Menu
 > レビュワー
 > ユーカラ さんの口コミ一覧。16ページ目
ユーカラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 936
性別
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/24461/

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作国 : アメリカ 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
評価順12345678910111213141516171819
投稿日付順12345678910111213141516171819
変更日付順12345678910111213141516171819
>> カレンダー表示
>> 通常表示
301.  アンストッパブル(2010)
画面を横切る線路の向こう側に佇む一人の少女の姿。それをかき消すような鉄塊の流れ、その巨大感、暴走感。 線路の手前側と向こう側が世界を分ける。列車の映画では馴染みのモチーフであり、この映画ではアクションと衝突のアクシデントは専ら暴走列車の進行方向左手側を中心に展開する。社会見学の児童らの乗る列車が危難を回避するのは右手側である。  何度も逆進方向である右後方を振り返るD・ワシントンと、クリス・パインの同一方向上の切り返しショット。二人の面構えがそれぞれ素晴らしい。 そして毎度馴染みのロケーション、「高架鉄橋」への拘りも空撮中心に気合が入っているし、背後から迫る列車と手前の踏切内の馬を組み合わせたショットの圧縮感などもいい。 視界を大きく遮る穀物の散乱の過剰ぶりと、連結部でのアクションの見え隠れ具合もサスペンスを一段高める演出として見事だ。  ただし、離れ合った登場人物達があっさり一堂に会してしまう大団円の記者会見は蛇足の感あり。それぞれが遠隔地同士のまま、シンプルに〆ていれば尚良い。
[映画館(字幕)] 8点(2011-01-15 23:57:37)
302.  天罰
ヒロインのキャラクターに聖女と悪女両面の魅力を盛り込むというのは旧来からハリウッド女優売り出しの戦略としてあるが、これはその男優版。 「邪」の顔を徹底的に見せ付けた上で、その最期に「聖」の側面を垣間見せることで逆転的に好感度が増す。後のギャング映画のアンチ・ヒーロー像を先取りしているともいえるだろう。  映画は両脚を切断された男を演じるロン・チェイニーの独壇場で、驚異的なアクションを見せる。 義足のまま椅子から床へ飛び降り、松葉杖で階段を上り、懸垂で壁をよじ登る。その過酷な熱演を全身フルショットで丹念に捉えるカメラの徹底ぶり。 役者の執念と、役柄の怨念がクロスしてその動作と表情には異様な迫力が満ちている。  帽子作りに関する伏線の回収が不徹底であったり、女性捜査員(エセル・グレイ・テリー)の恋愛感情の描写が不明瞭であったりというのはカットの問題か。
[映画館(字幕)] 7点(2011-01-09 20:22:27)
303.  バーレスク
カウンター席に並ぶC・アギレラとシェール。そこへ一旦はクラブを辞めたクリスティン・ベルが戻ってくる。すかさず、スタンドチェアを回転させて彼女に背を向けて場を外すアギレラ。そのあくまでドライで毅然とした所作がいい。  続く控え室の鏡台の場面。両者は鏡を介して互いを意識しあうが、その二人に対しカメラは交互にピントを送り、二人同時に焦点を合わせることをしない。従って二人は画面上では視線を交えることもなく、対話を交わすこともない。互いに尊重しつつも、馴れ合いを潔しとしないライバル同士の高貴なプライド。それらをシンプルな描写の中に垣間見せる、その視線のドラマがいい。  シェールからアギレラへ、睫と唇への触れ合いを通して擬似母娘の関係を築く化粧シーンもまた、簡潔にして情感豊かだ。柔和な画面が美しく、これも鏡台を巧く使っている。  歌曲では、唯一同時録音的な効果のある「Tough Lover」が白眉。 アギレラの声量が遺憾なく発揮されると共に、客席のざわめき、嬌声、雑音の満ち干きが採り入れられて、舞台・客席相互感応のライブ感がよく出ている。  その分、逆に他の曲の別録が気になってしまうのが皮肉なところ。重低音の音楽は気持ちよいが、リズム重視のカッティングの連続で少々飽きる。 せめてシェールの「You Haven't Seen The Last Of Me」くらいは同録でお願いしたい。
[映画館(字幕)] 7点(2011-01-03 16:45:34)
304.  ビッグ・パレード 《ネタバレ》 
トラックに乗って前線へと進軍していく米軍兵士(ジョン・ギルバート)を必死に追うフランスの村娘(ルネ・アドレー)。 ようやくお互いを見つけ抱き合う二人の背景をせわしないスピードで行軍していく兵士の流れ。その対比が、僅かな時間の中での切羽詰った別れのエモーションを最高潮に高める。 娘はトラック上の彼の足に必死にしがみつき、トラック後部のチェーンごと引きづられつつも追いすがる。その滑稽なまでに健気な姿は、逆に見る者の胸を熱くさせずにおかない。  トラックが走り去り、一本道に一人取り残される彼女を小さく捉えたロングショットの切ないまでのリリカルさ。 ラストの再会シーンで彼に走り寄っていく、その懸命な走りのアクションの素晴らしさ。二人に差す光の美しさ。  リリアン・ギッシュ自伝によると、『ラ・ボエーム』(1926)製作にあたっては本作のラッシュの一部を見て監督と主要キャストを選んだという。 一途な思いをひたすらアクションによって表現する女性像の素晴らしさは確かに両作品に共通だ。  同時に本作は戦争映画としても一級であり、映画後半を占める各戦闘シーンはスペクタクル・サスペンス・人間ドラマ三拍子揃って圧巻である。 狙撃兵の潜む林間を戦闘隊形で進軍する様が横移動と縦移動で捉えられる中、一人また一人と無機質に倒れていく兵士たち。その冷徹な感覚が、戦争の無情を印象づける。  照明弾が飛び交う夜の塹壕戦。若い敵兵にタバコを差し出すエピソードも忘れ難い。
[DVD(字幕)] 10点(2010-12-26 01:09:13)
305.  拳銃貸します
巻頭の借部屋で、寡黙なアラン・ラッドがトラウマである左手首を覗かせつつ拳銃の具合を確認するさりげない1ショットでその役柄を雄弁に語り占める。窓辺の子猫を気遣うトレンチコートの彼は、後のメルヴィルのノワール『サムライ』でカナリヤに餌をやるアラン・ドロンの孤独な姿へも連なっていく。  ロケーションが印象深い鉄橋での追跡シーンも両作品に共通だ。  クライマックスの銃撃戦の、貴重といって良いほどの素っ気無さ、スピード感。 ドアの開閉とその背後空間を遮る用法によって見る者に想像を促さずにおかない、見えないアクション演出がもたらす奥行き感。 夜の巨大なガス工場から、暗い排水口を伝って鉄道敷地内へと続く逃避行のスケール感。 さらに雷光、朝靄、蒸気が画面に彩を添える。  警察のサーチライトの光をかいくぐり、人質のヴェロニカ・レイクを伴って暗闇の操車場を逃走するアラン・ラッドは、まさに光と相容れない影を鮮烈かつナイーヴに体現してみせる。  ロバート・プレストンの希薄な存在感に比べ、劇中で見事なマジックを実演するヴェロニカ・レイクは妖しく魅力的だ。 
[ビデオ(字幕)] 8点(2010-12-25 00:02:30)
306.  魔術師(1926) 《ネタバレ》 
アリス・テリー(レックス・イングラム監督の妻)を苛む幻覚シーンは、ベンヤミン・クリステンセンの『魔女』(1921)の怪奇幻想イメージとも通じ合う鮮烈さ。フットライトの効果で不気味に浮かび上がるマッド・ドクター役:パウル・ヴェゲナーの形相がまた恐怖度満点である。  冒頭に登場する巨大な牧師の彫像のデザインと質感からして禍々しい。 さらに雨と稲光と炎、薬品から立ち上る過剰な蒸気、モンテカルロの村や崖上の「魔術師の塔」の佇まいと、怪奇ムードを煽るアイテムが目白押しだ。 『フランケンシュタイン』への影響も十分に納得性がある。  クライマックスは手術台の上で拘束されるアリス・テリーに迫る危機と、救助に向かうイワン・ペドロヴィッチらのクロスカッティング。 塔までの道中が少々もたついて、グリフィスの速度感と切迫感にはやはり及ばないが、格闘アクションはスピード感があり素晴らしい。 壁に突き刺さるメス。溶鉱炉の炎。燃え落ちる塔のロングショットが印象的だ。 
[映画館(字幕)] 8点(2010-12-16 22:50:41)
307.  レオニー
海辺の情景。それを窓辺で見つめる女性のシルエットが、屋内側から捉えられる。  映画は、部屋の奥側から明るい窓際あるいは縁側に向けたローポジションの構図が主体。 屋外背景のキーライトに対して、暗すぎず・明るすぎずの控え目な補助光によって、人物の表情や部屋の内装も逆光に潰れることなく、落ち着いたコントラストを作り出している。 そして障子や襖や丸窓のフレーム内フレームが、憧憬としての外の世界を対比的に切り取ってみせる。  一方で、随所に挿入されるイサム・ノグチらしき彫刻家(勅使河原三郎)の作業光景のショットでは、強い直射光によるハイコントラストが彼の顔半分を真白く浮かび上がらせ力強く印象的なイメージを形づくる。 いずれも黒澤組の照明・美術スタッフの技の冴えである。  CGの濫用は控え、実景主体で再現した20世紀初頭の風俗も非常に丁寧な仕事だ。 エミリー・モーティマー・中村獅童の主演二人のみならず、出番は少ないながら大地康雄・山野海ら脇役陣の芝居も充実している。  前半では時制の無駄な倒置などが冗長さを感じさせる一方、後半での親子関係の描き込みに不足が感じられてしまうのが難点か。  
[映画館(邦画)] 7点(2010-12-09 22:08:50)
308.  クロッシング(2009)
冒頭の郊外路地のシークエンスから、車のテールランプや航空機の小さな灯が浮かび上がる非常に艶めかしい夜のルックを見せてくれる。続いて、男を射殺したイーサン・ホークの麻薬捜査官が逃げるように車から離れていくのを、塀に投影された彼自身の等身大の影が不気味に追い立てていくのもノワールスタイルの予告だ。  三者の中でも、とりわけ彼の全身が体現する切迫感、焦燥感が断然素晴らしい。 彼らがアパートの暗く狭い階段を降り、部屋間を移動していくのを、その背後からステディカムと思しきカメラが技巧を意識させない機械的円滑さで追いかける。踏み込み現場での激しい応酬も、無闇な編集に頼ることなく持続的なショット主体で事態の推移を冷然と捉えていくことで対位的に高いテンションが維持されている。  対象人物の心理的動揺や焦燥を表すのに、今時流行りのカメラの作為的な揺れなど必ずしも有効ではないことの反証である。  『バベル』や『クラッシュ』のような思わせぶりなメッセージ臭・テーマ臭は、即物的な死の描写によって際どく回避出来たという感じか。 
[映画館(字幕)] 8点(2010-12-05 22:25:57)
309.  442 日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍
ブルーレイ上映による解像度の高い画面が、元隊員たちの現在の平穏な暮らしぶりと小奇麗な身なりを色鮮やかに映し出す。 彼らが語る過酷な内容とのギャップや、現在の地形と重なり合うように編集挿入される当時のモノクロ映像との繋ぎが、隔世の感覚をさらに強めている。  442連隊への賞賛の念が窺える『二世部隊』(1951)でも省略されざるを得なかったと思しき、ローマ一番乗りをめぐる差別待遇。人間を殺す事の重み。約60年を経てようやく語られる彼らの言葉の響き、表情の深みに打たれる。  にも拘わらず、その元兵士達の言葉に被ってひっきりなしに感傷を煽る喜多郎の音楽タレ流しはナレーションの声音と併せてあまりに「声高」すぎる。 作り手は、彼らの表情・言葉の重み、強度をまるで信用していない。その複雑なはずの思いに対し、安いセンチメンタリズムで一方的に意味付けし、感傷メロディーで補強したがる。  だから、両国家・組織の棄民政策に対する批評性も大きく欠いている。  「反戦」を標榜していながら、情緒に寄りかかった作品こそいくらでも「非反戦」に逆利用され得る事に対し自戒が足りない。 
[映画館(字幕)] 4点(2010-11-28 22:24:25)
310.  ラ・ボエーム(1926) 《ネタバレ》 
リリアン・ギッシュ自身が強くこだわったというパンクロフィルムの特性が活かされ、光の溢れるピクニックシーンから夜の暗い街路まで色調が豊かで幅広い。彼女の表情のクロースアップショットも艶やかで麗しい。  アパート隣室のジョン・ギルバートらに歓待された彼女が戸惑い、恥じらいつつも嬉しさが滲む表情の可憐さ。 彼らとの初めてのピクニックで無邪気に跳ね回り、踊り、アパートの窓をはさんで二人じゃれ合う身振りが伝える幸福感。  一転して、悲愴極まりない終幕では薄倖の死相が真に迫って痛ましい。 クライマックスでは荷車後部の鎖につかまり舗道を引きずられるという、キートン、J・チェン顔負けの過激なアクションまでも華奢な身体で演じきる。  全身映画女優の底知れない表現力にただ圧倒されるしかない。  
[ビデオ(字幕)] 10点(2010-11-24 21:48:35)
311.  中共脱出
極東部劇でもあり、それぞれの役柄も全く違うが、『ラスト・シューティスト』で感動的に再共演することとなるジョン・ウェインとローレン・バコールのやり取りを観るだけでも感慨深い。  ロケーションは米国なのだろうが、生活感漂う河岸の光景にはアジア的風情が良く出ている。  中盤に登場する難破船群の朽ち果てた様、そしてそのそばで開始される砲撃戦もまた壮観で、『つばさ』の過激な着弾ショットにも引けをとらない危険な爆発シーンが続出する。キャストの至近距離で木材の破片が四散し、豪快に水柱が聳え立つ。そのただ中で、ボイラー室で葉巻を半分吹き飛ばされながら表情も変えず短くなった葉巻を平然と燻らせ続ける機関士の横顔のショットが渋い。  暴風雨のシークエンスで、「サウンド版無声映画」となるのも『つばさ』のW・A・ウェルマンらしいアクション演出。  脇役ながら、スースー役:ジョイ・キムが前半に見せる愛嬌、後半で聞かせる歌声が良い。 
[ビデオ(字幕)] 6点(2010-11-20 18:09:55)
312.  ナイト&デイ
前作でも気になるクロースアップ過多はスターへの配慮というのは勿論了解するにしても、場面展開の快調なテンポを相殺してしまうくらいの単調さ。(おまけにヒロインの魅力まで損ねている。) 特に上半身主体で行われる閉所内でのアクションはもっと寄り引き織り交ぜて撮って欲しいところ。 航空機内での格闘動作はかろうじて把握できるが、下半身を用いる羽交い絞め脱出術などはバストショットで撮ってもまるで芸が無い。だから、列車内でキャメロン・ディアスが殺し屋の拘束から逃れた瞬間に殺し屋の胸に深々と包丁が刺さるというアクションの流れもよくわからない。  その反面、視覚加工を加えたカーチェイスシーンなどは見事な出来になっている。  後方から接近してくるバイク~遮蔽物~宙を舞う無人のバイク~ボンネットに取り付いてくるトム・クルーズの笑顔、その絶妙のタイミングと外連味。 同じく、武器売人のアジトで手下が次々とロープで首を吊られていくショットのアクション感覚や、トム・クルーズの見事な走りと跳躍が活きる屋根伝いの逃走アクション。 そしてバイクチェイスから高架下へのダイブ~桟橋へのジャンプまで、一連の体当たり的アクション繋ぎのスピード感はクライマックスに相応しく爽快。  ドアミラーに映るジェット機、列車の窓に残った指文字の跡などの小技も楽しい。 
[映画館(字幕)] 7点(2010-11-07 21:08:30)
313.  小間使の日記(1946) 《ネタバレ》 
ロケーション主体で硬質な画面のブニュエル版(1963)に対し、ほぼ全編セットのルノワール版。 画面の感触にしても、少々強引気味なハリウッド的エンディングにしても印象は大きく異なる。  ポーレット・ゴダードの笑顔と笑い声は、後年の『黄金の馬車』のアンナ・マニャーニを思わせる快活な響きで、髪を下ろした表情のアップなどもとても魅力的に撮られている。 また、ルノワール的な風変わりキャラクターを演じるバージェス・メレディスも、その容貌にそぐわない軽快な動きをみせ印象的だ。そのハイテンション気味のアクションが、リスや家鴨とともに、生の「動」と死の「静」を際立たせている。  セットの都合によるのだろう、屋内と屋外を縦に開通するルノワール的ショットに欠ける点などには物足りなさを感じるが、賑やかなモブシーンの活気や、家鴨の屠殺の瞬間にカメラを屋外に引いて小間使い部屋の窓のショットへと繋ぐ移動などはやはり特徴的だ。  そして圧巻は、群衆を俯瞰で捉えながら横たわる男に寄っていく移動ショットの凄味。 ここでも、静と動が強烈に印象づけられる。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2010-11-04 21:33:41)
314.  ドノバン珊瑚礁
リー・マーヴィンの漂着を歓迎する島民のウェーブのアクションからしてすでに幸福感全開。  ハワイアンメロディーが流れる南洋の長閑なリズムの中で、窓枠の外に映し出される降雪や青い稲光などの印象的な細部が厳かなアクセントをもたらしつつ、土砂降りのスコールやジョン・ウェインらの殴り合い、きびきびしたジープ操作や水上スキーのスピード感、エリザベス・アレンが幾度もみせるズッコケぶりといった豪快でコミカルなアクションの要素がさらに幸福感を呼び込む。(ビールの栓抜きや、「休戦」の握手の仕草も小粋で良い。)  三人の子役たちの存在も、大きく貢献している。長女役:ジャクリーン・マルーフのナイーブなイメージ。水上スキーに出かけることになった三人の子供たちが、神父がいなくなった途端にはしゃいで踊り出す場面の無邪気な愛らしさも特筆もの。  そして様々な国籍、職種、階級、民族の老若男女がスコールに濡れながら一堂に会する教会の場面も素晴らしい。
[DVD(字幕)] 8点(2010-10-31 19:46:37)
315.  エクスペンダブルズ 《ネタバレ》 
ジェット・リーとドルフ・ラングレンの格闘まで、編集で「ワンショット(一打)・ワンショット」まで切り刻む愚に悲しくなる。  打撃間の「間」を削ることが、キレの良さとでも勘違いしていると思われる。 おまけに顔面アップの連続で、まともに体技も間合いも見せてくれず、徒手格闘戦の面白味がまるで無い。CGを大幅に封印したとしてもせっかくの格闘系俳優自身によるアクションが活きていない。 二度のカーチェイスも単に派手で大味。格闘シーン同様に運動の持続性も緩急も無く、空間と位置関係の提示には全く無頓着で、興を削ぐ。  「売り」らしいスリーショットは、まともなスリーショットならず。バランスの配慮か、役者の絡み演技未熟のためか、スケジュールの都合か。各々の短い単独ショット、あるいは無言のツーショットの組み合わせを単調に繋いだのみで、三人の正面姿を1ショットに収めた持続的画面はほとんど無い。背中だけの代役が一人いれば、三人揃わなくても撮れてしまう貧弱で胡散臭いシーンだ。  クライマックスに至ってもひたすらな「作戦無き」乱打戦の連続に、途中から安泰感すら感じさせてしまうのも良いのか悪いのか。  一方でフルオートショットガンの重低音や、中盤の橋桁での空爆ロングショットといった派手な見せ場、音響は良い。  『デモリションマン』風のベレー帽、『コブラ』風のレーザーサイト、サングラスといったセルフオマージュ的アイテムの数々は懐かしく、橋桁での泥臭い「全力疾走」ショットはシルヴェスター・スタローン映画必須の刻印ともなっている。   
[映画館(字幕)] 4点(2010-10-17 21:30:17)
316.  トイ・ストーリー3
序盤の列車アクション、2度のゴミ回収、飛翔による脱出、夜間の「脱獄」のシークエンス、そして溶鉱炉へ向かうコンベアーラインの活劇。いずれも縦の構図による遠近法に立体効果を活かした極上のサスペンス演出。同時に、水平軸から垂直軸へのアクションを複合させることで共通しており、空間表現としても大変充実している。(第一作でみせた、カーアクションから一転、ロケット上昇という見事な軸転換から全くぶれていない。)  それら空間造形術といい、暗いナイトシーンが支配する「サニーサイド」保育園の構造的隠喩といい、ポール・グリモーから宮崎駿経由の継承が窺える。(冒頭の同時上映『デイ&ナイト』の主題とも通じ合う)  絶妙にデフォルメされた全身表現によって付与される人形たちの喜怒哀楽の感情と生命感。内気な少女の細やかな仕草・表情変化の豊かさ。脱出シーンの切れ味の良いパンショットやダンスシーンの見事なカッティング。溶鉱炉の赤から、夜明けの美しい光への推移。全編見所に溢れている。  そして、文字に拠らずに行為の画面で語ったラストは大したもの。
[映画館(字幕)] 8点(2010-09-25 23:15:07)
317.  ベスト・キッド(2010)
北米の意識はもはや日本ではなく中国にあり、という感じでパワーバランスの時代推移を厳然と反映している点、リメイクだけに興味深い。  寄り気味のカメラは、多用されるフォロー移動とともに、観客が見るべき対象をひたすら限定して先導してくれる。ここだけ見なさい、というサービス過剰な介護式。加えて、饒舌なBGMがここぞという場面を盛大に誘導・援護してくれる。だからとにかくわかりやすい。 そして、アクションシーンの編集は少々リズム偏重気味で「ワンショット性」に欠け、剛柔の表現としては不満を残すのだが、序盤中盤で何度も反復された円や弧のモチーフは武術の基本として止めの回転技として活きてくる点は見事。  また、光を意識した印象的な画面も豊富でいい。ガールフレンドと戯れる公園の噴水に反射する光、影絵劇場の幻燈、J・チェンがJ・スミスを諭す中庭の場面での眩しい入射光、そしてヘッドライトの光の中に浮かび上がる二人の教育と伝授のシルエットが感動的だ。(それを影から見守るT・ヘンソンの姿も)  そして、キャラクター達も主演二人を始めとしていずれも魅力がある。いずれの登場人物も何らかの弱さを持ち、それを克服させ成長させるという作劇の丁寧さゆえでもある。 特に、作り手の少年少女に対する目線の温かさは心地よい。  トーナメントの前、贈られた道着に対してJ・スミスが漏らす『ブルース・リー』の一言に初めて顔をほころばせるJ・チェン。その笑顔が泣かせる。 
[映画館(字幕)] 8点(2010-09-04 20:57:59)
318.  インセプション 《ネタバレ》 
水飛沫を効果的に使った高速度撮影の用法と複数のクロスカッティングが、時間感覚の設定と巧く絡み、クライマックスのカウントダウンにはそれなりに切迫感がある。 チームメンバーの分散と各階層の分散によって、5つのシチュエーションのクロスカットを何とか強引に纏め上げたのは流石というべきか。それも、ハンス・ジマーの劇伴にかなり負っているが。  反復はクドく、主体が分散しすぎで、親子のドラマ、夫婦のドラマ、メンバー間のドラマと欲張ったもののいずれも冗長かつ中途半端で盛り上がらない。設定には凝る一方、アクションパートは付け足し感覚で、展開にはまるで緻密性を欠く。(夢だからね。)  夢には欠かせない水のイメージは豊富で良い。(波打ち際、土砂降りの雨、水槽、川)
[映画館(字幕)] 5点(2010-08-16 23:09:41)
319.  ソルト 《ネタバレ》 
一般的に「演技派俳優」は心の内面を表情・身振りの付加によって過剰なまでに主張しがちだが、余計な演技がない場合こそ、人物の心理・感情が生々しく伝わるのが映画の面白さ。 危険なアクションが全編にわたって連続するこの映画で、アンジェリーナ・ジョリーは走る・飛ぶ・格闘する身体運動に集中するとき、演技どころではなくなる。 一方で、心理のガードを高度に教育されたスパイの役柄を演じる彼女は、その表情を大きく変えることもない。  その演技・非演技ない交ぜの相貌が、画面に緊張とエモーションを呼び込む。特に復讐物語となる後半、その抑制的な表情と殺戮アクション自体の過激さと強度が、彼女の怒りと悲しみを強く画面に漲らせる。とりわけ中盤のアジトのシーンで、唐突にある場面に遭遇する彼女の無表情が示唆する内面の葛藤と、それに続く無表情の虐殺シーンのケレン味が感動的だ。  終盤の暗いヘリコプター内、交感する二者を結ぶ夜明けの薄明かりの水平ラインも美しい。  劇の二段構成、金髪と黒髪、高所感覚等〃の要素は『めまい』にも通ずる。
[映画館(字幕)] 8点(2010-08-14 22:59:49)
320.  ローラーガールズ・ダイアリー
主人公がローラーダービーに惹かれる瞬間を、チラシ配りの選手達が店を出て行く逆光の縦構図1ショットで印象づける技量。父親、母親それぞれが娘の出場するダービー会場へと向かう途中経過の描写などは省いても物語に一切支障なしとする大胆さと聡明さ。  対話シーンの切返しなどは極めてオーソドクスなのだが、圧縮と省略を駆使したシークエンスごとの繫ぎが圧倒的に巧く、テンポとスピード感は抜群だ。ありふれた物語でありながら、場面転換の妙によって観客を全く飽きさせない。簡潔性と経済性の美質が弁えられている。  一例あげるなら、ヒロインがコンテストの控え室から決勝戦の試合会場へ向かうシーン。車の発進をワイプの効果として使い、一人の少女がヒロインの着るはずだった衣装を纏い見送る姿を捉える。その簡潔にして雄弁なワンショットが、さらにラストのスピーチ原稿に連なっていく語り口の見事さ。  それでいて、物語とは無縁なショットの豊かさが映画を充実させる。金色の草原の情感。プールシーンの光の揺れや、二人の飛び込みと同時に水中に潜るカメラの垂直移動の気持ちよさ。腕立て伏せなどを始めてしまうあの司会者の可笑しなパフォーマンスは即興だろうか。 愛すべきキャラクター達の魅力的な表情を的確に掬い取る手腕に恐れ入る。  エンディングロールを見ると膨大な楽曲数なのだが、全編すっきりまとまっているのも好感度高い。
[映画館(字幕)] 9点(2010-07-26 23:21:58)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS