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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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101.  不屈の男 アンブロークン
原作に不適切な表現があったことから反日映画とのレッテルを貼られて大変なバッシングに遭った不幸な作品ですが、作品内容は極めてフェアーなものだったと思います。本編は個人と個人のぶつかり合いに終始しており、決して日本を批判するものでもありません。さらには、日本に対する無差別爆撃の被害状況など通常のアメリカ映画が避けて通る描写にも果敢に挑んでおり、私生活でも平和活動に積極的なアンジェリーナ・ジョリーは作品にも一本筋を通しています。また日本人として面白かったのは、主人公の乗る爆撃機がゼロ戦に襲われる場面の恐怖心の演出であり、アメリカさんから見た戦争はこんな感じだったのかと興味深く感じました。 ただし、映画としては面白くありません。元から強いメンタルを持っていた主人公がただひたすら虐待に耐えるだけの内容であり、そこにドラマがないのです。主人公、主人公に暴力を振るう看守、凄惨な現場を眺める他の捕虜達、これら全当事者の誰にも何の変化もなく、これでは残酷描写を売りにしたゲテモノホラーと大差ありません。 この点については、アンジーの個人的な思想が作品にとってマイナスに働いたように感じます。アンジーはいわゆる進歩的な文化人であるため、アメリカ万歳映画にはしないという意図を持って本作を製作したと考えられます。それゆえに、主人公の持つ愛国心という重要なファクターが丸ごと落とされているために、話の通りが悪くなっているのです。主人公はなぜ暴力に屈服しなかったのか、日本当局からの懐柔案にも乗らなかったのか。それは愛国心ゆえのものだったのに、アンジーはあくまで個人のドラマとして本作を製作したために、暴力を振るう側も振るわれる側も何やってんだかよく分からない内容になっているのです。 また、歴史映画でありながらリアリティの造成にも失敗しています。前述した東京大空襲やゼロ戦の描写など、表面的な事実を描くことには一定の成果を挙げている一方で、本編においては実際に起こったことならではの生々しさというものがないのです。例えば、渡邊伍長が狂人の如く振る舞っている最中に、他の日本人看守達は一体何をしていたのか。虐待に参加するでもなく、上層部に告発するでもなく、無味無臭でそこに存在しているだけ。こうした細かい部分に演出の目が向いていないために、全体としてリアリティを感じられない話になっています。
[インターネット(字幕)] 5点(2017-01-09 13:54:56)
102.  リリーのすべて 《ネタバレ》 
トム・フーパー監督との相性は悪く、どの作品も盛り上げ方がうまくなくて退屈してしまいます。本作も同じくで、例えば前例のない性転換手術を決意するくだりなんて多くの葛藤があり、そこに重大なドラマが宿ったはずなのに、実にサラっと流されるわけです。性転換手術後のリリーが百貨店に就職したことにしても、当時の社会がリリーを受け入れるかどうかという重要局面であったはずなのに、こちらもアッサリと流されてしまいます。また、リリーがヘンリクと浮気しているかもしれない場面をゲルダが目撃してしまったことは夫婦関係における深刻な問題だったはずなのに、こちらは結論が有耶無耶にされてしまう。本作のテーマを扱うのであれば当然盛り上がるべき部分が、ほぼ切り捨てられていることが気になりました。 また、本作は夫婦愛の物語として宣伝されていましたが、果たしてこれが美しい愛の形だったのかは疑問です。ゲルダからはアイナーでいることを求められていたにも関わらず、アイナーは「私はリリーよ」と言ってゲルダの心情や都合をまるで無視してどんどん突き進んでいくわけです。アイナーはアイナーなりに葛藤を抱えていたのならまだしも、自分の都合しか主張しないのだから身勝手にしか見えませんでした。せめて社会的な体裁くらいは取り繕おうという努力すら放棄しているのでは話になりません。それを受けるゲルダにしても、自分の軽はずみな行動で夫を開花させてしまったことへの責任感と、リリーによって画家としてのキャリアが開けたことへの感謝から、運命共同体の如くリリーに協力している様子であり、そこに夫婦愛という要素は薄く感じました。彼女はアイナーの幼馴染ハンスと浮気してるし。 エディ・レッドメイソンは男性役でも女性役でも美しくて驚いてしまいました。そんなレッドメイソンを際立たせるためか、アリシア・ヴィキャンデルは化粧も髪型も地味で、5年前ならケイト・ウィンスレットがやっていたような強い女性役を演じているのですが、今までの彼女が演じてきたものとはかなり違う役どころながら、見事これをものにしています。ヌードも披露して熱演アピールもバッチリ。果たしてオスカーに値するほどのパフォーマンスだったかどうかに疑問符が付かないわけでもありませんが、彼女の演技は本作の重要な見せ場となっています。
[インターネット(字幕)] 4点(2017-01-08 03:28:41)(良:1票)
103.  トリプル9 裏切りのコード
多数の人気俳優を持て余すことなくそれぞれから良質の演技を引き出しており、同じくスター共演作だった『欲望のバージニア』と同様に、ジョン・ヒルコート監督は良い仕事をしています。特に、マフィアのボス役を演じたケイト・ウィンスレットの迫力や凄みは非常に素晴らしく、彼女は作品の要としてきちんと機能しています。また、見せ場もかなりこだわって作り込まれており、強盗団がちゃんと優秀に見えていた点も評価できます。 ただし、各構成要素はよくできていても全体としては面白くなっておらず、映画としては残念な出来でした。ひとつひとつの構成要素は良いものの、量があまりに多すぎることと、それらを捌くには尺があまりに短すぎることからすべてがアッサリと流されている状態であり、もはや消化試合のような有様となっています。観客に何を感じ取って欲しいのかという観点から全体を構成し、描くものをより絞り込むべきだったと思います。 本作の山場は、トリプル9発動のために相棒・クリスを殺すことに決めたマーカスのドラマにあったと思います。当初は、まったくソリの合わない相棒なんてぶっ殺しても構わないと思っていたものの、その後ヒスパニック系ギャングとのいざこざを契機に仲良くなり、殺しづらくなってしまう。二人の関係性に焦点を絞れば映画に一本筋が通ったと思うのですが、残念ながら監督はこのドラマもアッサリと素通りしてしまいます。これは本当に残念でした。さらには、この部分を重視しなかった結果、一応は主演であるはずのケイシー・アフレックが居ても居なくてもどっちでもいいような状態となっています。これはさすがにマズイでしょ。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2017-01-07 21:01:27)
104.  7つの贈り物
オチは衝撃的だし、オチに至る過程も丁寧に整理されており、全体的によく作り込まれた作品だと思います。ただし、ドラマとミステリーの両立には失敗しています。ラストまで目的が不明であることから主人公への感情移入が難しく、中盤のロマンスなどは計画として仕組まれたものなのか、自然発生的に湧き起った感情によるものなのかが初見では判別できないために、この展開をどう受け取ればいいのかに戸惑いました。 これならば主人公をエミリーにしてしまい、自分に親切にしてくれる胡散臭い男がいて、その正体や目的を観客とともに探るという切り口にした方が分かりやすかったのではないかと思います。
[インターネット(字幕)] 4点(2017-01-07 04:11:33)(良:1票)
105.  マニアック(2012) 《ネタバレ》 
母親の影響によりセクシュアリティを歪められたシリアルキラーという、当ジャンルの開祖である『サイコ』以来のド定番ネタ。さらには、高嶺の花に惚れたが、そもそも脈のない相手であるということが理解できずに夢ばかりが膨らんだ結果として失恋の衝撃も大きくなり、そもそも壊れ気味だった人格が余計に崩壊するという、コミュ障ものの金字塔『タクシードライバー』以来のド定番展開。2つの定番がきっちり詰め込まれた安定した作風であり、さらには短い上映時間で余計な要素も少なく、私はきっちり楽しめました。 子役上がり特有の童顔で、歳を重ねるほどに合う役柄がなくなってきている。しかもハゲてきちゃってて、見た目のバランスがおかしなことになっている。このままでは俳優としての将来はないねという状況にあって、イライジャ・ウッドは本作でかなり思い切った振り切り方をしています。青白い顔に生気のない目、イっちゃってる人役を完全にモノにしており、彼の演技だけで90分はもっています。また、吹替え版では浪川大輔さんが主人公役をやっているのですが、終始主人公視点という本作のルックスにおいては声も重要な要素であり、その点、フロド役と同じ声でぶっ壊れた主人公をやられるもんだから、衝撃はさらに倍増。そもそもの浪川さんの上手さもあって、吹替え版はかなり最高な出来となっています。
[DVD(吹替)] 7点(2016-12-27 00:53:05)
106.  スペクトル
精鋭部隊が正体不明の敵に襲われ、壊滅寸前にまで追い込まれて籠城戦に突入。そこで生き残っていた少女と出会って脱出の糸口を得るという、前半部分は『エイリアン2』とまったく同じお話です。敵はプレデターみたいだし、監督は80年代のSFアクションが大好きだということがはっきりと伝わってきました。 プロデューサーは『パシフィック・リム』のトーマス・タル、音楽は『マッドマックス/怒りのデスロード』のジャンキーXL、VFXはWETAデジタルとめちゃくちゃメンツが揃った映画なのでひとつひとつの見せ場の出来は良く、WEB配信専用作品とは思えないほどのルックスを誇っているものの、各登場人物の個性が薄くて感情移入の依り代がなかったことから、映画はいまひとつ熱くなりません。さらには、CIAの女工作員とか四足歩行ロボとか、意味ありげに登場しながらもほとんど本編に影響しない要素も多く、監督が好きなもののコラージュに終わってしまったことも残念でした。
[インターネット(字幕)] 4点(2016-12-26 19:07:27)
107.  ブーリン家の姉妹 《ネタバレ》 
「ヘンリー8世って離婚をバチカンに咎められ、逆ギレして英国教会を作った人ね」「ブーリン姉妹・・・誰?」という高校世界史レベルの知識で予習もなしに本作を鑑賞したのですが、それが正解でした。次に何が起こるのかサッパリわからないので終始ハラハラドキドキさせられ、ブーリン家の命運尽きたかと思われた後の、アンの娘は後のエリザベス女王でしたというオチにもびっくり仰天で、続いて『エリザベス』も見たくなりました。往々にして、歴史映画は史実を知らなければ楽しめない場合が多いのですが、本作は珍しくその逆のパターンをいっています。 上昇志向の強い長子が失敗し、無欲の次子がたまたま成功を掴むという兄弟・姉妹あるあるは興味深く感じました。人生とはそういうものです。また、失敗の経験から成功に対してより貪欲になり、目標達成のためには手段を選ばなくなったアン・ブーリンの性悪加減などはかなり怖く、彼女が本作のドラマ性やサスペンス性を高めていると同時に、カトリックからの離脱という英国史上屈指の大イベントの仕掛け人になったことへの説得力も与えており、歴史的事実と目の前のドラマをうまく融合させているものだと感心させられました。 演技派として認められようと必死だった頃のナタリー・ポートマンを姉役に、天性のカリスマ性で黙っていても巨匠との仕事が次々と舞い込んでいたスカーレット・ヨハンソンを妹役にあてたキャスティングも絶妙であり、この2人が作品を大いに盛り上げています。
[インターネット(字幕)] 7点(2016-12-05 15:28:22)(良:1票)
108.  ミッシング・ポイント 《ネタバレ》 
有望なイスラム青年が突如としてアメリカ式の利益至上主義から離脱したので「イスラム原理主義へ傾倒したか」と思ってCIAが工作員を送り込んでみたら、実はイスラム原理主義にも染まっていませんでしたというお話。一見すると意味不明な原題(直訳すると「気の進まない原理主義者」)の由来が明かされるラスト5分のみ面白かったものの、そこに至るまでのドラマが長い割に面白くなくて何度も寝落ちしかけました。 物語の背景にアメリカ人教授の誘拐事件を置いているにも関わらずタイムリミットサスペンスとしての方向性は完全に切り捨てられており、回想と会話のみでダラダラと進んでいきます。さらには、主人公のイスラム青年に共感できるような要素が少なかったこともあって、ドラマへの没入感はかなり低かったです。 その国籍と風貌を理由に911直後のアメリカ社会でえらい目に遭わされたとはいうものの、あれだけの大事件の後で敏感になった捜査当局が過剰な行動をとったり、心無いバカが嫌がらせをしてくるなんていうことは容易に予期できるものであり、主人公は母国を離れて暮らしている人間に必要なメンタルを備えていないように感じました。さらには、そんな厳しい環境下でも最大限の支援とチャンスを与えてくれて、国籍ではなく能力を重視して異例の出世までさせてくれた上司に対する不義理もビジネスマナーとしてよろしくなく、この主人公には感情移入できませんでした。 また、主人公がアメリカ社会に見切りをつける決定的な原因のひとつとなった彼女の言動についても、いまいちピンときませんでした。「こんな世の中でもムスリムの彼氏と付き合ってる私」自慢を芸術にして個展で発表するという、一般人には到底理解できない行動で主人公と観客をドン引きさせますが、さすがにこれはアメリカ社会云々の話ではなく、主人公の女選びが致命的に悪かったという結論にしか至りませんでした。『あの頃ペニー・レインと』と比較して顔の大きさが倍くらいになったかのようなケイト・ハドソンの劣化ぶりもあって、この彼女と主人公とのロマンスは不要だったように感じます。
[インターネット(字幕)] 4点(2016-11-18 15:49:03)
109.  ムカデ人間3
まとまりの良い『1』、ホラー映画として突き抜けていた『2』と、私はこのシリーズを高く評価してきたものの、最終章でズッコケました。ブラックコメディでありながら全然笑えないし、社会をチクっと突くような風刺の鋭さもない。また、同窓会的な雰囲気を監督が面白がりすぎているという点もマイナスになっており、作り手のテンションと見る側のテンションが著しく乖離しています。前2作の完成度の高さからトム・シックスの手腕には期待していただけに、本作でこの監督の限界が見えた点も残念でした。
[インターネット(字幕)] 3点(2016-11-18 15:48:04)
110.  硫黄島からの手紙
上品なんだけどどこか残念だった『父親たちの星条旗』からは一転して、姉妹編のこちらは目が覚めるような傑作として仕上がっています。憲兵の振る舞いなど多少の事実誤認はあるものの、そうした欠点以上に見どころの多い作品ではないでしょうか。 日本人が戦争映画を撮ると「戦争とは忌むべきものです」という紋切型の主張がまずあって、戦後視点の後付けの理屈であの時代を描こうとすることから決まってつまらない作品が出来上がってしまうのですが、外国人監督が撮りあげた本作にはそうしたノイズが入っていないことから非常に見やすい作品となっています。あの時代の日本兵たちがどんな状況にあったのかを切り取ることのみに専念しているため、歴史映画として極めて優秀なのです。「天皇陛下万歳!」という日本映画界では決して不可能な一言をすんなりと言わせてみせた辺りに、その真価が表れています。 また、本作を見ているとなぜ日本が敗戦したのかがよく分かります。アメリカとの間の圧倒的な物量差のみならず、現場のリーダーを育ててこなかったという組織論的な問題も大きく影響しているのです。臨機応変な意思決定を下すための訓練を受けてきていない管理職達は厳しい戦況に対応できず、精神論のみに解決策を見出してどんどん内向きな思考となり、いよいよ事態が自身の対応能力を超えると「玉砕させてくれ」と言い出す始末。こちらの計画通りに物事を進められる勝ち戦ならば強みを発揮するが、負け戦で相手に主導権をとられた途端にテンパっておかしな行動を連発し始めます。この辺りは現在の日本の組織にも引き継がれている弱みであり、日本人論としても興味深く鑑賞することができました。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2016-11-18 15:46:36)
111.  クリムゾン・ピーク 《ネタバレ》 
おぞましくも美しい美術はさすがのデル・トロであり、十分に目を楽しませてもらいました。ティム・バートンの角がとれた今、このジャンルの先頭に立っているのはデル・トロであるということは間違いないようです。 ただし映画として面白かったかと言われると、それは微妙。物語の舞台がクリムゾン・ピークに移るまでに1時間もかかっている展開の遅さや、幽霊話と殺人事件がうまく絡んでいないという構成のまずさ。また、クリムゾン・ピークに移る前から主人公は怪奇現象を経験していることから、クリムゾン・ピークとおばけ屋敷のインパクトが相対的に薄まっているという点もいただけませんでした。おばけ屋敷ものにするのであれば、怪奇現象はそこでしか起こってはいけないと思います。 本作の制作にあたってデル・トロはキューブリックの『シャイニング』を意識したと言っており、確かに幽霊よりもキ○ガイの方が怖いというオチにはなっているものの、閉鎖空間でキ○ガイと過ごさねばならないことの恐ろしさの描写がいま一歩足りていません。ルシールが絶対的な強者ではなく、かつ、イーディスが絶対的な弱者でもなく、それどころか二人の間にいるトーマスはどちらかと言えばイーディス側に寄っているため容易に逆転可能な勢力図になっていることがその原因であり、そのために主人公側の絶望感が絶対的に不足しています。 そのトーマスはトーマスで、煮え切らない態度をとるのでイライラさせられます。敵は姉一人であり、男が本気を出せば力で押さえ込むことは容易なはずなのに、彼がウジウジと悩んでいる間に状況がどんどん悪化していくのだから困ったものです。真相に気付いて屋敷までやってきたアランを殺したと見せかけて実は急所を避けていましたという偽装工作にも、一体何の意味があったのかわかりません。あの場でトーマスとアランが力を合わせてルシールを押さえにいけば誰も死なずに済んだはずであり、彼の不合理な行動の数々が映画のテンションを下げています。 あとお母さんの幽霊、ヤバそうな雰囲気で登場して「クリムゾン・ピークに近づくな~」となぞなぞみたいな警告の仕方をしないでね。あれでは絶対に伝わりません。「結婚詐欺に気を付けて~」と言えばよかったのに。
[インターネット(字幕)] 5点(2016-11-11 12:29:29)(良:1票)
112.  父親たちの星条旗
イーストウッドとスピルバーグのコンビだけに相当な期待をしましたが、残念ながら私はイマイチに感じました。もちろん戦闘シーンは完璧。さすがは軍事おたくのスピルバーグがついているだけあって、ビジュアルのインパクトだけでなく艦砲射撃や爆撃などの現実的な作戦もきっちり見せ、かつ当時の兵器も続々登場して戦争映画の醍醐味を味わわせます。残酷シーンも手抜きがなく、硫黄島の場面はスピルバーグが演出したのではないかと思うほど良くわかってる仕上がりです。一方で問題なのが脚本の構造で、戦争映画において時間軸を解体するという前代未聞の試みが完全に裏目に出ています。読書家のイーストウッドは、かねてから原作の改変をせずほぼ忠実に映画化する監督さんですので、今回の原作の膨大な要素を切り捨てることなく2時間強に収める苦肉の策として時間軸の解体を行ったのだと思います。複雑な要素をすっきり整理するにはエピソードのコラージュは確かに効果的ですが、それが機能するのはパルプ・フィクションのようにエピソードによって演出の色合いを変えることで観客の頭を混乱させないという手続きが取れる場合のみです。「兵士ひとりひとりの区別がつきにくい」という弱点を元々持っている戦争映画でそれをやってしまうと、「さっき死んだのは誰だったっけ?」という混乱が当然生じるのです。また、本作は戦場における死が大きなテーマですが、それを描く上でも時間軸の解体はまずかったと思います。死を悼む気持ちには2種類あります。他人だろうが何だろうがとにかく人が死ぬことは悲しいという倫理的なものと、親しい友達や家族が死ぬことが辛いという個人的な感情とです。そこに来て「仲間が死に行く中で偶然英雄にされた男達の苦悩」を扱った本作においては後者が強調されるべきだと考えられますが、時間軸の解体をやってしまうと各キャラクターへの感情移入ができていないまま「さっき登場したあの人が死にましたよ」みたいな描き方となってしまうので、戦場で多くの人が続々と死んでいくことのやるせなさは伝わりますが、かけがえのない仲間が死ぬことの悲しみは伝わりません。上映時間が3時間を越えてもいいから、戦場での友情ドラマをまずやって、そうやって観客達も好きになった戦友たちがどんどん死んでいき、にも関わらず本国へ帰ると英雄扱いされて戸惑うという正攻法な流れで描くべきだったと思います。 【2016/11/7追記】 ブルーレイで見直しましたが初見時と同じ感想でした。この内容ならば戦場場面と戦後パートは不要であり、戦時国債発行ツアーに焦点を絞ってもよかったような気がします。戦場の描写がほぼ皆無でもちゃんとしたベトナム戦争映画になっていた『ランボー』第一作みたいな作りにすればよかったわけですから(ただし、そうすると『硫黄島からの手紙』という副産物ができなかったのですが)。 また、ライアン・フィリップ演じる主人公ジョン・ブラッドリーの個性が薄くて観客にとっての感情移入の依り代になれていない点にも問題があったと思います。実際の戦場では使えなかった奴なのに英雄扱いにノリノリだったレイニー・ギャグノンとか、戦友達に対する敬意が大きすぎて英雄扱いに耐えられず精神を病んだアイラ・ヘイズとか、言うことを聞かない広告塔達をなだめながら国債ツアーを進めるキース・ビーチとか、キャラ立ちした登場人物が大勢いる中で、なぜジョン・ブラッドリーを中心にしたのだろうかと思いました。特にレイニー・ギャグノンとその婚約者の低俗さは最高で、この人物が国家と大衆に消費された後に落ちぶれていく様を描くだけでも、一本の映画として十分に成立したのではないかと思います。
[映画館(字幕)] 6点(2016-11-09 13:10:28)(良:1票)
113.  キング・オブ・マンハッタン 危険な賭け 《ネタバレ》 
還暦過ぎているにも関わらずリチャード・ギアがとにかくかっこよく、年齢が半分の愛人を夢中にさせていることにもまるで違和感がありません。さらには、百戦錬磨の経営者らしい落ち着きや、いざとなればダーティな手段も厭わないという老練ぶり、家に帰れば良い家庭人であり、孫からも慕われている優しいおじいちゃんぶりなど、「これが同一人物なのか」と思うほど幅の広い役柄を違和感なくこなしており、ギアの良いところがたっぷり詰まった作品となっています。 ただし、リチャード・ギア以外の部分の出来があまり良くないのが困ったところで、映画としてはそれほど面白くありませんでした。何不自由ない金持ちに見えるギア社長も実は投資で会社の財政に大穴を空けており、粉飾がバレれば全財産を失う上に刑務所にも入らねばならないというギリギリの状態にいます。そこで彼のとった行動が、問題が明るみに出る前に会社を銀行にM&Aさせようというものでしたが、ここがよく理解できませんでした。M&Aさせるのであれば買い手企業からのデューデリジェンスを受けるはずであり、その過程で隠したい粉飾決算が明るみに出るおそれがあります。粉飾をしているのであれば自力で穴を埋めにいくべきであり、そんな状態でM&Aなどちょっと考えられません。 また、愛人を交通事故死させた件が本編とうまく絡んでおらず、ここだけが別の映画のように見えていることもマイナスでした。さらには、主人公を追いかける刑事がコロンボや古畑任三郎のような腕利きかと思いきや、パラノイア的に金持ちを恨んでいるだけの小物であり、証拠偽造というアホな手段をとって自爆してくれるために、こちらのパートも盛り上がりに欠けました。 唯一面白かったのは、自分の娘が担当する部門に粉飾を押し付けていることであり、親の名前で会社に入っている娘や息子では能力的にも技術的にも未熟で粉飾に気付かないだろうという主人公の魂胆を興味深く感じました。彼は確かに良き家庭人であり、子供達を愛しているものの、ビジネス面では二世の能力を低く評価しているというシビアな面がここから窺えます。
[インターネット(字幕)] 5点(2016-11-07 00:10:35)
114.  ヘイトフル・エイト
「こんな映画の楽しみ方も分かってる俺ってどうよ」というB級映画マニアの悪いところがドバっと出た『キル・ビル』『グラインドハウス』では愛想尽かせかけたものの、その後の『イングロリアス・バスターズ』『ジャンゴ』で王道を踏まえた堂々たるエンターテイメントを見せられて「タランティーノって意外と引出しの多い監督なのね」と感心していたところに本作です。しかも本作は50年ぶりにウルトラパナビジョン70を使用し、『グラインドハウス』とは打って変わって往年のハリウッド大作のスタイル復活を目論んだものであり、『イングロリアス・バスターズ』以降の王道路線の決定版とも言える企画。どれだけ素晴らしいものが出来上がるのかという高い期待があったのですが、残念ながら期待値ほどの作品には仕上がっていませんでした。 雪にまみれたキリスト像のアップから駅馬車の登場までは最高であり、ウルトラパナビジョン70の広い画角が有効に活かされています。ただし、その後の本編ではこの冒頭のように目を楽しませるような場面がほとんどなく、タランティーノがウルトラパナビジョン70の使用に固執した理由がよく分かりませんでした。これは『キル・ビル』『グラインドハウス』でやったのと同じ過ちであり、スタイルの模倣に意識を傾けすぎていて、なぜそれが必要なのかというそもそも論が置いていかれているような印象を受けました。マニアの悪いところがまた出てしまいましたね。 本編は密室における会話劇であり、『レザボア・ドッグス』では100分で収めた内容を本作では168分かけて見せられているという印象を受けました。ミスディレクションの仕方や張り巡らされた伏線など相変わらずタランティーノ脚本のクォリティは高いものの、アベレージが異常に高いタランティーノ作品中では凡作に入る方かなという印象です。少なくとも、90年代の3作品やジャンゴよりも劣っている作品だと思います。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2016-11-07 00:08:34)
115.  フルートベール駅で 《ネタバレ》 
これはなかなか評価の難しい映画です。 声高に主義主張を叫ぶ映画ではないため表面上は中立を装っているものの、主人公が愛すべき家庭人として描かれ、「俺も真面目に働かなきゃ」と改心したまさにその日に射殺されたというドラマチックな内容としている点で、やはり表現にはバイアスがかかっていると思います。交通事故に遭った犬を抱きしめる場面とか、ハッパを海に捨てる場面とか、故人が一人で行ったはずの善行を一体誰が見てたんだよとツッコミを入れたくなりました。 そもそも主人公は前科持ちで出所後にも売人を続けており、社会との信頼関係を自ら破壊してきた人物なのです。そんな人物が公共交通機関で敵対グループと喧嘩をしたとなれば、警察官達が「相手は危険人物である」との予断を持って事に当たり、「新年で混み合う公共交通機関で一般市民に被害が出ないよう対処せねばならない。何かあれば即撃て」との姿勢でいたことにも、一定の合理性はあります。また、舞台となったフルートベール駅周辺は治安が悪く、その地では警察官達は緊張感を持って職務に当たっているという点も考慮に含めねばなりません。そうした警察官側の論理を扱っていない点でも、やはりアンフェアな内容だったと言わざるをえません。 ただし、さすがはライアン・クーグラー監督作品とだけあって映画としては抜群に面白く、その構成力には舌を巻きます。冒頭に射殺場面を持ってくることで「この人物は殺されます」という結末を観客に対して突き付け、当日の彼の些細な行動にも高いドラマ性と緊張感を与えています。主人公が非常に魅力的であることもドラマへの没入感を高めており、上記の通りの社会啓蒙的な側面を度外視すれば、これがとても良い映画となっているのです。
[インターネット(字幕)] 6点(2016-11-02 19:07:02)(良:1票)
116.  ボーダーライン(2015) 《ネタバレ》 
ハリウッドが本格的に製作した麻薬戦争映画は『トラフィック』以来となりますが、見掛け倒しで何だかボヤっとしていたソダーバーグとは違い、本作では”凶暴なメキシコ麻薬カルテルvs戦争慣れした米国防総省”という燃えるカードが準備されています。最高でした。 この戦いの激しさは想像を絶するものであり、例えばFBIの中ではかなりの敏腕だった主人公ケイトが国防総省の特殊部隊では完全にできない奴扱いで、「まぁ邪魔しない程度にやってよ」なんて言われているわけです。いろいろ見聞きする中でケイトなりに怒りを感じたりもするものの、ジョシュ・ブローリン隊長からは「はいはい」と軽くあしらわれる始末。FBIが国内で相手している犯罪者達とメキシコの麻薬カルテルではまったくレベルが違うのです。 そんな麻薬カルテルに対する米側のカウンター兵器として登場するのがベニチオ・デルトロ演じるアレハンドロ。元はコロンビアの検事だったものの、家族を惨殺された恨みから殺し屋に転向したという情け無用の殺人マシーンです。暗殺者を意味する原題は彼を指したものだと考えられますが、検事という畑違いの経歴を持つアレハンドロが、米国防総省からも一目置かれるほどの暗殺者に変貌を遂げた過程ではとんでもない訓練に耐えたのだろうということが想像され、こちらでも燃えました。 本作は多くを語る映画ではないのですが、登場人物達の過去には一体何があって今に至っているのかという含みが多く持たされているためにドラマ性が高いレベルで維持されています。ロジャー・ディーキンスによる美しい撮影とも相まって、あらすじ以上に格式の高い作品に見えています。こちらもお見事でした。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2016-10-25 15:25:07)(良:1票)
117.  スポットライト 世紀のスクープ 《ネタバレ》 
“生臭坊主”や“坊主丸儲け”という言葉の浸透が示す通り、日本人は宗教関係者に対する敬意をほとんど持っておらず、それどころか宗教家とか教師のような徳の高い職業においてこそモラルの崩壊が深刻であるということが日本人の肌感覚であるため、「なんと聖職者が性犯罪の常習者だったんですよ!」というスキャンダルには大した驚きがなく、社会派ドラマとしてはややパンチ不足に感じられました。 ただし、問題は教会に留まらず社会全体が無意識のうちにこれを許容していたという事実が示される後半の展開には意外性と普遍性があり、このパートには引き込まれました。”神父個人の性犯罪→カトリック教会全体で神父の罪を隠蔽していた→教会と法曹界が癒着関係にあり、尽く示談で終わらせることで事件化を防いでいた”と、取材を重ねれば重ねるほど問題の根深さが明らかになっていきます。そして、その過程では「かつて新聞社にネタを持ち込んだが相手にされなかった」という証言が相次ぎ、新聞社内部にも教会と内通して隠蔽に加担した者がいたのではないかという謎解きが始まるのですが、その結末は意外なものでした。 ネタが持ち込まれた先とはスポットライトチームを率いているウォルターその人であり、当時のウォルターは悪意なくネタを葬っていたことが判明するのです。これこそが本件の闇の正体であり、「神父は徳の高い人だ」という思い込みや、枢機卿という街の有力者に対する遠慮、ボストンというコミュニティ内の馴れ合いの中で街全体が問題を見て見ぬふりしていたのです。事件性に対して敏感であるはずのジャーナリストすらその例外ではなく、ウォルターも無自覚のうちに罪の隠蔽に加担していました。このオチは衝撃的だったと同時に、日本人にも大いに当てはまる問題であり、この点で作品のテーマをわが事として捉えることができました。
[DVD(吹替)] 7点(2016-10-25 15:24:07)(良:1票)
118.  スター・トレック/BEYOND 《ネタバレ》 
IMAX 3Dにて鑑賞。前作『イントゥ・ダークネス』に続いて3D効果を実感しやすい見せ場が多く、3D料金を払うだけの価値はありました。 ただし、内容の方は難ありです。JJエイブラムスが『スター・ウォーズ』の引き抜きに遭って監督選びが難航した新シリーズ第3弾ですが、娯楽作の経験豊かなジャスティン・リン(ここんとこの大作の監督候補にはとりあえず彼の名前が挙がる)という人選が本作では裏目に出ていました。彼の演出は常にせわしなく、じっくり見せて欲しい画を全然見せてくれないのでSF向きではないのです。例えば宇宙基地ヨークタウンなんて実に素晴らしいデザインだったのに、その全体像が見られるのは登場場面のほんの10秒程度。もったいない限りです。戦闘に入るとさらに画面は忙しくなり、もはや誰が何をやっているのかがサッパリわかりません。危険区域にいるのは誰で、その人はどっちを目指さなければならないのかという基本的な情報すら伝わってこないため、スリルも何もあったもんじゃないのです。 お話の方もイマイチです。無軌道な生き方をしていたカークが宇宙での仕事に生き甲斐を見出した前々作、大失敗の後にリーダーとしての本分を見出した前作と、本シリーズはカークの成長物語でもあったのですが、本作ではその要素が弱いために作品を貫く主軸を失っています。一応は、長い航海に飽きが来て転属を希望してたけど、いろいろあってまた仕事の楽しさが分かりましたって話はあるものの、大事なエンタープライズを破壊され、多くのクルーを殺害され、しかも敵は自分自身の将来像かもしれないという鬱展開の多かった今回の冒険でどんな楽しみややりがいを見出したんだよと思ってしまいました。これだけの災難を経験すれば、普通は艦長辞めたくなるでしょ。話の内容とドラマの方向性が一致していないため、こちらでも感じるものが少なくなっています。 また、今回は敵も微妙。「実はジャミラでした」というクラールの正体が明かされた瞬間だけはちょっと面白かったものの、連邦が生み出したテロリストという設定は前作のカーンと重複しているためにその存在意義は薄くなっています。また、終盤まで彼の正体を隠していたために、劇中のほとんどの時間においてその行動原理が不明であったことも作品のテンションを落とすことに繋がっており、監督や脚本家の意図が悪い方向に出てしまっているように感じました。細かい点をつっこむと、中盤にてカーク達が拠点として使用していたUSSフランクリンは敵に場所を知られていないということになっていたものの、そもそもクラールがフランクリンの艦長だったのならその場所を知らないはずがなく、なぜ彼はフランクリンを攻撃しに行かなかったのかと不思議に思いました。 「スタートレックは偶数回が当たり回、奇数回が外れ」と言われていますが、その伝統通り、今回はハズレ回でした。ただし、次回は傑作になるはずなので、新作が出ればまた見に行きます。 それはそうと、前作で意気揚々とエンタープライズクルーになったアリス・イヴは一体どこへ消えたんでしょうか。
[映画館(字幕)] 5点(2016-10-22 06:53:16)(良:4票)
119.  フローズン・グラウンド 《ネタバレ》 
映画界における”based on a true story”の範囲はかなり広く、もはや史実とはまるで別の話になっていてもお構いなし。本作もそんな一本であり、80年代のアラスカで発生した連続猟奇殺人事件をモデルとしながらも、事件経過は作品オリジナルです。史実では17歳の娼婦シンディが派出所に駆け込んで証言したことからロバート・ハンセンが捜査線上に浮かび、ハンセンは友人たちにアリバイ工作を依頼するも断られて逮捕に至ったのですが、作品ではシンディの証言が無視されたことから物語がスタートします。また、劇中のハンセンは友人にも恵まれ、警察にマークされて身動きのとれないハンセン本人に代わってシンディの口封じを実行してくれます。ここまでくると実話とは言えませんね。 作品は猟奇殺人の詳細を描くわけでも、捜査の過程を丁寧に描くわけでもなく、クライムサスペンスとしてはボヤっとした出来なので眠たくなってしまいます。一時はシンディと捜査官・ジャックの疑似的な親子関係に焦点が当たるものの、感動的な盛り上がりも明確なゴールもないまま両者のドラマは萎んでいくためこちらも不発。また、ジャックと奥さんとの間には旦那の職業を巡ってのわだかまりがある様子なのですが、こちらも気付けば終わっているためネタ振りのみとなっています。ラダ・ミッチェルという魅力的な女優さんを奥さん役に配置しながら有効活用できていないのだから、もったいない限りです。 さらに作品のテンションを下げているのは馬鹿な登場人物が何人かいることであり、馬鹿が馬鹿なことをしたせいで引き起こされた馬鹿馬鹿しい危機には手に汗握ることができません。シンディはハンセンに命を狙われており、しかも警察からは身を隠すための隠れ家を与えられているにも関わらず、ちょっと気に食わないことがあったからという理由でフラフラと売春街へ戻っていって案の定ハンセンに発見されてしまうのだから困ったものです。そんなハンセンを手伝う友人は、とっくにハンセンが逮捕され、おまけにシンディには捜査官がべったりくっついている状態であるにも関わらず、口封じ目的でシンディの命を狙い続けます。そこまでのリスクを冒してまでハンセンを守ってやる義理とは何なんだと思いますが、とにかく普通ではやらないような行動をとるため見ている側のテンションはダダ下がりです。 ニコラス・ケイジはいつも通りの困った表情で特に代わり映えしないのですが、これが結果的に捜査官役に必要な安定感に繋がっているのだから悪くありません。生理的嫌悪感を抱かせる猟奇殺人鬼になりきったジョン・キューザック、新境地開拓と言わんばかりに体を張ったヴァネッサ・ハジェンズ、ポン引き役50セントのハマり具合もよく、出演陣はなかなか見せてくれます。それだけに、内容の薄さが余計に際立つのですが。かつて『コン・エアー』で全米1位を獲ったコンビが、15年後には落ちぶれてこんな緩いB級映画に出るものかと寂しくなりました。
[インターネット(字幕)] 4点(2016-10-20 21:32:00)
120.  THE ICEMAN 氷の処刑人 《ネタバレ》 
映画よりも面白い実話を映画化した作品なのですが、作品は事件のうわべをなぞるだけで面白みのある部分を逃しているように感じました。 この事件を知った人が真っ先に関心を抱く点は、裏で殺し屋稼業をしていた旦那を家族は怪しいと思わなかったのか、そして彼はどんな家庭人だったのかという点であり、そこにドラマやサスペンスが発生したはずなのですが、作品はその点をあっさりとスルー。本来は家庭生活をメインにして殺し屋稼業をサブに回すべき題材でありながら、その逆をやってしまったがために題材の特殊性を作品の面白さに繋げられていません。 また、ヤクザ映画としての一山も作れていません。丁寧な仕事によって20年近くも捜査線上に上がってこなかった主人公が、仕えていた親分に切られたことからフリーで雑な仕事をするようになっていよいよ追い込まれた。捜査当局の手が迫ってくる描写があれば盛り上がったはずなのですが、ここもあっさりと流されるためラストが唐突に感じられました。
[インターネット(字幕)] 4点(2016-10-13 20:06:57)(良:1票)
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