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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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901.  ブラディ・サンデー
大して有名な映画でもないし、ポール・グリーングラスという人もさして有名監督ではないのであまり期待せずに見たのですが、ほとんどの日本人が知らないうちにこんなすごい映画が作られていたことに驚きました。1972年に起きた実話をきわめてマジメに再現する作品で、映画的な脚色やドラマティックな演出はことごとく排除され、音楽すら使わないという徹底ぶりなのですが、だからと言ってこの手の映画にありがちな企画倒れや製作者の自己満足に終わることなく、映画として十分におもしろく作られているのがすごいところ。この映画はもはや「ドキュメンタリータッチ」という生易しいものではなく、1972年1月30日という日を丸ごと再現することに挑み、成功しています。あたかもその日その場にカメラが居合わせたかのような映像やセリフが続いて空気感まで再現してみせ、観客もその場にいたかのような臨場感を味わわせてみせます。ドラマ的な脚色は廃されているため前半の話は淡々と進むものの、無作為なように見えて実は巧みに話をまとめていくので退屈さは感じさせず、見る側のテンションを落とさないまま「血の日曜日事件」へと突入していきます。「血の日曜日」での監督の手腕は本当に圧倒的で、平和的に行われるはずだったデモが徐々に混乱していき、やがて丸腰の市民への発砲へ至っていくまでの様子をデモ隊、イギリス軍の双方の視点を巧みに交えながら、きわめて的確に描いていきます。また画面作りもしっかりしていて、実際のデモの中にカメラがいたとしか思えないほどリアルな映像であの事件を観客にも追体験させる一方で、同時に映画的な見せ場としての機能も十分果たしており、不謹慎ながら見ている側を興奮させるのです。このポール・グリーングラスという監督はタダモノではありません。画面作りに並ではない才能を見せると同時に、インテリジェントな題材の脚本を自ら書き、もっとも適切な手法で見せてくるのですから。ウィリアム・フリードキンが今の世代の監督なら、多分こんな風になっただろうなと思わせるようなすごい監督です。
[DVD(字幕)] 9点(2006-10-24 22:32:18)(良:1票)
902.  X-MEN:ファイナル ディシジョン 《ネタバレ》 
これは面白かったです!ブライアン・シンガー監督がスーパーマンに乗り換えたことを受け、急遽ブレット・ラトナー(スーパーマンの監督をクビにされた人)に監督が決まった時にはイヤな予感がしたのですが、この交代が完全に良い方向へ作用していました。ブライアン・シンガーの良い点は極めて徹底した世界観の構築にあり、見せ場ひとつにもこだわりまくってマンガ映画にも知的であなどれない風格を持たせるという才能を持っていますが、その反面素直に楽しめる娯楽作を作ることには不向きなところがあります。X-MEN2やスーパーマン・リターンズなどを見るにつけても、目を見張るような素晴らしいシーンが多くある一方で、最後まで観客のテンションを維持する見せ方ができていませんでした。そこに来て、卒なく娯楽作を作れるもののこだわりのない演出しかしないという対照的な才能を持ったブレット・ラトナーという監督の当番は、「良く出来てるけどいまいち面白くない」というこのシリーズの欠点を完全に補っていました。前作まででブライアン・シンガーが世界観の構築を細かく細かくやっていたおかげで、本作はとにかく戦って戦って戦いまくってればそれで良し。細かいことにはこだわらないブレット・ラトナーの大味采配のおかげで、大決戦が次々とテンポ良く見せられていき、本当に気持ちのいい娯楽作に仕上がっていました。サイクロプスやミスティーク、果てはプロフェッサーXまで、シリーズで主役を張っていたキャラクター達を「おいおい、いいのか?」と思うぐらいアッサリと切り捨て、ぞろぞろ登場する新キャラ達の紹介も最小限にとどめ、すべてをクライマックスの大決戦へ向けてテキパキと話をまとめていくのは薄味監督ならではの巧さでした。マグニートー軍団の襲撃を受け陥落寸前のアルカトラズに「X-MEN参上!」と言わんばかりにウルバリン達が駆けつけ、それぞれが一番かっこいい顔をしてファイティングポーズを決める場面は、まさにマンガ映画の真骨頂。アメコミ映画はいろいろ作られていますが、こういうストレートにマンガ的な演出をしたのはこれがはじめてだと思います。バットマン・ビギンズのようにヒーローにもリアリティを持たせることを重視する傾向が主流となっていますが、こういうバカバカしくもかっこいいシーンを見せてこそのマンガ映画だと私は思います。
[映画館(字幕)] 9点(2006-10-22 19:19:20)(笑:1票) (良:4票)
903.  ステルス
いまだにこういう映画を作ってる人たちもいるんだな~ってしみじみしてしまいました。低脳の極致を行くこの映画は80年代にスタローンやシュワルツェネッガーが出まくってたのと同じにおいがします。敵を殺しまくり、悪い国を成敗しまくって最後に主人公が生き残るこのパターン。アクション映画好きな私はこういうノリも大好きだったんですが、今の時代にいきなりこういうのが現れても素直には盛り上がれない、時代は変わったんだなと実感しました。単純な勧善懲悪を「痛快」の一言で片付けられる時代でもなくなってるんですね。例えばテロリストを殺すためなら当然のように他国を領空侵犯し、ミサイル攻撃してビルひとつを崩壊させる。こんな行為が英雄的に描かれ、「巻き添えは出ませんでした。成功です。やったー!」と手をたたいて喜んでる場面。思えばトップガンのクライマックスも領空侵犯して他国と非公式に交戦するという似たようなものでしたが、80年代には素直に盛り上がれたこの展開も、今の時代に見せられては素直に興奮できなくなってしまっています。「いくら悪いやつがいるからって、よその国を勝手に攻撃しちゃいけないよ」という感覚が常識となっているためですが、一方この映画を製作した人たちは、世間の人たちがこんな単純な話に素直に盛り上がると本気で思ったのでしょうか?これを製作したのはソニーピクチャーズという会社ですが、ソニーが製作する娯楽作はスパイダーマン以外ロクなのがありません。バーティカル・リミット、SWAT、ティアーズ・オブ・ザ・サン、バッドボーイズ2、アンダーワールド、パニッシャー・・・爆破さえ見せてれば盛り上がると勘違いした映画に大金を投入し続けているようです。エアフォース・ワンが思った以上に稼いでくれた97年以来、方針がまったく変わっていないような気がします。もうちょっとよく考えて映画作りましょうね。
[DVD(吹替)] 5点(2006-10-21 19:06:17)
904.  パニッシャー(2004) 《ネタバレ》 
ジュマンジ、ダイハード3、アルマゲドンと偏差値の低い脚本を書き続けてきたジョナサン・ヘンズリーという人物の初監督作だそうですが、今まで以上に適当でぬるい腰砕け映画でした。私がここ数年見た映画の中でもっとも変な映画かもしれません。大手スタジオ&一流プロデューサーが作った大作とは到底思えない出来で、低予算だったドルフ・ラングレン版の方がずっと筋が通っており、完成度も高いです。復讐アクションというこれ以上わかりやすいものもないってくらい単刀直入な話なのに、主人公への共感がほとんどできないという奇跡をこの映画は成し遂げています。目の前で一族郎党皆殺しにされ怒りに燃える主人公ですが、その復讐は夜な夜な尾行とイタ電を繰り返し、浮気をでっち上げるというすさまじい手口。ボロアパートを勝手にパニッシャー基地にリフォームし、車もパニッシャー仕様にわざわざ改造したにも関わらず、復讐の基本が「嫌がらせ」というのはあんまりでは・・・。その間にはビルからトラボルタの金をまいたり、アパートの隣人とのほのぼのエピソードがあったり、コントとしか思えない味のある刺客が現れたりで、この映画が一体何をしたいのかがわからなくなってきます。家族を殺された者同士の復讐というハードな設定にも関わらず、バイオレンスをせずにヘンテコなエピソードばかり盛り込んでくるので、作り手の意図がまったく見えてこないんですね。「これはコメディをやってんのか?」と錯覚してしまったほどです。前半で寝返らせたチンピラがほとんど話に絡んで来ないという謎もあるし。しかし、クライマックスは突然凄惨なムードに突入してまたビックリ。パニッシャーによってでっちあげられた事実無根の浮気疑惑で殺されてしまう部下&奥さんがかわいそうでした。トラボルタの最期も悲惨なもので、無力なトラボルタを車で引きずって爆破という実に陰惨な殺し方をします(ちょっとお笑いウルトラクイズ入ってますが)。こういうのって、パニッシャーとトラボルタがさしで対決して、お互いに怒りをぶちまけながら最後は正義が勝つというのが普通のパターンだと思うんですが、これほど後味の悪い仕置きってのも珍しいと思います。そうやって汚い手口ばかり使うパニッシャーですが、ラストでは「世の中の悪いやつは俺が成敗するからな」とひとりで決意します。こんなアブナイ人に好き放題振る舞われたら世の中が迷惑しますから。
[DVD(吹替)] 3点(2006-09-30 19:07:44)(笑:1票)
905.  サハラに舞う羽根 《ネタバレ》 
これはなかなか面白くない映画でしたね。それぞれの登場人物の行動原理が理解不能だったり支離滅裂だったりするので、話にのってあげようにも何を考えながら見ればいいのかサッパリわかりません。友情とは?勇気とは?なんてことを描こうとしたマジメな感動作のはずなのに、各人物の心理や行動が理解しがたいというのは致命的ではないでしょうか。まず、世間に白い目で見られながらも軍隊を除隊したにも関わらず、後に単身でスーダンへ渡った主人公ハリーの心変わりがよくわからないし、当初何の目的があってスーダンへ行ったのかすら不明瞭でした。何の策もなく収容所へ潜り込むに至っては単なる熱血バカにしか見えないし。こんな主人公には感情移入できませんよ。それに輪をかけてわからないのが、ハリーのボディガードとなる原住民の傭兵。ハリーのために何度も命を張ってるわりにそれだけの行為の動機が不明瞭だし、さらには侵略者であるイギリス軍のために奔走までするし。彼は奴隷部族出身で、現地においても差別を受ける身であるという描写があり、それがイギリス側に与する理由になっているとも考えられますが、それにしてもあそこまでの献身ぶりは腑に落ちませんでしたね。あと細かいですが、ハリーを脱走させる時に使った毒薬ありましたよね。一時的に仮死状態になってその後蘇生するアレ。あれはどういう原理の薬なのかが納得できず、なんとも都合のいいアイテムもあるもんだと呆れてしまいました。そして最強なのがヒロインの行動のムチャクチャぶりですね。将軍の息子にして士官学校でも有望株だったハリーとはラブラブだったものの、彼が除隊し一転して不名誉を背負った途端に臆病者と罵り、以後は戦地で英雄となったジャックにラブレターを書くんですね。ハリーを自暴自棄に追い込んだ反省もそこそこに、よりによってそのハリーの親友のジャックに色目使いますかね。さらにさらに、そのジャックが盲目となって帰還するや「ハリーに会いたい」と言い出す始末。ラストではこんな女とハリーが結ばれるわけでして、この締めにどうやって感動すればいいんだって感じです。原作(しかも名作)のある作品だけにご都合主義のストーリーでもいじりづらいという制約があったのはわかりますが、もうちょっと考えて作って欲しい映画でしたね。
[DVD(吹替)] 2点(2006-06-24 20:48:18)
906.  誘拐犯(2000)
この映画はアクションでもサスペンスでもなく、こってこてのバイオレンスなんですよ。アクション映画のボリュームとも、サスペンス映画の「ほ~」とも違う、苦みばしったバイオレンスの風味を感じる映画だと思います。無駄にややこしい話が感情に歯止めをかけてアクションを盛り上げない上に、その話すら尻切れとんぼで完結せずサスペンスとしても成立していない。この映画をアクション、もしくはサスペンスとして見れば、アラだらけで中途半端な作品と感じられます。が、この映画の脚本には見逃せないほど素晴らしい部分がいくつかあるため、そういった手落ちと感じられる部分すら、もしかしたら監督の計算づくではないかと思います。必要以上に登場人物に感情移入させてはそこいらのアクション映画と同じになってしまう。だからこそ話をややこしくしてあえて盛り上げることを抑制し、このクールな苦味を味わって欲しかったのではないかと。この映画の素晴らしい部分とは、まず第一に銃撃戦へのこだわり。誘拐シーンのじりじりとしたあの緊張感は、撃ちまくるだけのアクション映画とは完全に一線を画します。走って逃げるとか、勢いで振り切るといういい加減なことはせず、ゆっくりと進み、時に立ち止まって常に追っ手を牽制しながら、徐々に間を空けていくという前代未聞の逃走劇です。他の映画ではまったく見られない奇妙な構図なのですが、「実際に銃撃をやればこんな感じになるのかな」と妙に納得させられます。クライマックスの大銃撃戦もただひたすらかっこいいだけではなく、マガジンをきちんと交換していたり、銃を撃つときの反動が見る側にも伝わってきたり、弾が当たった時は痛そうだったりと、とにかく描写が細かくてよく考えられてるんですね。そこいらのアクションとは別物を作ろうとしていたことが伺えます。そしてもうひとつの素晴らしいところはおじさんたちのかっこよさ。ジェームズ・カーンの「老いぼれを見たら修羅場を生き延びたと思え」の名セリフが示すように、おじさん達がやたらかっこいいんですね。ハゲ散らかして腹の出たおじさん達がとにかくプロフェッショナルで、そこいらの映画のヒーローとはまったく違うかっこよさが新鮮でした。この2点により、この作品は誰でもわかる派手な映画ではなく、玄人がじっと見てこの風情を味わう映画を目指したのではと私は思います。もっと評価されてもいい作品ではないでしょうかね。
[DVD(吹替)] 8点(2006-06-08 00:18:32)(良:3票)
907.  G.I.ジェーン
公開当時、「白い嵐」との併せ技で「リドリー・スコットも終わったな」と世界が確信した作品ですが、今になって見ると意外とおもしろかったです。フルメタル・ジャケットとトップガンをあわせたようなお話のため、硬派なドラマとして見るべきか娯楽作として楽しむべきかがわからなかったのが公開時の失敗要因でしょうか。しかし「グラディエーター」以降花開いた監督の残虐路線を念頭に置けば、この映画に大したメッセージ性はなかったであろうことが伺えます。リドリー・スコットという監督はスピルバーグと並んでサディズムを感じさせる監督です。↓のパブロン中毒さんもおっしゃってるように、表現手段としてあえて残虐性を選んでいるのではなく、個人的な趣向としてやっていることを感じさせられるのです。しかしその性向はグラディエーター以降にようやく判明したものですので、オニールに加えられる必要以上に凄惨な拷問の意味に観客は戸惑い、一転して普通のアクション映画になってしまったラストの救出作戦に素直に興奮していいものかがわからなかったのです。一般の作品に登場する凄惨な暴力には何か意味を感じなければならなかったのが公開当時の常識であり、そういう意識で見ればこの映画はさっぱり理解不能。また本作はフェミニズムの立場に立ったお話でもありますが、同様に監督は本当にフェミニズムを描こうという意思はなかったでしょう。この監督は「テルマ&ルイーズ」という女性映画も撮っていますが、こちらも表面的な主張にのみとどまっていました。監督の興味は虐げられるものを描くことにあり、その題材として社会的に受け入れられやすい女性問題を選んでいるのではと思えるのです。カラー・パープル、シンドラーのリスト、アミスタッドと、こちらもなぜか虐げられる者のドラマを作りたがるスピルバーグと似たような性質を感じます。そんな監督の作品ですので、この映画にも大した意味はないのです。ただひたすら目の前の映像を見てればよろしい。そう思って見ると、ラストの救出作戦なんてトニー・スコットの映画みたいで興奮しますよ。そうそう、トニー・スコットとリドリー・スコットの力量の差って、恐らく変態性の差じゃないですかね。どちらも最上級の技術を持ってるわけですけど、やっぱり変態パワーが芸術家としてのリドリー優位の根源ではないかと。トニーは変態じゃないから普通の映画しか撮れないんですよ。
[DVD(字幕)] 7点(2006-04-30 17:27:57)(良:2票)
908.  ボーイズ・ドント・クライ 《ネタバレ》 
あまりに救いのなさすぎるラストに対する拒否反応は私にはないのですが、どうにも高評価を与えづらい作品です。題材の重大さに対して演出力が追いついていないのがその原因でしょうか?あまりに衝撃的な作品なので見ていて退屈することはないのですが、どうにも感動の伝え方が稚拙なような気がしました。ありのままの自分を社会は受け入れてくれない、またそんな社会にウソをつき続けねばならないというブランドンの背負う重荷、そしてようやくありのままの自分を受け入れてくれるララというパートナーができた喜び、そのどちらも結局肌で感じることはできませんでした。この映画の意義は、恐らくそういうものを観客に共感させることにあると思うのですが、そんな肝心な部分を伝え損ねたまま、話は凄惨なラストへと突入していきます。あのラストは誰が撮ったって、誰が見たって衝撃を受けるものであり、そういう意味ではある種の一発芸のような印象を受けました。そこに至るまでのドラマがあまり良くなかったこともあり、「これを見せれば誰だってショックを受けるはずだ」的な作り手のあざとさまで感じてしまったのです。悪名高きセカチューのように、感動しそうな記号を適当に配置する的ないやらしさが見えました。いや、製作したみなさんは恐らく真摯な姿勢でこれを作ったとは思うんですよ。でもまぁ性同一性障害という繊細なテーマの本質を十分に描くことなく、かわりにそれに対する実にわかりやすい偏見をクローズアップしすぎたために、どうにも感動を押し売りする即物的な映画に感じられたんです。もしこの映画がより高度な演出を持って、性同一性障害の本質を私たちにも感じさせることのできるドラマであれば、ラストの意義はより大きなものになったはずです。ただただ「悲しい」「かわいそう」で終わらないものとなったはずです。オスカーを受賞したヒラリー・スワンクの頑張り(本作は演技力というよりも頑張りを感じました)をはじめ、良い友達なんだけど同時にいやらしさも感じさせるというジョンとトムの絶妙なうまさ、美しすぎないクロエ・セビニーの田舎ヤンキーのハマり具合など、キャストは実にうまく配置されているだけに、実にもったいない気がしました。
[DVD(吹替)] 5点(2006-04-24 02:48:45)
909.  遊星からの物体X
モンスター映画の最高峰にしてサスペンスの最高峰です。公開当時は大コケし、おまけに批評家からあらん限りの罵声を浴びせられたものの、わかってる映画ファンたちによってほどなく傑作の評価を勝ち取った本作。この作品からはあらゆるサービスが排除されており、密室サスペンスやモンスター映画の本質でのみ勝負した、武骨で荒削りな作品となっています。盛り上がらない音楽、グロテスクなだけで美しさのない絵、男だけのむさい登場人物・・・、まさに見る人を選ぶ映画なのですが、そのハードで大人な仕上がりはSFホラーとして間違いのないものだと思います。「俺は人間だ。全員が顔を揃えたこの場で俺を襲わずになりを潜めてるということは、まだ人間が何人も残ってるということだな。徐々に同化して俺たちに勝つつもりだろうが、嵐が来るまでの6時間で俺は決着をつけてやるぞ」と、メンバーの中にいるであろう物体に向かってマクレディが対決宣言をするこの場面こそ、この映画の象徴的なシーンです。もしかしたら隣に座ってる仲間が物体かもしれないというサスペンス。物体がひとたびその正体を現せば地獄そのものという恐怖。そして、南極のど真ん中で逃げる場所のない、しかも誰が同化されているかわからない状況では救助隊を呼ぶこともできないという極限のシチュエーション。この3つが素晴らしい相乗効果をもたらし、他に類を見ないほどの異様な緊迫感を放っているのです。この映画に比べれば、「エイリアン」などディズニー映画程度にしか感じられません。それほどこの映画は怖い。ここまで緊迫感に溢れ、かつおぞましい映画は見たことがありません。原作「影が行く」が準備した、サスペンスとしてこれ以上ないシチュエーション。その本質を100%活かしてみせた、JCの生涯最高の演出。そして物体の恐怖を見事に具現化して見せた、ロブ・ボッティンの恐るべき想像力。この3つの才能によって、この映画の3つの要素は支えられ、奇跡的な傑作になりえたのでしょう。登場から四半世紀が経ついまだに、これに匹敵するホラー、これに匹敵するサスペンスは作られていません。
[DVD(字幕)] 10点(2006-04-03 02:15:18)(良:3票)
910.  トータル・フィアーズ
この映画では、作品における監督の重要性というものを実感しました。これは本当にもったいない映画で、映像化したくなって当然なほど素晴らしい発想、脚本の出来も悪くなく、俳優だって良いのです。モーガン・フリーマンはもちろんのこと、ベン・アフレックもなかなかハマっていました。にも関わらず、監督の力量不足のためにこの素材がまったく活かせていないのです。展開にメリハリがないためストーリーに緊迫感が生まれず、「恐怖の総和」をまったく表現できていません。話を追うだけで映画が終わってしまっており、米国本土が核攻撃されるという話をここまで退屈にさせる演出はなかなかのものです。「映画は一に脚本、二に脚本」と言いますが、脚本も俳優も特撮もすべては素材に過ぎず、最終的には監督がどう料理するかにかかっているようです(もちろん、素材が腐っていては話になりませんが)。ジャック・ライアンシリーズはとにかく監督に恵まれないようで、原作者が激怒するのも当然ですね。今後はジョン・シングルトンやザック・スナイダーがトム・クランシー作品を監督するようですが、今度こそ話に見合うだけの素晴らしい演出をして欲しいものです。
[DVD(吹替)] 4点(2006-03-12 14:36:53)
911.  ブルース・オールマイティ
自分の人生は最悪だと思ってた主人公が「素晴らしき哉、人生」に気づくまでという、超オーソドックスな物語です。日本人には神様を恨むなんて感覚はありませんが、自分はなんて運が悪いんだと運命を呪いたくなることはよくありますよね。そういう時にこれを見ると、少なからずポジティブになれる映画です。主人公もジェームズ・ステュアートのように清廉潔白そのものって感じの人物ではなく、私達のようにいやらしい欲望を持った人物ですから、自分の日常を投影して見ることができます。神様の力を得て欲望を実現するというのも、現実逃避のためによくやる妄想。それを映像化したということで、前半はとっても楽しい仕上がりでした。何かデカイことをするわけでもなく、あくまで日常のゲスい欲望を満たすために神の力を使うってのがいいですね。ジム・キャリーの顔芸も光ります。しかし一転、後半は一気にトーンダウンし、物語の結論もあまりに月並みなものとなってしまいます。「神通力をもっても人の心は変えられない」「傲慢さが愛する人を遠ざける」「あるがままの自分を受け入れよう」「何気ない日常こそ幸せ」・・・新味のない上に説教くさい話ばかりで、まるで道徳の授業のような居心地の悪さを感じました。神様のセリフも陳腐なものばかりで、モーガン・フリーマンでなければ目も当てられなかったことでしょう。テーマの時点でコメディタッチの感動作を狙った映画であることはわかりますが、もっと独自の結論を準備して欲しかったですね。あの主人公が最後には真っ白な人物になってめでたしめでたしではなく、人を食ったようなところを少しは残していてくれればまだよかったのですが。
[DVD(吹替)] 6点(2006-03-05 22:54:14)
912.  ヤングガン2
大予算が組まれた期待作でもなく、最高のスタッフの渾身の作品というわけでもなく、含蓄のある深いテーマがあるわけでもなく、恐らくは「偶然」おもしろくなったと思われるヤングガン。ハリウッドではこういう奇跡ってたまに起こるようで(ダイハード、スピード…)、そしてその続編はたいていが大したものじゃないというのもよくあることで、そのためこのヤングガン2もほとんど期待せずに見たのですが、驚くべきことに第一作のレベルを完全に超えてしまっていました。しかもリーサル・ウェポンやダイハードのような物量作戦に出るわけでもなく、エイリアンやミッション・インポッシブルのようにまったく別物にして前作との比較を避けるわけでもなく、雰囲気自体は第一作のままに、映画としてのクォリティそのものが上がっているのです。稀に見る続編の成功例ではないでしょうか。キャラクター達はより魅力的になり、前作では時にサイコ気味で仲間を窮地に追い込む張本人だったビリーが、今作では主役としてのカリスマ性をきちんと放っています。対するパット・ギャレットも冷徹さの中にどこか人間性を残しており、ドラマを盛り上げる理想的な悪役となっています。そのギャレットに同行するのはなんと無名時代のヴィゴ・モーテンセン。大した役ではないものの、やはり彼もかっこいいのです。センス良く撮られた映画なので、端役までちゃんと活きてるんですね。アクションの見せ方も絶妙で、テンポやタイミングがうまく計算されています。ただ撃ち合うだけではなく、しばしばトンチで切り抜けてるあたりもいいですね。恐らくは映画史の中に埋もれていくであろうこのヤングガンシリーズですが、正統派西部劇にも負けない独特の味を持つこのシリーズが私達の世代のみの鑑賞で終わってしまうには惜しい気もします。
[DVD(字幕)] 8点(2006-03-05 15:37:36)
913.  フライト・オブ・フェニックス
これはすごいです。超地味なキャスト、超地味なお話のためにほとんど注目されなかった作品ですが、鑑賞後には「本物の映画を見たなぁ」と大満足できる傑作でした。オーソドックスで新しいものは何もないものの、話やキャラクターをちゃんと追いかけることでここまで面白いものができるんですね。あれこれ揉めながらもみんなで力を合わせるという展開はまさに直球勝負ですが、そこに小エピソードを適度なタイミングで挿入して話の緊迫感を維持するという計算の巧みさもあり、これはまさに理想的な脚本のあり方でしょう。そうした話の構成のうまさがあったからこそ、ラストがあれほど爽快だったんです。映画を好きになった子供の頃に感じていた、あの映画の本質的な楽しみを久々に味わったって感じです。そんな極上の脚本に加えて、ジョン・ムーア監督のビジュアルセンスも炸裂。「エネミーライン」のような駄作においてすら独特のビジュアル意匠を見せ付けていたジョン・ムーアのセンスがここでは大きく作品に貢献しています。思わず「もう一回見せて」と言いたくなるほどの圧倒的な墜落シーンの後はすべて砂漠。砂漠を延々2時間も見せられるわけですが、ジョン・ムーアの映像は砂漠の美しさや恐ろしさをあますところなく伝え、2時間の映像を単調にはしていません。「ドーン・オブ・ザ・デッド」のザック・スナイダー、「コンスタンティン」のフランシス・ローレンスと並んで、これからのハリウッド大作を引っ張って行きそうな才能だと思います。願わくば、マイケル・ベイではなくデビッド・フィンチャーのように育って欲しいものです。
[DVD(吹替)] 9点(2005-11-19 19:29:58)(良:1票)
914.  バタフライ・エフェクト/劇場公開版
映画館で見て、そしてDVDであらためて見直したんですけど、DVDに収録されてるディレクターズ・カット版が大変なことになってますね。劇場版ではいくつか不明な部分があったんです。冒頭、警備員から逃れてメモを残すシーンの伏線がいまいちつながっていなかったり、7歳のエヴァンが残虐な絵を書いたり包丁持ってたりする理由がよくわからなかったり。ディレクターズ・カット版ではそのあたりの伏線もきちんと回収されていて、実に納得のいく出来となっていました。そして問題のクライマックス。(あえて詳細は書きませんが)劇場版とはまったく異なるこのクライマックスこそが冒頭につながっていくわけで、確かにディレクターズ版のクライマックスこそ正当、劇場版はとってつけたものと言えます。映画館で「え、これで終わり?」と思った私は、すっごく納得ができました。がしかし、確かにあんなオチを映画館で上映はできませんよね。そんなわけでいろんな意味で納得できるディレクターズ・カット版ですので、DVDをお持ちの方はぜひ見比べてみてください。ちなみに私はディレクターズ・カット版の方が好きです。
[DVD(字幕)] 9点(2005-11-13 22:28:22)
915.  アイランド(2005)
おもしろかったです。話はダレることなくテキパキと進んでいき、アクションの迫力は超絶。娯楽作としては十分に満足できる作品でした。あくまで娯楽作としては・・・。しかしこの映画、SFとしては大失格でしょう。「ブレードランナー」や「マトリックス」といった過去の傑作同様、出自を越えるための戦いという大きなテーマを扱っているにも関わらず、その重要な核心部分を素通りしてしまっているのですから。脚本のアイデア自体は非常に素晴らしく、アレックス・プロヤスやジョー・ジョンストンのようなSFを理解する娯楽監督、もしくはデビッド・フィンチャーやダーレン・アロノフスキーのような凝った映像と深遠なドラマの両立が可能な監督が撮っていれば、世紀の大傑作になっていたかもしれません。しかしマイケル・ベイでは・・・。この映画の監督にマイケル・ベイが内定した時点で、イヤな予感はしてたんです。「アルマゲドン」を見ればわかりますが、彼にはSF魂が決定的に欠けている上に、ドラマに悲壮感を持たせるという繊細なことのできる人ではないのです。地球が滅びるという絶対の危機においても、2時間半のどんちゃん騒ぎをやってしまった人ですから。そんな監督にクローン人間という重厚かつSF的なテーマを任せるということは、オースティン・パワーズの新作をロメロに撮らせてしまうようなムリを感じてしまいました。そして、その想像通りの仕上がりとなったのがこの「アイランド」なのです。素晴らしいアイデアに満ちた脚本をここまでズタズタにしてしまったことは残念でなりません。アイランド懸賞という画期的なアイデアや、蛾の存在によって世界観への疑念が決定的になるくだりなどは非常によく考えられており、深遠なミステリーとして撮れば忘れられないほどのおもしろさになったはずです。また、クローン人間にも記憶が宿っていたというくだりは、(映画では話の辻褄合わせ程度にしか扱われていなかったものの)作り物にも魂は宿るのだという感動的な解釈であったはずです。なのになぜ、よりによってこの脚本を頭空っぽアクションに作り変えてしまったのでしょう?間違いなくプロデューサー達の不手際ですね。監督にマイケル・ベイを選んだのもプロデューサーなわけですし、「小品でもいいから素晴らしい映画にしたい」という心を持ったプロデューサーに買われなかったことが、この「アイランド」という企画の不運なんですね。
[映画館(字幕)] 7点(2005-08-07 23:25:56)(良:1票)
916.  宇宙戦争(2005) 《ネタバレ》 
前半は本当にすばらしかった。ビグザムを思わせるトライポッド登場のシーンはすごすぎて爪先がつりそうになりましたよ。「激突」より、スピ演出の真骨頂は目線をまったくぶらさないことにありますが、その集大成とも言える名場面。「マイノリティ・リポート」前半の追跡劇といい、流れをもったアクション演出においてスピに勝てる監督はいないでしょう。そのぶん、スポットでの破壊力に欠けるのがスピの弱点。思えばスピルバーグ、彼は娯楽映画の王者とされながらも、今まで大量破壊映画を撮ったことがないんですよね。正直、私はそんなスピにスペクタクル描写ができるのだろうかという不安があったのですが、その不安は的中してしまいました。この映画には、「宇宙戦争」に当然期待される荒唐無稽なまでにとんでもないシーンってのがないんですよ。「ロストワールド」でも、せっかくT-REXをサンディエゴに上陸させながら、都市で暴れ回らせず郊外を散歩させるだけだったスピ。意図的にやってるのかと思うほど、彼はここぞというスペクタクルシーンを見せてくれません。軍隊総攻撃など、全然描写が足りませんでしたよ。軍隊がめっためたにやられるシーンまできちんとあれば、もっと絶望感が出たと思うんですけどね。一方で地下室の場面とかはムダに長すぎ。ティム・ロビンスの役が必要だったとはどうしても思えないし。ノコノコと宇宙人が出てくる必要もありませんでしたね。「ブーン」ってお時間のチャイムが鳴ると、すごすごとトライポッドへ帰っていく宇宙人さん達。観光に来たんですか?問題のクライマックスもカタルシスなさすぎ。ウィルスで弱った宇宙人を10人程度の兵隊さんがバズーカで攻撃。「うちの町でもトライポッドを倒したんですよ」みたいな終わり方では、ねぇ。やっぱり、形勢逆転に乗じてこれでもかってくらいの地球側の大反撃が見られれば、お腹いっぱいにはなれたでしょうに。こうして考えると、「インデペンデンス・デイ」とかぶることを極端に避けてるような気がしてきますね。都市の破壊、宇宙人相手に歯が立たない軍隊&ラストの猛反撃。「宇宙戦争」と聞いて誰もが連想する見せ場が、この映画からはことごとく排除されています。意図的なまでに。まさか、これがスピにも目覚めた巨匠のエゴの結果だったら、それはちょっと残念ですね。彼には、最高の技術を持った映画少年であり続けて欲しかったんですけどね。
[映画館(字幕)] 7点(2005-07-03 01:27:05)(良:1票)
917.  バットマン ビギンズ
いやぁ、なんだか惜しい映画でしたね。アメコミ番長デイビッド・S・ゴイヤーの書いた脚本は非常に秀逸。ブルース・ウェインがなぜバットマンになったのかが素晴らしいドラマとして描かれており、きれいに伏線まで張っていくという丁寧なお仕事には参りました。ドラマパートがメインとなる前半では、「これは史上空前の傑作になるのでは?」と期待しましたよ。続々と登場する豪華俳優陣にも唸りっぱなし。マイケル・ケインを見れば英国人の執事が世界最高であることがよくわかるし、やっぱりリーアム・ニーソンはかっこいいです。クリスチャン・ベールも期待以上によかった。当初ブルース・ウェインをオファーされていたキアヌ・リーブスとも、こうして見ればなんだか似てるし。しかし問題は、ブルース・ウェインがバットマンになってからです。バットマンが・・・ダサイ・・・。それはデザインがティム・バートン版を超えていないのもそうですが、見せ方がうまくないんですね。ヒーローに必要なケレンとか色気が完全に欠けていて、普通のアクションになってしまってるんです。コミックヒーローのアクションが他と大きく違うのは、動きではなく画にこだわらねばならないことです。例えば「スパイダーマン」の場合、サム・ライミは実際のコミックのカットをそのままアクションの画の中に取り込んだと言います。バートン版バットマンも同様で、両者共にポーズにこだわりがありました。しかし今回のバットマンはやたらカットを細かく切っているため、もう何がなんだかわかりません。バットマンの全身像がほとんど写らないことからも、そのあたりの感覚が決定的に欠けていたことがわかります。クリストファー・ノーランは才能のある監督だとは思うのですが、コミックをやるには演出が硬すぎましたね。もっと自分のセンスに自信があり、躊躇することなく遊び心を出せる監督が必要でした。つまり悪ふざけが出来るというのが、すれすれの過剰演出が要求されるアメコミ映画の監督に必要な条件なんです。バートン、ライミともに悪ノリが得意な監督だったでしょ。あともうひとつ。ヒーローには「バットマン参上!」って感じの特徴的なテーマ曲が必要なのですが、音楽もいまいちでした。H・ジマーとJ・N・ハワードの共作だというのに、あまりよくありませんでしたね。やっぱりアメコミはダニー・エルフマンじゃないとダメなんですね。
[映画館(字幕)] 6点(2005-06-24 00:50:36)(良:2票)
918.  ホステージ 《ネタバレ》 
いやぁ残念、残念。ひねりのある展開はなかなかよかっただけに、もっと腕のいい監督がやってれば、それだけでサスペンスアクションの佳作になってたかもしれません。刑事の暗い過去、家族との確執、人質事件、サイコな犯人、ふたつの兄弟、親子の情愛、犯罪組織、警察同士の主導権争い・・・、描くべき要素は山ほどあったにも関わらず、そのどれも浅い部分でスルーしてしまってるのはもったいない限りです。とくに、ブルース・ウィリスの行動に迷いが感じられなかったのが致命的。事件を解決せねばならない、人質になってる子供たちを救いたい、しかしバックの組織の指示にも従わねばならない、ミスれば自分の家族が殺される。この「すべてにおいてミスが許されない」という状況では、ひとつひとつの行動をデリケートに扱うことがサスペンスにつながるにも関わらず、ブルース・ウィリスは基本的に勢いだけで行動してしまいます。これが決定的に話から緊迫感を奪い、せっかく用意された設定まで台無しにしています。犯罪組織の影も薄く(白い携帯電話も大して活用しないし・・・)、もっとブルース・ウィリスを苦しめてくれれば話のスパイスになったんですけどね。人質姉弟の命を救おうとするブルース・ウィリスに向かって、「人質の命はどうでもいいから、朝までには絶対DVDを奪って来い」くらいのことは言って欲しかったです。そして極めつけはラスト。最後はピストルで決着では、「今まで見てきたサスペンスはどうなんの?」って感じですよ。もっと頭を使いましょうよ。黒幕の正体もよくわからなかったし・・・。この監督、同じ娯楽サスペンスでも「エグゼクティブ・デシジョン」や「交渉人」を見て勉強して欲しかったですね。これだったら、ジョン・マクティアナンやアンドリュー・デイビスにでも撮らせた方が、よほどいい出来になったでしょう。
[映画館(字幕)] 5点(2005-06-11 21:41:14)(良:1票)
919.  キングダム・オブ・ヘブン
リドリー・スコットってのは、良くも悪くも映像派ですね。まず良い点は、とにかくすべてのシーンが美しく、どのカットをとっても絵画のように綺麗。そしてあのとんでもない戦闘シーンのド迫力。確かに「ロード・オブ・ザ・リング」のヘルム峡谷戦やミナスティリス戦とかぶるわけですが、こちらの方がレベルが上ですね。CGで作ったのが丸出しの「ロード~」に対して、こちらは生身の迫力に満ちてました。2時間丸々戦闘シーンという「ブラックホーク・ダウン」を作り上げた手腕はダテじゃないのです。一方悪い点は、ストーリーテリングに明確な弱点がいくつかあることです。人間関係が複雑な割に拾い切れていない要素が多く、バリアンが亡くした妻子のことは後のストーリーにまったく影響を与えず、彼の複雑な親子関係も実にアッサリとしたものです。(「グラディエーター」もそうでしたが)主人公のロマンスに深みはなく、むしろ蛇足になってるような気もしました。「人を救うはずの宗教を巡って異教徒と殺し合う」という矛盾をテーマにしている割に登場人物たちに葛藤はなく、悪者は最後まで悪者、善人は最後まで善人でした。このテーマであれば、誰もが自分なりの大儀や正義を目指しているがゆえに戦いが起こるという話にした方がよかったと思います。と言うか、いまだに続いている宗教戦争の本質ってそれですよね。それぞれが正義だと信じているからこそ相手に対して不寛容となり、争いが起こってしまうと。しかしギーという明確な悪役を作ってしまったがために、話からその深みが奪われたように思います。これでギーも善人で、自分なりの信念を貫く人間であれば、戦争というものの本質をえぐった傑作になっていたかもしれません。それにしてもリーアム・ニーアムとジェレミー・アイアンズはかっこよすぎですね。「これぞナイト」という風格に満ちており、彼らが映ってる時には完全に画面を独占してましたよ。演技ができる俳優さんはいろいろいますけど、彼らのように風格を出せる俳優さんってのはあまりいませんね。あとどうでもいいことですけど、劇中「13ウォーリアーズ」で聞いたことのある曲が流れたので「まさかパクったんか」って気になってたんですけど、エンドロールにはちゃんと「バルハラ ジェリー・ゴールドスミス作曲」ってクレジットされてました。他の映画の音楽をまんま使うってこともあるんですね。ちょっと驚きました。
[映画館(字幕)] 7点(2005-06-05 00:27:47)
920.  クライモリ(2003)
「悪魔のいけにえ」ミーツ「プレデター」の本作、なかなかの力作ではないでしょうか。同じような話(てか、まったく同じ話)の「テキサスチェーンソー」よりもこっちのが怖かったです。躊躇のない残酷描写、80分というタイトな上映時間、変な欲を出さずお客さんを絞り込んで作ってるのが好印象でした。この手のホラー映画にありがちな「徐々に殺されていく」という進行ではなく、余分な人物はテキパキと殺していくというスタイルが話にスピード感を与えており、またマウンテンマンの残虐性を引きたてていてよかったです。「ヒーローとヒロインが残ればいいのさ」という割り切ったその姿勢、また「窮鼠猫を噛む」な後半の展開、まさにプレデター方式ですね。しかし残念だったのはマウンテンマンの造詣。身体に対して頭が異様に小さく、いかにも「スタントマンにかぶせてます」みたいな造詣はあんまりでした。こういう鬼畜映画の場合でもやりすぎってのはあるようで、あそこまで人間離れさせる必要はなかったように思います。ジェイソン、ブギーマン、レザーフェイスなどの、あの素顔が分からないという被りものの怖さでやってくれれば、恐怖も倍増だったでしょう。顔が見えてしまうと、どうしても恐怖の底も見えてしまいますからね。しかしまぁ、「脱出」「悪魔のいけにえ」「ブレーキダウン」「Uターン」「激突」など、アメリカのド田舎ではとんでもない危険に遭わされるというのは常識なのでしょうか?
[DVD(吹替)] 8点(2005-05-29 20:22:30)(良:1票)
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