1. 赤西蠣太
《ネタバレ》 暗い内容の時代劇を軽妙に描くと、後に評価が高まるようだ。 伊丹万作監督の本作もそうだし、山中の「丹下百萬」もそう。 伊丹万作の有名な作品ではあるが、歴史背景を知っておくと、更に面白い。 小生、1度目も無骨な主人公の姿が心に残ったし、名作だと思った。 しかし、2度目は伊達騒動のことを調べてから見ると、原田甲斐と伊達藩との関係、 そしてクライマックスの3月27日甲斐と安芸の斬り合いから、 赤西がこのための幕府(?)からのスパイだったことが分かる。 これは、原田甲斐の政治的立場をさらに理解すると、広間での連判状の一幕の意味がもっと分かるかもしれない。 しかし、伊丹万作は、そこまでは要求しないだろう。 創られた当時は、講談や歌舞伎で、伊達騒動はみんな知ってる話だったことも有る。 今の人が観て、ちょっとついていけないのも無理はない。 が、巨匠伊丹万作のその他の時代劇「権三と助十」を観ても、 ちょっとやそっとではお目にかかれない時代劇の名手であることは確かで、 日本のお話家さんは、観ておかないといけないと思います。 今はネットで手に入るし・・ [ビデオ(邦画)] 7点(2024-07-14 05:50:48) |
2. 愛にイナズマ
《ネタバレ》 本作「愛にイナズマ」や「蜜蜂と遠雷」など、「雷」天才女性を演じさせると松岡茉優は、いいね~ 家族を描いた秀作が近年、目立つ。 本作しかり、「台風家族」「ひとよ」など 上っ面の家族の本性が暴かれて、より家族の絆が強まるというのは、好まれるテーマらしい。 ここでは、佐藤浩市のお父さんが、実にいい人だったという秘密だから救われる。 完成した映画がどうなったのかまで描いてほしかったが、 それは本作の真のテーマではないからいいのだろう。 「春に散る」の窪田正孝の幅広いキャラの演じ分けに驚き! エレカシがピッタシの映画だった。 [DVD(邦画)] 8点(2024-05-05 21:19:55) |
3. アンダーカレント
《ネタバレ》 嘘つきの映画といえば、日本映画では根岸監督の「永遠の1/2」。 今泉監督の本作のラストで、それを思い出しました。 嘘つきには、遠く離れてついていくとこ。 今泉監督の会話術の巧みさで、サスペンスタッチになっていくとこは、新境地でした。 でも真木よう子が嘘つきだったから、瑛太も嘘つきになったとも言えなくもない。 だから、お兄さんの一言で、真木よう子の魔法が解けたら、瑛太とも上手く付き合えるのではないか? だから三角関係の始まりのようなラストでした。 いいね♪ [DVD(邦画)] 7点(2024-05-04 00:38:40) |
4. あのこは貴族
《ネタバレ》 地方流入者と地元。東京と地方。 この二つの軸が、一人のエリート男性一族の中で展開する。 エリートを高良健吾が好演。 嫌な奴なのだが、ラスト、門脇麦の表情に、さわやかな好青年なのかな?と思わせる。 門脇麦のただそこにいるだけのお嬢さんが、いかにも居そうな感じをさせる。 こんな人種、いるの~? いたら格差社会のモンスターだよ。 でも確かに地元民には、地方漂流民の姿は見えにくい。 地元民は繁華街とか近寄らないからだ。 大都会の男の不倫の対象にされた、二人の女性起業家の一言。 「私たちって東京の養分だよ」 大都会東京は、地方の若者の養分でこれからもドンドン肥え太るのか? [DVD(邦画)] 7点(2024-04-29 23:05:20) |
5. 愛について、東京
《ネタバレ》 柳町光男。 「火まつり」の神と人間の世界のとらえ方で、若い時に魅せられた監督の一人。 さて、「十九歳」「さらば愛しき」を観て、柳町ワールドを押さえたうえで、本作を鑑賞。 絶望を突き抜けて、神と対峙した、この監督作品は、 実に、淡々としたものだった。 そうです、東京は金のない人には、面白くも何もないのは、 中国人だろうが、地方出身者だろうが、同じこと。 まぁヤクザとその女をめぐる逃避行を、中国人に置き換えただけの話ではあるが、 突き抜けた人だけが持つ、温かみのあるラストだった。 藤岡弘が強精剤を集めるとこが面白かった。 [DVD(邦画)] 7点(2023-12-03 21:37:32) |
6. ある男
《ネタバレ》 見応えある。 ラスト、一瞬、シャラマンばりのフェイクストーリー?と思わせるとこが面白い。 騙された? でもそうじゃない。詐欺師の柄本明が「本物」だからだ。 偽物の奥さんと一緒にいる妻夫木弁護士を看破していたからだ。 つまり、本物の犯罪者は、本物だってことなんだろう。 救いは、安藤サクラの言葉だ。 「真実」を知らなくても、実際平和だった私たちの幸福こそ真実じゃないかというセリフだ。 傑作である。 [DVD(邦画)] 8点(2023-06-29 22:58:04) |
7. ア・ホーマンス
《ネタバレ》 いいですね~ 制作当時の1986年といえば、アメリカのウォルターヒルが絶好調の頃。 喧嘩映画が全盛の頃、松田優作も俺も!って感じで監督したんじゃないでしょうか? (最初の方で、もろウォルターヒルじゃんって音楽の使い方してるし・・) ターミネーターも1984年だったので、かなり意識したのかもしれません。 ヤクザ映画、数多しといえど、ロボットが出てくるのは、これくらいじゃないでしょうか? 面白いB級映画だと思います。 [DVD(邦画)] 7点(2023-03-04 14:04:57) |
8. 雨あがる
《ネタバレ》 小泉さんらしい、骨太の佳作。 あのお侍さんと、奥さんは、小さい頃から一緒にいた感じだね。 能力はあるのだが、冴えがなく、いつまでも貧乏な夫婦。 現代の平社員にもいそう(笑) [DVD(邦画)] 7点(2023-02-10 13:55:45) |
9. アキラとあきら
《ネタバレ》 主人公は2人の男とバチバチ火花を散らす。 1人は同期のアキラ。 ライバルがやがて、一緒に戦う者となる。 スポーツではありがちだが、ビジネスもので、この展開は新鮮。 もう1人は、上司の不動。 名前の通り、銀行のセオリーの権化である。 クライマックスは、一気にこの二人の男とバチバチやる。 だから、ヒートアップして、観ている者も、おおっと画面にくぎ付けになる。 巧いね♪ 女性があまり出てこないのに、埃っぽくないのは、今どきの若者の清潔感ゆえか・・ [DVD(邦画)] 7点(2023-02-01 23:45:52) |
10. 天草四郎時貞
《ネタバレ》 時代劇をかなり観てきたが、この映画は容赦ない。 前から思っていたのだが、時代劇の映画と漫画では、残酷さが違う。 白土三平や小池一夫の漫画は、かなり残酷だ。 一方、映画は、侍をどう描くかに力点を置くのが多い。 藩の横暴をここまで描いた映画は、今のところ、知らない。 それだからこそ、反乱というのが起きるところに説得力が出る。 江戸時代の多くの反乱。 それを真っ向から描いた、この映画は、ひょっとしたら多くの作家に 衝撃を与えて、文化を変えてしまったのかもしれない。 白土三平の漫画が多くの若者に影響を与えたように・・ その出発点が日本のヌーベルバーグ大島渚のこの一本もかなり関わったのではないか? [DVD(邦画)] 7点(2023-01-13 17:31:13) |
11. 秋津温泉
《ネタバレ》 若い頃、結核で悩んでた青年は、旅館の娘に 一緒に死んでくれと頼む。 心中を引き受けることは、抱かれることよりも深い。 引き受ける娘だったが、青年の馬鹿真面目さについ笑ってしまう。 それから、青年は温泉地を去り、所帯をもつ。 長い時間がたって、青年を忘れられない女性との再会で、 二人は抱き合う。 しかし、もう青年は「死んで」しまった。 空っぽの青年の言葉が彼女に響くわけもなく、 若かりし頃の青年の後を追うかのように彼女は自殺をする。 ただ腑抜けの青年は、その女性を抱いて泣くのみである。 メロドラマの傑作である。、 [DVD(邦画)] 8点(2022-11-19 19:00:10) |
12. 赤い影法師
《ネタバレ》 黒澤明が七人の侍をステーキにうなぎ、カレーをぶちこんだ作品と 言っていたが、いやいやこの本作も中々、お腹いっぱいになる♪ 前半、御前試合で、たくさんの武者の試合を見せ、 後半、三成と徳川家の因縁に悩む母子忍者と、服部半蔵と柳生十兵衛の顔合わせ。 いや~、これはお腹いっぱいになりました! 思うに、映画という玩具を手にしたとき、大陸的面白さがジョンフォードなら、 アイデア満載、見せ場満載の、この娯楽時代劇の面白さが、島国の面白さじゃなかろうか? それは、マンガに引き継がれ、そして、ネットの時代、どこに開花するだろう? 日本文化は、なかなか楽しい。 [DVD(邦画)] 8点(2022-10-24 23:19:05) |
13. 阿部一族(1993)<TVM>
《ネタバレ》 森鴎外のしっかりした原作に、 アクションの部分は、深作さんが渾身の力で、 演出する。 すると、こんなに奥深い娯楽時代劇が出来てしまう。 テレビ映画と言うことだが、ちょっと高めに、この点数。 [DVD(邦画)] 8点(2022-10-23 14:29:03) |
14. 愛なのに
《ネタバレ》 ん? 間違えて、アダルトビデオを借りたかな? 大林宣彦調の映画に、突然、激しい濡れ場。 目が点になりました(笑) [DVD(邦画)] 7点(2022-08-31 23:48:29) |
15. 茜色に焼かれる
《ネタバレ》 尾野真千子の叩きつけるような演技が心に刺さる。 息子役の少年も共鳴するかのように、叫びながら静かにそこにいた。 旦那のオダギリジョーがそもそも悩みつつも、あがいてる人だった。 他所に子供まで作るのだが、尾野真千子は、そんな彼を好きになる。 そして、生まれた息子を愛して、この世界を生き抜いていく。 最後、バタバタと落とし前がついていくのだが、 最後の「神さま」という題の劇。 走る走る、尾野真千子が走る。 そんな彼女を見て、少年は、これが自分の母親だと、世界と結びつく。 茜色の夕陽にいつまでも夜にならない、いつまでも死にきれない、 生かされる二人の母子に、我々も生きねばと勇気づけられる。 筋よりも、尾野真千子のキャラを描いた、コロナ禍の中で生まれた石井監督の力作。 [DVD(邦画)] 7点(2022-08-23 00:54:23) |
16. ある映画監督の生涯 溝口健二の記録
《ネタバレ》 興味深い! あらゆる名監督のこういうドキュメンタリーが残っていたら、 後世、その監督の映画を観直すとき、かなり分かりやすく勉強になる。 今、活躍中の監督たちのドキュメンタリーも、後世の映画ファンのために残すべきではないだろうか? それにしても何と喜々と映画について話すのだろう。 溝口の痴情のもつれから、背中をカミソリで切られるとこから、 晩年の田中絹代との噂の真相まで、実に興味深い。 田中はこう言ってる。 「(溝口は)田中絹代に自分の惚れてる女性像を演じさせて、その「女性」に惚れてる」 何より女性映画の名手が、溝口の上司の村田実が男性映画の名手だったため、 会社側から女性映画を撮るように言われてから始めたという出発点は驚きである。 「楊貴妃」では、自分の分からぬ異国の上流階級の女性を描くにあたり、 イライラが募り、美術や女優にあたっていたというのは、とても今では問題になる話である。 しかし「雨月物語」を筆頭(私はそう思っているが)に、名作を数々生み出した 巨匠の実情は、凡人の自分にはホッと一息つけてしまうのであった(笑) 追伸)伊藤大輔ファンの自分には、おお!これが伊藤監督か!という映像があるのに感激♪ [DVD(邦画)] 7点(2021-07-18 22:43:22) |
17. あしたのジョー(2010)
《ネタバレ》 物語りは、ウォルターヒルの世界観に近いBGMでドヤ街から始まる。 刑務所でのボクシング試合といい、まるでヒル監督の「デッドロック」。 おなじみの話が続くのだが、キャスティングがいいですね。 とくに香川照之の丹下は、見応えあります! [DVD(邦画)] 7点(2021-07-10 20:06:04) |
18. 浅田家!
《ネタバレ》 笑いの絶えない、愛すべき底抜け親バカファミリーの ボンボンは、あの東日本でも愛を届ける、という話。 前半は、つらかった。恵まれてる家の子が簡単に 認められて、二宮君の顔が恨めしくも思えた。 ところが後半、あの東日本大震災。 二宮君のニヒルさは、いつしか飾り気のないアンちゃんのそれになっていた。 あの震災で傷ついた少女に愛を届けられるかが焦点になる。 そして、恐るべし浅田家ファミリー。 そこでの愛が愛を呼ぶからスゴイ。 実話と聞いて、素直に楽しめた。 [DVD(邦画)] 7点(2021-06-27 20:46:44) |
19. 朝が来る
《ネタバレ》 ラストの「なかったことにしないでください」の文字。 刺さりました。 「八日目の蝉」の永作博美に、養子の母役を演じさせるとはニクイですね。 前半の愛情いっぱいの永作の表情に、普通の女の子、ひかりが転げ落ちていく話のまん中を はさんで、後半の永作とひかりの対峙する場面。 エンディングの後の「会いたかったよ」の声。 絶望の中の光でした。 どうだと言わんばかりの、もう女性しか撮れない女性映画! 河瀨監督には、ただただ圧倒される。 [DVD(邦画)] 9点(2021-06-12 20:56:24)(良:2票) |
20. アルプススタンドのはしの方
《ネタバレ》 大まかなストーリーは、野球観戦で熱くなった観客が 自分らの本音もさらけだし、友情を獲得するという話である。 最初は明るかった「仕方ない」女子は、展開がひっ迫していくにつれ、 無理だよ、とかマイナス的なことをつぶやくのが印象的である。 この子が最後、試合の熱戦の中で、仕方ないことはない、もう一度、 演劇部の大会に挑戦する、という成長話がベースである。 傑作! [DVD(邦画)] 7点(2021-04-03 22:47:56) |