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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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181.  シャイニング(1980) 《ネタバレ》 
この映画はホラーというよりは人間の潜在的な暴力性が時限爆弾のように炸裂する犯罪映画の一つ。 美しい空撮の冒頭、映像の美しさとベルリオーズの「幻想交響曲(断頭台への行進)」の重苦しい戦慄のギャップ。これから起こる惨劇を予期しているかのように鳴り響く。 血が濁流となって噴出すエレベーター、時折現れる双子の姉妹。断片的に流れる映像によって過去の惨劇が少しずつ語られる。 子供はおもちゃの車を突き動かしてホテルを駆け回る。その移動撮影の優美さは何なのだろう。 とにかくありとあらゆるものが緊張を異様に高める。日曜日が月曜日に変わるだけで恐怖。 ホテルの閉鎖的空間。先住民族の墓地に建てられたホテル、霊感のある子供とホテルの料理人、過去の惨劇。何百年と蓄積された残留思念。今まで良き父親であろうとした人間の抑圧された本性。 「私は大丈夫」と言っている人間ほど二の舞になりやすい。アル中から回復しかけでこんな仕事だ。 「どんな仕事でも良いから家族を養わなければならず仕事を選べない」という建前が余計に父親を苦しめる。冬にしては吐く息が白くならないのも気になる。この冬という空間すら彼らが見ている幻想だというのか。 仕事が進まない苛立ちでボールをブン投げて笑う狂気の姿、迷路で戯れる親子の姿を上から映す父親の視点。 妻と子供にはたっぷりある時間でも、仕事が進展しない父親にとっては余裕が無いのだろう。 父親は次第にバーにいる筈もない人々(幻想)や前の管理人と語り始める。そりゃあ美女かと思った瞬間にBBAに切り替わったら誰だって叫びたくなるわ。 前の管理人は狂いはじめた父親に「矯正」の話をする。それを聞いて「仕事」だと語りはじめる父親が恐ろしい。 ポパイのオリーブみたいな奥さん。髪を結んだ奥さんがちょっと可愛い。でも実は父親よりも奥さんの方が狂ってたりすんだぜ? 夫の潜在的な暴力に恐怖を感じはじめ、たまに大丈夫そうな父親との対比が強烈。どっちも狂ってる。奥さんですら無人の筈のホテルの住人を見始めるのだから。父の次は奥さんが子供を・・・何て事も考えてしまう。 迷路における追走劇。距離がハッキリしないのが良い。まだ大丈夫?それともすぐソバまで来てる?というこの“ハッキリ”しない混乱こそこの映画のミソ。謎が残るからこそ面白い。まるで猛吹雪の中で道に迷って死ぬようにも見える。
[DVD(字幕)] 9点(2015-03-03 06:32:42)
182.  スター・ウォーズ 《ネタバレ》 
SF、西部劇、時代劇・・・あらゆる映画への愛に溢れた記念すべき第1作。完成度では「帝国の逆襲」や「ジェダイの復讐(帰還)」を挙げる人もいると思う。俺は第三部の畳み掛けが一番好きだ。 が、やはりこの作品無くして「スター・ウォーズ」は語れないだろう。  俺にとっての幸運はBSの再放送で「スターウォーズ」の旧三部作を小学生の頃に見れたという事。ガキだった俺は純粋に全シリーズ楽しんで見れた。本当に良かったと思う。 新3部作もリアルタイム。 だが大人になると色々なものに衝突する。捉え方も360度違うものになっちまった。それでも面白いものは面白いし、感動するもんだよ。  シンプルを極めた、王道を王道で踏破する娯楽映画の代表だね。 いきなり戦闘場面から始まる古典的かつ最上のファーストシーン、 「メトロポリス」を彷彿させる洗練された美術、 見た目は下手物、動けば実に活き活きとしているアニマトロニクスの実在感。 魅力的な登場人物も面白い。 純粋な少年のルーク。血が繋がらなくとも家族の愛情を知っている優しさに溢れた青年。「捜索者」のイーサンのように憎しみと葛藤しながら成長していく姿が力強い。 悪党と義侠心を貫くハン・ソロのカッコ良さ、 男勝りなレイア姫の気高さ、 長き修羅場をくぐり抜けた者としてのケジメを払おうと戦うオビ=ワン、 人間のように感情豊かなC-3POとR2-D2、 宿敵ダース・ベイダーのベールに包まれた底知れぬ魅力などなど。  心の強さを反映する武器「ライト・セーバー」での打ち合いは手に汗握る。光が触れた瞬間から勝負が決まるようなジリジリとした攻防がいいね。  ウィリアム・A・ウェルマンの「つばさ」等あらゆる航空映画を思い出す宇宙空間での戦闘。 迫力は元の航空映画たちには及ばないが、それでも音楽やセリフの応酬、銃撃でどんどん盛り上がる戦いはやっぱり興奮する。これぞゴリ=オシ。  ラストの決戦の破壊力、主人公たちの戦いの終結を称えるエンディングも良かった。 色々粗はあるけど、粗探しも映画の楽しみ方の一つ。むしろそれすら“娯楽”として楽しませてくれるのだからっ!
[DVD(字幕)] 9点(2015-03-03 05:53:15)
183.  スター・ウォーズ/ジェダイの復讐 《ネタバレ》 
アナキンとダースベイダーの憎しみを超えた親子の絆に注目。 冒頭のジャバ相手の“大立ち回り”と脱出劇、不死身のボバ・フェットも少ない出番ながら印象に残る、イウォークたちとの敵意を超えた理解と共闘、エンドアの戦いのソロ無双が楽しすぎてマジでドアボンバー、ランドたちと帝国軍の戦闘開始イイィッ、ルークvsベイダー&シスのラストバトルの三重奏が最高すぎる。 とにかく二重、三重に交錯するそれぞれの死闘の決着が熱い。  ルークとソロのレイアをめぐるやり取りもグッとくる。兄妹以前に、恋愛感情を持っていた女性を戦友に“託す”シーンの会話。愛しているからこそ一歩引く。  ジェダイとして、一人の人間としての戦いを終えたルークとジェダイたちの魂は永遠に輝き続ける。ヨーダがルークに魂を託して生き続けるように、ベイダー・・・いやアナキンもまたルークの魂と共に生きつづける。  でも俺が感動したのは劇場オリジナル版なんだ。特別版じゃなくてな。見るなら絶対オリジナル。
[DVD(字幕)] 9点(2015-03-03 05:18:39)
184.  スター・ウォーズ/帝国の逆襲 《ネタバレ》 
ルークとアナキンの衝撃的な真実が明らかとなった「帝国の逆襲」。  一番燃える&悲しいのは「ジェダイの復讐」、シリーズ最高傑作は間違いなくこれでしょう。  一人の戦士としてようやく自立したルークに待ち受ける数々の試練。  ジェダイの生き残りヨーダの想い、 ソロとレイアの心の交流、 そして帝国軍とレジスタンスたちの死闘の数々!  「リオ・ブラボー」など数々の傑作のシナリオを手掛けたリイ・ブラケット&製作ローレンス・カスダンが良い仕事しています。  ハン・ソロはあんま目だった活躍しないのにこの存在感とカッコ良さ。 レイアとの別れのシーンはただただカッコ良いです。  スノーウォーカーの技術は未だにビックリだ。  「NO-!」  全ての歯車が動き始めた鮮烈な2作目。
[DVD(字幕)] 9点(2015-03-03 05:12:32)
185.  プレデター 《ネタバレ》 
ジョン・マクティアナンのSFアクション。 「ターミネーター」シリーズ以外イマイチなシュワちゃんだが(ネタとしては当たりだらけ)、この「プレデター」だけはネタ抜きでガチに傑作。 差し詰め「ランボー」でスタローンが地元警察にたった独りで挑むような内容(全然違います)。  シュワちゃん率いる特殊部隊vsプレデター。 この作品だけでなく「コマンドー」までネタにされるのは絶対バル・ベリデ(「コマンドー」にも出た架空国家)とビル・デューク(「コマンドー」で共演)と製作のジョエル・シルバー(「コマンドー」の製作に参加)のせいです。 とりあえずプレデターのデザインにアイデア出してくれたジェームズ・キャメロンよありがとう。この頃のアンタは最高に冴えてる。  筋肉モリモリマッチョマンの変態共がひしめく地球にたった一人で乗り込むプレデター。武器を持たない奴は殺らないこだわりを持った紳士。 でももしも仲間で来て、同胞を地球人が殺していたらプレデターも容赦なかったかも。仲間の仇はたとえ武器を持っていなかろうが許さねえし許すわけねえだろうが的な。クリント・イーストウツドの「許されざる者」がそうであったように。  特殊部隊がゲリラと“潰し合う”様を高見の見物で見てたであろうプレデター。ハンターは疲弊し“油断”する瞬間を待つだけでいい。  見えざる恐怖となって人間たちに襲い掛かるプレデター。いつ何処から出てくるか解らない恐怖、知恵を絞り銃をぶっ放しナイフで奮戦しようが成す術もなく散っていく仲間たち。 シュワも任務をまっとうする為、何より仲間のためにも死んでも死ねるか、一矢報いてやらあと泥をすすっても走って走り、あがいてあがき、チャンスを待って待って反撃開始! 後の「プレデターズ」ではヤクザが日本刀で挑む。アンタらどんだけ日本刀好きなんだよっ! 雄叫びは“見逃して”しまった相手への礼代わり。壮絶な一騎打ちの末に訪れる衝撃的な決着・・・こりゃ笑うしかねえわな。シュワちゃんなら放射能も大丈夫だろう。多分。きっと。
[DVD(吹替)] 9点(2015-03-03 04:18:26)
186.  ジュリア 《ネタバレ》 
フレッド・ジンネマンは苦手だけど「ジュリア」は凄く良い映画だと思う。 最初は執筆の日々に追われる日常を描いた恋愛映画でもあるし、後半はジンネマンらしいサスペンスフルな緊張が奔る。 特に列車内のシークエンスでジリジリと張り詰める緊張、ベルリンの食堂で再会する場面の鮮烈さ。彼女が乗る前に慌てて転ぶ瞬間からその緊張は始まる。煙草の煙にむせ、隣で音が聞こえる度にビクビクしてしまう様子。 ジンネマンの映画は常に孤独との戦い・恐怖・怒り。 それを劇中にぶちまけるリリアン・ヘルマン(ジェーン・フォンダ)の強烈さ! ウィリアム・ワイラーの作品に多数参加した事でも知られるリリアン。その容赦の無いシナリオには戦慄を覚えるほど唸るものが多い。特に「偽りの花園」は凄えぜ。 劇中でも煙草プカプカやりながらタイプライターを叩いて叩いて叩き、ゴミ箱を蹴るわタイプライターをムシャクシャして窓からぶん投げるわ、サンドをムシャムシャ食うわ、野郎にビンタを浴びせるわと絶えず何かにイライラしている。 そんな女を優しく受け止めるダシール・ハメット(ジェイソン・ロバーツ)の存在も忘れられない。闇夜を静かに照らすように燃える焚き火、波の音、くゆらせた煙草の煙のように流し、なだめる。 そしてリリアンと深い友情を結んだジュリア。 映画では回想を含めミステリアスな存在で短い時間の登場だったが、実際は友情以上の感情も抱いた仲だっただろう。食事の後に仲良く踊ったり、ベッドで語らい合った以上の関係に。 リリアンにとってジュリアは古くからの友人であり、尊敬すべき師であり、女として愛してしまった掛け替えの無い女性でもある。 女たちは既に語り終えている。それを観客の前でグダグダやらずに、表情だけでその“時間”を感じさせてくれるのだ。役者陣の演技の素晴らしさもこの作品をより際立たせる。 ジュリア(ヴァネッサ・レッドグレイブ)といいリリアンといい、戦う女は何時の時代も美しい。 彼女たちは独りで戦うが、心の中には常に友の存在があった...たとえ死によって二人が永遠に別れようと、回想を通じて心の中に生きつづける友の魂は次の世代にも受け継がれていく。 「地上より永遠に」とはまた違った戦争の描き方。あの映画は波打ち際で抱き合う恋人たちの姿が忘れられないが、この作品も湖上のボートから見る曇り空がラストには美しい夕焼けとなって映る。
[DVD(字幕)] 8点(2015-02-27 15:52:21)
187.  アメリカン・スナイパー 《ネタバレ》 
この作品にはあらゆる“一瞬”が積み重ねられていく。 TVに映る同時多発テロの様子、戦争で腕を失った少女、義足の青年、棺に刻まれた気休めの勲章。 その一瞬だけ映る筈だったものが、戦友たちにとって一生消えない傷として刻まれていく。隣で体を失った仲間が楽しげに喋っている痛々しさ。五体満足でいる自分が申し訳なく思ってしまう辛さ。 それに幾度も響くドリルの音。日常では工具のドリルが、戦場では風穴を開けて人を殺す武器に使われる。ドリルの音を聞く度にそれを思い出さなきゃならない。 そういった拭いきれない傷跡が幾重にも心に刻まれ、戦場から帰った後もクリスの心を蝕む。 狩りや射的、訓練とは違う。疑わしきは女子供だろうが殺らなきゃ殺られるのだから。 でもそれ以上にゾッとしたものがある。 いつ死ぬか解らないのに、肝心のアメリカは兵士を何度も日常と戦場を行き来させる遠征という名のピクニック気分。兵士にしてもいつ敵に出くわすか解らない戦場で家族に電話をかけるような腑抜けっぷり。アメリカの怠慢がここに描かれ...ってそれをクリスあんたがやんのかよっ! 気持ちは解るよ。でもまさか二度も嫁に電話かけるとは思わねえよ。しかも二度目は戦闘中にだぜ?爆音や悲鳴を生で聞かされる嫁の気持ちにもなってみろよこの野郎。 軍服の前と後ろにドクロのマーク付けた男がそんな事してんだもん。こりゃ敵もクリスの事を悪魔呼ばわりしたくもなるわ。 夕飯振舞ってくれた人たちが床下にとんでもないものを隠していたり、 黒頭巾の狙撃手との撃ち合い(携帯を使って無言で黒頭巾の男に情報を入れる黒服の女性もイカす)、 死んだ男から子供が武器を拝借して撃とうとするのを見て「頼むからやめてくれっ!」と言ってクリスが吐きそうになるシーンよりも戦慄したよ。 それでも狙撃者同士の戦いはやっぱ燃えますよ。見えざる敵をどちらが先に見つけるか、ソイツを“見つけた”瞬間の緊張と高揚!大将首ぶん奪っても終わらない壮絶な銃撃戦、砂埃で視界が利かない中での死闘。 クリスは戦場から帰っても、消えない心の傷が元でいつ犯罪を起こしてしまうか、その矛先を家族に向けてしまうのではないのかという恐怖にも苛まれる。 そんなクリスが子供たちと西部劇ごっこという命を奪う真似事で遊んでいる姿は微笑ましくもあるし、とても悲しい姿に見えた。クリスは死ぬまで銃を片手に過ごしていたのだろうか。
[映画館(字幕)] 9点(2015-02-26 14:17:15)(良:1票)
188.  アマデウス ディレクターズカット 《ネタバレ》 
前見た時は退屈だったけど、今回は「未完成交響曲」を見てこの作品を思い出し再見。こんな良い映画だったのか・・・フォアマンに謝りたい。 ミロシュ・フォアマンと言えばチェコ時代に「ブロンドの恋」や「火事だよ!カワイ子ちゃん」といった傑作コメディを撮った事でも知られている。 アメリカ時代なら「ラグ・タイム」の方が好きだけど、この作品もとても素晴らしい映画だった。 とにかくファースト・シーンが強烈かつ完璧。 冒頭からいきなり血まみれになった場面から始まり「『カッコーの巣の上』よりも危険な映画なのか?」という警戒はそこまででOK。 オープニングが終わり、老いた音楽家がある男と自分自身の顛末を語り始めればもう安心だ。二人の人間を中心に繰り広げられる音楽と人の心の狂気をたっぷりと見せてくれるのだから。 天才ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの波乱に満ちた生涯を、努力の音楽家アントニオ・サリエリの視点を通して描く。 元々はブロードウェイ用の劇だったが、舞台をウィーン(撮影場所はプラハ)に写したことで映画さながらの奥行を感じられる。 才能に溢れた奇人として描かれるモーツァルトは、後世に残した「凄まじい」曲の内容を知っていればあまり違和感は無いだろう(「俺の尻を舐めろ」とか)。 音楽の神様、神童として異常に持ち上げられた表の面の裏には、ただ純粋に音楽を追い求めた子供のようにはしゃぐモーツァルトがいたのかも知れない。 色恋沙汰、酒をガブ呑み、即興演奏と遊び放題。音楽が奏でる喜怒哀楽の感情を豊かに堪能させてくれる。その自由な生き方、外に飛び出していくパワーが逆にモーツァルトの想像力を豊かにしたとも言える。 その対極の位置にあるのがサリエリ。 ヴォルフィ(モーツァルトの奥さんが彼を呼ぶ時の愛称)の無垢な純心に知らず知らず傷ついていくサリエリ。 努力によって困難な壁を登ってきた彼にとっては、才能だけで宙を飛ぶように上に行くヴォルフィが許せなかった。 神への信仰を捨て、うら若き乙女を諜報に使わせ、あわよくば宿敵を陥れてやろうと心が歪んでいく。 そんな彼の心を、モーツァルトの曲が度々洗い流してサリエリは良心の呵責に悩み続けた。 最期まで罠に落とそうとするサリエリ、ひたすら音楽に没頭したモーツァルト。 まったく違う性質の人間同士だったからこそ、互いを理解するのに時間がかかりすぎてしまったのだろう。
[DVD(字幕)] 8点(2015-02-24 23:02:30)
189.  裏窓(1954) 《ネタバレ》 
個人的にヒッチコックで一番好き&最高傑作。 人によっては「サイコ」や「北北西に進路を取れ」といったアクションに比べると退屈する人もいるかも知れないが、俺はジェームズ・スチュワートが覗く窓で様々な“事件”が起こってくれるので一切退屈しなかった。 地味に様々な窓のドラマが進んでいくのが面白い。冒頭の写真と壊れたカメラだけでスチュワートが何者なのか“語る”演出も素晴らしい。 観客にとってはいきなりジミーと口づけを交わすグレース・ケリーの存在も事件です。 「君は誰だ」という一言はジミーにとっては冗談のつもり、観客にとっては一瞬ドキリとさせるセリフ。 あれだけ開放的という事はそれだけあの界隈で事件がなく平和だったという事だろう。ベランダで夫婦仲良く寝ている人間までいますし。 そこで後半に“事件”が人知れず、いや唯一目撃してしまう恐怖。 ヒッチコック映画で人や動物が死ぬのは最早お約束です。 劇中で窓を覗くスチュワートは、退屈を紛らわすように音に耳を傾け、窓を覗きまくる。住民もそれを“許容”するように窓を開け続ける。 コレが「北北西に進路を取れ」だとあのヘリがスチュワートに襲い掛かります(嘘) 後半の窓におけるやり取り。最愛の人が独りで犯人の下に潜り込むスリル、犯人が戻ってくるまでの緊張、それに怪我で何もしてやれないもどかしさ、穏やかな演奏に掻き消される悲痛な叫び。 それを見て逃げようと思えば逃げられたスチュワートもあえて逃げず、犯人との“一騎打ち”を選ぶ!記者として、男としての意地。犯人も警察が来たにも関わらず臆せずに目と目が合ったジミーの元に向う。 音、光、影が織り成す緊張、窓際での攻防、住民の動きをあえて早回しにする事でより緊張を高める。 片脚と引き換えに掛け替えの無いものをより深めたラストも良い。
[DVD(字幕)] 10点(2015-02-24 22:53:02)(良:1票)
190.  雨に唄えば 《ネタバレ》 
ミュージカルって甘ったるいメロドラマや悠長な歌で退屈してしまう映画が多いが、この作品はとにかく踊って踊って踊る面白さ! ジーン・ケリーやドナルド・オコナーの物凄いダンス、デビー・レイノルズのパワフルな歌声。何気に暗黒街の情婦役でシド・チャリシーも出てんだね。「バンド・ワゴン」のチャリシーは凄えぜ。 ジーン・ケリーが剣戟映画のような動きをする場面は、自身も出演したジョージ・シドニーの「三銃士」へのオマージュがあるそうだ。  スケート靴で街を走り抜けるシーンが良い例だ。雨が振るなら土砂降りの中でも歌い続ける!そういう腹の底からエネルギーが沸き立つ作品だぜ。「雨に唄えば」の旋律が心地良い。  物語はサイレントからトーキーに移り変わろうとする時代。 「ジャズ・シンガー」のエピソードや、サイレント作品を無理やりトーキーにしようとする話はハワード・ヒューズの「地獄の天使」辺りのエピソードだろうか。  ジーン・ヘイゲン演じるリナは、サイレントという「温床」で悪声でも問題なかった時代の終焉を物語る。 「ハリウッド・レビュー」の“悪声オンパレード”で一体何人の俳優が地の底に堕ちていった事か。  舞台出身で声は問題なかったキートン等も、サイレント時代のイメージと合わないというだけで姿を消していってしまう。  サイレント時代の終わりは、同時に舞台でセリフやダンスを磨き上げた叩き上げのトーキー(喋る)役者たちの時代の到来。 ボードヴィル等で活躍したジェームズ・キャグニーやポール・ムニといった語りで魅せる役者たちのな。  そういうストーリーがあるが、終盤の華麗なダンスの数々はセリフが無くとも圧巻なサイレントの「魅せる」演出。それが面白い。美しい映像だ。  ジョージ・ラフトもどきが何人も出るのがまた楽しい。  キャシーが表舞台に出るラストは感動的だけど、リナはちょっと可哀想だなあ・・・なんて。  それにしても、ジーン・ヘイゲンは本当に名演。 ジーン・ヘイゲンの事を甲高いオバサンくらいに思っている人は、ジョン・ヒューストンの「アスファルト・ジャングル」を見てみると良い。低いトーンの女性らしい声なのだから。これが本来の彼女の声。 本当は上手いのに、ワザと下手なフリをするというのは簡単に出来る芸当じゃない。正しく彼女は女優です。
[DVD(字幕)] 10点(2015-02-15 01:47:08)(良:2票)
191.  ターミネーター2 《ネタバレ》 
前作の「ターミーネーター」は殺戮マシーンという恐怖に徹した恐ろしさがあったけど、本作はその殺戮マシーンが「心強い仲間」になってくれる。  オマケに襲い来る敵は前作より最強凶悪の敵だとさ。  最高の常軌の逸し方じゃないか。  スピルバーグの「ジョーズ」を2部作にしてより濃くしたような面白さ。  「ジョーズ」は鮫に怯えるパニック映画から鮫の恐怖に打ち勝つヒーローものになるが、 「ターミネーター」シリーズは襲い来る恐怖と殺し合うだけじゃなく、恐怖を味方に付けお互いの立場を理解し、絆を結んでいくという力強い内容が醍醐味でもある。昨日の敵は今日の味方。   昨日の敵は今日の味方。  襲い来る暗殺者、 頼りになるスーパーマン、 そんなスーパーマンがピンチだ! 今度は守られる側がスーパーマンを助ける番だ! それに応えてスーパーマンは必ず戻ってくる! 何度でも。 このシンプルを極めた面白さ。  きめ細かなメカニカル描写、 質感のある映像美、 そして人間とロボットの立場を超えた絆・・・最高じゃないか。
[DVD(字幕)] 9点(2015-02-15 01:25:34)(良:1票)
192.  街の灯(1931) 《ネタバレ》 
“映画”とは何か?チャールズ・チャップリンである。 そう言い切ってしまいたいほどチャップリンの映画には子供の頃から惹かれ、引き込まれ、笑い、ワクワクし、泣かされてきた。それくらいチャップリンが大好きだ。 俺は「モダン・タイムス」の方が好きだが、この作品も二度見て、いや見れば見るほど新しい感動に包まれる最高の映画だ。 特に終盤、吹き矢の子供が二人の男女をめぐり合わせる“悪戯”なんてもう。あの瞬間ほど「ハッ」とする場面は無いと思う。 チャップリンは花売りの少女から希望という“灯”を貰うし、チャップリンも少女のために我武者羅に働いて彼女の心に瞳という“灯”を授ける。一輪の花と手の温もりが、見えない筈の闇を照らす。 自分のためでなく、誰かのために命を賭けて生をまっとうする・・・素敵じゃないか。 冒頭から街の銅像の式典、その銅像の上でいきなり爆睡するチャップリンの登場からして面白い。 路上で出会った花売りの少女。彼女の眼が見えないという事を身振りと「お拾いになった?」の一言で理解できる。サイレントなのに男がドアを閉じる音が聞こえてきそうな場面だ。 チャップリンは完璧な像よりも本物の人間に惹かれていく。放っておこうと思っても見捨てられない情は赤子を拾う「キッド」といった作品を思い出す。 誤って水を浴びせられても文句を言わないチャップリンは英国紳士の鑑です。 眼が見えなくても生きている人間もいれば、事情は知らんが人がいるにも関わらず自殺を図ろうとする人間もいる。それを見守るように輝く街の灯。以前のチャップリンの短編なら水に落ちたらそれまでという話も多かったが、この映画は底から這い上がり次に進む事を選択する。 少女と再会したチャップリンは少女に誓い働いて働きまくるが、どれも失敗続きで中々上手くいかない。 総てをかけたボクシングシーン。幻に見る女、惚れた女の未来が懸かるたった5分。 それまで積み上げられたドラマ、それがあっと言う間に弾けていく避け合い、殴り合い、ゴングに振り回されるファイターたち。レフェリーは彼らの踊るようなボクシングに振り回される。 最後までチャップリンに恩を仇で返してしまう男は或る意味一番不幸。
[DVD(字幕)] 10点(2015-02-14 03:51:53)(良:1票)
193.  サウンド・オブ・ミュージック 《ネタバレ》 
ロバート・ワイズは「罠」といったフィルム・ノワールやSF、戦争映画と傑作・力作揃いだ。 だが、やはりミュージカル映画が最も評価の高いジャンルなのだろう。 この作品は「雨に唄えば」に並ぶミュージカル映画の最高傑作だと思う。  雄大な自然を捉えた美しいキャメラワークと撮影。 誰が撮ったのかと思ったらジョン・ヒューストンの「黄金」やエリア・カザンの「エデンの東」を撮ったテッド・マッコードではないか!道理で雨のシーンや山々の幻想的な映像が際立っているワケだ。   教会で修道女をやるような器では収まらないマリア。 他の修道女はマリアが歌う事を咎めるが・・・ってアンタらも歌っているじゃないか。  送り出されたマリアは絶倫トラップ大佐の元に。 トラップ大佐の家族は腕白な一個正体(5姉弟)。 マリアにとっても、子供たちにとってもヤッた事のない“冒険”のはじまりだ。  マリアは自分に言い聞かせるように歌う。 やがてその歌は子供たちの心も動かしていく。 聞き覚えのある名曲たちが子供たちの、トラップの、そして我々の心を満たしてくれるのだ。  「私は犬ではありません大佐(少佐)」 「さきの奥さんの記憶が辛いのでしょう」 「イキすぎたのよ(子作り)」・・・意味深なセリフの数々。 家政婦が(メッサー)シュミットときたもんだ。 奥さんの死因は絶対トラップ大佐のピスト(ry  まつぼっくりの“あいさつ”、 雨の中のダンスの可憐さ。雨にしっとり濡れた感じが色っぽい。 アシダカ軍曹、お疲れさまっす。 「稲妻に返事をする雷」とはマリアらしい考えだ。  辛い時、泣きたい時は楽しい事を考えてしまおう!  歌で心が通う感動。  伯爵夫人も悪い人じゃない。相性の問題さ。自ら身を引いていく潔さ!  迫るナチスの影、だがマリアたちは諦めない。 「隠れても問題は解決しません。立ち向かうの。自分の道を探すのです」 トラップもまた男。潜水艦の艦長は溺れねえぜ。 垂れかかったナチの旗は破っちまえっ!   終盤におけるナチス将校たちとの緊迫したやり取り。 大佐(少佐)が本当カッコイイ。  ロルフよありがとう。そして生きろよ!  ラストの山々の風景が最高だった。
[DVD(字幕)] 9点(2015-02-08 06:54:59)(良:2票)
194.  X-MEN:ファースト・ジェネレーション 《ネタバレ》 
「キック・アス」を手掛けたマシュー・ヴォーンによる傑作。 「X-MEN」シリーズの前日譚にあたる作品だが、今までのシリーズよりも活き活きとしたエネルギーに満ちている。 続編となる「フューチャー&パスト」も中々面白かった。 マグニートってこんなにカッコ良かったかなあ・・・。 設定が矛盾しているとかいうけど、そこは「キック・アス」に通じる馬鹿馬鹿しさとシリアスのバランスが面白いという事で。  ユダヤ人として生まれた魂は、その怒りによって能力に目覚める。 やがて訪れる復讐者と仲間達の出会い。  テレパシーでどんな人間にもコンタクト、 全身真っ青で誰にでもなれる女性、 全身をダイヤモンドにしてキレイに円を描くパッキン女性、 あらゆるものを吸収してしまう不老の元ナチス、 見た目は野獣中身はイケメンな頭脳派、 呼んでますよアザゼルさんなどなど超人&変態の万国博覧会。 手から刃を出しまくるオッサンも一瞬登場。   人を信じて生きてきたプロフェッサーX(チャールズ)、人を信じないで生きてきたマグニート(エリック)の対比が痛々しい。  敵が“潜る”なら“引きずり”、叩きのめすのみ、 撃ってくるなら全部弾き返すだけよおっ! ブラックバードで飛来してくるシーンは超ワクワクしたぜ。   ローガン「おとといきやがれっ!」
[DVD(字幕)] 9点(2015-02-08 06:54:31)(良:1票)
195.  港の女 《ネタバレ》 
まずは、本作品のページ作成に御協力して下さいました総ての人に感謝してもしきれません。誠にありがとうございます!! 「港の女」は最初晴れた空から始まる。そこから雨季に入り雨が延々と降り始める。神父とサディ・トンプソンの“闘い”のゴングを打ち鳴らすように。 外は雨が降り始め、ホテルの中はトンプソンたちの乱痴気騒ぎ。最初12分はトンプソンたちの狂乱で笑わせてくれる。そして12分が過ぎ、いよいよ神父とミス・トンプソン最初の“闘い”が始まる。 熱烈な信仰者である神父は、自堕落で他人の迷惑も考えないトンプソンを放っておけない。彼は悪魔的に騒ぐトンプソンの心が病んでいると思ったのだろう。今にも二人の怒声が聞こえんばかりの迫力。 そんな神父を殴りつけるのはトンプソンを愛するオハラ軍曹。 粋な登場をしたオハラだが、この作品も粋な場面がいっぱいある。 煙草で“キス”する場面とか、雨が降りしきる中でトンプソンとオハラが会話するやり取りとか、オハラがトンプソンをおぶって走る場面とかユーモアもたっぷり。これらのシーンは「雨」でも描かれていた。 特に雨どい?でウォルシュと会話を交わすスワンソンの表情が色っぽくて可愛いのなんのって。 しかしあのアルバム写真はなんなんだよ。首の取って付けた感じが酷い(笑)…その直後にオハラの元に届く“手紙”との温度差。 オハラが中々トンプソンの元に来れなくなると、今度はデヴィッドソン神父がちょくちょく来るようになる。神父はトンプソンを“善人”にしようと彼女に働きかけ続ける。 しかしどんな手もトンプソンには通じない。物凄い剣幕で神父を罵るシーンの凄味といったら! しかし神父も“奥の手”を使ってくる。コレには流石のトンプソンもタジタジ。さっきまであれだけ喰ってかかっていた彼女の狼狽振り。 トンプソンは厚化粧を止め、髪もおろして“おしとよかな”女性に変貌。デヴィッドソン神父もまた、そんな彼女の生まれ変わった姿を見てすっかり彼女に“惚れてしまった”ような素振りを見せる。 そして、自分の役目が終わった事も悟っただろう。彼はトンプソンと“最期”の会話を交わす…。 どうやらこの部分のフィルムは失われてしまっているようだ。フィルムはスチール写真と字幕のみで語られていく。終盤の大部分のフィルムも失われてしまっているのか。うーむ、ラストのフィルムが残っていないのが惜しまれる。
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2015-01-28 05:40:11)
196.  ボーン・アルティメイタム 《ネタバレ》 
アクション映画は本当大好きだ。   言葉なんかいらねえ、テーマなんかいらねえ、とにかく動い動いてブチのめせ!  けれども“ストーリー”という「骨」があるともっと面白い。   その「骨」こそ主人公のジェイソン・ボーン(Jason Bourne)。 もちろんスペルはまったく違う。 しかし音で聞けば誕生の「born」、骨の「bone」(発音違うけど)。   「自分は何者なのか?」というシンプルかつ究極の主題、見づらい手ブレ演出も慣れればCG無しの極限アクション、ガラスにダイブ、バイクやカーチェイス、ガンファイトと息もつかせぬアクションのオンパレード。 スゲー疲れるぜ(良い意味で)。   そんなボーンシリーズの終点「ボーン・アルティメイタム」。  最後通牒、ボーンへの、そして観客への最後通告。 己の正体、自分を追う敵、黒幕、そして協力者・・・全ての決着。  正体を知りたいから諦めない、 正体が解っても諦めない、 死んだ者のために諦めない、 何より「生きたい」から諦めない・・・! 「ここで全てが始まった。ここで終わらせる。」ケジメはしっかり付けて退場する。  水中を力強く泳ぐボーンには本当元気を貰える。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-21 19:39:24)(良:1票)
197.  羊たちの沈黙 《ネタバレ》 
ジョナサン・デミによる傑作サイコ・サスペンス。 劇中のアンソニー・ホプキンスの狂気は「サイコ」のアンソニー・パーキンスを彷彿とさせる狂い振り。涼しい顔して何人も血まみれにしていく様子には戦慄する。「ハンニバル」は脳味噌ハンバーグというイカれポンチ振り(褒め言葉)。 その狂気の連続に襲われるこの作品は、最初女性が走ってくるシーンから始まる。整備された森林、女が人気の無い道を走ってくるという場面だけでもワクワクさせられる。汗ばみ息も荒ぎはじめる彼女にこれから何が起こるのか、あるいわ何も起こらないのか。そんな緊張が冒頭から生まれているのだ。 彼女が何者なにか判明するのは、クロフォード主任からの“任務”をスターリング実習生が知らされるシーンだ。 髪を結んでいる時は可愛い、下ろしている時はカッコ良い。見た目はキマッているが内心はまだ訓練を積む新人。 部屋に張られた夥しい“被害者”には慣れっこだが、厳重に管理された独房には身がすくみそう。一人だけ鉄格子でなくガラスの壁という時点で、ハンニバルがどれだけ危ない野郎なのか物語る。 ハンニバルとの会話は妙な緊張が持続し飽きない。スターリングは気丈に振舞うが、本当は囚人からの汚い“送りもの”に叫び声をあげてしまうほど。ハンニバルは彼女を冷静に分析する。内に秘めた狂気を時折覗かせて。 客人に対し“無礼”を働いた囚人仲間を言葉責めだけで追い詰めてしまうのはまさにそんな場面。 ハンニバルとスターリングの取引、乳首にピアスをする人間の気持ちは中々理解できないいやしたくない、スターリングを絵に描くほど“お気に召した”ハンニバルの殺戮ショー、現代アートのように処刑される“標本”。この映画はアチコチに“蝶”のイメージが出てくる。 ハンニバルが何処まで彼女を気に入ったかは知らないが、少なくとも鉄面皮のようで一番彼女を心配していたクロフォード主任は一番の勝ち組。 たった一人で果敢に乗り込むスターリングの覚悟。それを察知した犯人が自ら出向いて来るか待ち伏せるのか解らない緊張、閉鎖的空間のいつ何処から現れてもおかしくない恐怖。それを煽りたてる不協和音。一瞬の銃撃による決着! 教訓:撃鉄は得物を射程に捉える前に落とすべし。 ハンニバルは蝶のように飛び去り、蜂の様に今日も殺人を続けるのだろう。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-17 21:50:04)(良:1票)
198.  情婦 《ネタバレ》 
アガサ・クリスティーよりもパトリシア・ハイスミスの方が面白いと思う俺は正直クリスティーの映画化作品はどれもハズレばかりという印象。 だが、ワイルダーのこの「検察側の証人」はクリスティーの傑作短編群にも引けを取らない、数ある映像化(ドラマは除く)の中で唯一と言っていい傑作! 俺個人はワイルダーといえば「深夜の告白」や「アパートの鍵貸します」だけど、この作品も一気に引き込まれるし何よりチャールズ・ロートンとエルザ・ランチェスターといった面々のやり取りがとにかく楽しくて面白い。 ワイルダーの映画って狙いすぎててイマイチ笑えないのだけど、この作品は冒頭から笑いっ放しだった。 裁判の幕が上がるようなオープニング、そこに向う役者を揃える様に一人ずつ登場人物が姿を現す。 老練な弁護士ウィルフリッド、それを何かと心配する看護婦のミス・プリムソル、ウィルフリッドを助けるブローガンムーア、殺人の疑いをかけられるレナード、そして謎の女であるクリスチーネ。 ウィルフリッドとプリムソルが夫婦喧嘩(チャールズ・ロートンとエルザ・ランチェスターは何度も共演するガチの夫婦)をしながら車で事務所に向う場面。二人が喋るだけで楽しくなってくる。階段のリフトを見て子供のような表情を見せるロートンが面白い。このリフトのやり取りだけでも見ていて飽きない。 ところどころ伏線としか思えないセリフばかり。 何?マッチがない?君は悪い奴だ、え?ライターはある?君は良い奴だよ・・・都合良いなあ本当。 やっと退院しかたかと思えば山ほど来る依頼に口うるさい看護婦。葉巻もロクに吸えない、杖に仕込んでまで吸おうとするヘビースモーカー。 そんな彼を動かしたのはその葉巻だった。ポケットの葉巻を見て飛びつくウィルフリッド。葉巻目当ての依頼承諾がとんでもない事件に発展していく。その葉巻を「あ、そうだった」と思い出したかのように返すウィルフリッド。嫁にバレたらマズい。 モノクルの“光”で心理分析、法廷でもウィルフリッドの薬で経過時間を表現したりと単なるセリフ劇に終わらせず一切退屈させてもらえない面白さ。 レナードとクリスチーネの過去も面白い。コ-ヒー1杯飲むためにキスを繰り返す“楽しい取引”、タバコとガム、ベッドにダイブで天井崩壊、ディートリッヒの生脚。 ダメ男を助けるための大芝居、そんな尽くす女を裏切るかのような二重三重の大どんでん返し。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-17 21:41:06)(良:1票)
199.  ミニミニ大作戦(2003) 《ネタバレ》 
ピーター・コリンソンの「The Italian Job」も洒落た逸品だったが、俺はF・ゲイリー・グレイの「Italian Job」の方が好きだ。  冒頭の金塊を奪うまでのシークエンス。階の違う得物をピンポイントで奪い去る緊張、裏切り、犠牲。ヴェネチアでの水上チェイス! 冒頭から穴という穴に得物を追い込んでいく。  その後に出会う凄腕の“娘”。小さくて可愛いミニ・クーパーSやアストンマーチン・V12ヴァンキッシュといった車が市街や地下鉄、下水道を縦横無尽に駆け巡るカーチェイス。 「マネーボール」やクリストファー・ノーランの傑作群の撮影を担当したウォーリー・フィスターのカメラワークを見よ!  小さな穴という穴を飛び越えるような楽しさ。それを追跡するバイクやヘリとのおにごっこ。 得物を狙うチームの絆も魅力的。ドイツもコイツも楽しそうな顔でマシンを走らせやがる。流石「交渉人」の監督だぜ。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-15 16:56:14)
200.  脱出(1944) 《ネタバレ》 
似たプロットを持つ「脱出」と「カサブランカ」。  ハワード・ホークスがヘミングウェイの原作を純水な娯楽として仕上げたのに対し、マイケル・カーティスはやや政治色の強い内容となっている。  決定的に違うのは船の「脱出」、飛行機の「カサブランカ」。 そもそも題材は似ているが原作はまったく違う。内容もオチもまったくの別物。  で、どっちが好きかと問われれば俺は迷うことなく「脱出」を選ぶ。 ホークスが好きだからというワケでなく、純水なハードボイルドであり娯楽に徹したコチラの方が完成度があるだろうし好きだ。無駄がなくスマート。 ハンフリー・ボガートもコッチの方がイカしてる。  というより、俺は「カサブランカ」みたいに臭すぎるメロドラマが嫌い。 女性の好みもイングリッド・バーグマンよりグレース・ケリーやローレン・バコールみたいな色気と情に厚い方がタイプなのです。  ノッケから酔って寝てるウォルター・ブレナンに水を浴びせて起こすボガート。 ホークス映画といえば名優ブレナンの存在も忘れられない。コレほどライフルが似合う御老体はいない。  ローレン・バコールの粋な登場の仕方にもそそられる。  酒場の粋なピアニストも好きだ。 銃撃戦の後で怯える人々をピアノの音色で元気づけようとする心意気。レクイエムまでかなでてくれる。 ピアノを聴いて歌いだすバコールが良い。  中盤の“脱出”シーンは警備艇の照明だけを撃ちぬくスリリングなやり取り、終盤のバコールとボギーの連携&机ごと敵を撃ち抜くシーンに震えた!  ラストシーンで顔を見合わせにんまり笑うボギーとバコールは完璧夫婦。本当に結婚しちゃうんだからお熱いっす。  ローレン・バコールとのコンビは「三つ数えろ」でも拝める。 ラストの駆け引きも面白かった。傑作。  ローレン・バコールは今もスクリーンの中に生き続ける最高の女優の一人です。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-15 16:37:53)
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