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鉄腕麗人さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2598
性別 男性
ホームページ https://tkl21.com
年齢 43歳
メールアドレス tkl1121@gj8.so-net.ne.jp
自己紹介 「自分が好きな映画が、良い映画」だと思います。
映画の評価はあくまで主観的なもので、それ以上でもそれ以下でもないと思います。

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21.  サボタージュ(2014)
なんとも妙な映画だった。 どうやら撮影後に大幅なカット・編集を余儀なくされたようで、監督が想定していたストーリーテリングが出来なかったらしい。 ラストの顛末も大きく改変されたらしく、ストーリー的にはなんともちぐはぐで、サスペンスを主軸にしている以上、それが大きなマイナス要因になってしまっていることは否めない。 監督のデヴィッド・エアーにとっても、主演のアーノルド・シュワルツェネッガーにとっても、「不運」な映画になってしまっていることは間違いない。  ただし、だからと言ってこの映画、決して駄目な映画ではない。 手放しで「面白い!」と言える映画ではないけれど、随所に「面白味」はあり、「苦味」や「雑味」も含めて、特徴的な「味」は確実にある映画だと思える。 勿論、好き嫌いは大いにあるだろうけれど。  紛れも無い傑作になり得た可能性も大いに感じるからこそ、監督と主演俳優にとっては「不運」だったと思うのだ。  今作を語るにあたって特筆すべきは、結局のところ、アーノルド・シュワルツェネッガーだと思う。 往年の大アクションスターが、実人生での栄光と挫折を経て銀幕の世界に出戻ってきてはや数年。 復帰後の主演作品については、世間的に見ると賛否両論といったところのようだが、個人的には完全に“賛”に振れている。  当然ながら、アーノルド・シュワルツェネッガーにかつてのようなアクションスターとしての輝きは無い。風貌は完全に老いているし、若かりし頃の絶対的な無双感は消え去ってしまっている。  しかし、今のシュワルツネッガーには、それらの「喪失」を礎にした一俳優としての渋味が滲み出ている。 だから、映画自体の完成度の程度を度外視して、彼の存在性そのものに対してある種のエモーションを感じてしまう。 そして、その自らの現在の俳優としての在り方を的確に理解しているからこそ、復帰後のシュワルツネッガーの作品選びは、意外性がありつつも、決して間違ってはいないと思える。  今作の本来の結末は、もっと物語の性質に即したダークなものだったらしい。 主人公のキャラクター性とその到達点も、きっともっと限りなくブラックに近いグレーな色味を見せたに違いない。 それを演じきった“闇”にまみれたアーノルド・シュワルツェネッガーを観てみたかった。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-12-09 15:20:51)
22.  ザ・ロック
「お、やってる」と、BSやら動画配信サービスやらの番組表で見つけて、「あのシーンだけ観てみよう」と観始めて、結局最初から最後まで存分に楽しんで観てしまう映画。  それが、「ザ・ロック」。  “ブロックバスター映画”と呼ばれる作品は多々あれど、今作ほど“俳優の演技”を楽しむべきブロックバスター映画もない。 ゴテゴテのアクション超大作でありながらも、コテコテのアクションスターをキャスティングせず、“演技のできる”名優を揃えたことが、今作が傑作となった最たる所以であろう。 アクションスターには不運であったと思うが、今作の成功は、アクション大作に必ずしもアクションスターが必要ではないという定義を確立してしまったと言える。 事実、今作以降、アカデミー賞受賞クラスのトップ俳優たちがこぞってアクション大作に主演するようになった。 前年に「リービング・ラスベガス」でアカデミー賞を受賞したばかりのニコラス・ケイジを起用した製作者ジェリー・ブラッカイマーの判断は正しく、ある意味アクション映画史における“発明”だったと思う。  スターダムにのし上がったばかりのニコラス・ケイジを主人公に据え、ショーン・コネリー、エド・ハリスという押しも押されぬ名優を主人公と同格以上のキャラクターとして配したこの映画の“布陣”は、真の意味で豪華だ。  そして、観返すほどに際立ってくるのが、ショーン・コネリー扮する“伝説的元諜報員”のキャラクター性である。 「女王陛下の〜」という彼の台詞からも明らかだが、この役柄は間違いなく年老いた“ジェームズ・ボンド”に他ならない。 勿論、“公式”ではなく、製作陣の遊び心による裏設定に過ぎないだろうが、今作を「007」の後日談と捉えると、益々楽しい。  高揚感を煽る分かりやすいメインテーマにノリながら、ショーン・コネリーの渋味と、エド・ハリスの哀愁と、ニコラス・ケイジの変顔(褒めている)を楽しむべき、最高のアクション映画である。
[CS・衛星(字幕)] 10点(2015-11-12 20:14:10)
23.  ザ・イースト
「ミイラ取りがミイラになる」というあまりに有名なことわざ一つで済まそうとすればそれまでなのだが、映画のストーリーテリング自体はオーソドックスだったと思う。 ただ対象となる素材が、過剰なテロまがいの行為を展開する正体不明の環境保護集団であるという点は、極めて時事的で興味を引いたポイントだった。  そういう時事的な要素を用いれているだけに、描き出される現代社会の病理性はリアルで、実際世界中が注視しなければならない問題だったと思う。 主人公は、元FBIの民間警備会社調査員の女性で、前述のことわざの通りに、謎の集団の在り方にシンパシーを感じ次第にのめり込んでいく様は、スリリングであった。 決して盛りすぎることなく抑えた緊張感を持続させた演出も高水準だったとは思う。  ただし、だ。結局、最終的に得られた映画の印象は「軽薄」という一言に落ち着いてしまった。  この映画における最大の欠落は、主人公のバックグランドがあまりに描かれていないことだと思う。 展開されるストーリー上では、主人公の感情はしっかりと描かれているし、演じているブリット・マーリングの演技も良かったと思う。(彼女は今作の脚本も手がけているらしく、とても才能豊かな人なのだろう。)  しかしながら、この主人公がなぜこの「仕事」に執着するのか、そもそもなぜにFBIに入り、退職し、得体のしれない民間の警備会社に在籍しているのか。 ここまでに至った主人公の人生模様がまるで見えてこないことが、全編を通して彼女の言動の理由付けを曖昧にしてしまっていて、結果として映画全体において感情移入できない要因となってしまっている。  その他の環境保護集団の面々の人物描写もどこか浅はかだった。それぞれが自らの人生を賭して環境破壊に対しての過激な警鐘活動に取り組んでいるわけだが、彼らの行動原理についても語られ方が浅く、そこにあるべき悲壮感が伝わりきらなかった。  そして、最後の“オチ”の見せ方があまりに粗末過ぎる。  「だいたい分かるでしょ?」と言いたいのだろうけれど、一介の調査員の一人に過ぎない彼女があの後どうやって巨悪を陥れていったのか、あまりに説明不足で腑に落ちない。  このところ益々“不気味”な存在感を高めているエレン・ペイジをもう少し有益に使うべきだったとも思う。あの段階でのフレームアウトは少々勿体無い。  非常に興味深い作品だっただけに、根本的な部分での欠落があまりに勿体無く、映画としての価値を大いに下げてしまっている。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2015-05-24 17:43:22)(良:1票)
24.  猿の惑星:新世紀(ライジング)
「まるっきり人間の歴史を繰り返しているみたい」 と、「ドラえもん のび太と鉄人兵団」でしずちゃんが言った台詞を思い出す。 「NO!」という一言から目覚め、人間の支配から独立し、“理想郷”を目指したはずのエイプたちが迎えた“夜明け”の意味が切なく、胸が痛くなった。  SF映画史上屈指の傑作である「猿の惑星」のリブートシリーズ第2弾。 前作「創世記(ジェネシス)」は、とても完成度の高い映画ではあったけれど、個人的には物足りなかった。“なんだか「猿の惑星」っぽくない”と感じてしまい、映画世界に没頭することが出来なかった。 オリジナルシリーズの大ファンなので、かの名作が携えていたSF映画的な驚きの要素が、「創世記」においてはあまり感じられなかったことが、不満足の大きな要因だったと思う。 ただ、リブート作の第一弾として前作の在り方は間違っていなかったとは思う。  そんな個人的な経緯を経た上でのこの第二弾「新世紀(ライジング)」であるが……、成る程、前作を踏まえ、“良い続編”として仕上がっていると思う。  やはり、冒頭に記した印象に尽きる。 愚かな人間の支配から脱却し、偉大なリーダーのもとで理想郷を築いたかに思えたエイプたちが辿る道筋が、悲しい。 決して越えてはならなかった一線を踏み越え、理想郷を去るしかなくなったシーザーとエイプたち。 進化による夜明けは、必ずしもいつも希望に溢れているわけではないという事実が容赦なく描きつけられている。  眩い朝焼けを受けて「覚悟」を固めるエイプ。一方、僅かに残された人間は暗闇の中へ消えていく。 次回作では、1968年のオリジナル第一作に繋がるストーリーが描かれるらしい。 果たして、彼らの「未来」はどこに、どうやって繋がっていくのか。
[DVD(字幕)] 7点(2015-03-04 23:41:45)
25.  ザ・ヤクザ(1974)
2014年11月10日。日本映画史上最高の大巨星墜つ。 映画俳優高倉健の死に対し、喪失感は大きすぎる。ただ、彼が遺した205本の映画の殆どを、僕はまだ観られていない。 まだまだ高倉健の映画を観られることを、映画ファンとして幸福に思いたい。  高倉健のアメリカ映画出演作といえば、リドリー・スコット監督の「ブラック・レイン」の印象が強くその筆頭となりがちだが、それよりも15年も前に出演した今作のインパクトも中々のものだった。 「ザ・ヤクザ」というタイトルから、米国人が日本のヤクザ世界をモチーフに適当に作った“トンデモ映画”なんだろうと高を括っていたが、その認識は全くの間違いだったと言っていい。  確かに、日本人として少々呆気にとられる描写は多々ある。しかし、それらは製作者陣が決して適当に作っているものではなかったと思う。 日本の文化、その中でも取り分け“任侠映画”という文化に対しての多大な“憧れ”と“尊敬”の念が、全編に渡って匂い立つように強く伝わってくる。(待田京介の起用とか、分かりすぎている!)  結果的に映し出されていたものは、紛れも無い米国産の「仁侠映画」だった。  ラスト、高倉健演じる時代遅れの侠客が、仁義を貫くために“陰腹”を切ろうとする描写に驚いた。まさかアメリカ映画でそんな描写が観られるとは。 他にも“指詰め”に対する執拗な掘り下げなど、日本人でも少々引いてしまうある種マニアックな描写が続く。 それらを指して、リアリティがない等と言うことは、あまりにお門違いだ。 実際にそれが妄想であっても、ファンタジーであっても、それが欧米人が憧れ追求してくれた「仁侠映画」であれば、尊重されるべきだ。  描写が多少おかしかろうが、「仁侠映画」と「高倉健」、かつて日本中が愛した文化を、同様に愛しリスペクトしてくれているこの作品を、この国の映画ファンとして否定できるはずがない。   米国映画だろうとなんだろうと、あくまで「高倉健」のままで存在する俳優の立ち振舞に惚れ惚れする。 今でこそ、世界で活躍する日本人俳優は多いけれど、スター俳優としての存在感そのままで通用した俳優は、やはりこの人しかいない。 高倉健という俳優が、この国に存在したということを、改めて誇りに思う。
[DVD(字幕)] 7点(2014-11-27 23:03:35)
26.  THE ICEMAN 氷の処刑人
実在した“殺し屋”を描いた映画であることは聞いていたが、想像よりもずっと重く、冷ややかな映画だった。 組織の殺し屋として生きた男を主人公にしたハードボイルド映画を想像していたけれど、映し出されたものは、呪われた「運命」と、己が密かに育んできた「狂気」に翻弄された一人の男の悲し過ぎる「慚愧」そのものだった。タイトルから受ける印象を遥かに凌駕する“冷たい”映画世界に打ちのめされた。  主人公が辿った人生とその末路は、組織に利用されいいように使われた故に見えるが、実際はそうではない。 組織の歯車に組み込まれたことは、ただのきっかけに過ぎない。 元来、この男が培ってきた内に秘めた「狂気」そのものが、すべての顛末を引き起こしたと言える。 そして、それを誰よりも理解しているのは、他の誰でもなくこの男自身であり、悲しい。  己の運命を呪い、己の狂気を呪い、それでも彼が生き続けられたのは、紛れもなく愛する家族があったから。 もし愛する人と出会うことなどなく、家族など端から存在しなければ、この男はもっと分かりやすく冷淡な“殺人者”として短い人生を全う出来たのかもしれない。  ただ運命はそれを許さず、“愛する者の悲しみ”という彼にとっての「最悪」を与えることによって、この男の“業”を際立たせた。 その「最悪」を何とか避けようともがき苦しむ終盤の主人公の姿は、あまりに悲愴感に溢れている。  それでも、この映画で描きつけられる「業苦」は、主人公にとって必要なものだったと思える。   何を置いても主演のマイケル・シャノンが素晴らしい。 殆ど出演作は観たことはなかったが、昨年の「マン・オブ・スティール」でのゾッド将軍役は記憶に新しいところ。 あまりに印象的な風貌は一度見たら忘れられないが、今作では、その風貌と体躯を存分に生かして、一目で異質感溢れる主人公を見事に演じ切っている。  そんな主人公の最愛の妻を演じるのはウィノナ・ライダー。 このところ時に驚くくらいの小さな役での出演が続いていたが、一時のスキャンダルに塗れた低迷期を抜け、女優としての円熟味を見せてくれていることは、中学生時代に自室にポスターを貼っていた長年のファンとしては嬉しい限りだ。   副題を含めた微妙なタイトルが、何となくB級感を醸し出しているが、良質な掘り出し物だと思う。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-10-19 09:11:43)(良:1票)
27.  サイド・エフェクト
「セックスと嘘とビデオテープ(1989)」で鮮烈なデビューを果たし、そのままハリウッドの頂点まで駆け上がった俊英スティーヴン・ソダーバーグ。 群雄割拠のハリウッドの中でも一際その天才ぶりを発揮し続けてきた映画監督の“一応の”「引退作品」という名目の今作は、集大成と呼ぶに相応しい作品精度の高さを感じると同時に、デビュー作との不思議なリンクも感じる映画に仕上がっている。  「サイド・エフェクト」という名のこの映画は、現代人の生活の中ではもはや切り離すことが出来ない「薬」にまつわる“あらゆる意味”での「サイド・エフェクト=副作用」を浮き彫りにする。 「薬」とそれに伴う「副作用」をスケープゴートにして描き出されるものは、現代社会そのものの病理性と、そこに救う人々の屈折した精神だった。  映画の序盤は、映し出される映画の世界観がなんだか薄ぼんやりとしている印象を受ける。 一体に何を主軸に描こうとしているのか掴みきれず、そのフォーカスの合わない感じに、居心地の悪さを覚えた。 しかし、それがある展開に伴い突如として転じる。みるみるフォーカスが合っていき、核心にピントが合っていく。   「偽り」を嫌う人は多い。何も偽ることなく生きていけるのであれば、それにこしたことはない。ただし、そういうわけにもいかないのが人生というもの。 自覚・無自覚はあるにせよ、誰だって、多かれ少なかれ何かを偽って生きているのではないかと思う。 もはや現代社会においては、それらは一方的に否定することすら不可能だ。 それこそ、常にセルフカウンセリングをして、理想と現実に対して折り合いをつけていくしかないのだろう。  そういう、この世界の“日常”に蔓延する思惑と疑心、野心と欲望、その諸々の病理渦巻く上質なサスペンスだと思う。   キーパーソンを演じるキャサリン・ゼタ=ジョーンズの美貌と艶が最高。 ルーニー・マーラの悪女ぶりも恐ろしい。 彼女たちに人生を揺さぶられまくるジュード・ロウとチャニング・テイタムに痛く同情してしまうと共に、男など本当に無力だなと思えてならなかった。   スティーヴン・ソダーバーグの卓越した映画術に感嘆した。この映画監督の才能を再認識し、その映画世界に陶酔した。 これが最後?信じないけどね。 
[DVD(字幕)] 8点(2014-03-24 23:32:28)
28.  ザ・マスター
ホアキン・フェニックスの「風貌」が全部すごい。 眉間の深い皺、深く窪んだ目、背中の曲がり具合、腰に手を当てる独特の姿勢、主演俳優の完璧な“役作り”そのものが、この映画のハイライトであることは間違いない。 映画とは「人間」を描くものであり、時には、そこに息づく人間の姿そのものが、ストーリーを凌駕して脳裏に焼き付く。この映画は、そういうタイプの作品だったと思う。  「映画」として面白かったかというと、必ずしもそうとは言い難い。想像以上に分かりにくく、腑に落ちない要素が多い作品だったと言える。 主として描かれるのは、トラウマを抱えた帰還兵である主人公と、彼が師事した新興宗教の教祖、この二人の人間模様である。 この二人をはじめとして登場人物は限られており、極めて限定的な人間関係を描いているにも関わらず、主人公らの言動の真意が非常に汲みづらかった。  ふいに出会った二人が明確な理由なく惹かれ合っていく最初の船室での対峙シーンには、見応えと説得力があった。 ホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマンという、ハリウッドでも指折りの巧い俳優同士の抜群の演技力を堪能できるシーンだったと思う。  ただし、そこから繰り広げられるこの二人の男の衝突と絆の様には、意思が読み取れない部分が多々あり、一転して説得力に欠けて見えた。 己の理解力の無さも勿論あるのだろうけれど、やはり脚本が脆弱性も多分にあると思わざるを得ない。  俳優らの演技は終始素晴らしいし、卓越したカメラワークによって映し出されたシーンはどれも心に染み入ってくる。 ポール・トーマス・アンダーソンの映画を観るのはこれでまだ3作目だが、1970年生まれのこの監督が、「巨匠」と呼ばれ始めるのにもはやそう時間はかからないことは明らかだろう。  だからこそ、今作についても、脚本にもうほんの少しの訴求力があったなら、きっと「傑作」になったに違いないと思える。惜しい。  ただ、この映画のホアキン・フェニックスはきっぱり凄い。それだけは何度でも言いたくなる。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2013-12-18 22:47:08)
29.  ザ・バンク -堕ちた巨像- 《ネタバレ》 
ファーストカットのアップから始まり、終始、主演俳優クライヴ・オーエンの濃ゆい顔面が印象強い映画だった。 特に好きでも嫌いでもない俳優だけれど、改めて振り返ってみると、結構印象強い映画に多数出演しており、決して派手さはないけれど存在感のある俳優だと思う。  そのクライヴ・オーエン主演で、相手役は、これまた地味だけれど確固たる存在感を放ち続けるスター女優のナオミ・ワッツ。 この二人が組むに相応しく、映画は地味で堅実で骨太な世界観を構築している。  世界的な大銀行における巨悪と陰謀を、主人公らが単身対峙し、暴こうとするストーリー展開は、この手の映画ではよくあるプロットではある。 しかし、前述の主演俳優らの堅実な存在感と、ドイツ人監督のトム・ティクヴァの構成力が冴え、独特の緊迫感と映画的な美しさに溢れた見応えのある作品に仕上がっていると思う。 観る者を引き込む多彩なカメラワークは流石で、息を殺しての尾行シーンから突如として激しい銃撃戦に展開させる流れなどは白眉の出来映えだった。  映画のラストは、再び主演俳優の表情を画面いっぱいに映し出して終わる。 ファーストカットのそれと異なり、巨悪を追い詰めはしたが、結局何も変えられなかった主人公の表情は虚無感に溢れている。 カタルシスには程遠いラストだったが、この映画の顛末としてはとても相応しい幕引きだったと思う。  概ね良い仕上がりの映画なのだが、各キャラクターの造形には一抹の消化不良感が残る。 主人公をはじめとして、それぞれのキャラクターへの踏み込みが弱いので、今ひとつ感情移入できない部分もあった。 敵役関連のキャラクターも良い風味は出していたのだが、味わい深いところまで造形が及んでいたとは言い難く、そういう部分がラストの呆気なさに繋がってしまったとも言える。
[インターネット(字幕)] 6点(2013-09-07 16:14:59)
30.  ザ・レイド
「痛ッッッ!!」 と、思わず鑑賞者に言わせる回数は、アクション映画における重要な評価の指針になり得る。 唯一無二の目的として、相手を“殺す”ために殴り、蹴り、刺し、撃ちまくるこの映画のアクション性は、ひたすらに“痛い”。 ほぼ全編通して映し出されるその鮮烈なアクションとそれに付随する痛々しさは、紛れもないこの映画のオリジナリティであり、世界が熱狂したことも頷ける。  麻薬王が支配する30階建ての集合住宅に20人のスワット部隊が乗り込み、死屍累々の激闘を延々と繰り広げる。 まるでストーリーが無いように見えるが、実はそうではない。この映画の場合、見せたいアクションを突き詰めた結果、ストーリーが極限まで削ぎ落とされ、アクションそのものがストーリーと化しているのだと思える。  ひたすらに延々とアクションシーンが繰り広げられるため、いくらそれが鮮烈だと言っても、それなりのアクション映画ファンでなければだれてしまうことは否めない。 ただ、「それの何が悪い?」とこの映画は堂々と開き直っている。  インドネシアの映画産業がどれほど栄えているかは知らないが、決して潤沢な資金があったわけではないだろう。 しかし、そんな中でも、自分たちが世界に誇りたい格闘を世界に通用する映画の中で表現したいという強い思いが、今作には溢れている。 その意識の強さこそが、もっともエキサイティングなものだと思う。  こいつらこそまさに誇り高きエクスペンダブルズ(消耗品軍団)だ。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2013-02-06 00:09:45)(良:1票)
31.  サイダーハウス・ルール
ラッセ・ハルストレム作品は例外なくそのテーマ性の奥深さにいつも感服させられる。一見感動作に見える今作も、そのテーマは非常に痛烈で重厚なものだ。映画の真理だけを見ればとても生々しくなるところを、非常に上質なオブラートに包み上げ映画として美しく完成させる。その手腕にこの監督は優れ、結果として秀逸作を量産している。
[ビデオ(字幕)] 9点(2013-01-13 21:47:11)
32.  ザ・レッジ -12時の死刑台-
何よりもまず言いたいのは、「リヴ・タイラーがいい」ということ。彼女のファンならば、そりゃあ必ず観るべきだろうし、必ずしも彼女のファンでなくても気になる存在感を見せてくれるだろうし、三十代半ばにさしかかったこの女優の雰囲気に対して、思わず「エロい!」と言わずにはいられなくなることは間違いない。 はっきり言って、そういう要素だけでこの映画に“価値”はある。 そのリヴ・タイラー演じる人妻の滲み出る“エロさ”こそが、ある意味この映画の裏テーマでもあるのだ  決して完成度の高い映画ではないということは否めないが、どういうスタンスでこの映画を見始めるかによって、観賞後の満足度は大いに変動するだろうと思う。 不幸にも日本版のトレーラーやイントロダクションを鵜呑みにしてしまって、今風のソリッドシチュエーション的なサスペンスだと思っていると、大いに肩透かしを食うだろう。 僕は幸運にも観賞後にトレーラーを観たので良かったが、明らかに映画の内容を無視し、部分的には改ざんすら見られるトレーラーの内容は噴飯ものだった。 日本版のイントロダクションには、「この4人のうち死ぬのは1人」などと阿呆かと思わせるキャッチコピーを掲げたりしてしまっているが、そもそもこの映画はそういうタイプのものではない。  この映画がテーマとするものは個々人における「信条」との関係性であり、登場自分のそれぞれが「信じるもの」に対して、ある者は積極的に、ある者は強制的に対峙させられる様を描いた物語であると思う。 それを少々サスペンスじみたストーリー展開で彩っているに過ぎない。 登場人物たちが、それぞれ経てきた人生を礎にして、進むべき道を決断させられる様は興味深く、部分的には胸に迫るものもあった。  ただし、先述の通りだからと言ってこの映画の完成度が高いというわけではない。 最終的に振り返ってみれば、結局何だったんだという程度のお話で、設定や展開があまりに腑に落ちない部分も多い。 4人の主要人物が登場するが、それぞれが結構苦いトラウマを抱えているわりには、どうも人間が薄っぺらく見える。ドラマ性を深める要素は多分にあるのに、今ひとつ感情移入が伴わないのは勿体ない。  ともあれ、リヴ・タイラーの貞淑さの奥から徐々に滲み出てくる“淫靡さ”を受け、主人公たち同様に恋狂うことを楽しむべき映画だと思う。
[DVD(字幕)] 6点(2012-12-01 22:05:25)(良:1票)
33.  SOMEWHERE
父親を起こすエル・ファニングの愛らしさ。 ヘリコプターの爆音で伝わり切らない父親の謝罪。 痛いくらいに青く美しい空。 幸福な時間とそれに伴う虚無感。  想定外にストーリーに起伏がなく、映画スターだが自堕落な生活を送る父親と別れて暮らしている娘との束の間の時間の共有をただただ切り取っただけの映画だった。 両者の関係性に劇的なドラマがあるわけでもなければ、何が起こるわけでもなく映画は終わる。  絶対に退屈な映画であることは間違いないのに、それを忘れさせ、不思議な心地よさの中で愛おしい時間を見つめていた。   ソフィア・コッポラの真骨頂という触れ込みは間違っていない。 こういう何気ない描写を何気ないまま映し出し、そこに言葉にならない情感を生むことにこの女流監督は本当に長けている。 プロットとしては、同監督作の「ロスト・イン・トランスレーション」にとてもよく似ている。映画の美しさにおいては負けずとも劣らない独特の秀麗さを見せてくれている。  ただしかし、「ロスト・イン~」が“傑作”と疑わなかったのに対して、今作は絶対的な物足りなさは感じる。 それが主演俳優の差か、微妙なシナリオ構成の差か、はっきりとは分からないが、映画としての美しさは溢れているものの、“面白味”に欠けてしまっていることは間違いない。  それでも、冒頭に記したようなとても印象深いシーンが幾つかあるだけで、良い映画だとは思う。
[DVD(字幕)] 7点(2011-12-27 17:55:33)
34.  猿の惑星:創世記(ジェネシス)
面白い映画だったとは思う。ただその面白さはすべてにおいて「想定内」だった。 「猿の惑星」というSF映画が好きだからこそ、自分の"想定”を少しも超えてくれなかったことが、最終的な不満足に繋がったように思う。  詰まるところ、この稀代のSF映画を題材にした最新作を迎えるにあたり、個人的に最も欲したものは“驚き”だった。 それは何も1968年製作の第一作「猿の惑星」で、チャールトン・ヘストンが号叫した"あのラストシーン”を超えるものを見せろという無理難題を言いたいのではない。 多少強引でも良いので、「SF映画」の名の下において観客の想像を覆す試みに挑んでほしかったということだ。  おそらく、この最新作に対する是非は、第一作目の「猿の惑星」に対してのスタンスではなく、その後に作られたシリーズ作に対するスタンスによって大いに左右されると思う。  旧シリーズの第一作目しか観ていなかったり、第二作目以降に対しては完全な酷評しか覚えなかった人たちにとっては、今作は往年のSF映画の傑作の「起源」を瑞々しく描いた快作として映るのだろう。  しかし、第一作目はもちろん大傑作として認めつつ、その後のシリーズ4作品も優れたSF映画シリーズとして愛着を持ってしまった者にとっては、今作はSF映画というよりも捻りの乏しいアニマル映画に映ってしまったと思う。 僕はもちろん後者のスタンスで、この映画を観終えてしまった。  冒頭に記したように、決して面白くない映画ではないと思う。 ただ、ストーリー展開自体に、オリジナル作品に垣間見えるシニカルさが無く真っ当過ぎた。 そのことが、結局のところ人間側に対しても猿側に対しても、感情移入も批判もし辛くしてしまっている。 結果、期待したラストシーンが酷く中途半端に見えて仕方がなかった。
[映画館(字幕)] 6点(2011-10-12 00:10:49)
35.  最後の猿の惑星
「猿の惑星」シリーズ最終作。未来人の猿夫婦の一粒種“シーザー”が、前作「征服」で猿の王として立ち上がった後の世界の顛末を描いている。  前作を観た時から薄々感じていたことではあったが、この映画シリーズの世界観にはどこかで見覚えのある印象を覚えた。 映画史に残る大傑作である「猿の惑星」の大ヒットを受けて派生したシリーズであり、続編各作品に対する評価はどれもあまり高くはない。 でも、個人的には、確固たるSFの概念を貫いた優れた映画シリーズとして展開していると思えてならなかった。  その要因が、どこかで触れたことのある既視感の存在に他ならないと思う。  それは、手塚治虫の「火の鳥」である。  生きとし生けるものの「生命」そのもののエネルギーを礎にして描かれる物語「火の鳥」は、“漫画の神様”手塚治虫のライフワークであり、崇高なる大傑作である。 その物語の根底に存在する「精神」と、時空を超えて繰り返される生命体の「業」を、この「猿の惑星」という映画シリーズにも感じたのだ。  「生きたい」という総ての生命に共通する意識。そこから生まれるあらゆる種族の営みの強さと儚さ。 掲げた“理想”に反して繰り返される愚かな歴史は、総ての生命体にとっての永遠のテーマだと思う。  人間の愚かさに辟易して「征服」を始めた猿たち。しかし、繁栄することにより皮肉にも人間社会と同じ道程を繰り返しそうになることの葛藤。 このシリーズ最終作の中では、そういった“人間”・“猿”というカテゴライズを超越した哲学性をメッセージ性豊かに伝えてくる。   「未来」は、並行して並ぶ何本もの道路の先にあるものだとこの映画では表現される。 地球が破壊された未来から送られてきた主人公は、「未来を変えたい」と映画の最後で志す。 果たして彼が歩んでいく「未来」は、第一作目でチャールトン・ヘストンが不時着した“惑星”に直結してしまうのか、それともそうならないのか。 いろいろな思惑を観る者に与える秀でたシリーズ最終作だったと思う。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2011-10-01 13:11:42)(良:2票)
36.  猿の惑星・征服
映画史に残る伝説のSF映画「猿の惑星」から端を発したシリーズ第4作。 他の多くのシリーズ化された映画と同様に、第一作目があまりにも大傑作であるが故に、続編以降の作品は尽く大衆から酷評されている。 しかし、個人的には、この「猿の惑星」シリーズの各作品を観てきて、必ずしも第2作以降が蛇足だとは思わない。 むしろ、SF的見地に立ってひとつの題材をたくみに膨らませてみせた良質なシリーズだと思える。  今作にしても、40年前の映画ならではのチープさやテンポの悪さはそりゃあ随所に見られるが、前作「新・猿の惑星」から転じたストーリーを確実に継承し、人間社会の愚かしさ、さらには生物の栄枯衰退の儚さまでもを表現した力強い作品だと思った。  人類が滅びた未来世界からやってきた猿の夫婦から生まれた子が、現代の猿たちの“王”となり、やがて破滅する世界の起源となる様には、膨大な時間を輪廻するかの如き壮大さと、だからこそ殊更に感じる生物の切なさを感じ、何とも言えない思いが巡った。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2011-09-27 23:59:18)
37.  殺人ゲームへの招待
先日、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の25周年イベントの映像で久しぶりに“ドク”役のクリストファー・ロイドの元気そうな姿を見た。 また彼の出演映画を観たい、と思っていたところ、今作のオープニングクレジットに彼の名前が出てきて、ささやかに興奮した。  映画は、謎の洋館に招待された何やら訳ありの数人が、繰り返される殺人に巻き込まれる様を舞台調のコメディータッチで描いていく。  「ホームアローン2」の接客係役が印象的だったティム・カリーが狂言回し的立ち振る舞い、濃ゆい顔でドタバタと走り回る。 全体的に“ドタバタ感”が強過ぎて、コメディー要素が強まる反面、ミステリーの趣は軽薄になっていった印象は否めない。  “Clue”というボードゲームを原案とする映画らしく、ストーリー自体に深みがあるとは言えず、ミステリーの真相にもそれほど衝撃は無い。  ただ、まったく違う3通りのエンディングを用意するなど、ボードゲームの映画化らしい趣向には面白味があり、コメディーとミステリーが融合した映画として“まとまり”は良かったと思う。  最終的な感想としては、映画がどうこうの以前に、原作のボードゲームの存在が気になった。 
[DVD(字幕)] 6点(2010-10-31 10:17:15)
38.  サロゲート
相変わらず精力的なブルース・ウィリス、その最新主演作の予告編を映画館で見たのは覚えているのだが、この映画がいつ上映開始されていつ終了したのか、まったく把握できていなかった。そうしたらいつの間にかレンタルショップに並んでいて、「え、もう出たの?」と思いつつ、早速レンタルしてサクッと観た。  なるほどね。という印象。 どうやら「アバター」と同時期に劇場公開されていたらしく、題材的にも完成度的にも、あのモンスター映画に踏み潰されてしまったのだろう。  近未来、複製アンドロイド、人類滅亡の危機……用意されているだろうプロットは容易に読めて、危機を救う主人公役がブルース・ウィリスとなれば、殊更にどういう映画かということは想像がつく。 ただそれでもこの手のSF映画は嫌いじゃないし、最近ブルース・ウィリスの娯楽映画俳優としての評価が個人的に急激に高まっているので、期待は程よく大きかったと言える。  近未来の街並を描く映像美は洗練されていたし、アンドロイド版のブルース・ウィリスが気持ち悪いくらいに若々しく、フサフサの金髪を携えた様にはイロイロな意味で面白味があった。  しかし、この手の映画は既に出し尽くされてしまっていることは言うまでもなく、新しさも、インパクトも無かった。  主人公と妻のすれ違いの様や、同僚のFBI捜査官のキャラクター性がもう少しパーソナルに描かれれば、ストーリーに深みが出て、それがオリジナリティーに繋がったかもしれない。 89分という尺の短さや、公開時の他作とのバッティングなど「制作」というよりは「製作」の面で力の抜き加減が大いに目立つ映画とも言える。
[ブルーレイ(字幕)] 4点(2010-08-30 23:39:09)
39.  ザ・スピリット
悪が渦巻く犯罪都市、薄汚れた街を愛する不死身のヒーロー“ザ・スピリット”。 アメコミヒーローとしては、基本的にはよくある部類のパターンと言える。 が、そのマニアックさと作品世界全体から滲み出る“禍々しさ”が、非常に特異だ。 時に奇天烈過ぎて、許容範囲を超えてしまいそうにもなるが、ギリギリのところで引き込んでくる。  この映画の最大の見所は、ヒーローの活躍による爽快感でも、センセーショナルな映像世界でもない。 エヴァ・メンデスの完璧な曲線美、そしてスカーレット・ヨハンソンのコスチュームプレイ。この二つに尽きる!というかそれしかない。 と、言うと、非常に映画自体を卑下している印象だが、そうではない。  映画という物は、良いものになるほど、そのハイライトは明確に限られてくるものだと思う。 つまりこの映画の場合、二人の美女の艶かしい競演こそが、最大のハイライトであるということで、それが作品の価値を大いに高めているポイントだ。  同監督原作の「シン・シティ」や「300」ほどの完成度は無かったことは否めないが、決して万人受けはしないであろう奇抜な世界観を、見事にビジュアル化して見せていると思う。 
[映画館(字幕)] 6点(2010-08-28 00:23:38)
40.  ザ・ウォーカー 《ネタバレ》 
終末を迎えた世界を、或る“ウォーカー(旅人)”が一冊の「本」を持って、ひたすらに西へ向かう。 デンゼル・ワシントンを主演に、そしてゲイリー・オールドマンを悪役に迎えたそのイントロダクションは、ミステリアスで、「一体どんな映画なのか」という一点に興味は集中した。  描き出された映画のプロットは、まるで将来有望の若手映像作家が低予算で創り上げたようなストーリー展開で、良く言えば「純粋」で、悪く言えば「稚拙」だったと思う。 “素材”がそのまま「信仰」に繋がるものなので、無信仰者にとっては一歩引いて観ざるを得ない部分はあり、作り手の意図ほどは映画の世界観に没頭することは正直なところ出来ない。  となると、映画の核心となる「本」がどういうものなのかということも或る程度容易に想像できてしまうだろう。 そういった「本」の謎の部分を、この映画のハイライトとして捉えてしまうと、少し肩すかしをくらってしまうかもしれないが、この映画が描きたいのは、そういう安直なことではないように思う。  理由は明確にはされないが、恐らくは人類の「愚行」によって退廃した世界。その“滅び”に対する「信仰」の意味と価値。 無信仰の者としては、一概にその一つの「信仰」を崇拝することは当然出来ない。 ただ、その一歩引いた立場だからこそ、人類における「信仰」の素晴らしさと危うさを感じることが出来た。 非常にパーソナルな価値観だが、そのことがこの映画の最大の価値なのではないかと思った。  見方によって評価は揺れる作品だとは思うが、終末感を描き出した映像センスも含めて、一定の完成度の高さを感じさせる映画だと思う。
[映画館(字幕)] 7点(2010-08-13 13:07:34)
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