41. ゴーストタウンの決斗
《ネタバレ》 ゴーストタウンというと、枯草の塊がコロコロ転がってる印象がありますが、 俯瞰で町を見ると、小さな集会所みたいな場所ですね。 スタージェス監督の初めの頃の西部劇。 視点が、妻を人質にした悪仲間たちから動かないので、 落ち着いた鑑賞ができる。 そして、ラストは、主役級の二人の決斗。 納得の安定感。 スタージェス西部劇、いいね♪ [DVD(字幕)] 7点(2023-09-29 22:54:31) |
42. わたしを離さないで
《ネタバレ》 カズオイシグロ自ら製作を兼ねた映画。 原爆の長崎出身なのか、科学者の暴走の産物に対する目が鋭い。 クローン技術の非人間性を訴えている。 映画は、感情豊かなクローンたちの子ども時代から捉える。 クローンなのに、小さい頃から母性を兼ね備えている キャシーは、聖母マリアのよう。 彼らは、恋もするし、芸術を生み出す喜びも知っている。 しかし、ラストは彼らにどんどん厳しくなっていく。 そして、キャシーにこう言わせる。 「生も分からず、みんな「完成」(死去)する」 科学者のクローンたちへの想像力の欠如が悲しい・・ [DVD(字幕)] 9点(2023-09-24 21:24:22) |
43. ノマドランド
《ネタバレ》 なんだろう、この悲しい幸せは? ずっとそんな風に思いながら、観ていた。 ラスト、それが明らかになる。 ノマドをしている人たちは、悲しみや喪失を覚えている人たち。 出会う人、出会う人、別れが来ても「さよなら」は言わない。「また、どこかで」と言って、別れるのだ。 実際、どこかの居留地でまた一緒になることもある。 そうこうすると、死別した人にも出会うかもしれない。 そこが、幸せの味なのだ。 旅をここまで掘り下げた映画も、アリだなと思った。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-09-10 18:48:05) |
44. レイジング・ブル
《ネタバレ》 2度目の鑑賞。 かなり昔、テレビで観て以来。 何といってもデニーロの体型を見事に変えてしまった役者根性ですよね。 でも話も面白い。 八百長する前の、いい男のボクサーをボロボロにしてしまうとこがスゴイ。 若い女をモノにして、俄然、野獣のようなボクサーになります。 そしてチャンピオンになると、精神異常者みたいになってしまうデニーロ。 その演技もスゴイ。 デニーロの見せつけた役者根性が凄すぎて、後の俳優は、彼を特別視して、 後に続かなかったんじゃない? [DVD(字幕)] 7点(2023-09-09 21:02:06) |
45. ワイルド・レンジ 最後の銃撃
《ネタバレ》 娯楽映画の3要素、いい男、いい女、完全な悪人。 これに退屈しないアクションが加わると、時間つぶしには持ってこいの作品となる。 娯楽西部劇。 この言葉になじみがないのは、西部劇は男が多いからだ。 いい男はたくさん出てくるのだが、そこにバランスよく、いい女をたくさん配することができないからだ。 そこをどう面白くするのかが、西部劇の魅力でもあるのだが、 ケビンコスナーは臆面もなく、娯楽作品の法則で、西部劇を創ってしまった。 大筋は、「ガンヒルの決斗」である。 牧場主の言いなりになる保安官と、不満の溜まる町の人々。 しかし、ラストが違う。町の人が立ち上がるんだね。 かくして、もの凄い銃撃戦になる。 ペキンパーのワイルドバンチよりも迫力がある。 難を言えば、ラブシーンがくどい。 男くさい泥だらけの西部劇にラブシーンは似合わない。 でも娯楽作品を観たいが、西部劇はイマイチという方。本作、おススメです。 [DVD(字幕)] 7点(2023-09-03 22:58:08) |
46. ワーロック(1959)
《ネタバレ》 これは見応えがある! 町に無法者が来て、保安官を追い出してしまう。 そこで、物騒になった町の人は、流れ者を用心棒に雇う。 ところが、保安官になる有志が現れて、町に法律が生まれ、町が一つになり、 無法者を協力して、やっつける。 すると、流れ者とそれにつるんでいた人間が争いだし、町は騒然とする。 かくして保安官とかつての町の用心棒の流れ者との決闘になる。 さて結末は? まとめるとこんな話だが、映画はもっと複雑だ。 ポイントは2人の女性。 なんとも流れ者のヘンリーフォンダがかっこ良くて、男の厳しさを感じさせる。 個人的には「七人の侍」より、よく出来てると思った。 [DVD(字幕)] 8点(2023-08-31 11:12:13) |
47. 拳銃王
《ネタバレ》 面白い西部劇。 伝説のガンマンを撃って、自分の名をあげようとする話は 西部劇の中でちょくちょく出てくる。 大抵は、悪役なのだが、そのこと自体を映画にしたのが、 この映画もそうだが、ウォルターヒルの「ロングライダーズ」もそう。 こちらは、最後、伝説のガンマンを撃った後、皮肉な唄が流れるのが、ヒルらしい。 ジミーリンゴを不意打ちで撃ったガンマンは、嫌われるだろう。 西部劇では、汚いプレーをした者は、みんなに知られている。 アメリカ人の根底に流れる気持ちみたいのが分かる。 [DVD(字幕)] 7点(2023-08-20 00:28:43) |
48. ガンヒルの決斗
《ネタバレ》 「真昼の決闘」に似てる。←こちらのほうが製作年が早いので、あるいは真似たのかも・・ ワンマン経営の町の中で、誰も味方しないで、敵と闘うとこなんか・・ 日本なら村八分ものですね。 だからなのか、色々脚色を塗り重ねた感じです。 先住民の妻とか、もう一人のチンピラが最後になって関わってくるとこなんか・・ でも映画史上でも稀に見るダメな息子でした・・ [DVD(字幕)] 7点(2023-08-16 00:17:38) |
49. フェイブルマンズ
《ネタバレ》 さすが!スピルバーグ! 単なる自伝風な映画にしない。 母親との微妙な距離を持ち始めるとこから、 このような母子映画は、初めて見たと感動。 そうだよね、母親の女性の部分を見てからの男の子の変わっていくとこなんか、 もっと映画になってもいいのにね。 そして、転校してからの学園部分。 天才とイジメはセットみたいなもの。 そして、突き抜けた経験をした者だけが描ける世界をスピルバーグが銀幕に展開するとこは見応えあり! ラストは、ドカンとジョンフォード! ザ・映画!なのでした。 [DVD(字幕)] 8点(2023-08-14 01:28:03) |
50. ソルジャー・ブルー
《ネタバレ》 こういう時代に、この映画を観る。 ソルジャーブルーと言えば、竹宮恵子の漫画「地球へ」を思い出す。 が、本作は甘くない。 が、だからアメリカ人は、と言ってしまうのも危険である。 本作の位置づけは、ニューシネマである。 ベトナム反戦の意識が高まり、起きたアメリカ映画の傾向のことである。 本作もベトナム戦争後期に創られた映画である。 直接言うのはお上の怒りに触れるので、ベトナム人をインディアンに置き換えて、映画のラストが描かれる。 江戸の戯作家が、お上に観られると怖いので、当時の政治を批判するのに、平家物語など軍記ものを書くように、 作家の反骨精神の手法として、昔からある。 冒頭、この映画は残酷だと言っておきながら、映画の最初から4分の3は、男と女の逃避行である。 ラブシーンまである。 一転、ラストはサンドクリークでのシャイアン族の大虐殺を描く。 どの国民が、というより、戦争は狂気の沙汰なのだ。 [DVD(字幕)] 7点(2023-08-12 00:43:10) |
51. ウィンチェスター銃'73(1950)
《ネタバレ》 文句なく面白い。 名銃をめぐる物語。 これを時代劇に置き換えると、名刀の奪い合いになり、 それがマキノ監督の「丹下左膳」なのかなぁ・・ 劇中、西部劇十大事件のうち、一つ、第七騎兵隊(カスター)の殲滅が 話に出てきて、ワイアットアープまで出てくる。 しかし、本作はOK牧場の決斗は描かれない、スピンオフ西部劇である。 西部劇に面白い映画のエッセンスが満載! この映画は観といて損ないぞ~! [DVD(字幕)] 9点(2023-08-02 01:06:32) |
52. ボクサー(1997)
《ネタバレ》 司馬遼太郎をして、百敗の民と言わしめたアイルランド人。 何より彼らの独特のユーモアが、アイルランド系の映画人にはあり、 それが映画ファンにとっては、たまらない。 最近のジョンカーニーやケネスブラナーをはじめ、面白い映画が多い。 本作は、納得いかない不条理が描かれるが、 それがギャングの存在や性の乱れとかそういうものではなく、 カトリックをめぐる歴史や、IRAなどの紛争の歴史が背景にあるので、 観ていて、簡単には心にストンと来ない。 それでも、どこかに信じられるものが一本あるのが、救いである。 [ビデオ(字幕)] 7点(2023-07-17 12:54:01) |
53. バビロン(2022)
《ネタバレ》 「ラ・ラ・ランド」のチャゼル監督の新作である。 まるで、「ラララ」で夢見たであろう少女たちの釘をさすような一本。 この映画の新しいのは、夢工場でダメになる男を描く映画は多いが、女性でダメになっていく 様子を丁寧に描いた作品は、そんなにないところだ。 最初は、スターになる女優と、それを見守る裏方の男との恋と思っていた。 いわゆる日本で言うとこの「たけくらべ」だ。 前半は、撮影現場がドラマちっくなとこを描く。 が、後半、トーキーの時代になり、時代遅れになりつつある、かつてのスターの とまどいと同時に、主人公の女性の薬やギャンブルにはまっていくとこを描く。 夢工場の影の部分を描いたチャゼル監督。 実は「セッション」の味でもある。 「ラ・ラ・ランド」の方が、彼には不満だったのかもしれない。 [DVD(字幕)] 7点(2023-07-16 20:02:31) |
54. エルヴィス
《ネタバレ》 「ムーランルージュ」のバズラーマンが、ロックンロールのエルヴィスの伝記映画を撮った! 足と腰を使ったプレスリーのダンス(?)誕生から、パートナーのパーカー大佐のギャンブル依存の浪費を カバーするため、とにかく酷使され舞台に立たされ、42歳で亡くなるまでを描いている。 ショービジネスの裏側が分かる。 疲労のため、薬や浮気などで、生活が乱れて、すべてを失う世界なんだろうというのは、 こういう世界とは無縁の我々にも、何となく伝わってきてるとこだ。 今作で新しいのは、有名人の暗殺が目立っていた頃のアメリカで、 殺人予告や警備などで、極度に心を消耗するエルヴィスの姿だ。 そして、ファンからの愛の中毒に酔いしれるのも、新鮮だ。 時代はマイケルジャクソンの前身ジャクソン5の名前をチラリと出して、 エルヴィスの時代は終わる。 また、こういう人生が続いていくのだろう・・ 「ショウほど素敵な商売はない」という映画もかつてはあったが・・※そっちは未見です。 [DVD(字幕)] 7点(2023-07-01 22:33:39) |
55. カモン カモン
《ネタバレ》 モノクロの画面がアメリカ人の心象風景にマッチしていて、バンドデシネコミックみたいな味である。 子どもを描いた映画は楽しい。 本作は、感受性の高そうな少年と叔父さんの、楽しいお泊り会の様子を描いてる。 タイトルの「カモンカモン」は「先へ先へ」という意味である。 世の中、不安だらけの世界ではあるが、 確実に子どもたちは世に出てきている。 自信喪失の大人に対して、子どもたちの「さぁ未来へ行こう」という声の映画である。 何より、頼りなくても愛してくれる大人がいたら、 子どもは未来にはばたく。 子どもの予測不能な部分を 「我々は、母親に、社会や我々自身の最も厄介な重荷を押し付けている」という ジャクリーンローズ氏の本からの引用文が心に響く。 大人には理解できなくても、彼らの個性は、希望なのである。 [DVD(字幕)] 8点(2023-06-11 20:24:49) |
56. ザ・フォッグ(1980)
《ネタバレ》 今では、当たり前の演出でもある映画の中の夜の霧。 スピルバーグもよく使いますよね。 「レイダース」の冒頭や「E.T」がそうですね。 でも「未知との遭遇」で、宇宙船から下りてくる宇宙人の演出は、 本作よりも前です。 案外、カーペンターもこの演出、温めていて、スピルバーグがやっちゃったから、 もういっそ霧だけの映画を創ろうとしたのかも(笑) 発明気質のカーペンター、先を越されて、はがゆかったのかもしれません。 [DVD(字幕)] 7点(2023-05-30 22:51:16) |
57. 老人と海(1958)
《ネタバレ》 スペンサートレイシーが、見る角度によっては、 どこかロイシャイダー似である。 ロイシャイダーと言えば、あの「ジョーズ」である。 ニヤリとしてしまった。 [DVD(字幕)] 7点(2023-05-29 22:01:44) |
58. リコリス・ピザ
《ネタバレ》 アンダーソン監督は、映画通に評価高いんだけど、 なるほど、どの作品も面白い素材を扱ってるなぁって気はしてた。しかし、 どストレートの青春もので、この質の高さは、やはりこの監督、すごいと 思わざるをえない。 年上の女性との、ひと夏の思い出って内容は、アメリカ映画で、ニューシネマが流行ってた頃も、 スター俳優を起用した映画などで、70年ごろに結構、創られ続けていた。 例えば、「おもいでの夏」など。 ツルゲーネフの「初恋」みたく、苦い思い出になりがちな内容だったが、 この映画は違う。 年下のお坊ちゃんに幻滅はするものの、やはりラストは、ヤッターって感じだ。 いいね、この鑑賞後の気持ちのよさ。 [DVD(字幕)] 7点(2023-05-28 22:55:38) |
59. 昼下りの決斗
《ネタバレ》 本作のペキンパー西部劇、素直に面白い! 日本の時代劇と西部劇は呼応するかのように面白い筋が生まれてる。 時には、西部劇の話を参考にすることもあろうかと思う。 この話は面白いのだが、なぜか時代劇にこれに似た話はない。 (女性のために闘うというのは、座頭市あたりにあるかもしれないが・・) 一つは、キリスト教がこの女の子のウブさに大きく関わっているからだろう。 日本は結婚も本人の意思でされるものでもなく、本作のようなストーリーは、無理なのかもしれない。 だけど、ラストの撃ち合いに、敢然と立ち向かう老ガンマン2人。 このカッコよさはただ事ではない。 これが時代劇で再現されてたら、しびれるのだが・・ [DVD(字幕)] 8点(2023-05-22 13:36:49) |
60. ビリー・ザ・キッド/21才の生涯
《ネタバレ》 製作者側と大ゲンカして、カットされた部分が修復された作品を鑑賞。 ラスト、ビリーを撃つギャレットが、自分が映ってる鏡も撃つシーンが削除されていたらしい。 本編は、そもそもビリーを追いかけるギャレットが、もともと無法者であり、 役人になってから、皮肉にも友だちのビリーを追いかけなければならないという話である。 であるから、ギャレットが本当に「自分」でいられるか、その辺がポイントであり、 ラスト、友だちのビリーを撃ち、鏡の自分も撃つというのは、とても大事なシーンなのである。 ビリーの仲間になる、ひ弱そうな若者が、ボブディランである。 劇中、彼の曲が西部の荒野にピッタシとマッチし、観てるものに、男の切なさを伝える いい効果を出してる。 西部劇には、何人かの実在の人物を採りあげる映画も多い。 ワイアットアープやビリーザキッドであり、その関連した映画も多い。 ビリーに関しては、近年、「ヤングガン」シリーズがそうであり、ギャレット役のジェームズコバーンも 出演している。 追う側と追われる側が友だちというのは、ラスト、ビリーが恋人と愛し終わるのを待って、 銃を撃つとこなどに、その何とも言えない情があり、哀しい。 [DVD(字幕)] 7点(2023-04-23 18:41:45) |