1. バルタザールどこへ行く
《ネタバレ》 これほどまでに美しいモノクロ映像は滅多に出会えない。 1960年代だからこその完成されたモノクロ映像と自然な美しさ。 そしてそういった技術的な意味だけでなく、本作の寓話的でどこか現世離れした雰囲気が、本作をより一層、神秘的な美しさへと押し上げている。 主演の女優は当時17歳であったらしいが、単なる美人ということではなく、儚げで世を憂うような不思議な魅力を発揮している。 薄幸の美人、いや、少女というか感じだろうか。 カメラは執拗なまでに少女のスラリとした脚を映し出す。 これが何ともエロティック。 そんな映像を見せ付けられていると、見てはいけないものをじっと見せられている感じがしてきて、なんか気まずくなってくる。 しかし、じっと見てしまう。 眼が釘付けになる。 画面いっぱいに発散される厳粛な雰囲気、そして、少女の危うい魅力。 ブレッソンのカトリック的な表現手腕が遺憾なく発揮されている。 少女の可愛がるロバも、また印象的。 特に最後の息を引き取るシーン。 なんとも切ない。 涙が出そうだ。 欧州独特の優美な雰囲気が画面に現れ、そこにカトリック的な厳粛さと悲劇、人間が持つ残忍性、そして何より少女の肢体が放つ自然の美たるものが複雑に絡み合い、本作を奏で上げている。 本作はそういう意味で、完成された総合芸術品だといえるだろう。 とにかく何度も観てみたいと思わせる、息をのむ美しさを持つ作品である。 [DVD(字幕)] 9点(2008-10-25 13:20:01)(良:1票) |
2. 処女の泉
《ネタバレ》 こんなにも美しく、そして残酷な映画は観たことがない。 世界広しと言えど、こんな映像はベルイマンにしか撮れない。 それくらい鮮烈な映像だ。 少女の強姦シーン。 これほどまで残酷で鮮烈な強姦描写は観たことがない。 観ていて悪寒がはしった。 動悸がした。 心がざわざわとする程の強烈なシーン。 この強姦シーンを、ここまで際立たせた要因は、少女の美しさに尽きる。 冒頭で、少女が神がかり的な美しさを見せる。 これ以上ない美しさ。 心乱されるほどの、強烈すぎる美しさだ。 この、少女を美しく撮った冒頭部分があったからこそ、後の強姦シーンの痛ましさが際立った。 89分と短い尺ながら、体力を非常に奪われた。 なんていう美しさ、なんという不快な作品だろうか。 この不快感には、どんなスプラッター映画も、どんなホラー映画も、足元にも及ばない。 神秘的な美しさと並存する不快感。 私はイングマール・ベルイマンという監督に畏怖する。 ベルイマンにしか取れない独創性の極めて高いモノクロ映像。 美しい少女と、その少女を極めて神秘的に美しく撮った手腕。 ベルイマンという人が、いかに凄いかを確信できる作品だ。 終わらせ方やラストシーンに疑問は残るものの、並外れた作品であることに疑いの余地はない。 この不快感を基に点数をつけるとすれば、0点のインパクト。 美しさを基に点数をつけるとすれば、10点のインパクト。 あまりに両極端で、点数をつけるのが非常に難しい作品である。 いつかは再見したい作品だが、再見する勇気が湧いてこない。 最後に湧いた「処女の泉」は、私にとってなんの慰めにもならなかったのだ。 [ビデオ(字幕)] 8点(2008-02-17 21:04:37)(良:1票) |
3. ぼくのエリ 200歳の少女
《ネタバレ》 随所に散りばめられている怖いシーンが適度に刺激的。 少年とヴァンパイアの少女との究極の友情。 それは恋愛とかを超越した生き物同士の強い結合意識だ。 時にはおぞましい少女に対し、偏見を持たずにそのまま受け入れた少年。 おそらく心が綺麗なんだろうと思う。 非常にピュアな物語。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-06-06 23:10:09) |
4. ドラゴン・タトゥーの女
《ネタバレ》 あらゆることに万能な天才女性ハッカーも、好きな男の心はハッキングできなかったか… 変態デブオヤジにイタズラされるシーンが最大のインパクトだった、恥ずかしながら。 細かい謎解き部分はほとんど理解できず、これも恥ずかしながら。 ただし、長い上映時間の割に長く感じず見られたのは、音楽と映像センスの良さ、展開のスピーディーさ、そして見せ方の巧さのせいか。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-11-26 19:27:33) |
5. サラバンド
スウェーデンの巨匠監督、イングマール・ベルイマンの遺作。 過去にベルイマン作品を25本観てきて、この遺作にようやく辿り着いた。 やっぱり遺作は、その監督の作品を沢山観てから観た方が、より理解も深まるし、感慨も深くなる。 本作はベルイマンの遺作に相応しい深い内容と出来栄えで、観た後は半ば放心状態になった。 人間同士の愛憎劇を、ここまで徹底的に描かれると、もうあっぱれと言うしかない。 元夫婦の30年の軌跡を辿り、男女とは何か、夫婦とは何かを観る者に問いかける。 そして、憎しみ合う父と子を描き、人間の憎悪の恐ろしさと醜さを容赦なく表現する。 更には、父子家庭における父親の娘に対する偏愛をも描き、どうにもしようのない悲劇を演出する。 これらの人間関係がてんこ盛りの2時間で、その密度は非常に高い。 ベルイマンは、『ファニーとアレクサンデル』で自身のキャリアの集大成としたはずなのに、高齢になってまだこんな力作を創り出す力が残っていたとは驚きだ。 ベルイマンの若かりし頃の作品のような、幻想性・創造性などの要素はさすがに感じられないが、老齢になり、人生経験を豊富に積んだ晩年にこそ生まれた奇跡の作品と言えよう。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-09-02 00:03:33) |
6. 狼の時刻
後年のベルイマン作品ばかり最近は観ていたので、この辺りの脂ののりきったベルイマン作品は、久しぶりに観た気がする。 というのも、とにかく映像が綺麗なのだ。 そして幻想的。 まさにベルイマンの真骨頂が発揮されている作品だ。 しかし、色んな物を詰め込みすぎの感が否めない。 単純な夢想物語として、神秘的な色を最初から最後まで通してくれたら、もっと凄い作品になっていたかもしれない、、と思わせる内容だった。 [DVD(字幕)] 7点(2009-01-02 18:47:48) |
7. 女はそれを待っている
《ネタバレ》 前半はベルイマン作品らしい苦悩に満ち溢れた内容で、気分はかなり落ちる。 それでもベルイマン作品ならではの映像にひきつけられた。 そしてラストは、ベルイマン作品らしいまとめ方で、何かを世に問うような問題提起をしつつ、だが単なる暗い話に終わらせずに、希望の持てる部分を残して、作品に幕を閉じる。 この辺の配分が実に絶妙で、とても巧い。 話としては、とても皮肉にみちた内容である。 子供を望まない女性には子供を授け、妊娠を望む女性は流産を繰り返し、順調に妊娠していた女性には最後の最後で死産、という無慈悲な内容。 だが、子供というものは天からの授かりものであり、産まれるか産まれないかは、人知の至るところではない。 そういった現実の厳しさ、自然の法則の残酷さをベルイマンは観る者に訴えかけてくる。 人間の誕生の神秘、どうにもならない運命、自然の摂理というものの力、そういった要素がふんだんに組み込まれた作品である。 これは現代にも通ずるテーマであって、人工授精や代理母などの、現在進行形な社会的問題にも十分参考になる内容であった。 真面目な作品であり、重苦しい側面もある作品だが、ベルイマンの生命の誕生という問題に対する真摯な考えが、とてもよく伝わってくる作品だ。 中絶などを安易に考えている人間にとって、何よりもタメになる作品かもしれない。 学校の性教育、特に避妊や中絶などをテーマにした授業で、この作品を生徒たちにみせると良いような気がする。 [ビデオ(字幕)] 7点(2008-07-27 01:03:06) |
8. 闇の中の音楽
《ネタバレ》 ベルイマン作品としては異色作。 何故なら、爽やかにハッピーエンドなので。 ただし、随所に暗い影もあるにはある。 例えば、冒頭でいきなり盲目になってしまう青年。 射撃練習で、かわいい子犬が近くにいて、それに近づいたために、弾に当たってしまう。 それが災いして、盲目の人に。 これ自体はものすごい悲劇で、いかにもベルイマン。 だけど、その後が違った。 彼には、若くて美しい女性がそばにいた! 何たる羨ましいこと。 しかもその女性は、その男に献身的。 そして最後は見事に結婚・・・ と、およそベルイマンらしくない爽やかな展開。 だけど、美しい映像はベルイマンならではのもの。 少女はとても美しいし、映像美と爽やかなストーリーで、とにかく癒される。 マイナーながら、なかなかの良作だった。 [ビデオ(字幕)] 7点(2008-07-19 06:51:28) |
9. インド行きの船
《ネタバレ》 前半部分は、船長である父親とその息子との確執を描いている。 これが何とも陰惨で、観ていて辛くなった。 しかし、中盤からは恋愛の要素も絡んできて、面白くなってくる。 息子と彼女(父親の情婦)との水車小屋における戯れは、とてもすがすがしく、それまでの暗い展開のせいで、どんよりしていた気分が多少なりとも上がっていった。 それにしても、ベルイマンらしい暗すぎる映像。 これは何度観ても、単に観づらいだけで、どうも好きになれない。 、、とここまでみてくると単なる凡作のようだが、そんなことはなく、ラストがとても良かった。 愛する女性を8年もの間想い続け、8年ぶりに帰郷した息子。 しかしそこには精神的に病んでしまった彼女がいた。 息子は必死に連れ出そうとするが、自閉的になってしまった彼女はそれを拒む。 だが、彼女に一途な愛情を持つ彼は、彼女を救いたい一心で、必死に説得をする。 その想い通じてか、彼女は結局、彼と旅に出る。 女性を愛する気持ちがあれば、どんな苦難でも乗り越えられる。 そして、その女性がどんな状態だろうとも、身を呈して救うことができる。 愛の持つ力が、ストレートに伝わってくる見事なラストだ。 [ビデオ(字幕)] 7点(2008-05-22 23:30:39) |
10. ある結婚の風景
何と言うか、気分が軽くなるような作品ではないものの、とても重厚でいて、いかにもイングマール・ベルイマンらしい作品だ。 「夫婦喧嘩は猫も食わない」というが、前半は夫婦喧嘩のシーンばかりで、正直嫌気がさした。 しかし、観進めて行くうちに、そんな単純な内容でないことに気付かされた。 夫婦というより、一組の男女の生き様をあらゆる方向から描いた力作だったのだ。 まさに凄い考察力。 ベルイマンの凄さを再認識した作品となった。 [ビデオ(字幕)] 7点(2008-05-18 21:07:12) |
11. 野いちご
何と言うか、美しいと表現するしかない名画ですね。 面白いといえる内容ではなかったですが、その孤高の映像美にはやられました。 [ビデオ(字幕)] 7点(2007-10-15 19:39:10) |
12. 仮面/ペルソナ
《ネタバレ》 イングマール・ベルイマンの代表作の一つ。 分かりやすいようで分かりにくい、面白いようで面白くない、何とも言えない鑑賞後感。 一度観ただけでは、その魅力を理解できそうもないが、もう一度観たいかと聞かれれば、答えはノー。 深層心理を描き、人間同士の心のぶつかり合い、心理的葛藤を描いていると思われるが、いまいち心に響かない。 いかんせん、全体的に暗すぎる。 『処女の泉』の様に、一瞬でも心奪われる美しさがあれば良いが、この作品にはそれが無い。 言ってみれば、救いようの無い世界。 映像的な独創性、音楽の効果的な使い方等、芸術的観点からみれば傑出した点も数多く見受けられるが、何度も観たい映画かどうかという観点において、私の中では高い評価を出しにくいのが正直なところ。 別に映画に対して娯楽性を求めてはいない。 ただ不快感を残す映画というものに、価値を見いだせない。 ベルイマンはこの映画に相当な力をこめたと感じる。 だが、観る者を意識して作ったかどうかという点において、疑問が残る。 芸術とは、利己的な自己表現のたまものなのかもしれないが、少なくとも私は、観る者を意識した映画を評価したい。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-08-05 01:13:52) |
13. 霊魂の不滅
《ネタバレ》 念願叶っての鑑賞。 まだ観ていなかった最後の大物サイレント作品。 サイレントの中で比較すると、『鉄路の白薔薇』に勝るとも劣らないダイナミックなサイレント作品だった。 数章仕立てになっていて、そこが案外分かりにくかったりするわけだが、最終的に話が収束していく感じは、作品としてのスケールを感じさせる作りになっている。 まあしかし、時代が時代だけに、かなり都合が良い展開のストーリー。 そこに難あり。 あそこまでの悪人が、ああなるかねぇ・・・ その妻も即、夫を許してしまうかねぇ・・・ 難ありだが、サイレント特有の魅力があり、画質も綺麗なところは特筆ものだ。 鑑賞後、帰宅してネット調べて知ったのだが、この作品の監督であるヴィクトル・シェストレムって、イングマール・ベルイマンの名作『野いちご』の主人公イサクを演じた爺さんだったとは・・・ その事実を知った時、時の流れもダイナミックに感じた瞬間だった。 [映画館(字幕)] 6点(2013-07-03 21:41:52) |
14. リリア 4-ever
身に覚えがある男ほど、後味が悪いであろう映画。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-02-15 00:17:16) |
15. 牢獄
前半はベルイマン作品らしからぬ軽妙な語り口だが、後半から一気にベルイマンらしさが加速する。 特別面白い作品ではないが、ベルイマン作品特有の世界観を味わうことのできる作品である。 [ビデオ(字幕)] 6点(2008-08-17 19:39:48) |
16. 冬の光
非常に深淵なる宗教的作品で、観ていて苦しくなるほどだ。 主演のメガネ女優がとてもウザったく思えたが、なんとそれはイングマール・ベルイマンの意図したものだった。 それは主演の男のセリフによって解る。 「近視までもが嫌だ。」と、男は言う。 これは酷い。 だけど、観ている私もそう思った。 凡才の監督が、意図せず不快な人物を作品上に造りあげたのではなく、不快な人物をベルイマンは意図して造り上げたのだ。 やはりベルイマン監督は偉大だ。 ベルイマン監督の作品は、面白いとか面白くないとかの言葉では表現できない。 ただただ凄いというしか表現の仕様がない。 ベルイマン監督の作品には、面白いと言える作品は少ないかもしれない。 むしろ陰鬱だったり陰惨だったり。 だけど、何故かクセになる深い味わいがある作品が多い。 だから私はこれからも可能な限り彼の監督作品を貪欲に観続けることだろう。 [ビデオ(字幕)] 6点(2008-04-23 01:50:03) |
17. 第七の封印
話はつまらないのですが、イングマール・ベルイマンにしか出せない唯一無二の映像には、ただただ感嘆するしかないですね。 [ビデオ(字幕)] 6点(2007-10-13 10:39:01) |
18. ファニーとアレクサンデル
まずは先日亡くなられたイングマール・ベルイマン監督のご冥福をお祈り申し上げます。 最初は4時間だと勘違いして5時間バージョンを観始めたので、余計に長く感じました。 しかしながら、中盤以降の急展開に強烈に引き込まれもしました。 前半部分を観ている時点では、ヴィスコンティの『ルードウィヒ』的な作品で、お上品で冗長なだけの大作かと思っていました。 ところが『ルードウィヒ』より遥かに優れた作品でした。 個人的には少なくともそう思っております。 [ビデオ(字幕)] 6点(2007-09-01 20:11:54) |
19. ニックス・ムービー/水上の稲妻
《ネタバレ》 決して心地良い映画ではない。 死に直面する人間を、直視する内容。 目をそむけたくなる様な気分になる。 だがこれが現実。 人間が病でもって死にゆく様は、有名人であろうが、無名の人間だろうが、およそこんな感じだろう。 ただ、それを捉えて何になるんだろうか? ヴィム・ヴェンダース自身も、それを自問自答したに違いない。 ヴィム・ヴェンダース自身が迷いながら撮っているから、観ているこちらも困惑せざるを得ない。 確固たる信念を持って、ニコラス・レイをカメラに収めたなら、それを観ている人間(観させられている人間?)も、もっと覚悟をもってこの作品を観られただろうに相違ない。 でも、そのヴィム・ヴェンダースの素直さに、人間らしさを感じる。 [ビデオ(字幕)] 5点(2014-07-07 01:23:27) |
20. 恥
映像だけはとにかく美しいが、それだけ。 なんか、夫婦劇の様な戦争モノの様な、良くわかんない内容。 マックス・フォン・シドーは、あれだけのタッパとガタイで、あの弱いキャラは不自然すぎる。 あの太い声で泣き言いわれてもなぁ・・・ [DVD(字幕)] 5点(2009-01-10 21:28:08) |