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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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701.  パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち
ブラッカイマーはキャスティングに抜群のセンスを持つ人物ですが、本作でもそのセンスが如何なく発揮されています。ブルームとナイトレイの絵に描いたような美男美女ぶりはファンタジックな時代劇にピッタリだし、一方で物語を進めるのはデップとラッシュという演技の出来る俳優二人。この意外な組み合わせが素晴らしく効果をあげています。デップ本人すら気付いていなかったであろう一面を開花させ、オスカーノミネートまでさせた手腕はなかなかのものです。。。と、本作を評価できるのはここまで。肝心の中身はまったく楽しめませんでした。「海賊」や「呪い」を扱っている割に恐怖心や威圧感を抱かせず、薄っぺらなアクションと軽いセリフが143分という長丁場に渡って繰り広げられるのみ。「悪い海賊に追われる→捕まる→脱出」という展開を何度も繰り返すのですが、悪役である海賊が怖くないためチェイスに緊迫感が伴っていません。ファミリー映画であっても悪役は怖く演出すべきなのですが(ディズニーのアニメ作品でもやっていることです)、ファミリー映画に慣れていないブラッカイマーは徹底的に刺激を抑えた安心品質に仕上げるというミスを犯し、活劇としては致命的に締まりのない出来となっています。また、味方となる海賊の描き方も不十分。主人公達の船を動かすクルー程度の扱いとなっているのですが、海賊たる者、大海原を自由に駆け巡るロマンを体現した存在でなければなりません。驚いたのは中盤のチェイスで、ここは彼ら海賊の腕の見せ所だったはずなのですが、海についてはド素人のエリザベスやウィルからの指示によって動き、万策尽きると「良い作戦はないか?」とウィルに尋ねる始末。何を考えてこんな展開にしたのかと不思議でなりません。ラストの戦いにしても、洞窟の中ではジャックとウィルが戦い、外では良い海賊vs悪い海賊の大決戦が繰り広げられるべきなのですが、本作では「俺達じゃ勝てないから」と海賊達がそそくさと帰ってしまいます。海賊をテーマにしながら、海賊がまったく描けていないのです。また「呪い」の扱いもマズく、バルボッサ達が呪いに苦しむ描写がないため、戦いの目的がボケボケとなってしまっています。そもそも、悪い海賊が不死身の力を手にしようとする物語ならともかく、不死身の海賊がその力から解放されようとする物語では、ジャックやウィルは快く協力してやればいいじゃないかと思うのですが。
[ブルーレイ(字幕)] 3点(2010-08-29 18:20:37)(良:1票)
702.  サブウェイ123 激突
トニー・スコット+ブライアン・ヘルゲランド+デンゼル・ワシントンといえば燃えるバイオレンス大作「マイ・ボディガード」のトリオですが、今回は一転してアクション控え目で会話によるやりとりが中心となっています。にも関わらず宣伝において「クライム・アクション超大作!」と煽られたため、ガッカリされた方も多いようです。しかし、犯人との息詰るやりとりは悪くありません。さすがはヘルゲランドだけあってセリフにはキレがあるし、ビジュアルの巨匠スコットは単調になりがちなこの手の作品に視覚的なアクセントを入れています。ワシントン、ガンダルフィーニ、タトゥーロは相変わらずお上手。オリジナルはコミカルな要素を多分に含んだ作品でしたが、今回は芸達者なガンダルフィーニがコメディパートを引き受け、その役割を見事に果たしています。そして意外にも良かったのがトラボルタで、前述の3人のように器用なタイプの俳優ではないものの、この人は善人役にも悪人役にもハマるスターであり、かつ彼の演じる役柄には適度な大物感が漂います。彼が演じるライダーの素性や犯行の動機は謎となっており、ワシントン演じるガーバーと私たち観客はライダーの言葉や行動から彼が何者であるかを推測することとなるのですが、ここでトラボルタの個性が活きてきます。社会に対する正当な憤りから大それた犯罪を計画した「ザ・ロック」のハメル准将タイプの同情すべき悪役なのか、純粋に金のためにハイジャックを起こした知能犯にして、計画遂行のために錯乱状態を装っているだけの「ダイハード」のハンスタイプの冷徹な悪役なのか、社会を逆恨みして暴れているだけの単純バカなのかの判断がつかず、彼が次に何をしでかすかが読めないのです。このキナ臭さが作品前半の面白さに大きく貢献しているのですが、この味はトラボルタでなければ出せませんでした。善人と悪人を演じ分けられる俳優は多くいるものの、基本的に役柄を演じ分けていないトラボルタの個性がなければ、ライダーをここまでミステリアスには出来なかったのです。。。というわけで本作の脚本は謎の悪人ライダーによってNY市と観客が振り回されることが核となっているため、彼の素性が明かされる後半以降は話が急激につまらなくなってしまいます。彼についての謎解きをもっと引っ張り、素性が明らかになったところで映画を終わらせた方がよかったのではないでしょうか。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2010-08-25 00:56:21)(良:1票)
703.  インサイド・マン
冒頭、クライブ・オーウェン演じるラッセルは「自分達は完全犯罪の方法を思いついたから、それを実行したのだ」と自信満々に語りますが、これは本作のアイデアを思いついた脚本家からの言葉と考えてもいいでしょう。その自信の通り、本作に描かれる銀行強盗の手口は完璧です。人質に犯人グループと同じ服を着せることで警察による突入を回避し、犯行現場からの脱出までを可能とする。この大胆な発想だけでもアクション映画が一本撮れてしまうほど魅力的なのですが、本作にはさらにアイデアが満載されています。強盗の被害者たる銀行が「ある事情」から決して被害を訴えないであろう品物のみを奪うことにより、被害者のない犯罪を成立させてしまう。犯人グループと警察の騙し合いは非常に高度で、こちらが激昂したと見せかけて相手の反応を確かめ、次の一手を考えるというやりとりが積み重ねられます。このゲームのプレイヤーとなるラッセルとフレイジャーのキャラクターもよく出来ていて、おまけにこのキャラクターを一流の俳優に演じさせることができたとあっては、本作の面白さは保証されたようなもの。最高に楽しめました。この手の映画を経験したことのないスパイク・リーの演出については不安があったのですが、彼はこの脚本を自分のものとしています。冒頭、わずか15分で主要な登場人物の紹介を終え、占拠された銀行という舞台を作り上げてしまう手際の良さには圧倒されました。並みの監督であれば本作をごりごりのクライムサスペンスとするところですが、リーはあえて気の抜けたコメディ演出を施しています。この演出が合わない、まじめなサスペンス大作とした方がよかったと思う方も多いと思いますが、一見気の抜けたような演出が知的なやりとりを際立たせる役割を果たしていて、私は有効だったと思います。デンゼル演じるフレイジャーなどは、下らない冗談を言ってヘラヘラしているように見えて、腹の中では相手を出し抜くための策を練っている最高にかっこいいキャラに仕上がっているではないですか。対するラッセルは終始クールですが、アルメニア語放送やなぞなぞでは完全に警察で遊んでおり、こちらもコメディ演出による援護がなければ、物語上意味をなさないトラップになる恐れがありました。当初はロン・ハワードが監督する予定だったようですが、生真面目なハワードではこの遊びをうまく処理できなかったでしょう。
[DVD(吹替)] 8点(2010-08-25 00:55:28)(良:1票)
704.  特攻野郎Aチーム THE MOVIE
テレビ版は小学生の頃に日曜洋画劇場でよく見ていましたが、こちらは小市民をいじめる悪党をAチームが懲らしめる一話完結の水戸黄門のような物語。一方、今回の映画版はテレビシリーズでも描かれなかったAチーム結成からはじまり、彼らが地に潜るまでを描くエピソードゼロ的内容となっています。90年代から何度もリメイクが検討されてきた企画だけあってキャラクターはよく作り込まれていて、コング(映画版ではオリジナルに合わせてBAと呼ばれていますが、こちらの呼び名の方がしっくりきます)の飛行機嫌いの原因にまで触れた細かさには感心しました。 しかし、監督による演出がAチームの空気とズレており、なんだか中途半端な仕上がりとなっています。「スモーキンエース」に続いて本作を引き受けたカーナハンはアクションコメディが好きなのでしょうが、この人は根本的にこのジャンルには向いていないように思います。荒唐無稽な場面は多くあるもののどうにも弾けきれず、途中から生真面目な面が出て来てしまうのです。本作における冒頭のアクションはまさに痛快さで、このまま行けば最高のリメイクになるものと期待しました。しかし以後の物語はどんどん真面目になっていき、トム・クルーズやマット・デイモンが出ていても不思議ではない普通のアクション映画に。その一方で荒唐無稽な見せ場が要所要所で挿入されるため映画全体の温度感が掴みづらく、感情がうまく作品に乗っからないまま映画は終わってしまいました。これは、コメディとしての側面をうまくコントロールできなかった監督のセンスに問題があったと思います。 同時に、脚本上もいくつかの欠点が指摘できます。何年も寝かされてきた企画は、多くの監督・脚本家によって練り上げられていくうちに物語が複雑になりすぎる傾向があるのですが、「ミッション・インポッシブル」のような陰謀や裏切り渦巻く本作の物語も、単純明快だった「特攻野郎Aチーム」のリメイクとしては作り込み過ぎです。また、キャラクターものとしての欠点もあります。ハンニバルが作戦を企画・立案し、メンバー達が各自の特技を活かしてそれを実現するのがAチームなのですが、この映画版においては何故かフェイスが作戦を考えています。集団アクションはメンバーの役割分担を明確にすればするほど面白いのに、なぜハンニバルとフェイスのポジションを被らせてしまったのか。これは理解に苦しみました。 
[映画館(吹替)] 6点(2010-08-23 00:49:17)(良:3票)
705.  グリーン・デスティニー
登場人物や舞台設定の紹介が一通り終わると、「待ってました!」とばかりに登場するワイヤーアクション。前年に公開された「マトリックス」などは比較にもならない程の本家の素晴らしい技には度肝を抜かれます。演じる俳優及びスタントマンの身体能力の高さ、ワイヤーを扱うスタッフの熟練ぶり、カメラワークの的確さ、どれをとっても超一流です。アン・リー監督のフィルモグラフィーを振り返ると、英国貴族の恋愛物語に、郊外の家庭が崩壊するドラマに、南北戦争ものに、アメコミに、エロティックサスペンスにと、東洋のキューブリックと言えるほど幅広いものです。この恐るべき守備範囲の広さは、未知の題材を徹底的に研究して自分のものとする監督の勤勉さ、主題を丁寧に扱う生真面目さがあってこそのものだと思うのですが、本作についてもその資質は大きく貢献しています。監督にとってカンフーを扱うのは初めての経験でありながら、本作の最初の格闘シーンは香港映画が積み上げてきた実績が見事に吐き出された名場面となっているのです。公開当時本作は極めて高く評価されましたが、最初の格闘シーンを見れば、この映画には何か賞をやらねばと思わされてしまいます。それほどの名場面なのです。一方でこの監督は娯楽には不向きな傾向があり、残念ながら本作も娯楽アクションとしてもう一歩踏み込み切れていない部分があります。クレジット上はチョウ・ユンファがトップではあるものの、本作はチャン・ツィイー演じるイェンの成長物語であることは間違いありません。だとすると主人公イェンの心情を観客は理解する必要があるのですが、彼女が現状から逃げ出したいと思う物語の発端部分が描かれていないため、わがままなお嬢様が好き放題暴れているだけにしか見えません(幸い、チャン・ツィイーの魅力によってイェンは救われましたが)。このため、観客は感情的な部分で物語とシンクロすることができなくなっています。またカンフー映画のラスボスは強敵であるべきなのですが、本作の敵はリー・ムーバイどころかイェンにすら実力で負けてしまっているという設定。残念ながら、これでは盛り上がりません。本作の悪役はチョウ・ユンファ、ミシェル・ヨーというカリスマ俳優を二人も相手にせねばならないのですから、相応の設定を練り上げるべきでした。
[DVD(吹替)] 6点(2010-08-21 00:22:27)(良:3票)
706.  ウォーターワールド
90年代を代表する大コケ映画と言われていますが、1億7500万ドルの製作費に対して興行成績は全世界で2億6400万ドル(1995年の公開作中第9位)とそこそこのヒットとなっており、コケ方で言えば同年の「カットスロート・アイランド」の方が遥かに上。にも関わらずこの映画が(悪い意味で)私達の心を掴んで離さないのは、その出来があまりに惨たらしいからでしょう。。。作品を見る限り、脚本の出来はそれほど悪くありません。問題は監督とプロデューサーの腹が座っていなかったことで、本来はエッジが立っていたであろう脚本の良さをことごとく潰しています。破滅後の世界を扱った本作はダークに描かれるべきであり、その点、女性が物々交換の対象となっていたり、ミュータントに凄惨なリンチが加えられたりと、脚本上はきちんと毒が描かれています。しかしベラボーな製作費にビビったのか、監督とプロデューサーは観客に嫌悪感を抱かせかねないこれらの描写を中途半端に終わらせてしまい、そのために全体が締まらない印象となっています。また前半と後半でまったく別の映画となっていることにも違和感を覚えたのですが、これも主人公を観客から好まれるキャラクターにしようと後半で方向転換してしまったプロデューサーの判断ミスであり、前半の冷たいキャラクターで通すべきだったと思います。この方向転換を巡っては監督のレイノルズとコスナーが対立してレイノルズは途中降板、後半部分をコスナーが監督したことも後半が浮いてしまった原因となっています。。。さらに本作の足を引っ張っているのがSF感覚の欠如で、これも脚本レベルではそれほど悪くなかったにも関わらず、監督がSFオンチだったことが問題でした。衣装や小道具がとにかくカッコ悪く、そのために映画全体がダサくなっています。この手の映画はカッコ良いことがポイントなのに、そこで観客の心を掴めなかったのでは、いかにスペクタクルにお金を注いでも映画は良くなりません。コスナーが突貫工事で手を入れはじめた後半になると設定にも矛盾が発生しはじめますが(紙は高値で取引されていたはずなのに、後半ではまとまった量の雑誌が出てくる。前半では「俺達の先祖が世界をこんな風にした」と言っているのに、後半では過去の文明を知らないことになっているetc…)、SFにおいて細部に矛盾が発生するような雑な作りでは、観客に見透かされてしまいます。
[DVD(字幕)] 4点(2010-08-17 22:06:33)(良:1票)
707.  スーパーバッド 童貞ウォーズ 《ネタバレ》 
プロデュース&脚本を担当したジャド・アパトーの手腕によってコメディとしては上々の仕上がりで、かなり笑えます(特にバカ警官コンビは最高)。しかしこの内容で113分は長すぎるように感じました。前半は最高に楽しめたのですが、後半では飽きてしまいます。この手のバカ映画は90分ほどでサクっと終わるのが理想だと思います(「オースティン・パワーズ」は95分、「裸の銃を持つ男」に至ってはたったの85分)。モテないバカ男子の情けない青春物語を売りにしている割には、意中の女子から勝手に惚れられたり、粘り勝ちで良い感じになったりと意外にも恋愛がうまく進んでしまうことも違和感で、本当にモテない奴の青春はそんなに恵まれてないわけです(涙)。悪戦苦闘したものの結局女子からは相手にされず、とぼとぼと家に帰りながら「何だかんだで今日の冒険は楽しかったし、友情っていいもんだ」と実感するようなオチの方が、このテーマにはしっくりきたのでは?
[DVD(吹替)] 5点(2010-08-15 20:30:15)(良:1票)
708.  シャーロック・ホームズ(2009)
シャーロック・ホームズについては原作を読んだことも、映像化作品を見たこともないため、少々厳しい鑑賞でした。「多分原作に絡めたネタなんだろうなぁ」という点はいくつか見つけたものの、原作を読んでないのでその面白さは分からず。また、ホームズとアイリーンの関係についての言及もなく、ルパンと峰不二子のような二人のやりとりも楽しめませんでした。こんな感じで原作を知らない人間は置いてけぼりにされるし、かといって推理小説のファンが喜ぶタイプの作風でもない。一体どんな客層を対象にした映画なのか、その製作意図がよくわかりません。古典の新解釈であれば、定石通りエピソードゼロから始めた方がよかったように思います。内容についても中途半端で、アクションメインの作品にしては見せ場が少ないし、かといって探偵ものとしては知的な部分が少々お粗末。観客もいっしょになって推理する形になっておらず、分かったような分からないような主張をする宗教組織の陰謀をホームズが少しずつ解明する様を外野から眺めるだけでは、探偵ものの醍醐味は味わえません。ホームズが推理力や洞察力を披露する場面は多くあるものの、本筋に関わる部分やいざという危機一髪の場面でその能力を発揮していないこともマイナスで(小手先のトリックは見破っても陰謀には気付かないし、常人と同じように敵の罠にかかってしまう)、ここぞというタイミングで彼の非凡さが活かされる場面があれば作品は引き締まったと思います。本作には5人もの脚本家がクレジットされていますが、それぞれの脚本家が得意とするパートを別々に担当しているうちに(ハリウッドではよくある脚本の作り方)、映画としての統一感が欠けたことが原因でしょうか。。。と弱点の多い作品なのですが、ホームズのキャラクターの作り込みは良く、主演にロバート・ダウニーJrを得られたことも幸運で、さらに19世紀ロンドンという異色の世界を舞台にしたアクション大作としての雰囲気作りも出来ているので、シリーズ化にあたっての基礎はかなりしっかりしています。続編はかなり面白いものが出来るはずです。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2010-08-15 20:26:37)(良:2票)
709.  キング・アーサー(2004)
ブリテン島には紀元前5世紀頃からブリトン人が生活していましたが、西暦43年にローマ帝国は島の大半を占領し、支配地域をブリタニアと呼びました。しかし支配地域外に住むブリトン人による攻撃が続いたため、ローマ帝国は本作に登場する長城を建設。5世紀になるとゲルマン系のアングロサクソン人による侵入がはじまり、ローマ帝国はブリタニアを放棄。アングロサクソンは先住民族たるブリトン人を征服・同化し、現在のイギリスに至ります。。。という歴史を知らずに本作を見ると、誰が何のために戦っているのかよく分かりません。ブラッカイマー作品にしては珍しく歴史学上の大胆な仮説をベースにした知的好奇心に訴える物語なのですが、こうした作品を扱い慣れていないためか企画の魅力が発揮されていません。アーサー王はローマ帝国の役人(実在の人物アルトリゥスがモデル)、円卓の騎士は騎馬民族サルマートの傭兵、イングランド王家の始祖にあたるサクソン王セルディック(日本で言えば神武天皇)を極悪非道な悪役とするというトンデモない企画なのですが、もったいないことにその面白さが伝わってきません。観客に対する情報提供が不足しているのです。また、伝説とリアリティのバランスの取り方が中途半端で、史実に近い人間ドラマとしようとする一方で、たった7人の騎士でサクソン人の大群の前に立ち塞がる荒唐無稽な場面があったりするため、映画の空気感がイマイチ掴みづらく、素直に興奮することが出来ませんでした。これらは、作品の方向性を決めかねたプロデューサーの失敗でしょう。また、監督も本作には向いていなかったと思います。肝心の合戦シーンの演出がヘタで、大人数が入り乱れるスケール感を表現できていません(史劇においてはスケール感が重要だというのに)。また、かねてより女性の描写を不得意とする監督でしたが、グィネヴィアがキーパーソンとなる本作ではその弱点がモロに出てしまっています。せっかくナイトレイが演じているにも関わらずグィネヴィアは魅力的ではないし、アーサー、ランスロットとの三角関係もまったく印象に残らないほど淡白。。。その他細かい点では、クライマックスに騎士達が着る鎧がカッコ悪いのも難点で、いよいよフルアーマーを披露するからにはかっこよくないとダメでしょ。また音楽もイマイチで、何十回と聞いてきたジマー節が本作でも炸裂。彼はちゃんと仕事してるんでしょうか?
[映画館(字幕)] 5点(2010-08-15 12:36:19)
710.  ロード・オブ・ウォー 《ネタバレ》 
冒頭の、弾丸の一生から映画にのめり込みました。とってもヘンなイントロなんだけど、そのアイデアには面白みと遊びがあり、映像的にも斬新で目を引き、そして武器の流れを分かりやすく説明し、その果てには少年を殺害して悪い後味を残すという、本作を象徴する絶妙な掴みです。ニコラス・ケイジ扮するユーリーがのし上がる前半は出色の面白さで、入念なリサーチに基づくと思われる脱法行為の数々には「へ~」と唸ったし、彼が成功を重ねる様はサクセスストーリーとしてのカタルシスまでが存在しています。さらに彼の商材は武器、取引相手はゲリラや独裁者であるだけに、死の危険を身近に感じながらのビジネスという緊張感もエンターテイメント作品としての面白さをサポート。捻じれたユーモアも絶好調で、このままいけば空前の傑作になるのではという勢いでした。しかし、シリアスモードに入る後半になると映画のテンションは一気に落ちてしまいます。夫のビジネスの正体を知った家族がドン引きし、夫は家族のためにビジネスから足を洗おうとするという展開は月並みで、意外性溢れる前半と比較すると見劣りします。目の前で弟を殺され、両親からは勘当され、妻も子供も失うという展開も監督が意図するほど衝撃的ではなく、こんな商売してればこんくらいのリスクは付き物だろうなぁという印象しか持てませんでした。ただし、最後の最後になってこの映画は大ドンデン返しを仕掛けてきます。飄々と商売してきたユーリーもいよいよお終いかと思いきや、最大のパートナーが突如彼を救いに現れるのです。そのパートナーとはアメリカ合衆国。アメリカ合衆国こそが世界最大の武器輸出国であり、法律上・国際世論上取引が困難な国に対してはユーリーのような民間業者に取引をさせていたことが、ラストで明かされます。このドンデン返しには驚いたし、本作の核となる事実をもっとも衝撃的なタイミングで観客に提示した構成力には唸らされました。。。と、こんな作品なのでアメリカ資本からの出資はビタ一文受けられず、60億円もの製作費をすべて海外資本から掻き集めたそうです。それを可能にしたのがニコラス・ケイジという看板ですが、ジェリー・ブラッカイマー作品で知名度を売りつつ、本作のようなリスキーな企画に名前を貸す姿勢はもっと評価されても良いと思います。安全な作品ばかりに出演するそこいらの名優よりも、よっぽど立派な俳優です。
[DVD(吹替)] 7点(2010-08-14 01:57:31)(良:2票)
711.  ラスト サムライ
何と言っても合戦が物凄い。役者に徹底した稽古をつけ、500人のエキストラにも訓練を施しただけあってその迫力はケタ違いで、史上空前の合戦シーンを楽しむことが出来ます。それだけでも本作は存在価値ありでしょう。日本映画界も何年かに一度、巨費を投じた時代劇を製作するのですが、ただ大勢が走り回っているだけで迫力とは程遠いものがほとんど。その点、スペクタクルを作ることに慣れているアメリカさんは見せ場の作り方が非常に的確です。また、適度に汚しを加えた鎧のかっこよさも目を引きますが、この点でも、ピカピカのダサイ鎧を登場させる日本映画界とのセンスの違いを実感できます。。。お話については、本作の監督と脚本家は根本的な部分で大きな勘違いをしています。彼らはサムライを滅びゆく部族のようなものだと考えているのです(サムライとインディアンを同一視していることからも明らか)。そして本作が面白いのは、根本的な部分を勘違いしているにも関わらず、全体としてはそれほどおかしな出来になっていないということ。これはエドワード・ズウィックとトム・クルーズの真摯な姿勢の賜物で、日本人俳優からの指摘をきちんと作品に採り入れていったことで、作品は破滅を免れています。「意見を採り入れる」とは言うは易し行うは難しで、本作の脚本を書いたのはアメリカ人であり、いくら中立的に作っているつもりでも、無意識のうちに日本人キャラにもアメリカ的な言動をとらせてしまっていたはず。そんな脚本において日本人からの修正を受け入れていると、「そこを変えられると物語に支障が出るよ」という局面も多分に発生したことでしょう。にも関わらず彼らは日本人の意見を丁寧に拾っていったのです(ニンジャのくだりだけはどうしても譲らなかったらしいですが)。ただし監督達の勘違いが吉と出ている場面もいくつかあって、序盤のサムライ登場シーンなどはサムライを極端に神秘的で崇高なものだと考えていた監督のおかげで、目を見張るほどかっこいい場面となっています。日本人では、サムライをここまでかっこよく演出することはないでしょう。。。なお、本作についてよくある批判として、織田信長の時代から銃を扱ってきたサムライの武装が刀と弓矢だけってことはないだろというものがありますが、伝統的な武装のみで蜂起した神風連の乱が本作の舞台となる1876年に発生しており、あながち間違いとも言えないようです。
[映画館(字幕)] 7点(2010-08-14 01:56:42)(良:1票)
712.  13ウォーリアーズ
ジョン・マクティアナンは途中で降板し、後半部分はマイケル・クライトンが監督しているようなのですが、監督が途中で交代する映画はたいていロクでもないもの。例に漏れず本作も映画としての出来は芳しくありません。まず戦士達の区別がつかず、誰かが死んでも、自己犠牲の勇気を見せられても、特に何とも感じさせられません。確かに13人という大人数、しかも全員が金髪のロン毛では見た目の判別も厳しいため、13人全員を描くのではなく主要キャラを絞り込むという方法は間違ってはいないのですが、印象に残るのが気さくなヒゲのバイキング(役名不明)だけでは寂しすぎます。首領であるブルヴァイすらカリスマ性を示すエピソードに乏しいのでは話になりません。戦士達の特技や役割分担もはっきりしないため、集団アクションとしての面白さも半減しています。これらについては、ドラマ部分を大幅にカットして上映時間を短縮させた映画会社の判断ミスであり、より長かったというディレクターズ版の出来が気になるところです。ビジュアルについては、画面が暗過ぎて何が何だか分からないという致命的な欠点が。リアリティにこだわってたいまつの光のみで撮影されたようなのですが、リアリティとは映像を効果的に見せる手段のひとつであって、リアリティにこだわって何も見えなくなったのでは本末転倒です。製作陣もこの映像ではさすがにマズイと感じていたのか、洞穴に住まい、暗闇を好むというヴェンドルの設定を無視して、クライマックスには白昼の決戦が準備されています。いよいよ満足な形で戦闘を見られると期待したのですが、これが驚きのダイジェスト処理。監督交代等の混乱の中で予算が浪費され、クライマックスにはお金が残っていなかったのでしょうか。この肩すかしには驚きました。。。とまぁ欠点だらけの映画なのですが、駄作と切って捨てられない魅力も持っている愛すべき映画でもあります。オープンセットの作り込みは凄まじく、衣装や甲冑にも徹底的にこだわっています。スタントマンによる生身のアクションも大迫力で(これで画面が見やすければ…)、「グラディエーター」をも超える130億円の製作費はダテではありません。どんなことが起こっても余裕のバカ笑い、いざとなればベラボーに強いバイキング達もかっこよく(これで一人一人のキャラが立っていれば…)、男の男による男のための燃える映画としてはなかなかのものです。
[DVD(字幕)] 7点(2010-08-13 17:16:06)(良:1票)
713.  マトリックス レボリューションズ 《ネタバレ》 
第一作が「選択」、第二作が「理由・目的」と来て、本作のテーマは「信じること」。「信じること」をテーマにした映画なんて掃いて捨てるほどありますが、そこはさすがマトリックスだけあって一筋縄ではいきません。前作のラストでネオは完全に手詰まりとなっており、さらに予言者もスミスに取り込まれてしまい、すべてが不確かなものに。おまけにセンチネル軍団があと半日でザイオン攻撃を開始するため、ザイオン防衛のために一隻でも多くの戦艦が必要とされているという逼迫した戦況。その状況で、ネオは「理由は説明できないけど、とりあえず俺のために戦艦を一隻貸してくれ」と言い出します。何をムチャ言い出すんだというシチュエーションなのですが、ここでキャラクター達はネオを信じるか信じないかの判断を迫られます。ネオを信じることにも大きなリスクが伴う、かといって奇跡でも起こらない限り今の状況は打破できないという極限状態においては、前線でも司令部でも現実派と超常派が対立。「実態の分からないものに身を委ねられるか」という信仰の本質に迫った内容であり、「信じること」がここまで重い映画は滅多にありません。その先にある展開は燃えさせるもので、前作のラストでマトリックスの設計者の元に行ったものの話にならなかったため、なんとネオはアーキテクトよりも上の存在である機械の親玉と直接話をつけに行きます。「マトリックスが破綻すればあんたら機械も困るだろうから、俺が解決してやる。その代わり、ザイオンには手を出さないでくれ」。「これのどこがレボリューションなんだよ。単なる手打ちじゃないか」と思わなくもないのですが、ともかくネオは自分の身を犠牲にしてマトリックスを正常化し、機械文明とザイオンの両方を救います。ここで終われば一応ハッピーエンドなのですが、さすがはウォシャウスキー兄弟だけあって物語をタダでは済ませません。サーガのファイナルカットに登場するのはプログラム4人だけで、人類はひとりも登場せず。そのプログラム達が「危険な賭けだったけど、何とかうまくいったねぇ」と話し合っているのです。ネオによるレボリューションすら機械によって計画されていたものだった。映画は朝日と共に清々しく終わりますが、解釈次第ではバッドエンドとも考えられる、ある意味でとても怖く、後味の悪いラストでした。私は、シリーズのこういうところが大好きです。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2010-08-07 02:23:24)(良:2票)
714.  マトリックス リローデッド
ウォシャウスキー兄弟は映画学科の名門大学を中退した後に大工などをしながら脚本家業を開始し、社会に対する憤りの中で執筆したのが「マトリックス」でした。そのため第一作は「社会のルールに黙って従っている我々は、自分の人生を生きていると言えるのか?」という主張が中心の作品であってマトリックスやザイオンはメタファーに過ぎず、兄弟も世界の全体像についてはっきりとしたビジョンを持っていなかったようです。しかし、一転して続編の本作では世界観の深化が要求されており、後付けで未来世界を構築せねばならなくなった兄弟の苦労が見てとれます。ザイオンは第一作で「伝説の都市」と言われていたほど凄いものではなかったし、洞窟でのレイブシーンなどは正直言って趣味が悪いです。マトリックスについて語るセリフは一度の鑑賞では理解できないほど意味不明で、世界観の脆弱さをセリフの分かりづらさで隠そうとしているように思えます。そんなこんなで苦しい続編となっているのですが、私は本作について悪い印象は持っていません。本作はテーマが良く、前作のテーマが「選択」であれば、続編のテーマは「理由・目的」。マトリックスのような代物はなぜ存在しているのか?ネオは救世主を名乗っているが、何のための救世主なのか?第一作における選択の先にあるものが問われる内容となっています。そしてネオが救世主としての自己の存在やマトリックスの目的を追求した結果得た答えは衝撃的で、救世主もザイオンもマトリックスの延長であり、ネオの登場も機械によって企画されていたものであることが明かされます(こんな美味しい展開を、わかりづらいセリフで説明してしまったのが残念)。機械は、ランダムな動きをする人間心理を完璧には理解することができず、そのためマトリックスには一定の例外が発生してしまう。その受け皿がザイオンであり、例外となった人間達の希望が反映されるのが救世主である。機械がその救世主を分析することで、より高度なマトリックスを作ることが出来るという仕組みのようです。第一作からは想像もつかなかった展開へとなだれ込むクライマックスには、かなり興奮させられました。また、ビジュアル面が圧倒的に強化されていることも本作の魅力で、カンフーやワイヤーワークはかなり改善されています。最大の見せ場であるカーチェイスの派手さは他に類を見ないほどで、この場面は何度見ても飽きません。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2010-08-07 02:21:55)(良:2票)
715.  マトリックス 《ネタバレ》 
公開当時、一方には本作の斬新さに対する称賛があって、もう一方には既存の要素をシャッフルしただけじゃないかという批判がありました。現在になってあらためて鑑賞すると確かに本作のテーマは目新しいものではないのですが、哲学的なテーマを娯楽アクションでやろうとした試みは非常に斬新であり、かつこの試みを成功させてしまったウォシャウスキー兄弟の監督及び脚本家としての能力の高さは並外れています。それまでの映画界では、一方に「スターウォーズ」のような娯楽大作があって、もう一方に「2001年宇宙の旅」のような難解な作品があって、これらは水と油だったわけですが、「マトリックス」は難解さと面白さの融合を成功させてしまったわけです。また、きちんと作り込めば難解なテーマであっても観客は付いてくることを本作が証明し、ハリウッドのマーケット観や意思決定のあり方も大きく変えてしまいました。もし本作がなければ、ノーラン版バットマンなどは登場していなかったでしょう。とにかく脚本の完成度が高く、「信仰と哲学」という難解なテーマを一般の観客にも分かる形で提示し、かつそれを刺激的なビジュアルと燃えるアクションに絡めて物語を構築しています。隠喩に満ちたセリフは禅問答のようで一見すると不親切なのですが、一般の観客が付いて来られるギリギリのところで難解さを留めておいたサジ加減は絶妙であり、理解可能な節度を保ちつつ観客に考える喜びを与えたという意味では最高のサービス精神が感じられます。また、アクション映画としても本作の脚本は際立っています。象徴的なのがエージェントの扱いで、「エージェントは圧倒的に強く、もし彼らと鉢合わせると殺される」というセリフがしつこい程に繰り返されるおかげで、エージェントが登場するだけで画面に緊張感が漂います。ネオを逃がすためエージェントに挑んだモーフィアスの自己犠牲も、エージェント・スミスとの戦いを決意したネオの確信も、クライマックスのチェイスの緊張感も、「エージェントに追いつかれる=死」という擦り込みが徹底されていたからこそ、それぞれの意味が際立つ形となっています。一方で、公開当時絶賛されたビジュアルについては、現在見返すと多少のアラが気になります。ネブカデネザル号や人体発電所のCGは本編から浮いてしまっているし、カンフーやワイヤーアクションは役者が慣れていないためかヘタクソです。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2010-08-07 02:20:57)(良:1票)
716.  フリーダム・ライターズ
熱血先生ものとしては手堅くまとまっているのですが、あまりに良い子ちゃんな仕上がりで教育テレビでも見ているような印象を持ちました。先生と生徒が心を通わせる過程は随分とすんなりいってしまい、葛藤や軋轢が不足しています。例えば、生徒がいかに先生の授業に感動して生き方を改めようと思っても、それまでの不良仲間から距離を置くことや、所属していたギャングを辞めることには相当な苦労が必要なはず。そのような現実的な葛藤があまりに少なく、先生が良いことを言えばすぐに響く性根のまっすぐな生徒ばかりであり、なんだか都合の良い美談を聞かされているような気がしました。また、彼らが通じ合うきっかけとなった日記の扱いも雑で、あれだけ荒れていた生徒達が初日から素直に日記を書き始め、「先生、読んで」と自分達の気持ちをさらけ出す展開には疑問です。「小学校5年生程度の国語力しかない」と言われた不良達が、初日からそこいらの大学生でも書けないような達者な文章を披露することも不自然。実話を元にした物語ですが、舞台となる1994年から本作が製作される2007年までの13年間で、当事者達にとって都合の良い形に思い出が変質していったのではないでしょうか。そして本作の製作陣の姿勢を疑ったのが、熱血先生と対立することとなる教科主任の扱いです。生徒の心を掴むため形にはこだわらない熱血先生に対して、教科主任は形式的にカリキュラムをこなせばそれでよしと考え、事あるごとに熱血先生の障害となります。確かにこういうタイプはどの職場にもいて、たいていの場合、やる気ある人間の足を引っ張る有害な存在となるのですが、この教科主任を完全な悪として描く本作の姿勢には賛同できません。ある行動をとる人物を一定の型にはめ、それを一方的に悪と非難することは、人種間の対立を乗り越えて互いを知り合えという熱血先生の指導にまさに反しています。確かに彼女は頭が固く、教師でありながら生徒のためを思った行動のとれない人物でしたが、本作の舞台となるような荒れた学校においては、教師を無視する生徒とは真剣に向き合わず、お役所的に授業をこなすのみとする先生の処世術も、決して否定することができません。そうした他の先生達の背景を描くことなく、一方的に悪と断罪する姿勢には疑問です。作品のモデルとなった熱血先生がこの描写を良しとしているのであれば、この先生の性根も疑ってしまいます。
[DVD(吹替)] 4点(2010-08-04 00:11:32)(良:1票)
717.  イベント・ホライゾン
製作側が意図しているほど高尚な作品に仕上がっているわけではありませんが、かといってB級と切って捨てられない魅力も放っており、ポール・W・S・アンダーソン監督作品においては、現時点における最高傑作だと思います。宇宙に行って気が狂うという物語は現在からするとありふれた題材ですが、本作の公開当時、エイリアンではなく精神世界を敵とするというアイデアは斬新であると評価されていました(本作の最初の脚本では、エイリアンが登場するはずだった)。また、それを表現するビジュアルは非常に秀逸で、船内の日用品がプカプカと浮く無重力の表現や、宗教的イメージと科学的合理性を両立したイベント・ホライゾン号のデザイン、死を連想させる炎の表現等はかなり目を引きます。生身で宇宙空間に放り出された人体の描写や、超高速での航行からクルーを保護するための水槽の存在等は、文系の私にはどれほどリアルなものかの判断はつかないものの、ともかく「リアルっぽい」雰囲気を出すことには成功しています。SF映画において「リアルっぽい」と感じさせることは重要であり、これに成功している時点で、本作は一定の完成度に達していると言えるでしょう。「ミッション・トゥ・マーズ」「レッド・プラネット」「サンシャイン2057」等、後に製作される宇宙映画には本作との類似点が多く指摘できる点でも、本作がSF映画史に残した功績は大きいものと評価できます。また、SFホラーであるにも関わらず地味な演技派を配置したキャスティングも当時としては異例でしたが、彼らの演技力がムダになっていない点も評価できます。製作当時若干31歳であり、代表作が「モータル・コンバット」だったアンダーソン監督が、よくぞ大人の俳優陣を使いこなしたものだと感心します。。。と、部分評価はできるものの(明確な欠点を指摘することの方が難しいほど)、全体としてそれほど面白い映画になっているわけでもないのが本作の問題点。物語は終始単調で、「いざクライマックス!」という煽りに欠けるために、不完全燃焼な印象を受けます。SFホラーなのですから、もっと爆発的な盛り上げが必要でした。
[DVD(吹替)] 7点(2010-08-03 20:34:19)(良:1票)
718.  スラムドッグ$ミリオネア 《ネタバレ》 
映画は壮絶な拷問からはじまり、ジャマールから語られる人生は、目の前で母を殴り殺され、ヤクザに目を潰されかけ、兄貴は人殺しをしてヤクザの道に入り、惚れた女はヤクザの親分の女になっていたという、文章にするだけで鬱になりそうな内容。しかし映画には妙な明るさが漂っており、どれだけ酷い目に遭っても暗くならずに人生を突き進もうとするポジティブな映画でもあります。なかなか珍しい食感の映画だなぁと思って見ていたのですが、思い出せばダニー・ボイルが注目されるきっかけとなった「トレインスポッティング」も同様の感覚を持った作品でした。本作は新しいタイプの映画のようでいて、実はダニー・ボイルにとっては原点回帰のような作品なのです(便所へのダイブまで共通しています)。ボイルならではのこの食感による作品への貢献は大きく、ハッピーエンドで終わるのかバッドエンドで終わるのかがまるで見えてこないため、ジャマールの思いが届くのか最後の最後までハラハラさせられます。ラティカが電話に間に合うかどうかなんて、古典的な仕掛けなのにこれ以上ないほど手に汗握りましたよ。ラストでは、10人中9人の監督は不正解とするであろうところを、本作はあえて正解にしてジャマールに女と金の両方をプレゼントしてあげた本作の判断はなかなか粋。私は支持したいと思います。粋と言えば、最後のテロップにおける「ジャマールがクイズを正解できた理由‐運命だったから」という締めも粋でしょう。学はないが人生経験は誰よりも積んでいるジャマールが、その人生で見聞きしてきたことがクイズとして出題されるという展開はさすがに都合良すぎじゃないかと思っていたのですが、「運命だったから」なんて言われると、こちらも「うまいこと言うねぇ」と寓話としての美しさに納得せざるをえません。こういう良い意味での強引さこそ、作り話の醍醐味でしょう。映画の面白さの本質、物語の面白さの本質までを再認識させられた本作には、私は大満足しました。。。以下は本当に小さな問題点を指摘しますが、私が唯一引っ掛かったのはインド版みのもんたの反応です。インドでクイズミリオネアがウケているのは貧乏な視聴者に夢を見せられるからであり、その夢を実現しようとするジャマールの出現は、番組サイドからすれば歓迎すべきことのはず。しかし、司会者はなぜ彼の足を引っ張ろうとしたのか。ここだけが納得できませんでした。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2010-08-02 00:17:08)(良:1票)
719.  ミーン・ストリート
デ・ニーロの演技がはじめて評価された作品であり、かつデ・ニーロとスコセッシの最強タッグによる初の作品(それまでのデ・ニーロは、デ・パルマと仲良くやっていた)。登場人物達による意味のない会話や監督の好きな音楽がひっきりなしに流れるという演出は明らかにタランティーノに影響を与えており、映画史における本作の重要性はよく理解できます。しかし「面白かったか?」と言われると”No”で、鑑賞中に何度も時計を確認し、「あと1時間もあるのか」などと考えていたほど退屈した映画でもあります。マジメに働きもせず借金を重ねる親友の面倒を見ているうちに大変な目に遭うというだけの物語なのですが、この本筋に入るまでがまぁ長くて、はっきりとした物語も提示されないままひたすら登場人物達の意味のない会話を見ることは正直つらかったです。この題材で2時間弱という上映時間は長すぎで、もっとコンパクトにまとめてくれた方が見やすかったでしょう。
[DVD(字幕)] 3点(2010-08-01 20:28:57)
720.  イングロリアス・バスターズ
「ジャッキー・ブラウン」までの抜群の構成力は大きく買っていたものの、大金をかけてB級映画を作り直しはじめた「キル・ビル」以降のタラとは相性の悪い私ですが、残念ながら本作もイマイチでした。初期3作では、クセの強いキャラクターと、一筋縄ではいかない複雑なストーリーと、それらを効果的に見せるテクニックと、そして映画マニアならではの遊び心とが絶妙に絡み合った見事な手腕を披露していたものの、それ以降のタラは印象的なキャラクターで遊ぶことのみに特化し、映画を構成するその他の要素への関心を失ったかのようです。本作においてもその傾向は続いており、ランダ大佐を筆頭としたキャラクターの作り込みは良いものの、物語は恐ろしく単純で何の捻りもありません。この単純な内容で150分を超える上映時間は長すぎるように感じます。個性的なキャラクター達による長い長い会話も面白いことは面白いのですが、これは物語における効果的なタイミングで挿入されてこそ活きるもの。すべての場面でこれをやられ、会話が映画の中心となってしまうとさすがに飽きます。基本は物語で魅せて欲しかったです。映画館主によるミッションとバスターズによるミッションとが同時に進んでいるのですから、両者を巧く絡ませるということくらいは考えられなかったのでしょうか。片方のミッションが失敗しようとした時、もう一方のミッションの存在によって当事者達も気付かないうちに危機から救われていたとか、そのような展開がいくつかあれば映画は引き締まったはずです(「パルプ・フィクション」の頃であれば、こういう工夫も当然やってたんですけどね)。私が不満に感じるのは、才能が枯れてしまった監督が全盛期よりも劣る作品を発表するのなら納得できるのですが、緊張感に満ちた本作の冒頭などを見る限りタラの才能はまだまだ衰えておらず、その気になれば「パルプ・フィクション」クラスの映画をあと数本は撮れそうな状態であるにも関わらず、その才能の一部しか使わない映画しか撮っていないということ。次回作も恐らくは好きなジャンルで遊ぶだけの映画を撮るのでしょうけど、いつかはまた商品になる映画に戻って来て欲しいものです。。。最後に、本作に快く出演し、素晴らしい演技を気前よく提供したドイツ人俳優のみなさんの姿勢には感服しました。われわれも「パールハーバー」ごときで目くじらを立ててる場合じゃありませんな。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2010-08-01 20:06:36)(良:1票)
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