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プロフィール
コメント数 2013
性別 女性
自己紹介 周りに映画好きな人があまりいない環境で、先日はメリル・ストリープって誰?と聞かれてしまったりなのでこのサイトはとても楽しいです。
映画の中身を深く読み解いている方のレビューには感嘆しています。ワタシのは単なる感想です。稚拙な文にはどうかご容赦を。  

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1.  裏切りのサーカス
原作未読で臨んだところ、やはり一度目の観賞では全体像を掴むことは無理だった。でも、二度三度と観直して、一つ一つの場面の意味が分かるにつれて緻密に織られた脚本の見事さに仰天する。2時間という限られた時間の中に隙間なく美しく整えられたプロット、意味深い場面の連続に集中力は必要とするけれど、とても面白い。 諜報部員を演じる俳優陣の、職業柄、顔の皮膚の一番上っかわだけ動かしているかのような曲者演技が素晴らしい。特に主人公のG・オールドマン。表情筋をほぼ動かさずして、暗い淵を覗いているような瞳の演技だけで老獪なスパイの孤独を滲ませる。 スパイが生身の身体を張って、国家の誇りをも代弁していた時代。冷戦下に行き交う謀略と、個人の愛情や屈折した思い。非常にとっつきにくい印象を受けるけれども、話の流れさえ分かればこんなに深くて味わい深いスパイ映画はそう無いだろう。 数多の名画と同じく、年月が経っても複数回の観賞に耐えうる名作だと思う。
[CS・衛星(字幕)] 10点(2014-01-22 00:09:50)(良:1票)
2.  スモーク(1995) 《ネタバレ》 
平凡な日常を描いているだけなのにしみじみ心に沁みる。煙草屋の親父のH・カイテルがなんでこんなに渋くてかっこ良いのだろう。描かれる“生活”の肌触りが確かなもので、地に足がついている。交わされる会話、何気ないジョークのひとつひとつに生きている実感がこもる。このさりげなさ。ルビーの手にまわってきた五千ドル。これまた さらりとかっこいい。サイラスの奥さんが素敵。若くて賢くて。くんずほぐれつしてるオヤジ3人と少年1人を彼女が救うんだ。「やめなさい あんたの息子よ!」って。ラシードの行く末が心配だったけど、彼女なら大丈夫ね。
[地上波(字幕)] 10点(2011-07-27 16:32:11)(良:1票)
3.  コリーニ事件 《ネタバレ》 
ドイツ人資産家老人が殺された。犯人は逃げもせずに捕まるけれど、弁護士にも一切動機を話さない。導入部からして一級のサスペンスの様相。さらにその後の展開は予測不能かつ衝撃的でした。レオパルト戦車並に重量級の、まさにドイツにしか作れない映画です。 凡百の脚本ならば被害者のマイヤー氏が元ナチ親衛隊長であったことが判明したくだりで、状況は急転回し(傍聴席や検察側の動揺ぶりでも空気の変化は手に取るように分かる)‶1942年に何があったのか”を見せることでコリーニ氏の情状が酌量されて終幕となっていたことでしょう。 しかしここから話が二転するのには唸りました。 被告も若き弁護士(移民二世のトルコ人なんですね、これがまた)も観ている我々も、求めるのは「正義」のみ。戦後ドイツがずっと取り組んできた清算すべき課題が事件に大いに絡んでくるとは。ドレーアー法・・、知らなかった。衝撃を覚えました。 話の横糸となるライネン弁護士の人間関係も丁寧に織り込んであって、ドラマに厚みを持たせます。恩人を告発することの葛藤、恋人との亀裂、望まぬ師弟対決、とかなり盛りだくさんで穏やかじゃありません。そのうえ人種差別も顔を出します。 そしてフランコ・ネロの演技が素晴らしかった。台詞がほとんど無いにも関わらず、彼の瞳はあまりに多弁で圧倒的でした。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2023-06-14 23:46:39)
4.  アダムズ・アップル 《ネタバレ》 
いやいやいや・・北欧の至宝マッツ・ミケルソン主演の、空前絶後な一品であります。なんだコレ。 マッツ・ミケルソンは田舎教会の牧師。仮釈放された受刑者を引き受けて指導を行う立場の人格者・・である。たしか。 ところがねえ。ここの牧師もその助手らも皆そこはかとなくオカシイのですよね。短パン牧師のポジティブさは他を圧倒し、もはや狂気と紙一重。「前向き」なことが脅威に感じられる現象なんて初めて見た。 共同生活中の元受刑者の二人も体内磁場が狂っているのではと思われ、結果観てる側としては新入りのネオナチ暴力男に感性の正常さを委ねねばならないという非常事態がずーっと続くのであります。なんというシュール。 このまま呆気にとられて口が開きっぱなしで終盤へ向かうのかと思いきや、驚くなかれ思いもよらぬ感動の光に包まれるラストが訪れるのであります。 なんということ。やはり神は貴方の味方だったのですねミケルソン牧師。科学を信用しているという医者(この医者のクソぶりもたいがいなもんで)も逃げ出すほどの、信仰の勝利。宗教絡みの作品とは思えないほどの清々しさ。右の頬を打たれたら左の頬を差し出すべし。目の幅の涙が流れ落ちる感動を是非みんなと分かち合いたい。 教訓・猫は先に下ろすこと。クッキーは偶数枚用意のこと。♪How deep is your love(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2020-12-18 22:59:26)
5.  パターソン 《ネタバレ》 
ジャームッシュが綴る心穏やかで美しい日常の一篇。彼の作品は映像で表す「詩」であると、改めて認識させられる一本です。 生活の一つ一つに、それこそパートナーからマッチ箱に至るまで愛と関心を抱いて日々を送るパターソン市のミスター・パターソン。運転するバスの故障を除けば波乱らしい波乱の無い彼の一週間。だけど無味なんかじゃなく、彼のフィルターを通して、淡々と過ぎる日常の豊かで尊いことが饒舌に語られます。 出会う詩人仲間は深夜のランドリーでラップを刻む男だったり、10歳の女の子だったり。双子の乗客や通行人らが作品のリズムを生みます。 静かで何気ないこの世界観に大きく貢献しているのがアダム・ドライバー。大げさな表情やアクションを要求されない本作において、アダムの繊細な役作りは見事です。優しく温厚なパターソン氏、静かだけれどその表情が多彩なのです。モノトーンに凝る彼女には譲歩しっぱなしにも見えるかな。でもお互いにこの上なく優しいカップル。カップケーキ売れてよかった。 そしてこの映画、小さく笑わせてくれるシーンがたくさんあるのです。会社の配車係であるインド系同僚の愚痴(もはやボヤキ芸の域)には笑ってしまうし、毎日かしぐ郵便受けの謎が解けたときは「オマエかーい!」と誰もが突っ込むことでしょう。 そうそう、本名はネリーというワンちゃん、亡くなってしまったのだとか。名演技でしたねえ。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2020-05-03 23:45:05)
6.  パイレーツ・ロック 《ネタバレ》 
ユルくてお馬鹿で、でも人生にはロック、という信念が一本強固に通ってて大好きな映画です。出てる英国俳優がいかにもイギリス映画っぽい多彩な「顔」博覧会で唸る。ホフマンは米国人だけど。見てるだけで面白い。 舞台が船内に限られているにも関わらず、話の一つ一つがとても楽しい。ほぼセックス事ばかりなのはご愛嬌。狂言回しも兼ねるトム・スターリッジ君、あからさまな童貞顔で役にぴったりだ。極めて不道徳な檻に放り込まれた彼、かなり気の毒な目にあったりしながらも成長(?)してゆくのだった。多分。 戻ってきた往年のキングVSホフマン演じる伯爵の対立が一触即発の事態になったりするのかな、と思いきやこれが思いもかけぬ流れでもってお互い手打ちで締める展開へ。一本気ながら妥協点を知る、みたいな適度なしょーも無さ。このエピソードが一番好き。 敵役の政府側は完全にコメディ。強敵なようなそうでもないような。感じはモーレツに悪いが。 遭難ラストの緊迫感はかなりのものです。電波に乗って流れてくるラジオからのSOS、なすすべなく呆然となるリスナー。海の底へ沈むレコード。泣きたいのをこらえて見守りまして、ついに伯爵が浮いてきたときの喜びったら。ああよかったなあ。だってロックは悲愴なものじゃない。生きるための音楽だからね。制作は正しい判断をしました。 全編通して耳に心地よい音楽はもちろんパーフェクト。でも時代はちょっと違うのね。レビュワーの皆さん、勉強になりました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2016-11-19 17:28:40)
7.  イングロリアス・バスターズ 《ネタバレ》 
タランティーノが好き放題やってくれた小気味よさ。農家や酒場での半端ない緊張感や、まさかほんとにナチ全滅の映画館炎上など、映画を観る快さにどっぷり浸りました。女優陣が全員美しくて目にも楽しい。ランダ大佐ったらそれまでキレキレに冴えていたのに、全てを手に入れたと思った途端、足すくわれちゃって。これまたイカレてるブラピが見逃してくれるわけないじゃんか。馬鹿だなあ。    2017/6 追記 観終わった直後より、じわじわ効いてくるのがタランティーノなのか。何年経っても、ふとこの映画の細部まで思い出し、ああまた観たいなあ、あのショシャナとランダ大佐の再会する震撼場面とか痺れっぱなしの地下居酒屋とか、赤赤赤で彩られた炎上映画館とか、イングロリアス飢餓に見舞われたりするってやっぱすごい映画だよな。というわけで点数変更なのでした。
[DVD(吹替)] 9点(2011-08-23 17:45:17)
8.  トラフィック(2000) 《ネタバレ》 
頭は疲れたけれど、‘映画見たー!’という充足感でいっぱいになる。麻薬を巡る三組のドラマそれぞれがずっしりと見応えあり。特に画面が黄色く切り換わると‘デル・トロの組’だ!とわくわくする。根深い社会問題だけに重たいのだけど、時折笑える演出が粋なのもこの映画の魅力。ハビエールが米側から「どこならいいんだ」と問われて選んだ場所には大笑い。屈強な男3人がファミリー向けレジャープールかいな。(しかもちゃんと遊ぶんだ。まじめな顔して。)麻薬取締局の捜査官2人の勤務中トークもじわっと面白い。ヘレーナがレモネード持ってやってくるときのおたおたぶりは みもの。各組が自分たちの問題にとりあえず答えを出して話は一旦終わる。ハビエールの出した答が力強く、希望にあふれて素晴らしい。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2011-07-25 01:17:41)(良:1票)
9.  ワイルド・バレット 《ネタバレ》 
2分で考えついたような安易な邦題が「どうせB級」という不当な先入観をもたらしている感があります。B級はB級ですけども、かなり一生懸命に練られた脚本で面白いですよコレ。 一丁の銃が次々と人の手に渡っていくにつれ広がる騒ぎと予想不可な展開。場面の一つ一つが手抜き無しに緊迫するし、次に繋がる伏線にもなるしで目が離せなくなります。少年が出会う娼婦の情の厚いこととか、チャズ・パルミンテリ扮する悪徳刑事の狡猾な存在感とかDVロシア親父がJ・ウェインに心酔のオタクぶりをまさかの場で発露するとか、脇キャラに至るまで強烈な個性を放ちます。 秀逸エピソードがベラ・ファーミガvsサイコパス夫婦の一幕。本筋とはほぼ無関係なこのくだり、無関係にもかかわらずしっかり作り込んでいてセットも役者も完璧に不気味。なぜここにこれだけ情熱を注ぐのか。良いなあ。ベラ姉さんの気っ風も麗しい。 ラスト直前の数分には複数回のひっくり返しがあります。わたしはどれも読めなかった。最後まで驚かせてやろうという気概を感じる気持ちの良い映画でした。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-01-17 23:21:49)
10.  黒猫・白猫 《ネタバレ》 
良く言えば「生命力あふれる」、違う表現をすれば「カオス」な賑々しさ。人も動物も入り乱れてとにかく元気。若者は恋愛中、オヤジ連中は賭け事や犯罪で一攫千金を目論み、殺人は起こるわ豚は車を食べるわガチョウは群れるわで、ハリウッドや西ヨーロッパ仕様のいわゆる「きちんと感」に慣れた目で観るとかなり強烈です。これが東欧白人のパワーか・・。 本作においてプロ俳優はなんと3名しかいないというではありませんか。本物のロマの人たちの発散するパルス、エネルギーが本作をまるごと包んでます。あんなに歯の弱った役者がアップになる映画はかつて見たことないもんなあ。 力業なんてレベルを超えた、強引なハッピーに次ぐハッピーエンド。呆気にとられもしますが、じわじわときます。笑っちゃいました。 これほどに陽気なエンディングは、監督のバックボーンである故国が苦難の多かったことと影響しているのでしょうか。 ところで、豚がむしゃむしゃと食べていた廃車って、かつて東ドイツで製造されていた‶紙でできた車”なのかな。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-10-22 16:24:51)
11.  女は二度決断する 《ネタバレ》 
震えながら観ました。D・クルーガーの放つ凄まじい絶望感に。あまりに理不尽な展開に。ラストを見届けた後も震えが止まりません。 あのエンディングをどう思うか、色々なサイトでは是の人もいれば非の人も見受けられます。 痛いほどに思うのは、暴力は人の心を粉砕してしまうのだということ。D・クルーガーが演じるカティヤの真っ暗な瞳。以前は仲良かった友人のめでたい出産も、我が子をあやす友の幸福が逆にナイフとなってカティヤに刺さる場面は、二人の対比があまりに残酷でありました。まるで死者のように感情を失った顔のクルーガーの演技は辛くて見ていられないほどです。 復讐だけをよすがに日々息をしている彼女。犯人逮捕の一報で復讐の糸筋が見えたことで、彼女は戻ってきたのに。 連中だけを死なすこともできたのです。一度はそうしようとしたのです。だけどカティヤの心は修復不可能なほどに、希望を持てない死に体になっていたのでしょう。戦友である弁護士の上訴の勧めにも背を向け、再びやってきた生理にも新しい家族の可能性という希望などもはや抱けずあの決断をしたのだと思うと、私は「時が癒すからがんばろう」とは軽々に彼女に言えないのです。 傷だらけのカティヤをさらに鞭打った被告側の弁護人のことは一生許しません。許しませんとも。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-11-22 23:57:34)
12.  K-19 《ネタバレ》 
非ロシア人であるハリウッド二大スターを使って旧ソ連海軍を描くとは難しい仕事だったと思います。しかし、言語こそ英語ですけど原潜内部のリアリティ溢れる造りはもとより、乗組員と政治士官との立場の差異など社会主義国ならではの政治事情もストーリーで説明できており、メイド・イン・ハリウッドということを気にさせない立派な作りです。画がちゃんと重くて渋い、ザ・共産圏の香りがします。 原潜内部で起きた異変の原因は、党が強いた突貫工事による整備不良や、正規品も間に合わない現場のとりあえず間に合わせた不完全な仕上がりによることは明らかです。K-19、この艦はドックから出たての処女就役なんですよね。この年1961年。1年目からこんな有様の潜水艦をソ連はその後老朽艦になるまで使い回し、冷戦終結後に明らかになった数字ではのち29年間で23件もの同様の原潜事故が起きていたと書物で読みました。 劇中非業の死を遂げた乗組員や艦長らの慟哭、非人道的な安全対策の不備がこの物語の後30年も繰り返されたとは旧ソ連という国家の非人間的なことに改めて衝撃を覚えます。 この映画の伝える恐怖は身体が震えるほどのリアル描写で、恐慌状態に陥ったP・サースガードが泣き叫ぶほどにこちらの気分も悪くなりました。 序盤まではリーアム・ニーソンとハリソン・フォードという主役クラスをどう両立させるのか、バランスの難しさを危惧しましたが杞憂に終わりました。特にH・フォードの新艦長がどういう立ち位置になるのか、とても興味深い出だしでした。ハリソンといえば、いつでも「正」側にいるイメージがついているスターですから‟無能艦長”の役回りで終わるとも思えなかったですし。 そう、もちろんボストリコフ艦長はこの就航が無理なミッションであることを分かっているのでした。しかしひとたび任に就けば艦内のトップとして職務全うにベストを尽くす。「訓練好きのコネ艦長」などではないのです。 副館長のリーアム・ニーソンはハマリ役で安定感抜群でした。部下に対しては温情型の彼が、しかしクーデターを許さず厳しい態度に出たことで原潜内の秩序維持の必須なことを思い知らされます。危険で特殊な環境下では組織のタガが緩む行為は許されない。たとえ意見は対立してもハリソンは艦長なのです。 ベテラン俳優二人の見事な組織人ぶりがドラマの重厚感をより引き立てました。どっと疲れるけれど、観るべき映画と思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-06-08 23:31:27)
13.  誰よりも狙われた男 《ネタバレ》 
フィリップ・シーモア・ホフマンは当代最高峰の役者の一人だと思っている。彼の遺作となった本作を、多大な喪失感を抱きながら観賞した。 ル・カレ原作らしい重たさと切実な空気の中、ホフマンは身体つきそのままに、どっしりと緩慢に動く。ストレスや苦悩をぜい肉として纏っているかのようだ。部下に指示を出す時の動作や電話を取るしぐさ、おっさんジョークを飛ばす時の表情。バッハマンという一人の人間が完璧に造形されていて、もう私は目が釘付けになった。 「個人」を救いたい女弁護士と、全体像を見据えて国および地域の安全を担保したいバッハマンとは利害が必ずしも一致しない。彼女をアメと鞭で懐柔する時のプロの凄み。そしてプロ同士、すなわちCIAとの一騎打ちも冷ややかに尖っていて見ごたえがある。 物語は「大樹」であるところのCIAにバッハマンは鼻を明かされて終わる。「組織」の非情さと人間への不信感で言葉も出ないラストであった。ここのホフマンの仕事は誰ができるだろう。憤怒に身体を貫かれたようなその後姿。ああ彼がCIAらに一矢報いるような続編が見たいと心から思う。もう叶わない。とても悲しい。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-11-28 18:07:59)(良:1票)
14.  パフューム/ある人殺しの物語 《ネタバレ》 
あの急転直下摩訶不思議な処刑場のシーンになるまでは、絶対嗅覚シリアルキラーの変態人生物語だと思っていた。 違うんだ・・。 つまり彼は本当のところ人外の者(作中では天使だと言われていた)だったのですね。そう考えると、彼が去ると災いがふりかかるという座敷童的な現象や、体臭が全く無いこと、子供たちだけは彼の特殊性に気付いていた、というエピソードもすとん、と落ちるのです。 彼は愛を与えにやってきた天使。彼を糾弾していた最右翼のA・リックマンすら心溶かされてしまった。天の者にとっては死は単に生まれる前に戻るということでしょうから、人間規範での罪悪感など無いのです。 愛のかけらも無い生まれ場所へと戻り、自ら撒いた愛に包まれながらこの世を去った。食すという行為は愛の究極型といいますし。 まさか猟奇的な殺人行為が愛の話になるとは。こりゃもう常人では考えつかないトンデモな原作&脚本。 けれど、打ち捨てられた死体が妙に美しく撮られていたり、ローラが最後に見せる表情が全く怯えの無いものであったりと、伏線はたくさん張られていたような気もします。 美術は本当に見事で、18世紀のフランスの風俗そのもの。(いや知らないので多分だけど)話もびっくりだけど、眼でも楽しめる一品であります。
[DVD(字幕)] 8点(2016-09-16 23:48:16)(良:1票)
15.  グッバイ、レーニン! 《ネタバレ》 
国家によって台無しにされた個人の人生を描いているけれど、重たくならず場面によってはコミカルに描いているその筆致に感服する。 どの人物も(脇に至るまで)きちんと人間が描かれていることに脚本の良質なことを感じる。母のために献身的にがんばる息子ダニエル、それよりちょっと現実的な姉、彼ら家族を生暖かく見守る周囲の人々と。 お母さん、大変な人生でしたね。幼子を連れてすでに当局に目をつけられている夫のもとへ亡命するなど、怖ろしくて勇気を奮い起こすことなど容易ではなかったことでしょう。反動で共産活動に精を出す、その気持ち分からなくもないです。こつこつ貯めた貯金が価値を失くしても、こんなにも愛のある息子さんが育ったではないですか。 人生の去り際に、わが子のしたことを悟って息子を見つめる母の眼差し。世の中の真実を知っても、皆が心配したようにお母さんは壊れたりしなかった。母の愛は真に強く優しい。 統一後の東側の混乱ぶりを市民目線で知るのは初めてで、勉強にもなった。道路わきに積まれた古い家具、(それもすぐには回収に来ない)我慢に我慢を重ねてきた市民らの思いの象徴のようだった。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2016-09-03 00:05:04)
16.  アンノウン(2011) 《ネタバレ》 
とても面白かった。?がいっぱいでわくわくしましたね。類似作品を観ていなかった我が幸運を思います。 この雰囲気、この映像。サスペンスの舞台に雪降るベルリンはもう最適。青みがかった病室、モノクロの写真展、そこに一点映えるJ・ジョーンズの金髪。苦虫顔のL・ニーソンに憂い顔美人のD・クルーガー、そして重鎮B・ガンツまでが揃ったら軽薄になりようがないのだけども。  新旧の老スパイ同士の対峙する場面は、ストーリー上は横線ながらこの映画の見所の一つと言っていいほどの緊迫感があります。少しずつ表情を変えてゆく二人の男のせめぎあい、静かながら龍虎相搏つといった趣。ここシビれましたねえ。 マーティンの、記憶が戻ったあとの豹変ぶりはちょっと強引だけど(元仲間にしてみればとんだ裏切りですよね)それでもたくさん楽しめたので、私的にはそこはスルーしようと思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-11-05 23:59:57)
17.  ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い
いやー、笑った。私は女なのでバチェラーパーティに参加できる要件を満たしていないけれど、そういうのにつきものの下品さをひっくるめても面白かった。 次から次へとよくもまあこんなに考えついたもんだ、と感心する非日常な出来事がノンストップ。ほとんどスペクタクルと言っていいような怒涛の展開だけど、その内容が実にしょーもない、というアンビバレンツな面白さ。とっ散らかった案件を、全て見事につなげてエンドロールと共に流れる救いの無いデジカメショットの数々。いやあ、粋なセンスしてるじゃありませんか、この脚本。 他人の失敗談というのは面白いと相場が決まってますが、こうも大ばかで身につまされないハッピーエンドな話は、爽快感すら漂います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-10-13 23:59:46)(良:1票)
18.  モーターサイクル・ダイアリーズ 《ネタバレ》 
ゲバラの青春譚という前知識が無くても、心にしみるロードムービーに仕上がっていると思う。生真面目な年下の若者と、ややお調子者の8歳年上の友人コンビがとても良い。エルネストの、超がつく真面目さに時折辟易しながらも、その誠実ぶりに「すごいなこいつ」と驚嘆の表情を見せるアルベルト。で、かたや後年名高き革命家となるエルネストも、マスコミにちゃっかり誇大記事を売り込んだり、女の子が好きだったり、でもダンスが下手だったりとゲバラの若く青い一面を見られたのも意外で楽しかった。 純で誠実な若さの輝きを画面いっぱいに放ちながら進む二人が楽しそうで羨ましく、バイクで向かう先の広大な風景に、スクリーンの前の私も思わず大きく息を吸いました。
[映画館(字幕)] 8点(2014-06-12 00:05:10)
19.  シャーロック・ホームズ(2009)
ガイ・リッチーの思い切ったキャラ造形が、ロバートとジュードという適材を得て生き生きと動いている、そこが一番の魅力。“結婚するのー?”“まじで?”とワトソンにちくちく嫌がらせを仕掛けるホームズ。全く12才のガキのようである。楽しい。見るたびにかちーんと固まっている受難犬トレッドストーンも可愛い。そして音楽と美術、こちらも優秀。19世紀のロンドンを全身全霊をこめて再現したかのような見事さ。女性のドレスは優雅で、男性のスーツは化繊のてろてろ感の無い上質さ、ああ眼福でした。
[DVD(字幕)] 8点(2013-11-11 01:10:18)
20.  ブラックブック
まあなんと濃密で疲れる140分であることか。監督の描く“人間そのもの”が生々しいったら。狡さも善良さも愛も嘘も、人間を構成するこれらのものを内側からひっくり返してはらわたまで引きずり出してみせる、この悪趣味なこと!ナチにもレジスタンスにも一般市民にも残虐な者、狡猾な者、良き心を持つ者、判断を誤る愚かな者がそれぞれ一定数存在していて、ナチ=悪、レジスタンス=正という安易な筋立てとは一線を画す。そしてそれこそがリアルな人間社会のような気もする。 「あ、良かった、うまくいった」と安堵したのも束の間、次の瞬間には梯子を外され急落下の繰り返し。すごくたくさん嫌な汗をかく。個人的にはロニーが好き。彼女だって必死に生きていたに違いない。けれどそれを表に出さず、身体を張ってしたたかに生き抜いた軽やかさに惹かれた。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-10-18 00:49:11)
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