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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1299
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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1.  真珠湾攻撃 《ネタバレ》 
U-NEXTで81分のを見た。監督の名前は見たことがあるがどういう人物か知らない(関心がない)。ジャンルについては戦争モノとはいえるかも知れないが、ドラマでもドキュメンタリーでもなくプロパガンダに特化した制作物である。 全体構成としては次のようになっている。 ①架空のキャラ2人が出て、ハワイの日系人の過去と現在、当時の米政府の現状認識と対応姿勢を語る。これで約半分。 なおここでのMr. Cは、アンクルサムと同格だが年長で建国以来の付き合いがあり、開戦前に「海の向こうから警告」していたとのことなので、ChurchillのCによりイギリスのことを指していたのかと思っておく。 ②真珠湾攻撃の映像を見せて、「用意周到な準備と米軍の失態」で攻撃が成功したとしている。 ③死者と家族の写真を見せた上で戦死者を追悼する。 ④独裁者・東条英機の欺瞞を暴く。 ⑤民間防衛など戦時体制の整備について説明している。 ⑥戦死者墓地に時代の違う戦死者2人が出て、アメリカの来し方行く末を語る。  このうち①では日本人移民がハワイの経済発展に貢献したことを説明し、なるほど向こうではこのように認識されていたのかと思わされる。また②では実写と再現フィルムと特撮を使って真珠湾攻撃を再現し、戦艦のミニチュアを爆発させたりもしている。 日本人が違和感を覚える点としては、①で既にプロパガンダ要素が入り込んでいる。ほか特に④で個人名を挙げて貶めるとか、いわゆる大本営発表でもない単なる誤認をいちいちファクトチェックして嘲笑してみせるなどはいかにもガキっぽい。これで喜ぶ連中の程度が知れると逆に見下すのが正しいようだが、この手のネガキャンは最近の選挙でも盛んなようでこういう国民性なのかも知れない。今回これを見て、同時期の「ハワイ・マレー沖海戦」(1942)がいかに品格のある映画だったか改めて認識させられた。 また最後の⑥では、当時の連合国の体制を基盤にして世界平和を目指すという戦後ビジョンを示していたようだが、理性・良識・礼節・信頼・友愛・宗教?などと綺麗事を並べてみせる偽善ぶりには寒気がする。年長の心霊が言ったようにアメリカの戦争が終わることはなく、ここの墓地が拡張されなくても他国で死人の山ができることになる。 なお点数の付け方は迷ったが、戦時宣伝フィルムに映画として付ける点はないという理屈で0にする。ついでに罵詈雑言としてルーズベルトはウンコタレと書いておく(少し控え目)。
[インターネット(字幕)] 0点(2024-12-07 09:03:37)
2.  スイング・ステート 《ネタバレ》 
まずは題名に目を引かれる。これが映画の名前ということは何か別の意味のある言葉かと思ったら、普通に激戦州のことだったのはかえって意外だった。邦題であえてこの言葉を選んだのは、日本でもアメリカ政治を意識する人々が増えているとの認識と思われる。 映画の中心人物が民主党側で、そもそもアメリカ映画であるからには民主党推しかと思えばそうでもない。都市部の目で農村部を見下すなど、当初はかえって民主党側への皮肉が効いた形かと思ったが、結局は都会の選挙屋などどちらも同類ということになっていた。 物語的には、結末は意外だったが都合良すぎの印象がある。コメディなので笑わされなくはないが、よくあるようにアメリカ人はこれで何が可笑しいのかわからない的なところも多い。ただTV中継の場面で、両候補の選挙屋が境界を越えて揉め出すなどは気心の知れた同士の馴れ合いのようで、いわゆるトムとジェリーが仲よく喧嘩する感じで笑った。また真相がわかってから、敵側の選挙屋が素直に感心していたのはよかった。  社会的な面では、主に「スーパーPAC」でやたらに資金を集めてネガキャンなどに使う問題を扱っていたらしい。また「本当の問題はマスコミが共謀してること」という指摘もされていたが、日本のマスメディアもアメリカに連動しているようなところがあるので関係なくはない。 また地元民の動きに関しては、全国レベルの争いと別に地方独自の課題と解決策がある、という考え方自体は悪くない。しかし善良なはずの住民が、制度の抜け穴を使って選挙屋を騙すのは「一緒に汚くなったら後悔する」という言葉に反しないのかと思った。 なおこの映画は2016年大統領選の結果を受けて製作されたもので、2020年選挙の実態は反映されていないことになる。11/5投開票の2024年選挙はどうなるかと思うが、この映画の時点からもう深刻度が違ってきている気がして笑っていられない。  [雑記1] 序盤で選挙屋がウィキペディアを見ていたが、アメリカでは州ごとに地方制度が違うようで、ウィスコンシンの「町」とは何なのかに関して自分でもウィキペディアで調べたりしたので、選挙屋もそういうことを見ていた可能性がなくはない(好意的に考えれば)。 [雑記2] CNN、Fox News、MSNBCといった実在の放送局が映像に出ていたが、前半に出たNews 3 Nowというのはウィスコンシンにある放送局の番組で、出演したのは当時の本物のキャスターのようだった。
[インターネット(字幕)] 5点(2024-11-02 20:07:17)
3.  コスタリカの奇跡 ~積極的平和国家のつくり方~ 《ネタバレ》 
平和国家として大人気の中米コスタリカを扱ったドキュメンタリーである。外国映画なので最初から最後まで空想的平和主義で通すわけでもなく、平和を目指した努力を現実的な面からも説明している。なお90分版と57分版があるうち90分版を見たが、反戦平和を語りたいだけなら57分の短縮版で間に合うと思われる。 実態として「コスタリカの非武装は米軍の庇護のおかげ」という見解もあるようだが(ナレーションで言っていた)、確かに中米の小国がそれぞれ強力な軍隊を持つ必要などない気もしなくはない。特に中南米など軍隊が内政の不安定要因でしかないとすれば、廃止した方がいいという発想自体は理解できる。その上で周辺地域の国際環境が許すと思えば、強い決意をもって採用しうる方法かも知れない。 現実問題としては集団安全保障や国際社会への働きかけで自国の立場を保全してきたとのことだが、特にアメリカのせいで平和主義が脅かされたことは何度かあったようで、その都度自らの才覚で切り抜けてきた実績があるらしい。また自国の安全保障のあり方をモデルとして他国に提案するとか、中米の平和に貢献する具体的な活動も行ったと紹介されていた(1987ノーベル平和賞)。 映画の最後に安全保障上の根本的な脅威として、コスタリカの対極にある「永久戦争国家」たるアメリカの存在を、アイゼンハワーの退任演説を引き合いに出して指摘していた。確かに危ない国だ。  軍隊の廃止のほか、「中産階級」の重要性についても車の両輪的に強調していた印象がある。1948年の内戦後の社会改革に関して、当時の指導者が「中産階級革命」と表現したというのは少し感動的だった。 中間層が厚ければ社会が安定して民主主義も良好に機能するはずであり、そのために軍隊を廃止する一方で、社会保障や教育に力を入れた福祉国家を作ってきたところが、90年代からの「いわゆる新自由主義」や「グローバリゼーション」による格差拡大で中産階級の存在が脅かされ、社会の根幹までが危うくなっているとの指摘がなされていた。これは多くの国にとって他人事でない、まさにグローバルな問題提起と思われる。  その他の事項として、(アメリカばかりに依存せず)欧州やアジアから開発援助を受けたという場面で日章旗とTOYOTAの看板が映ったので、こんなのをいちいち見せなくていいという気分だった。またその直後に東洋の某大国がサッカースタジアムを寄贈したと説明が出て、このために台湾と断交したわけだなと言いたくなった。 ほか無名の語り手の中で「コスタリカ人も先の見通しは立てる」と言った人物がいたのは、本人の見た目の雰囲気もあって少し笑った。地元民のようでも英語で話していたのはグローバル化に対応できている人と思われる。また終盤では、家族や友人だけでなく近所の知らない人々なども含めて身内同然であって、みながこの国をつくって助け合う仲間だ、と言う人物が出ていたが、こういう人がいるのはまともな社会かも知れないと思った。
[DVD(字幕)] 5点(2024-06-15 10:39:53)
4.  一分間タイムマシン(2014) 《ネタバレ》 
前に見た「とっくんでカンペキ」(Practice Makes Perfect、2012)と同じ監督だった。前作は思春期の話だが、今回は大人の話で時間が倍になっている。アマプラでは13+で「性的なコンテンツ、暴力」と書いてあるが大したことはなく、小学生に意味を聞かれると困るという程度である。 タイムトラベル映画としては「時をかける少女」(2006)、「アバウト・タイム」(2013英)と似た感じで、物語として少し取りにくいところはあるがコメディとして面白くできた佳作だった。登場人物にも微妙に好感が持たれる。  《以下微妙なネタバレ》 直接関係ないが「ターミネーター」(1984米)では "君のために時をこえて来た"(I came across time for you)と言う男が出ていたが、この映画ではいわば女性のために何度も死を乗りこえてきた男ということか。これで女性もその気になって攻守交替したようで、結果的に生命をかけた恋人同士の間柄にまで発展していくこともなくはない。 これを一般化して適当に解釈すると、仮に並行空間が無限にあるとすれば、そのうちの16回だろうが何回だろうが0にほぼ等しいのであるから、回数は気にせずとにかくチャレンジしてみようというメッセージかと思っておく(本当に死なない範囲で)。
[インターネット(字幕)] 6点(2024-06-01 17:00:15)
5.  怪獣王ゴジラ 《ネタバレ》 
追加・省略や前後の入れ替えはあるが意外にもとのストーリーを残して、先行の「原子怪獣現わる」(1953米)並みの娯楽映画にしている。 追加場面を入れての編集はなかなかうまくできている。序盤で船員の家族が官署に押しかけた場面では、追加した部分でも記者と一緒にドアから入って来ようとする家族を映して、もとの映像と整合させる工夫をしていた。入れ替えや短縮で辻褄が合わなくなったところもあるがどうせアメリカ人にはわからない。また後半は日本人の発言もなぜか英語になっていたが、人名や「まあ!」といった間投詞はもとの音声を残すという細かい作業をしていた。 本来の反戦・反核メッセージは失われた印象もあるが、核兵器との関連付けは一応残してある。それ自体は「原子怪獣…」も同じだが、しかしやられた側とやった側でのスタンスは大違いなわけで、この映画でも当時の日本人が誰でも知っていた第五福竜丸事件の印象を薄め、また長崎の原爆や疎開といった戦争の記憶、当時の現実の不安だった原子マグロや放射能雨に言及した場面を削除している。  個人的に気になった点として、序盤で記者が「エミコ」の腕を乱暴につかんだ場面では気安く触るなと言いたくなった(替え玉アメリカ人だろうが)。また火でやられた男がアーーーとアジア人っぽく叫ぶとか、仮設病院でギャーと泣く声(大人の)が聞こえるのは日本映画らしくない。 ほか日本人としては火の海になる東京を見ると戦時中の空襲を思わされるわけだが、何千人もの人が死んだという言い方を記者がやたらにするので、東京では一晩で何千どころか10万人もの一般庶民がアメリカに殺されたのを知っているかと言いたくなる。いわばS20.3.10の東京大空襲の時に、なぜかたまたま下にいたアメリカ人の体験談のような映画であって、アメリカ人でもやられる側に身を置けば、死んでいくのがネズミでも昆虫でもダニでもなく人間だと認識できるのかという気分だった。 それはそれとしてゴジラが世界的に知名度を上げるきっかけになったという歴史的な意義はあるので相応の点数はつけておく。
[インターネット(字幕)] 4点(2024-05-25 21:11:58)
6.  ブラッディ・ホステージ 《ネタバレ》 
アメリカのアルバニア系住民の物語である。脚本兼主演の人物もアルバニア系で、実際に撮影場所のデトロイト都市圏ハムトラムク市で集合住宅の家主をしていた経験があるとのことだった。なお「セルビアン・フィルム」(2010)まがいの場面があるので苦手な人は見ない方がいい。 事前の印象としてはスキンヘッドの男が暴れるバイオレンスアクションかと思っていたがそういうものではなく、前半は主人公が入居者から家賃を取り立てて借金を返す話が延々と続く。後半は主人公が娘の危機に立ち向かう話になるが、犯罪集団に徒手空拳で対抗できるわけでもなく、身代金を工面する手段が多少過激になっただけだった。 あくまで非力な主人公だったが、しかし結果的に犯罪集団のボスを倒せたのは娘を思う気持ちの勝利と思われる。全てが終わった最後の場面で、当初から伏線的に出ていた電話を使ったのはけっこう感動的だった。特に面白くはないが安っぽくもない。  劇中社会では他人種や他民族と交じりながらもアルバニア人のコミュニティができていて、台詞に英語の字幕が出ていたのがアルバニア語の入った箇所と思われる。"Albanian hell is cold" の場面では、アルバニア人社会の掟(慣習法「カヌン」Kanunといったもの)による恐ろしい罰が主人公に下るのかと一瞬思ったがそういう展開ではなく、逆に最後は主人公のためにコミュニティが結束して始末をつけた形だった。 登場人物で最も邪悪な犯罪集団のボスは、アルバニア人かと一瞬期待させておいてそうではないとのことで、台詞の中で英語字幕の出なかった部分が本来の言語かも知れない。何語なのかは当然わからないが、参考としてボス役の演者は北マケドニア系とのことで、やはりバルカン半島の他民族(敵対勢力)という設定かも知れない。ちなみにボスが自分を「純粋主義者」と言っていたのは辞書的には意味不明だが、どことなく民族浄化をイメージさせる言葉ではあった。 アルバニア人にしても世界的には「アルバニア・マフィア」で悪名高いわけだが、この映画のアルバニア人は品行方正でなくとも極悪非道ともいえず、一方で本物の極悪人は他民族ということにして、アルバニア人=悪の印象を回避したのかと思った。製作側の立場として、アルバニア人を肯定的に描写しようとする映画だったらしい。 ラストの場面を見ると、これはもう駄目かと思うことはあっても、わが子を思えば頑張っていけるはず、という移民系住民の希望を語っているように思われた。
[インターネット(字幕)] 5点(2024-05-04 10:53:15)
7.  オンマ/呪縛 《ネタバレ》 
題名の印象と違ってアメリカ映画だった。韓国人のお母ちゃんが押しかけて来て恨み言をいうならいかにも怖そうだが、ホラーというより北米の韓国人移民の物語になっている(脚本兼監督はカナダ出身)。 なお英題がUMMAなのはオンマ/엄마のㅓが、例えば太陽/SUNという時のUに近い音だからということかも知れない。韓国語の正規のローマ字表記法ではEOMMAとなるはずだが、それではアメリカ人が(日本人も)読めないわけなので監督の判断を尊重する。  内容的には人間ドラマが中心であって怖さは感じない。超常現象や変なケモノが出ることの必然性もないようだが、監督の考えとしてはホラーというジャンルを使えばテーマを極限まで突き詰められるとのことで、それはその通りと思われる。 題名との関係からすれば母子のドラマが中心で、母~主人公~娘の三世代にわたる母子関係を重ねた形になっている。また、そこへさらに移民の一世~二世~三世(でなく0~2?)という関係も重ねていたようだった。前の世代との間で呪縛と化したつながりを断たなければ前には進めないが、つながっていた記憶自体は失わないことで、自分という存在の原点を心の中で守っていきたいという意味か。白人風に見える娘が母親とともに韓服を着て、墓碑に拝礼していたのは他人事(他民族事)ながら若干感動的だった。 また商店主の姪が言った「自分だけが変な人間だと思うのは間違ってる…」というのは北米社会の包容力を示したものと思われる。これに関して日本社会がどうかは少し考えさせられるものがあったが、適法に入国して現地社会のあり方を尊重し、自ら分断を図ることなく平和に生きるなら、その上で故郷由来のアイデンティティを守ろうとするのはいいのではないか、という少しリベラルな気分になったりはした。韓国の本国社会はどうか不明だが。  その他、映画では韓国(朝鮮)の伝統的な事物を紹介していたが、韓服とかお面は別として、「千字文」や九尾の狐、あやとりは韓国(朝鮮)限定のものではないとアメリカ人に言っておきたい。夜空の月が最後に満月になったのは、月が満ちて機も熟したというようなことの表現かと思うが、これも東洋的な感覚か。 また全くどうでもいいことだが、韓国語の初学者にとって言い分けにくい+聞き分けにくいが意味の違う言葉として달・탈・딸が有名だが、この映画にはその三つが全部出ていて感動した。달は映像だけで台詞に出なかったのが残念だ。
[インターネット(字幕)] 6点(2024-04-20 17:15:41)
8.  宇宙船の襲来 《ネタバレ》 
アメリカの地方の町が宇宙人に侵略されて大変なことになった話である。舞台はほとんど地方の町とその郊外だけ、特撮関係は着ぐるみ宇宙人と少々の特殊効果と宇宙船の一部が映るだけである(+宇宙の絵)。ジャンルは一応SFということになっているが、実際は宇宙人が出る怪奇サスペンスドラマという程度でかなり退屈だった。 宇宙人は「アンドロメダの惑星」(a planet in the Andromeda constellation)から来たとのことだが、それだけではどの辺なのかの説明になっていない。しかし警察署長の台詞からするとうちの銀河とは別の銀河から来たらしいので、そっちの方にあるどこかの銀河と思われる(NGC 891など)。遠方からわざわざ地球まで来た理由が「生命のある惑星は少ない」からだというのは、今になれば少し新鮮な感覚のようでもある。 なお宇宙人が来た理由が「人間の女に我々の子を産ませる」ためだったという発想は、東宝特撮映画「地球防衛軍」(1957)の元ネタかと思ったら製作時期は逆だった。この映画に比べれば「地球防衛軍」など超豪華娯楽大作に思われる。  ところで日本語字幕では、宇宙人にとって「女は子供を作る道具だった」と書いて東洋の儒教的な人権抑圧の印象を出していたが、原語の台詞では「道具」とは言っておらず、要は繁殖のためだけの関係だったと説明していたようである。つまり結婚は子作りのためにするという固定観念を否定して、愛と幸せを得るためにするものだと言いたい映画だったようで、これは2020年代の現代でも比較的受け入れられやすい考え方と思われる。 主人公宅の宇宙人は結婚生活を通じて人の心がわかって来たようで、妻に受け入れてもらえないことを嘆いたりもしていた。妻に事実を告げたのも心を開いてもらいたかったからで、自らも愛と幸せを願いながら結局果たせなかった結末は泣かせるといえなくもない(泣かないが)。人類の持っている結婚の習俗に関して、それを持たない者の立場で語らせることにより、改めてその価値を際立たせてみせようとした映画だったのかと思った。 ちなみに終盤の人類側の大反攻では犬が大手柄を挙げていて(尊い犠牲あり)、動物との間でも心を通わせることのできる人類の強みが出たようでもある。今回の宇宙人はそういうこともできない寂しい種族だったようだ。
[DVD(字幕)] 4点(2024-03-02 22:25:15)
9.  SF第7惑星の謎 《ネタバレ》 
「巨大アメーバの惑星」(1959)や「原始獣レプティリカス」(1961)に関わった監督+脚本家によるSF(笑)映画である。「原始獣…」はデンマークが舞台になっていたが、今回も主役以外はほとんどデンマーク人だった。 題名の第7惑星とは実在の天王星の意味で、ガス惑星というのをあまり意識していなかったのか地表に直接ロケットが降りていた。時代設定は「戦争と大量殺人も無くなった」2001年の世界とのことだが、現実の2001年を考えると残念感がある。 行った人間が本人の記憶をもとにした幻覚を見せられるという設定のため、適当に地球上の風景(デンマークの農村?)だけでごまかすのかと思えばそうでもなく、一応は天王星の地表の様子も作っている。映像的にはまあまあ稚拙な印象で、宇宙空間は背景の絵の上でロケットの絵が移動しているだけのようだった。現地では怪物関係も3体くらい出ていたが支離滅裂でよくわからない。 ほか森?の中の底なし沼のようなのがアンモニアの雪だったのがわずかに面白い。決戦兵器の製作を村の鍛冶屋でやるのもユーモラスだった。  敵の宇宙生物は、人間の記憶を現実化させる能力により人間を支配しようとしていたようで、「心に潜む恐怖心を煽れば簡単に破滅する」との考え方に基づき、実際に恐怖を現実化させてみせた場面もある。ただし映画全体として見た限り、どう見ても地球人類(男)の最大の弱点は恐怖というよりハニートラップにかかりやすいことだった。敵はあまり意識していなかったかも知れないがこれは貴重な教訓と思われる。人類(男)は自戒が必要だ。 また宇宙生物の能力は、恐怖を現実化させるだけでなく「希望も現実化」させる副次効果があったとのことで、最後は切ない恋心の物語で終わっていたのはまことに意外だった。お相手はハニトラ要員としか思えなかったのでもう少し話の運びをうまくやってもらいたいところである。直後のエンディングのアニメーション+テーマ曲も間の抜けた感じだが、これはまあ好みによるかも知れない。 結果として、「原始獣…」の感動をもう一度ということにもならなかったが同じくらいの点はつけておく。
[DVD(字幕)] 3点(2024-01-20 19:55:32)
10.  デッドリー・マンティス 《ネタバレ》 
北極から大カマキリがアメリカに飛んで来て大変なことになったという映画である。日本では「極地からの怪物 大カマキリの脅威」の名前で2013年(多分)にDVDが発売されている。 最初に南極海で火山が噴火したら北極にカマキリが出たというのは、思わせぶりな説明がついていたが意味不明である(バタフライ効果?)。カマキリは水爆実験で巨大化したとかではなく最初から大型のカマキリだったようだが、本物のカマキリとの違いが見えるわけでもなく、要は大きいだけの単なるカマキリである。ただしカマキリのくせに怪獣声で鳴くのは変だった。 造形物はそれなりに作ってあり、飛ぶ時に翅が高速で震えるのはそれらしい映像だった。カマキリの犠牲になった人々はいたが、人が食われるとどれほど悲惨かということは見せていない。ワシントンDCへの襲来場面では、こういうものに虫がとまっていることはありそうだと思わせる場面はあった。  ドラマ的には、ヒロインを間に挟んで男2人の微妙なライバル関係ができるのかと思ったらそうでもなく、おざなりでしょうもないロマンス展開だった(よくあることだが)。なお北極の場面で、この辺には木が生えていないと言った直後の風景映像で樹木が見えるのは間が抜けていた。 また事件の解明の過程で登場人物がやたらに「消去法」を使っていたのは、台詞にあったようにシャーロック・ホームズを真似た推理小説風の展開を目指したのかも知れない。しかしカマキリ映画ならではと思わせる必然性のある趣向でもなく、孤立的なアイデアにとどまっている。 ほか開始早々レーダーによる北米の防空監視体制に関するくどい説明があり、その後に出た「地上監視隊」というのも1958年まで実在した民間防衛組織のようで(Ground Observer Corps、最後に謝辞が出る)、東西冷戦の時代を背景として、北の空からの脅威に備えるべきという広報宣伝の意図があったようでもある。ちなみに現在のNORADは毎年12月にカマキリでなくサンタクロースを追跡しているが、実はこの映画の時点でもすでにやっていたらしい。 真面目に作った特撮映画のようだが単なるカマキリなので面白味がなく、その他の点で特に感心させられることもない。ただしこれが後の東宝怪獣映画のカマキラス(1967年初出)のもとになったのかとは思った。
[DVD(字幕)] 4点(2023-12-09 14:18:15)
11.  シン・感染恐竜 《ネタバレ》 
本編の前後両方に長々とクレジットが出るので人名を見せるための映画なのかと思う。また主要キャストの名前がスタッフの名前にも出ていたりして同好会レベルを思わせる。 監督は毎年こういうクズ映画を量産しているようで、映画間でキャラクターが共通していることもあるらしい。台詞にあった「5Gゾンビ」や「殺人スズメバチ」、また本編の前・中・後に出た魔女風の案内役も同監督の別映画に出ていたものらしいが、今回特に説明もなかったのは観客も常連化しているからと思われる。この映画からは「Ebola Rex Versus Murder Hornets」(2021)に続いたと思われるが、そういうのにどこまでもついていく連中がいるということか。 実感として見れば見るほど損失が累積する映画だったので、こういうのは0点でいいのではと思った。アメリカ映画の最底辺を見た気がする。
[インターネット(字幕)] 0点(2023-11-11 15:10:55)
12.  闇の列車、光の旅 《ネタバレ》 
中米ホンジュラスの少女が父親と叔父とともにアメリカに移住するため、グアテマラを通ってメキシコから貨物列車で国境を目指すロード/レールムービーである。よくわからないが父親の後妻?とその娘がすでにニュージャージーにいたようで、途中の危険はあるにしても決行の準備は一応整っていたように思われる。 この一行に、さらにメキシコにいた犯罪組織が絡んで来る展開になっていたが、これは不法移民と犯罪組織が事実上切り離せない問題だということの表現ともいえる。中米地域には若い連中の希望がなく、不法移民するか犯罪組織に入るかの二択であるかのような印象も出していた(実際はその他もいるだろうが)。 移住計画はうまくいかず成功ともいえなかったが、主人公(少女)を中心にしてみれば、結果的にこれでよかったのだと思わせる話ができている。途中の障害になっていたのは警察よりむしろ犯罪組織だったが、このMS-13という実在の組織はロサンゼルスのエルサルバドル移民が作ってアメリカと中米に広く勢力を持つ組織なので、裏切り者の男がメキシコを出ても安全になるわけではなく、それなら本人もここが死に場所と思って納得できたかも知れない。  ところで監督は日系4世だそうだがいかにも日系人という顔でもなく、自分の祖先が移民であることが制作の動機というわけでもなかったようで、たまたま前作の短編で移民問題を扱ったことからの延長らしかった。 この映画では主に移民する側に寄り添うことで観客の素朴な良心による共感を誘う形になっているが、それはそれでいいにしても、この映画の後にアメリカの不法移民はさらに問題が大きくなってしまっている。2021年からの民主党政権下では移住希望者が大挙越境して来るため南部国境州が対応に苦慮する一方、ニューヨークやシカゴといった聖域都市での受入れにも住民の不満が出始めているとの報道もあった(2023.5.15ニューズウィークの記事)。 監督としては、移民問題は普遍的なテーマだといいながらも実は日本にはあまり関係ないだろうと思っていたらしかったが、制作当時の2009年と違い、現在は日本でも他人事といえなくなってきているのは報道等に出ている通りである。この映画を見て主人公を応援してやるばかりでもいられない。
[DVD(字幕)] 5点(2023-09-02 15:32:01)
13.  サルバドル/遥かなる日々 《ネタバレ》 
中米エルサルバドルといえば2021年9月にビットコインを法定通貨にしたことで有名である(その後どうなったか知らない)。また2023年7月公開の米映画の評判に乗って、ピンク色の「バービー棺桶」を売り出した葬儀屋が同国内にあったとのことで(ガーディアン・AP通信→ハフポスト日本版)、そういう今風のことも話題になる国らしい。 映画としては昔の映画というしかなく、これを現在の目でどう見ればいいのか困る。初見時に印象的だったのは何といっても強姦→射殺の場面で、これは当時は過激と思われていたかも知れないが、その他世界には制作側の残虐嗜好を恥ずかしげもなく観客と共有したがる映画などもあるわけで、今となってはこの程度だと何とも思わなくなっている。何かと自由な世界というしかない。 主人公には言いたいことはあったらしいがどうすればいいかの考えはなく、単に言いたいことを言うだけの鬱憤晴らしか自己満足のようでもある。レーガンは悪者になっていたが、実際はそのレーガンの時代に東西対立が解消されて結果的に紛争も終息したわけで、その後は現地でも軍政から民政に移行する一方、劇中の革命組織も合法政党に衣替えして大統領も出している。現在は不法移民による人口流出や犯罪組織の拡大などもあって皆が幸せなわけでは全くないだろうが、少なくとも内戦時代よりはましと想像される。 人間ドラマとしてもあまり感情的に深入りする気にならないが、特に主人公の友人である報道カメラマンが感動要素として扱われていたのは素直に受け取れない。写真が人の心を動かすものだとしても、どういう状況で何を撮ったかわからない写真に適当にキャプションを付ける場合もあり、またそれ自体は事実でも使い方によって情報操作の道具でしかなくなることもある(湾岸戦争の水鳥など)。報道写真がもてはやされたのも昔のことのようで、劇中人物のように写真に人生をかけるのが喜びというタイプでもない限り、一般人として特に共感できるものはなかった。 ただアメリカは別に正義でも何でもないという主張は今日でも当然意味を持つ。後半で主人公が軍人や大使館員?(CIAだったらしい)に述べたのは監督の本音とのことだが、これ自体は普通に共感できる内容だった。この監督も今は陰謀論者のように思われているらしいが、今後とも自分の方向性を通していってもらうよう期待する。 なお皮肉ばかり書いたが、主人公が十字を切ったのを見て後の人々も一緒にやったのはいい場面だった。
[DVD(字幕)] 5点(2023-09-02 15:31:59)
14.  原爆下のアメリカ 《ネタバレ》 
1949年のソビエト連邦の核実験や1950-1953年の朝鮮戦争、またアメリカでの赤狩りといったものを背景にした映画と思われる。強烈なメッセージ性が特徴だが、ほか最後にラブストーリーだけが現実化していくといった構成の妙があるとはいえる。 邦題には「原爆」が入っているが、原題では「侵略」と言っているだけで核兵器は特別視されていない。劇中ではかなり気安く原爆が使われていて、まだ水爆も大陸間弾道ミサイルもない時点での核戦争はこのように想像されていたというようではある。核兵器が使われると熱線と爆風が来るといった感覚もなく(放射能という言葉は出たが)、単に強力な爆発物としか思っていなかったようだが、「核魚雷」で空母が大破して復旧に努めたが総員退去して沈没した、などというのでは普通の魚雷と違わないではないかと思う。 開戦の原因は不明だったが、要は世界征服を企む悪の勢力が一方的に侵略して来たらしく、卑劣な奇襲攻撃に応戦したところから全面戦争に発展する、というパターンができていたようだった。敵の先制核攻撃に対しアメリカは3倍返しで応じていたが、しかし攻撃対象は軍事基地・工場・鉄道・港・油田とのことで、一般庶民の居住地が対象外というのはさすが世界正義を体現するアメリカらしい人道的対応と思わせる。実写映像には朝鮮戦争のものもあった感じで、また「太平洋艦隊」という台詞も出ていたので日本も無風状態だったとは思えないが、とりあえず表面には出ないので突っ込まないことにする。 なお最後に出た言葉は普通に真理だと思うが戦後日本人に言っても意味はない。アメリカも自国で戦争などするはずがないので現代的な意義はない映画だろうが、まだ自国の資金だけで作っていた時代の純粋なアメリカ映画だったとはいえる。現代には現代の問題もあるのでこういうのを腐していれば済むわけでもない。
[インターネット(字幕)] 4点(2023-08-12 11:28:55)
15.  ラ・ヨローナ ~泣く女~ 《ネタバレ》 
似た名前のグアテマラ映画「ラ・ヨローナ ~彷徨う女~」(2018)とは全く別物である。製作年ではグアテマラが先だが公開はこの映画の方が早かったらしい。 個人的にはホラーとして特筆したくなる点はなかったが、グアテマラの方と違って基本が娯楽映画のため、気合いを入れて見なくていいのは楽だった。ちなみに水の霊であるのに腕を握られると火傷したようになるのは、触れた箇所の水分を一気に吸収してしまう能力があるからかと思った。  ドラマの面では、一度は主人公を恨んでその子どもらを破滅させようとした人物が、後に自らの行いを悔いて主人公を助ける側に回っていたが、終幕時に今度は主人公の姿が水たまりに映っていたのは、全ての母性にラ・ヨローナ的な二面性が潜んでいると言いたいのか。よくわからないが児相職員必見の映画だったようでもある。 また主人公の行動様式がかなり苛立たしいところがあり、現に自分が超常現象に脅かされて神父の紹介で呪術医に頼んでおきながら、それでもなお呪法を小馬鹿にしてみせなければ済まないのは頭の働きが合理的でない。これは古い時代に西洋社会を支配していた教会の代わりに、1970年代頃は科学万能主義の支配で人々の思考が抑圧されていたとの表現か。シリーズのもとになった心霊研究家夫妻のように、この頃もオカルトとかスピリチュアルの類は盛んだったろうが、科学を信仰する人々との間では分断が進んでいたということかも知れない(適当な解釈だが)。シリーズの他の映画を見ていないのでこの映画だけの話なのかわからない。 なおラ・ヨローナの伝承は、単なる怖がらせの怪談というだけでなく社会的な意味づけもされているようで、例えばスペインの征服者に服従させられた先住民やその女性の象徴のように思われている面もあるらしい。しかしそれをこの映画では、結局は征服者のもたらした神の力で難なく撃破してしまっていたのが空しさを感じさせるともいえる。
[インターネット(字幕)] 4点(2023-07-22 10:18:43)(良:1票)
16.  とっくんでカンペキ 《ネタバレ》 
過度な期待はしていなかったが最後はちゃんと感動的だった(笑った)。固定的な目標に向けて単線的に修練すればいいのでなく、極限までの試行を重ねることで可能性の全体像をつかみ、その上で適切な選択をすることが最善の結果を生むということかと思った。大変よい映画でした。
[インターネット(字幕)] 6点(2023-07-15 10:58:41)
17.  ヘレディタリー 継承 《ネタバレ》 
撮影場所はユタ州だそうである。ゲゲゲハウスのようなのが目を引くが、こういうのを好んで作る人々も実際にいるらしい。 ホラーとしての見た目でいえば、大して怖くないが雰囲気は悪くない。序盤では、まずは祖母の遺影が生きているかのような気色悪さを出していた。またその後に部屋に出て来た姿が二次元的に見えたのは、いわゆる霊感のある人々の話でもそのように表現したものがあるので現実味があった。背景音や音楽でも凄味を出している。 個別の場面では、兄が「大丈夫だ」(字幕)と言ったので、大丈夫でないだろうがと思ったがなぜかそのまま帰って来てしまい、朝になってから母親がギャーと叫んだのがなかなか衝撃的だった。頭部をおいて来たのはさすがにまずい。  ドラマとしてはあまり印象に残るものがない。家族関係ではこれまでいろいろ確執があったようだが、そもそも特殊な家庭のようなのであまり突っ込む気にならない。家族のうち本当の重要人物は誰かをめぐるサスペンスという面もあったかも知れないが、別にどうでもいいので勝手にしろと思って終わりだった。 また家系に関わる心霊物かと思っていたら、結局最後はカルト教団の話になっていたのは残念感がある。古代からの由緒正しい悪魔らしいが西洋世界限定のものにしか思われず、また教団も地方のマイナーな集まりのようで、ここから世界支配を企むといった大がかりな展開になりそうもない。現に自分のいる世界との接点がないので身辺に迫る怖さを感じない。 これでアメリカ人がどう思ったかわからないが、少なくとも自分としては人類普遍のものが表現されているとは見えなかった。  なお母親の作っていたミニチュアは少し興味深いところがある。建築模型でなくドールハウスという言い方になるようだが、ギャラリーで個展をするくらいなのでアート作品として作者の精神世界を表現し、見る人を引き込む力があるものだったらしい。制作の動機としては、自分にとって好ましいとも限らない周囲の世界をミニチュアにして受け入れて、自分のものにしたい(支配したい?)という欲求があったというようなことか。よくわからないがその心理は知りたいと思った。 この家系はこれまで精神面でいろいろ問題が生じていたようだが、その精神性を芸術性に転化して社会生活に生かすことができていたと思えば、今回の件でそれが断たれてしまったのは残念ということにはなる。娘にも素質はあったらしい。
[インターネット(字幕)] 5点(2023-06-10 10:00:07)
18.  チャイルド44 森に消えた子供たち 《ネタバレ》 
原作は読んでいないがこの映画に関しては、どちらかというと見て損した部類だった。時間が137分もあるが、それでも恐らく原作での詳細な設定や描写が断片化して半端になっているところが多々ある。 社会性という面でいえば、2015年の時点でこの物語を映画化することの意図がわからない。日本国内向け公式サイトでは一応、「全体主義国家がいかに人間の精神を崩壊させていくかという普遍的なテーマ」を扱っていると書いてあるが、結局はこの時代またはこの場所限定のことにしかなっておらず、誰も今の自分に関係あることとは思わない。ちなみに楽園に殺人は存在しないという建前は当時本当にあったのか知らないが、そういう現実度外視の観念論は東洋でも好まれそうな気はする(大陸でも半島でも列島でも)。 ドラマとしては、悪人顔の主人公を始めとして主要人物に誠意が感じられず信用できそうにもなく、この連中は何をやっているのかと中盤くらいまで突き放した気分でいたが、終盤にかけてやっと人々の意思がはっきりして来てまともに見られるようになる。それはそういう構成にしたのだろうが、それにしても結果的には話がうまく出来すぎで、最後は勧善懲悪物のようになっていたのはどうかと思った。アメリカの娯楽映画だからこれでいいのかも知れないが。 ちなみに世界のどこの場所の映画でも英語で作るのはさすが世界帝国だと思ったが、昔の邦画にもそういう例(大陸系)があったと思うので他国のことはいえない。
[インターネット(字幕)] 4点(2023-02-04 10:23:38)
19.  トップガン マーヴェリック 《ネタバレ》 
導入部分が旧作をなぞる形になっていて、個別の場面や背景音楽にも見覚え・聴き覚えがある。日章旗と青天白日滿地紅旗も復活していて大変結構だった。 最初は極超音速機で始まるが、本番になるとF-35でもなくF/A-18で、敵の第5世代戦闘機にかなわないとされていたのは寂しい設定だったが、これはそもそも任務の性質ということもあり、また要は「パイロットの腕」が勝敗を決する話にしたかったからだと納得した。 劇中の敵国は、核兵器の開発を企む「ならず者国家」であって、今もF-14があるといえば実在の特定国家を思わせる。しかし現地に行ってみれば積雪や針葉樹林のようなのがあり、また第5世代戦闘機を自力開発するとかヘリコプターの姿が別の特定国家を思わせるので、結果的に2つの国を組み合わせた形になっていた。  前回は、ストーリーはともかくとして飛行機の迫力で見せている印象だったが、加えて今回は物語がちゃんと作られているのが感動的だった(それで普通だが)。特に初めから主人公が先頭切って突っ込んでいくのが当然というわけでもなく、最初は違っていたが行きがかり上そうなった、という展開だったのはまともである。結果的には上官にとっても経歴上の問題にはならず、最後にみんなが(敵以外は)笑顔で円満に終われる話ができていたのは幸いだった。 主人公は昔と大して変わらないようでも、かつてのライバルがなんと太平洋艦隊司令官だというのが年月の経過を表している。同時代を生きていたはずでも先に世を去る者がいて、自分はまだまだと思っていてもいつか退くべき時が来る、という男の最後の花道だったようで、終幕時には愛する妻?とその娘、さらに息子代わりの男もいて、ちゃんと次世代へのつながりができていたのは他人事ながら嬉しい。あとは好きな飛行機を飛ばす暮らしが待っていたということか(海もあるだろうが)。 それにしてもF-14も役者もさすがに年はとったが格好いい。トム・クルーズも今年はもう還暦で(壬寅、寅年だ)、旧作との関係で見れば本人の人生を重ね合わせた続編のようでもあるが、役者としてはまだまだ先があるのだろうと思う。後向きの懐古趣味に浸っていればいいのでなく、自分の現在地を確かめてから前を見ろ、という映画かと個人的には思った。
[インターネット(字幕)] 7点(2022-12-31 10:12:22)
20.  ソイレント・グリーン 《ネタバレ》 
原作は読んだことがない。時代設定が2022年とのことで今年中に見るかと思っていた。 設定としては極端な人口増加と環境破壊と貧困化と社会の劣化が生じた世界になっている。現実の2022年に生きている者の感覚からすると、少なくとも先進国では人口を減らす方向のようで今どき人口爆発など考えられないと思ったが、しかし多数の難民・移民の流入などなら実際あっても変でないとはいえる。 劇中世界はいわゆるディストピアだが、「ホーム」にだけは利用者への配慮もあって人道的だった。自分なら色は青にするだろうが(落ち着く色)、その場になれば劇中人物のように暖色を選ぶ気になったりするかも知れないとも思った。楽に死ねる制度があるのは悪くないので劇中人物にも共感できたが、ありきたりな音楽や風景映像が煩わしく感じたので、もっと個人の好みに合った演出を期待したくなる。 そういうことを考えるのは自分がその年齢の方に近くなってきたからだが、しかし最近はより若い層でも生きづらさに疲れて、安楽死の権利に期待する風潮も出てきているように感じている(気のせいならいいが)。現実の2022年では人口の増減というよりも、個人の尊厳をもって生き続けられる社会の維持が課題になっているのではと思った。この点が最も現代に通じる問題提起になっていると感じる。 ほか雑談として、「ソイレントくず」をまとめて売っていたのは実際ありそうで笑った。人工食物の製造現場では特にグロい場面もなく、いきなり乾き物の製品ができていたが、日本人ならすり身にして練り物(蒲鉾など)を作ろうと考えるのではないか(考えないか)。何にせよ共食いはプリオン病が恐ろしいのでやめた方がいいというくらいの感覚が現実世界の人類にはある。 なおエンディングで音楽と風景映像を再現したのは皮肉な感じで結構だった。多幸感が出ている。  [2023/4/1追記] 積極的尊厳死の制度化など当面ないだろうと思っていたが、2022年のうちに邦画「PLAN 75」が公開され、また今年に入ってからはネット上で高齢者の集団自決を促した発言も話題になっていた。これでかえって人々の認知度が高まって、本当にその方向に世の中が動いていくのではと思ったりする。高齢者に限定するとエイジズムだと批判されるだろうが、この映画のようにあくまで自由意思ということにして、対象年齢も拡大しておけば(18歳以上など)世界正義に反しないかも知れない。 一方でこの映画の食物がそのまま実用化されることはないだろうが、食糧危機への対応という面ではすでに昆虫食が注目を集めている。またそれとは別に、人体の処理方法としては「堆肥葬」(Human composting/人間の堆肥化)というのが提案されていて、スウェーデンとアメリカの6州では合法化されているらしい。そのうちに、火葬でCO2を大量に排出する日本人は人類の敵だと指弾される世界になるかも知れない。 映画と現実の2022年は違うところも当然あるが、意外に似た雰囲気が出てきているのはものすごい先見性のある映画だったということか。ディストピアが実現するかどうかに関わらずどうせ自分は先に死ぬので、あとは残った人々の望むようにしてもらって結構だ。
[インターネット(字幕)] 7点(2022-09-03 10:03:15)(良:1票)
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