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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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441.  クリフハンガー
天敵ソ連を失って以降は迷走の続いたスタさんにとっては起死回生の作品であり、ジュラシック・パークをも超える大予算で挑んだ超大作だけあって、アクション好きにとっては大満足の作品です。しかも単純なドンパチアクションに終わらせておらず、崖を登ったり斜面を滑り落ちたりという雪山ならではアクションを中心にして見せ場を作っているのですから、他のアクション映画とはレベルの違う、かなり丁寧に作られた映画だと言えます。今回は山岳救助隊員であって戦闘のプロではないという設定を最後まで裏切ることはなく、スタさんが銃を一発たりとも撃たない、プロの傭兵と素手で格闘すると負けてしまうという辺りも新鮮です。また、CGが本格的に使えるようになる前の時代の作品だけあって、生身の人間が危険な撮影に挑んでいるという緊張感もバシバシ伝わってきます(スタさんの登場シーンはセット撮影が多いような気がしましたが…)。この辺りは、監督にレニー・ハーリンを持って来たことが功を奏しています。大予算にもまったくひるまぬ図太い根性があり、またスタッフや役者にいかなる無茶も要求する暴君ぶりも有名な監督だけあって、大変な困難を伴う撮影を妥協なくやりきっています。。。ただし、ハーリンの起用が裏目に出ている部分もあって、ドラマパートが台無しになっているのはその最たるもの。本作はアクションだけでなく、ドラマパートも実は充実しています。スタさん演じるゲイブは、敵の手から逃れた時点でさっさと下山してしまうという選択肢があったにも関わらず、親友のハルを救うためにテロリストと戦います。そのハルとは恋人の死を巡る深いわだかまりがありながら、それでもなお親友として彼の命を救おうとする熱い話でもあるのですが、ここが完全にスルー。対するテロリストは一枚岩ではなく、内部では殺し合いにつながりかねないほどの対立が発生しています。また強奪作戦の失敗からテロリスト達が猛烈に焦っているという珍しい描写も入っており、よく突っ込んだ話となっているのですが、これまた設定を活かしきれていません。演技のできる役者で脇を固めていることからも、本作をただのアクション映画には終わらせないという製作側の意思が読み取れるのですが、これらをうまく機能させられていないのが残念なところです。
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-12 22:20:32)(良:2票)
442.  コマンドー
四半世紀にも渡って毎年テレビで放送され続け、細かい筋まで全部知ってるのに毎回見てしまうという麻薬のような映画です。そして、そんな人気作の割にビデオ屋では絶対に貸し出し中になっていないという不思議な映画でもあります。。。サイボーグという設定すら必要ないと州知事の底知れぬ素質を見抜いたジョエル・シルバーはさすがの慧眼で、本作は頭から尻尾まで州知事の魅力満載です。丸太を担いでの登場からすでに千両役者ぶりを発揮。タイトルバックではアイスクリームを味わう州知事、鹿にエサをやる州知事、川釣りを楽しむ州知事、プールで馬鹿笑いをする州知事と、他の映画ではなかなか味わえない州知事の姿を堪能できます。本編では設定について軽い説明が入ると、その後は州知事がひたすら暴れまわるという素直な仕上がりになっていて大変好感が持てます。その暴れっぷりについても、十数人の警官相手に格闘して余裕で勝ったり、車のシートをいとも簡単にもぎ取ったり、悪役を電話ボックスごと投げ飛ばしたりと、スタローンやヴァン・ダムでは成立しない、州知事だからこその見せ場が続きます。本作を作った人たちはキャメロン以上に州知事のポテンシャルを理解していたんだなぁと感心します。島での戦闘の前には、流れ的にまったく不要であるにも関わらず州知事はビキニ姿を披露。股間に目が釘付けなのです。ガシャッ、ガシャッと装備を身につけるかっこよすぎるシーン(今ではアクション映画の定番ですが、これをはじめてやったのは本作ではないでしょうか?)に続き、重装備でいよいよ乗り込む場面には「待ってました!」と声をかけたくなります(重装備で茂みから現れる様は、花見の場所取りみたいでしたが)。この辺りの盛り上がりは、アクション映画としての本作の正しさを証明しています。いかに大勢の敵を相手にしても絶対に弾が当たらない、これも州知事の魅力でしょう。もはや人徳すら感じさせます。州知事の相手となるベネットもまた素晴らしく、「タイマンで決着をつけようぜ」と素手の対決に持ち込もうとする州知事の挑発に顔をくしゃくしゃにして心揺れ、「じ、銃なんか必要ないもん!」と強がるオーバーアクトぶりは隠れた見せ場なのです。。。なお、本作の続編への出演を州知事は断ってしまったのですが、その企画が流れに流れて「ダイハード」となったのはアクション映画史上のちょっといい話です。
[地上波(吹替)] 7点(2009-10-11 23:05:00)(笑:2票) (良:1票)
443.  300 <スリーハンドレッド>
原作は未読ですが、すべてのカットに「コミックをまんま実写化してやるぜ!」という作り手の気合が満ちていて、これを見てしまえば原作を読む必要はないのではないかという勢いです。本場のスパルタ教育を見せつけられる冒頭から突っ走ってます。生まれた赤ん坊は選別され、子供の頃から暴力の世界に放り込まれる容赦のなさ。スパルタという国とこの映画の作り手はガチンコですよ、何のためらいもありませんよという心意気をここでガン!と見せつけられます。スパルタの元気な兵士達の如く、この映画はあらゆることに躊躇がありません。エロ、グロ、人種差別、障害者差別、普通のハリウッド映画なら良心的に避けるネタを恐れず扱い、血生臭く生きた古代の男たちの物語を、古代の倫理観で描いてみせます。本作のようにお金のかかった大作であっても、骨抜きにしてはならない企画にはかなり自由を許すハリウッドの柔軟さ、企画の本質を理解して適切な意思決定を下せるそのシステムには、素直に感心します。気合入れてトンチンカンなことをやってしまう我が国の映画産業とはやっぱり違うなぁと。そんな本気の原作・脚本を受け、監督の演出もやっぱりガチンコ。前作「ドーン・オブ・ザ・デッド」もビジュアルで押し切る映画でしたが、本作ではまったく違う画面作りを見せるあたりに監督の底知れぬ才能を感じます。100万人の大軍勢を相手に300人で戦うというムチャな話ながら、スパルタ兵ひとりひとりの強さ、誰かが攻めている時は誰かが守っているという合理的な戦法をわかりやすい形で画面に提示したことで、映画を成立させるだけの説得力は維持できています。多国籍軍たるペルシアが次々と繰り出すマンガチックな軍勢の実写化も見事で、こういうキャラ立ちした敵が多いと男子は燃えるのです。また、こうした敵以上にスパルタ軍の濃いこと。常に目がギラギラ、一言しゃべるにも血管が切れそうな地中海の中尾彬ことレオニダス王を筆頭に、男臭いを通り越した300人の男たち。友軍と合流した際に「たった300人かよ」とガッカリされると、友軍の兵士を指さし「お前の職業は?」「鍛冶屋です」、「お前は?」「パン屋です」…「本物の兵士の数なら俺たちのが多いぞ!うぉ~~~!」終始このテンションなのです。圧倒的なビジュアルと並んで、このまっすぐな男たちについても「珍しいものを見たなぁ」という気分にさせられます。
[映画館(字幕)] 7点(2009-09-17 22:19:34)
444.  インクレディブル・ハルク(2008)
制作陣の異様なまでの気合は伝わるもののチ~っとも面白くなかった「ハルク」を反省してか、スピーディな展開、明確なライバルの存在と、マンガ映画に徹した本作は十分に面白い出来となっています。アメリカ人なら誰もが知っている物語の発端を数分のタイトルバックで済ませてしまうという、前代未聞の荒業からして光っています。普通、コミックの実写化は「みんなが知っているおなじみの展開をどう実写で表現するか」に全力を挙げて挑むものですが、本作は「どうせみんな知ってるんだからあらためて説明する必要もないだろ」と、コロンブスの卵的発想で切り捨ててしまったこの潔さ。一方で、いくら巨大化しても破れないパンツや、ハルクに変身した後、裸で放り出されたバナー博士は一体何をやっているのかといった、原作がうやむやにしていた部分をキチっと実写化。物乞いをしてとりあえずのお金を入手し、真っ先にパンツを買っていたんですね。変身すると裸になってしまうので、貴重品は事前に飲み込んで胃袋にしまっておくという生活の知恵も面白かったです。以上、刈り込むべき部分は大胆にカットし、説明が必要な部分にはきちんと答えを準備しておくという、よく出来た構成だと評価できます。一方アクションシーンになると、こちらは良い意味でマンガチックな大味さがあります。事情を知らずバナー博士をいじめる街のチンピラ&特殊部隊登場で「ヤバイ、ヤバイ、変身しちゃうよ」というイヤな汗をかかせ、いざ変身すると、それまで横柄に振舞っていた連中をひねり潰すという爽快感。これぞハルクです。ブロンスキーの存在も良く、体力の限界を感じていた軍人が力への羨望に取り憑かれて肉体改造を重ねるという設定なのですが、大袈裟な背景やひねった動機付けをするよりも、こういうシンプルな動機の方がかえって説得力があります。いざ怪物が暴れはじめると、次々と兵器が登場し、物を壊しまくるという腕白ぶり。ラストの怪物バトルは、元がエドワード・ノートンとティム・ロスとは思えないような大プロレスが展開されて目を飽きさせません。怪物がベラベラと話し始め、最後の「ハルクスマッシュ!」にはさすがに驚いてしまいましたが。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2009-09-06 20:48:30)(笑:1票) (良:3票)
445.  コナン・ザ・グレート
「レイダース」とほぼ同額、「ET」の約2倍の製作費が投入された超大作なのですが、ジョン・ミリアスとオリバー・ストーンが自由にやった結果、血と裸と小難しいセリフに溢れた、ヒットするとは到底思えない作品となっています(DVDのメイキングでは、興行的に成功しなかったにも関わらず、2人ともこの映画について満足げな顔をしています)。当時のラウレンティスは、「エレファントマン」がヒットしただけのデビッド・リンチに洒落にならない額の製作費を与え、これまた暗くグロテスクな「砂の惑星」を作らせており、プロデューサーとして観客に受ける映画を作る気があったのかと不思議になるような仕事をしています。そのような「管理不行届き」の現場で製作されただけあって、本作は娯楽作として成功しているとは言いづらいものの、他に類を見ないようなクセの強い仕上がりとなっており、面白くはないが見応えのある作品にはなっています。コナン少年の村が侵略を受ける序盤からすでに暴力はフルスロットルで、女も年寄りも皆殺しにされるわ、コナンの目の前で母親が首を飛ばされるわと惨い描写が続きます。その後も、奴隷としてのコナンの成長は悲惨極まりないわ、剣闘士となってからも人間扱い受けないわと、鬱になるようなお話が続きますが、こうした容赦のなさが殺伐とした世界観の表現に役立っています。セット教の巨大神殿やかなりの人数のエキストラ、凝りに凝った小道具や衣装など、お金をかけるべきところにタップリ資金を投入することで、世界観の構築がより強固なものとなっています。また、黒澤明をリスペクトするミリアスだけあって、チャンバラの迫力も他の映画とは一線を画すものとなっています。ダンスのような美しいだけの非現実的な殺陣ではなく、重量感や痛みを伴った戦いが展開されるのです。終盤の決戦に至ってははまんま「七人の侍」なのですが、さらに少数の味方で大勢の敵を迎え撃つというウェスタンの要素も加わり、なかなか燃えさせる見せ場となっています。願わくば監督経験の少ないミリアスではなく、娯楽についてもっと小慣れた人物が監督を引き受けていれば、それなりの佳作になっていたかもしれません。
[DVD(字幕)] 7点(2009-08-15 01:28:57)
446.  逃亡者(1993) 《ネタバレ》 
バリバリの娯楽アクションでありながらオスカー作品賞ノミネートという快挙を成し遂げた作品だけあって、面白さはズバ抜けています。この栄誉、公開当時はアンドリュー・デイビス監督の手柄とされていましたが、本作によりAクラス入りして後に撮った「チェーン・リアクション」「ダイヤルM」を見ると、やはりこれは実力以上の作品だったようです。真の功労者は、「ダイハード」でもジョン・マクティアナンに実力以上の仕事をさせた脚本家のジェブ・スチュワートでしょうか。「ダイハード」同様、本作も作りの精巧さが光っています。派手なアクションはあるもののご都合主義のウルトラCはなく、すべての行動が理にかなっているのです。またジェラード保安官の作り込みが素晴らしく(オリジナルのテレビシリーズでは感情移入しがたい人物だった)、「俺は無実だ」と言うキンブルに対し「知ったことか」と切り返す様は最高にかっこよく、また「ヘリを飛ばして、パトカーを2台よこせ。3キロ先まで封鎖だ」などと恐ろしく的確に指示を出す様は本物よりもプロっぽいわけです。キンブルを追う公権力の立場にいながら真実の究明についてフラットであり、キンブルの冤罪の可能性が高くなると、柔軟にその姿勢を変えるあたりも好印象でした。この役に巡り合えたトミー・リーは幸運だったと言えます。…と、すぐれた作品であることを前提としつつ難を言えば、前半のハイテンションな逃亡劇と比較して、後半の謎解きに入ると途端に作品の勢いが衰えることでしょうか。後半部分も通常の作品と比較するとそれなりのレベルを保っているものの、前半の圧倒的な面白さとの落差でどうしても見劣りしてしまいます。また、キーパーソンであるはずのニコルズ医師の存在感が驚くほど薄く(すべての黒幕なのに、特に印象に残らない素晴らしさ)、彼をより際立たせれば、ドンデンの衝撃度がより増したはずです。
[DVD(吹替)] 7点(2009-07-30 20:25:02)
447.  トランスフォーマー/リベンジ 《ネタバレ》 
自分は前作を評価していないのですが、前作とまったく同じ路線ながら特盛り状態でやりきった本作には脱帽です。相変わらずコメディがくどいし、暗号の謎や人類とロボットの歴史などは実にどうでもいいし、脚本の出来が今ひとつなのは相変わらずですが、しかし評価できるのはロボットの描写が圧倒的に良くなっていること。アニメのトランスフォーマーが愛された最大の理由はロボットに個性を持たせたこと、味方だけでなく敵方のキャラクターも充実させたことにあります。前作ではオプティマスとメガトロン以外のロボットは個性がないに等しい状態でしたが、本作ではきちんと各ロボットのキャラが立っています。特に、古参兵スカイファイヤー、途中から人間方へ寝返るウィーリーは映画を面白くしています。情報収集を行うサウンドウェーブのクールさも気に入りました。また、アニメではおなじみの場面も再現されています。アニメにおけるコンボイは、デストロン航空部隊に悩まされると「なんでうちには飛べるのがいないんだ」と元も子もないことで怒り出したり、「私にいい考えがある」と言って提案する作戦がたいていしょーもなかったりと天然の部分があったのですが、今回の映画版においてはその天然ぶりも再現。「人間の君の言うことなら聞くだろう」と、いち大学生のサムにオバマ大統領を説得しに行かせようとします。またメガトロンによるスタースクリームへの容赦のない罵倒、「覚えとけよ~」と情けなく戦場を後にする様もこの映画にはあります。そして男子の心を燃えさせたのは、「変形」と並んでロボットには欠かせない「合体」が盛り込まれたことです。7体合体の超巨大トランスフォーマー・デバステーター登場には「これが見たかったんだ!」と心底感動しました。そしてオプティマスとスカイファイヤーの合体には、感動を通り越して若干涙目になってしまいました。元は敵方にいたスカイファイヤーとの合体ですから、これは両軍のテクノロジーが合わさった究極の合体なのです。合体後のベラボーな強さ、「動きにくくないか?」というほどのゴテゴテしたデザイン、どれも私のツボでした。よくぞここまでロボット好きの期待に応えるものを見せてくれたものです。ベイのアクションは相変わらずド派手で、たまに美しさを見せるものの、長い長い戦闘シーンがひたすら同じリズムなのでもう少し流れを意識したアクションにすべきでしょう。
[映画館(字幕)] 7点(2009-07-14 19:22:22)
448.  ニューオーリンズ・トライアル 《ネタバレ》 
知的なのだけど分かりやすく、言葉のやりとりにアクション映画のようなキレがあり、また観客が集中力を維持できる程度に上映時間が抑えられていたりと、レベルの高い娯楽作となっています。ほんの僅かな登場ながら銃撃の被害者となった証券マンに感情移入させたり、それなりに人数のいる陪審員たちの個性や背景を短時間で描いていたり、多くの思惑が絡む話ながら交通整理がうまくなされています。法廷サスペンスという括りながら、フィッチのチームが活動する際にはブラッカイマー作品のような編集がなされていて、これにより単調になりかねない法廷ものののビジュアルが面白いものとなっています。残念なのはキューザックの家が荒されるなど直接的な暴力が描かれた点で、百戦錬磨の法律家が捕まったらおしまいの愚かな戦い方はしないでしょう。また、ダスティン・ホフマンの助手や盲目の陪審員など、せっかくの前振りはあったのに本筋に絡まない登場人物が多く存在することも残念でした。上映時間を抑えるために割愛されたのでしょうが、動かせば面白くなりそうなキャラもいただけに、余計なアクションを入れるくらいならこちらに時間を割くべきでした。極端なフィクションとはいえ、この映画を見るとアメリカの裁判制度はガタガタであることを実感します。裁判とは、審議している案件が法律に違反するか否かを吟味する場であるはずなのに、どのような嗜好を持った陪審員が選ばれるか、口のうまい弁護士やフィクサーがこの陪審員をどう誘導するかで結論が変わってしまうのは裁判と言えるのか。銃メーカーが悪い、タバコメーカーが悪いと、善意ある商売とは言えなくとも、ともかく法律に違反しているわけではない企業を訴える消費者がいて、時にバカな訴訟にも付き合う弁護士がいて、彼らの要求する法外な賠償金を認める法廷がある。銃が簡単に手に入る社会を容認してきた国民側の責任はないのか、体に悪いことを知りながら喫煙をやめない自分に責任はないのか、そのような当然の理屈をすっ飛ばし、「かわいそうな被害者がいるから」で陪審員の同情を買って合法的な企業が悪者にされるおそれがあります。となると企業側が過剰な自己防衛に走り、フィッチのような人物が現れるのも理解できます。そして彼らが裁判に勝つため汚い手を使い、本当に裁きの必要な案件まで握りつぶしてしまうという悪循環が発生し、評決は金で買うものとなっています。
[DVD(吹替)] 7点(2009-07-04 09:48:43)(良:1票)
449.  バッファロー'66 《ネタバレ》 
女性に縁のなかった30男の前に、勝手に自分を好きになってくれる女性が現れる男のファンタジー。…と普通ならありえない話なので、脚本や撮影にデフォルメ化の工夫が凝らされています。ビリーの登場からして独特で、なんとおしっこのエピソードで彼の人となりが紹介されます。「このトイレは使うな」と言われれば素直に従い、清掃中の公衆トイレに無理矢理入ったりもせず、限界に近いのに立ちションもしないという律儀な性格。ようやく入ったトイレで「俺のもん見ただろ」とブチ切れますが、幼い子供はち○こが大きいことにコンプレックスを抱き、大人になると小さいことにコンプレックスを抱くと言われており、立派なものを持っているのにこれを見られることを極端に嫌うビリーは、歳だけとっていても中身は子供なのです。ビリーが大きな子供である原因、それは両親にありました。ふたりとも100%の悪人ではなく、息子の奥さんを快く受け入れたり、お節介を焼きたがる面もあるのに、一方で息子のアレルギー体質のことも覚えておらず、ビリーやレイラがバレバレのウソをついても詮索しない。息子に対する関心が極度に欠けており、ビリーは30歳をすぎた今もこの両親を振り向かせるために必死です。人生ではじめて自分を無条件に愛してくれるのは両親なのですが、この愛情を受けられなかったビリーは自分が人から愛されるということをなかなか理解できません。そんな彼を辛抱強く待つレイラはまさに天使ですが、レイラはなぜビリーを好きになったのか?そのとっつき憎さから、多くの人はビリーの良さに気付く前に距離を置こうとします。しかし誘拐というシチュエーションにより、レイラはイヤでも彼を近くから観察することになります。またレイラ自身も変わり者で、ダンス教室でもみんながダンス用のウェアを着ている中、彼女だけは私服で踊っています。ふくよかな体型に何かを間違えたメイクと華やかな人生を送っていないことは察しがつきますが、ビリーはそんな彼女を捕まえて「奥さんになれ」と言い、また乱暴な態度の彼がレイラの見た目や性格について文句を言うことは一度もありません。これはビリーが一方的に愛情を受ける話ではなく、レイラにとってもビリーは人生で欠けていたものを補ってくれる存在であり、孤独に生きていた人生に突然現れた天使なのです。
[DVD(吹替)] 7点(2009-06-18 14:54:53)(良:7票)
450.  Mr.&Mrs. スミス 《ネタバレ》 
ブラピ&アンジーという豪華キャスト(しかも単純な娯楽作を敬遠する傾向にあるふたり)を揃えながら、意外なほどストレートなアクションコメディとなっています。また、監督がダグ・リーマンだけに一筋縄ではいかない作品になるのかと思いきや、最後まで軽いノリを通しているのが好印象です。この手の作品にありがちな「絆を再確認する夫婦の感動的な姿」みたいなホロっとさせる展開も入れておらず、アクションコメディはこうあって欲しいという仕上がりとなっています。豪邸に住む美男美女の殺し屋夫婦という浮世離れした設定ながら、これを違和感なく演じてみせるブラピ&アンジーのスターオーラは大したもので、高い服を着こなしたり、夫婦の軽いやりとりをしたり、激しいアクションをやったりとどれも様になっているのはさすがです。ボーン・アイデンティティの時に「もっと見たい」と思ったダグ・リーマンのアクションもたっぷり楽しめます。この人のアクションに独特のクセはないものの、美しさと合理性、武器へのこだわりが調度いいバランスで同居しており、なかなか良い見せ場を作ります。またコメディ部分もただバカバカしいだけではなく、夫婦というものがきちんと描けています。片方の話をもう片方がほとんど聞いていなかったり、悪意なくとっさに出た一言(ここでは一発の銃弾)が相手に火を点けたり、一方が優しくなった時にもう一方が意固地になってトゲのあることを言ったり(そして直後に後悔)、日本もアメリカも夫婦のやることは同じなんだなぁとしみじみしました。ジョンはガレージに、ジェーンはキッチンにと、家の中なんだけど男(女)にはわからない場所に武器を隠してあるのもツボでした。残念なのは夫婦ゲンカが終わって二人が力を合わせる後半になると、途端に話がつまらなくなること。会話の面白みはなくなるし、アクションも大味でありきたりなものとなります。「二人を相討ちさせるために全部組織が仕組んだものだった」というオチは完全に蛇足で、そんな気の長く不確実性の高い罠を張るくらいなら、直接殺した方が早いわけです。またスミス夫婦は「逃げずに戦おう」と決心したのでてっきり組織の中枢に襲撃でもかけるのかと思いきや、ショッピングモールで刺客を返り討ちにして終了(ど真ん中に突っ立って一心不乱に撃ちまくったら敵が全滅という投げやりなアクション)で、大変な肩透かし感がありました。
[映画館(字幕)] 7点(2009-06-13 13:46:58)(良:2票)
451.  ジャッキー・ブラウン 《ネタバレ》 
タランティーノ作品においてダントツで影の薄い作品ですが、彼の才能やクセがよく現れ、キャリアの分岐点となっている作品だと思います。とにかく長いこの映画。パルプ・フィクションも同じ155分でしたが、あちらは4つのエピソードを組み合わせているのに対し、こちらはワンエピソードで長尺を引っ張っており、本来B級の素材で2時間半は長すぎるように思います。しかしこれが絶対的な欠点でもないのが難しいところで、ムダに上映時間が長いのではなく、登場人物を丁寧に描いた結果がこの長さとなっています。タラのキャラ描写は独特で、ただテレビを見たり、ヤクをやってボーっとしているだけという「何も起こっていない」様子を映すことで、彼らの特徴を示します。そのため話は常に進んではおらず、完璧に止まっていることもあります。こうした、話全体にとっては何の意味もない描写により登場人物は特有の存在感を放っており、例えば同時期に製作されたアウト・オブ・サイトと比較すると、こちらの方がずっと印象に残るし、映画自体も楽しいものとなっています。問題は、タラが観客の生理に合わせた映画を作ろうという意思を持っていないことでしょうか。好きなキャラクター、好きな音楽、好きな場面をコラージュし、自分流の映画を作ることについては完璧。また、タラは変わった映画を作る監督として認識されていますが、ショッピングモールで紙袋をすり替えるシーンなどは、銃撃や追っかけが起きているわけでもなくただ紙袋をすり替えるだけなのに、ハンパではない緊張感に包まれており、正攻法の演出の才能もズバ抜けたものであることがわかります。しかし一本の映画としてのトータルのバランスはあまり意識していないようで、ショッピングモールで映画のテンションが最高潮に達した後に30分もダラダラと映画を続けてしまったことは失敗でした。一方でレザボア・ドッグス、パルプ・フィクションと初期作品はバランスのとれた娯楽作となっていることから、タラは娯楽ができない人ではなく、やろうと思えばできるけど、自分の描きたいものを優先して全体のバランスを犠牲にしてしまう人なのだと考えられます。本作以降はさらに好きなものに突っ走り、当初評価されていた抜群の構成力まで捨てつつあります。才能あるクリエイターが迎合しすぎず好きなことをやるのは良いのですが、最初の2本だけが傑作という状況はもったいないように思います。
[DVD(吹替)] 7点(2009-06-11 17:25:38)(良:4票)
452.  ハプニング 《ネタバレ》 
死にたくなる毒素が撒かれるというアイデアがまず凄い。異様な死に方の数々はかなり衝撃的で、他の映画とは違うもの、今までなかったものをちゃんと作り上げているのですからシャマランはやはり何かあるクリエイターだと思います。生き延びるためには集団から離れていなければならないというルールも秀逸で、群れをなす性質のある人類にとって、追いこまれるほど集団に依拠できず個人で対応するしかないのは恐ろしいことであり、またその状況で生き延びている他人は常日頃から集団に馴染まない変わり者であったり、人に手を貸さない自己中心的な人物である可能性が必然的に高くなるのですから、人間関係も非常に不安定なものとなります。主人公達は人智の及ばぬ現象と、常識の通用しない理不尽な人間を同時に相手にせねばならないわけですから、「ゾンビ」と「悪魔のいけにえ」の良いとこ取りが可能な、極めて秀逸な設定を作り出したと言えます。人間の描き方も相変わらずユニーク。夫婦の絆の再生というありがちなテーマをとりつつも、この夫婦の亀裂は他愛のないもので、一度ティラミスを食べに行った相手が勘違いして彼氏気取り、それを必要以上に後ろめたく思って旦那に言い出せない奥さんと、その話を聞いて機嫌を悪くする旦那という、「この深刻な世界観でそんな話かい」と呆れるほどどうでもいいものです。シャマラン作品の登場人物は皆平凡で、映画向きではない普通の人たちが常識を超えた現象に立ち会い、これに戸惑い、時にちぐはぐな行動をとり、そして最後には成長してこれを乗り越えるというパターンをとりますが、人間の描き方が抜群にうまいため、SF設定とほのぼのドラマという普通は馴染まないものを綺麗にまとめてみせます。子役の扱いも毎度うまいもので、映画に登場する子供は嫌味なほど良い子か、劇中のイベントを起こすためわがまま放題かの両極端なのですが、本作の子供は緊急事態であることを認識し、何も言わずひたすら大人についていくという現実的な描かれ方となっています。本作で残念なのはラストがあまりに安直だったことで、かなりの人口が失われたはずの街が何事もなかったかのように復興していたり、現象の正体を必要以上に説明してくれたりと、危機の余韻がまるでありません。三人仲良く暮らして新しい子供を妊娠しましたというのもありきたりで、ここで一気にドラマの良さも失われたように感じました。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2009-06-08 14:53:41)
453.  ディパーテッド 《ネタバレ》 
豪華メンバーで製作されたものの仕上がりはオリジナルと同じという、なんとも評価に困るリメイク版です。とはいえパクリの一言で片付けられないのは、プロットのおいしいところだけをいただいた別モノにはせず、シーンひとつひとつに至るまで丁寧にオリジナルをなぞっていること。往年の名作ならともかく、いちアジア映画をハリウッドの大御所がここまで忠実にリメイクというのは前例がありません。ヘタな改変をしてはならないという敬意すら感じられます。例えば、ジャック・ニコルソン扮する親分は地のヤクザにしか見えず、覆面捜査官を送り込むほどの重要人物には感じられないという欠点があります。話に説得力を持たせるにはより大きな犯罪組織にすべきでしたが、あえてオリジナルと同じスケールにしているように思います。携帯や封筒といったアイテムや仕掛けの使い方もオリジナルと同様ですが、ハリウッドの力があればより凝ったサスペンスにもできたはず。しかしそれをあえてやっていないのです。以上話の大枠は一切いじらず、ドラマの通りがよくなるように人間関係のみが変更されています。最大の変更点は主人公達の年齢で、オリジナルでは潜入から相当な年月が経っている設定でしたが、リメイクでは潜入開始から数年間の様子が描かれます。この変更の影響は大きく、大義名分があるとはいえ犯罪に手を染め、自分は警官としての本質を失いつつあるのではと悩むオリジナルの主人公に対し、リメイクでは素性がいつ暴かれるかというビリーのストレスが主に描かれます。この部分のテコ入れのため、ディグナムというキャラクターが追加されています。ビリーを危険な戦場へと突き放すためには温厚なクィーナンのみでは不足であり、ディグナムのような厳しく融通の利かない人間が必要だったのです。こうした変更によりビリーの生死がかかったドラマであることがより強調され、後半では自分はほぼ死人(=ディパーテッド)のようなものであることを悟りながらコリンと対峙するビリーの悲壮感がよく描かれていました。コリンはオリジナルから一転して悪役に徹しています。ビリーの物語を描くためには、コステロとはまた違ったタイプの純粋悪である方がよいので、その上での変更だったと思います。これにより、ラストの廃ビルでの顛末が、形式的にはオリジナルとまったく同じであるものの、意味合いが正反対になっているのは興味深いところでした。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2009-06-02 18:25:03)
454.  コントロール(2004) 《ネタバレ》 
普段はゴミみたいなB級アクションを製作しつつ、たまに「16ブロック」や「ブラックダリア」を作るミレニアム・フィルムズの、メジャーとB級の中間に位置する作品です。B級として見れば傑作の域に入る完成度。凶悪犯リー・レイが変貌する過程が自然で、見ている私達が冒頭で彼に感じた嫌悪感も自然と愛着へと変わっていき、最終的には「彼に悪いことが起こらないでくれ」と思わせてしまいます。コープランド博士についても、さほど多くはない描写の中で背景や心情がきちんと説明されています。特に素晴らしいのが息子の死について話す場面で、感情的にならず淡々としゃべる姿に、深い悲しみやそれを乗り越えてきた重みが込められています。辛い思い出を話した直後にも関わらず「頑張れよ」と笑顔でリー・レイを送り出すところにも、彼の人柄やリー・レイへの思いがよく表れています。ラストで車からコープランドを救い出すリー・レイ、銃弾に倒れたリー・レイを看取るコープランドの友情は、そこいらのメジャー映画にも勝るほど熱く感動的なものでした。最後のオチも単なるサプライズではなくドラマ上の必然性もあり、こういう良いオチをビシっと決めたおかげで映画全体が締まった印象となりました。一方残念なのが、B級専門会社の性か後半が単純な追っかけっこになってしまったことで、ここの安さで予算の少なさがモロバレになってしまい、またせっかく質の高かったドラマが中断されてしまいます。アクションで短絡的に終わらせるのではなく、凶悪犯だった過去を知られて社会的に追い込まれるという展開にした方が本作には合っていたと思います。リー・レイの社会復帰をコープランドや私達は歓迎しましたが、その背後にはかつての彼に傷付けられ、人生が変わってしまった被害者がいます。改心して無害になれば彼は許されるのか?癒されない損害を受けた被害者がいる一方で、彼に人としての幸福を追う自由を与えてもいいのか?という倫理上の問いかけがこの話の背後には存在するはずですが、ここをスルーしてしまったのが残念なところ。「これはあくまでB級映画だから、盛り込み過ぎずシンプルな出来にしよう」という製作サイドの判断もあながち間違ってはいないのですが、せっかく重いテーマにも耐えられる演出や演技が準備できていたにも関わらず、B級止まりにしてしまったのが本当に残念。映画は難しいものです。
[DVD(字幕)] 7点(2009-01-03 13:30:58)(良:2票)
455.  タイタニック(1997)
構造はターミネーターと同じで、不満を抱きながら日常を送っている女性の元にある日イケメンが現れ、襲いかかる脅威から全力で自分を守ってくれる中で愛が芽生え、数日の間に一生分の恋愛を経験するという女のファンタジー。このイケメン、顔だけでなく中身も完璧で、ありのままの自分を愛してくれると同時にいざという時には身を呈して守ってくれる理想の男性。このように少女マンガみたいなベースにアクションを作るのがキャメロンの独特なところです。ただ、ターミネーターの時にはこの傾向にもさほど違和感はありませんでしたが、タイタニックでは特殊な方向にまで進化しています。女性視点で話を展開するどころではなく、フェミニズムへの迎合が見えるのです。「女だからと言って自分の人生を生きられないのはイヤだ」というローズの嘆きはかなりストレートで、女性を縛りつける昔ながらの社会をはっきり悪と位置付けています。婚約者キャルはローズを束縛し、思い通りにならなければ暴力も振るうDV男だし、その対極にあるジャックは「君は人として自由になりなさい」とローズを導きます。キャメロン作品には珍しく一方的な価値観が作品を貫いており、それは物語のバランスを崩しかねないほど。不満があるにせよれっきとした婚約者がいるのに、昨日今日出会ったばかりの男とフラフラ遊び回るのはさすがにマズイでしょとか、貴族社会が息苦しいと言っても、庶民では一生食えないものを食い、欲しいものをいくらでも買えて貴族社会に属する恩恵も十分受けてるんだから、ちょっとはガマンなさいよとか、この映画のモラルには脆弱な部分がいくつもあります。悪役とされるキャルにしても、貴族社会の中では十分浮いているローズの行動を忍耐強く見守っており、また彼女を取り戻すべく沈没寸前のタイタニックに残るなど彼なりに彼女に対して最大限の愛情を注いでいて、一方何不自由なく生きられるはずのローズを貧乏生活に引き込もうとするジャックが正しいとも言い切れません。つまりこれは女性の自立を絶対的な善とするフェミニズムに立脚した物語であり、これをなぜ男性であるキャメロンが作ったのかはよくわからないところです。別に私はフェミニズムが悪いとは思わないのですが、一面的な主張がこの作品の奥行きを奪っているのは確か。ローズの母やキャルの思いも平等に描いて観客に考える余地を与えていれば、もっと良い映画になったと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2009-01-02 03:39:46)(良:3票)
456.  地球が静止する日 《ネタバレ》 
序盤は最高。宇宙人の超越的な力と人類の反応をリアルに描き、知的ながらも見せ場としての面白さも十分。クラトゥの生体構造の考察等、科学的にそれらしく見せることを大事にしているのが好印象です。しかしキャシー・ベイツが現れると途端に話は失速します。国防長官としての対応にまるでリアリティがないのです。宇宙人との接触という歴史的事件に、なぜ合衆国の一閣僚が交渉を行っているのか。ファーストコンタクト時に人類では勝てない相手だとはっきりしたのに、なぜタカ派の姿勢を崩さないのか。そして、ヘレンの息子ジェイコブが話に加わることで、映画はさらに失速します。悪態たれるわ、やかましいわ、警察に通報するわのやりたい放題。こいつの為にヘリに乗ってた兵士が死んでるのに、一切反省なし。あれだけクラトゥに悪態つきながら、いざ自分の命を救われると「あんたいい人なんだね」ってたいがいになさい。そんなジェイコブと再会したヘレンの言葉が「ごめんね、私が悪かった」。親がちゃんと叱らないから、馬鹿ガキが調子乗るんだよ。本来、この墓地の場面が映画のキーだったはず。人類の英知と理性を象徴するヘレンと、人類の排他性と身勝手さを象徴するジェイコブ(子孫が偉大な民族になるとの神の約束を受けたヘブライ人の祖)が、血はつながらず人種が違っていても愛情で繋がっていること、生命を機械的なシステムとして捉えるクラトゥ達よりも深く豊かな生命倫理を人類が持っていること(父を生き返らせてくれと懇願するジェイコブと、それに当惑するクラトゥのやりとりに注目。科学者や政治家をやり込めていたクラトゥが、ここだけは子供相手にも関わらず会話に負けています)、成長によりジェイコブ(=人類の未熟な面)は変わっていくことなどをクラトゥは知り、人類抹殺の中止を決意する最重要シーンだったはずなのに、これが感情移入しがたくなっているのが本作の致命傷。ラストのクラトゥの自己犠牲(=イエスの贖罪)もまったく立たないまま話は終わってしまいます。実はハルマゲドン兵器だったというエヴァンゲリオン初号機状態のゴート(司令室とちょうど目が合う拘束室もまんまネルフ)や、文明を食い尽すナノロボット等、後半のアイデアもなかなかよかったのですが、ドラマ部分の失速によりせっかくの見せ場もインパクト半減。見るべき点は少なからずあるのに、大事な所でコケたのが残念です。
[映画館(吹替)] 7点(2008-12-27 01:14:40)(良:9票)
457.  ボーン・アイデンティティー
映画館ではじめて観た時は「よく出来た佳作アクション」という印象でした。ダイ・アナザー・デイ、トリプルX、トータル・フィアーズ、そして本作を断ってブラッド・ピットが主演したスパイゲームとエージェントものが多く作られた時期でしたが、ド派手な見せ場を売りにした作品ばかりの中、見せ場を切り詰めて地味ながらも穴のない仕上がりとした本作は異色な存在だったと同時に、派手なだけのアクション映画に観客が飽きはじめている空気をうまく感じ取って作ったもんだと感心した記憶があります。とはいえ飛び抜けて面白いわけでもないので「佳作」。現在見返しても単品ではその印象は変わらないのですが、アクションの金字塔となったシリーズの第一作として振り返ると、本作の重要性、非凡さがうかがえます。ジェイソン・ボーンは基本的に知性を武器とし、衝突を避けながら行動していることは論理的に筋が通っているし、いざという時に飛び出す殺人技はこの上なくプロっぽいし、また彼を仕留めるべく放たれた刺客達はストイックなかっこよさに溢れてるし、CIAは役人の勤める官僚組織としてきちんと描写され、お役所ならではの強力なネットワーク、権限の脅威が物語で効果的に使われているしと、このシリーズの持つ優れた点は、すべて第一作の時点で完成されているのです。第二作以降の慌ただしい編集、カメラワークがないので全体的に落ち着いた雰囲気なのですが、影になって役者の顔が映っていないカットがあったり、役者がアクションを起こした後にカメラがその後を追っていたりと(アクション映画にありがちな、見せ場にカメラが先回りしているというショットが一切ありません)、視覚にリアリティを重視しているのも第一作からのようです。「派手な見せ場を入れろ」という映画会社とケンカしてでも作品を守り、結果的にそれが3部作を支える柱となったわけですからダグ・リーマンのビジョンは的確なものであったと言えるし、余計なものは加えず第一作の継承・発展に集中したポール・グリーングラスの手腕も抜群であったと言えます。そんな中、唯一残念なのがマリーの存在で、「どうしたの?」「何があったの?」といちいち聞き返してくる彼女がアクションのテンションを相当下げています。マリーと別れて挑んだ「教授」と呼ばれる刺客との戦いの異様な盛り上がりを見るにつけても、彼女はもっと早く退場させるべきだったと思います。
[映画館(字幕)] 7点(2008-09-06 01:44:53)(良:1票)
458.  バンテージ・ポイント 《ネタバレ》 
テロが起こった23分間をグルグルと違う視点から映し出し、少しずつ全体像を見せるというのはこれまでありそうでなかった手法。なかなか面白い見せ方だし、「現時点で観客に何を見せるべきか」という情報の取捨選択も非常に的を射ていたように思います。デニス・クェイドがモニターで何かを発見し、「これは大変だ!」と言って突然走りだすシーンなどのじらし方は本当に絶妙でした。脚本もよく練られていて、この手法を最大限活かせる体裁になっていたように思います。テロリストが一枚岩ではなく、騙されたり脅されたりして犯行に加わっている者が混ざったことで、事実が解明されていく過程の面白みが格段に上がっています。また、広場でのテロはあくまで陽動作戦だったというアイデアを挟んできたのも、23分間を何度も何度も見せるという、ともすれば同じ画を見せられてアクション映画としての面白みを失いかねない本作において、舞台を増やす為の得策だったと思います。テロリストが女の子を避けようとした為に事件が解決というオチのつけ方も面白かった。まぁ観終わった後考えれば近年稀に見るほどご都合主義の連続ではありますが、複数の視点から語るアクション映画という特性をいかに盛り上げるかのみに集中して作られているので、90分はきちんと楽しめる作品となっています。作り手も話がムチャすぎるという点には十分自覚的で、一気に見せて一気に終わるという一発芸的な作りに専念しているのです。例えば、テロリストの背景や動機の説明がもっと欲しいようにも思いましたが、本作においてこれ以上描きすぎるとかえって犯人像が陳腐化してしまうし話のテンポも奪ってしまうので、作り手もうまいところで切り上げています。本作で唯一背景を語られる主人公のデニス・クェイドにしても、過去のいきさつや現在の心理状況、組織内での立ち位置をほんの数シーンで説明してみせるという、神業的な要約のみで終らせています。とにかく切るものは切って見せるべきものだけ見せるという、実に潔い映画なのです。唯一残念だったのが視覚的な斬新さに欠けたことで、映画自体が斬新な割に視覚的には普通だったので、妙なバランスの悪さを感じました。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2008-08-25 22:20:24)(良:1票)
459.  暴走特急
観ている間中、「決して危機に陥らない主人公」というムチャクチャな前提でよく映画が成立してるなと感心し通しでした。世のすべての物語は紆余曲折があるからこそ面白いのに、絶対に勝つことがわかっている、その過程で一切の危機に陥らず、主人公が顔色ひとつ変えずに映画が始まり終わっていく、そんな代物がよくぞ100分それなりに退屈させない出来に仕上がっているものです。これはセガールという映画史上もっともミステリアスな俳優でこそ出せる珍味であり、そういう意味ではセガールはそれなりに評価すべき人物なのではないかと思います。デ・ニーロですらコピー不可能な、世界唯一の芸当を持った俳優さんですから。監督や脚本家も地味に頑張っています。「主人公が危機に陥らない映画を作れ」と言われてまぁそれなりにまとまった形に脚本を仕上げ、映画として成立するレベルの演出をしてみせるというのは高等技術ではないでしょうか。首尾よく列車を制圧したものの、ライバックが乗ってるとわかるや「ヤバイ、俺達終わった」と焦りだすテロリスト、一方で「ライバックが乗ってるってよ、やったー」と喜び出すペンタゴンの偉いさん達、こんなセガール作品ではおなじみの光景を、笑わせずそれなりに見せてしまえるというのは影ながらの演出の巧さのおかげでしょう。この映画には、そんなコメディギリギリの描写が盛りだくさん。「こんなものは俺には効かんよ」と、痴漢撃退スプレーをまるで香水かのように自分の顔に吹きかけるテロリストのボス。ボスの強さアピールの描写でしたが、明らかにヘンなシーンなのに「あぁ、そうなんだ」とそれなりに見れてしまうのはこの映画ならでは。一方セガールはもっと強烈で、敵のスナイパーに肩を撃たれるも「貫通してるから撃たれてるうちに入らない」と他人事のようにコメントし、本当に何事もなかったかのようにその後のアクションをこなすという超人ぶり。こういうおかしな描写をサラっと見せてしまえる演出は素晴らしいことですし、「セガールにとってはそんなもんなんだろうな」と無意識に納得させてしまえるセガールの存在感も見事なことです。 ちなみに本作の脚本を書いたのはマット・リーブスという人物で、本作後テレビ界で実績を重ね、「クローバーフィールド」の監督を任されるまでに出世したようです。セガール塾での経験が「クローバーフィールド」につながったんだと私は信じています。
[DVD(字幕)] 7点(2008-08-25 18:56:14)(笑:1票) (良:1票)
460.  ダイ・ハード2
通常の映画がクライマックスに持って来るレベルのアクションを次々に見せつけられて所見時は大興奮でしたが、現在の水準から見てもアクションは特盛大サービス状態。「1」を超えるものを作ろうとひたすらスケールの拡大、見せ場の充実を図っているのですが、「これ以上やりすぎるとかえって緊張感がなくなる」というギリギリのところでうまく踏みとどまっているので、満身創痍で戦っている生身の感覚がまだちゃんと残っています。アクションの自家中毒に陥っていた「3」「4」よりはひとつ上の仕上がりと言えるでしょう。また、レニー・ハーリンを監督に引っ張ってこれたのも幸運で(「エイリアン3」の監督に内定するなど、当時はハリウッド中が注目する若手監督でした)、この人の手腕が作品にかなり貢献しています。「動く歩道を起動させ銃をキャッチ!」「迫りくる飛行機からギリギリで身をかわす!」と、バカバカしいまでのカタルシスをバッチリ味わわせてくれます。中でも白眉なのが飛行機爆破からの脱出で、外には銃を構えたテロリスト、ドアはロックされ完全に身動きの取れなくなったところに山ほど手榴弾が投げ込まれ絶対絶命のピンチ!→寸前でコックピットからズドーンと脱出!という稀にみる大脱出の演出は本当にすごかった。「1」の屋上ダイブではまだボヤく余裕のあったマクレーンですが、ここではシリーズ中もっともテンパった顔となっており、見ている私も一緒に手に汗握った名シーンでした。また、悪役の見せ方もなかなか良いです。ハンスのようなスマートな敵はもう作れないと判断したのか、今回の悪役は筋肉隆々の肉体派揃い(変な方向に行ってしまった「3」「4」を思うと、この判断は成功だったと言えます)。しかもボスクラスが3人とこちらも質より量で勝負していますが、フルチンで妙な空手を披露するボスの登場にはじまり、空港ホテルを隊列を組んで歩く私服テロリストのみなさんなど、物凄くヘンなんだけど訳のわからん威圧感や凄味をワンシーンで伝えることに成功しています。体どころか顔まで筋肉で出来ているかのようなウィリアム・サドラーが存在感をムンムンに放っていますが、他の作品の彼は全然パっとしないことを思うと、ハーリンがいかに効果的な見せ方をしていたかがわかります。以上、かなり良い出来の映画なのですが、奇跡的な完成度だった「1」があるので損をしている作品ではないでしょうか。
[DVD(字幕)] 7点(2008-06-29 17:58:35)
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