで作ってしまうのだから恐ろしい。そりゃ警察だってこんな奴いたらおかしくもなるわ。
彼らを救い出す騎兵隊は来なかったが、弁護士という名の救いの女神は彼らを見捨てなかった。
説得に次ぐ説得、迫る父の死期、父の息子や家族に対する祈り、「ゴッドファーザー」は父の死を暗示する、闘志が蘇る息子、法廷でまくしたてる迫力!
彼らはつい昨日の事のように過去を振り返るが、失われた時間と家族はけして戻ってこない。