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なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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21.  御誂治郎吉格子 《ネタバレ》 
娘がお百度参りしているあたりから後半に、映画に濃密な空気を感じだす。特別構図が凝っているわけでもなく、ろうそくなどもっと装飾的に使う監督もいるだろうが、一つ一つの図柄の的確さが濃密な空気を醸している。理屈をつければ、治郎吉が彼女への同情を決定的にした瞬間で、つまりこの場にいないお仙のラストの悲劇がカチリと始動した瞬間だった、という運命的な見方をすることも出来る(もちろん観客はまだ知らないんだけど)。このあと彼女の不幸が自分のせいだと知る治郎吉、だから自分で自分の始末を付けるということでもあるんだが、そも「輪」からはみ出されていくお仙の意地っていうのが絡んできて、重厚。「あたしを忘れさせないからね」っていうのは、怖い。
[映画館(邦画)] 7点(2013-02-22 09:55:13)
22.  男はつらいよ 花も嵐も寅次郎
ワルツが久しぶりに鳴った。偶然の出会いを仕組むあたり、本シリーズでは珍しくはないもののやはり笑える。蛍子の親父さんが「こんな奴と付きあってんのか」というとこも笑った。とらやでの画面の作りはもう熟達の境地。すみずみまで無駄がない。左側に怒ったオイチャンがいると、右側に泣いているオバチャンを置いて釣り合いを取り、話が一室に籠もりそうになると、オイチャンのとこに人が来たりして、店から三郎に挨拶を送る場面を挟んだりして息を抜く。流れが出来る。このころから寅はよくマドンナの恋の相談相手になる。寅は結婚してないから理想が言える、ってことで、ヒロシの言葉を借りると「それが欠点でもあり美点でもある」。けっきょく寅は人生の通過者であり続けようとしたわけで、人生の転換点を乗り越えることが出来ない人なの。ある意味臆病、よく言えば永遠の青年。だからほかの人が乗り越えようとするとき助言を与えるのに熟達している。『太陽を盗んだ男』などニヒルな役が多かった沢田研二に、気の弱い動物園の飼育員をやらせたのが慧眼で、上方のボンボン的な資質を見抜いていた(鳥取生まれの京都育ち)。後年沢田は舞台で「夫婦善哉」をやることになる。
[映画館(邦画)] 7点(2012-06-14 10:13:09)(良:1票)
23.  男はつらいよ 寅次郎恋愛塾
並列的に列挙する。・タイトルのバックが旅先というのは珍しい。・初期の寅のギラギラしていた部分をポンシュウが受け持っている。・帰宅後の寅の会話の中でだんだん若菜が現われてくるおかしさ。「珍しいなあ、男で写植やってる人は」「男と言ったか? 俺は」。・面接の場。こういうなんとはない社会の断面を見せるとこがうまい。・「真剣に恋をしている人をからかうなんてお兄ちゃんらしくないわ」で、民夫への教育となる。『寅次郎頑張れ!』の線。「僕はそんなこと出来ませんよ」「さいなら」のリズム感がいい。・アケミが「人妻になって寅さんの魅力が分かった」てなことを言い、社長と喧嘩になっていく。・「希望? そんなこともありましたっけね」と赤信号を突っ切りうなぎ屋に入り看板を倒してフラフラと去っていく民夫、これは昔の寅だ。・秋田へ行くあたりから調子が落ちる。リフトが行って帰ってくるのなどもう少し撮りようがなかったか。樋口可南子って笑顔が哀しい女優ベスト3に入ると思うんだけど(あと風吹ジュンとか)、あんまりそれが生かされなかった。
[映画館(邦画)] 7点(2011-08-18 10:39:11)(良:1票)
24.  お引越し
この監督は水が好きで、今回も不意の夕立やら疎水やら出てくるんだけど、それよりも火が圧倒的だった。引越しのゴミ燃し(放火のニュース)、アルコールランプ、大文字焼き、祭り、舟の炎上。少女の成長って民俗学的にもよく火と関わってる(『ミツバチのささやき』でも跳んでた)。それを背景にして、レンコが「おめでとうございます」と叫んだときには感動した。成長することを自分で祝福し、毅然とまなじりを決して受け入れていく。崩れて行く家族にすがろうとする自分を「おめでとう」と叫んで奮い立たせていく。おめでとうとは、ただお赤飯を前にしてるってだけでなく、厳しい言葉なんだね。前半は「けなげ」のパターンに収まってしまうんじゃないかと思ってたが、あの「おめでとう」でそこから一歩進めた。風呂場に立てこもるときの廊下の緊張、そうか立て籠もる話が好きなんだな。鋭く尖った三角形のテーブル。レンコはよく走った。
[映画館(邦画)] 7点(2011-07-22 10:13:25)
25.  おとうと(1960) 《ネタバレ》 
崑てモダンなんだけど、日本の家の暗さを描くと一流なんだ。日本の家屋の古さにモダンを見ている。描かれていることは陰湿と言ってもいいのに、観ている印象から言うと、湿り気が感じられない。田中絹代の母が、一家のあまりの「背教的態度」に、ああーと絶望の声を上げるとこなんか、陰湿さであるはずのものが客観的な笑いを生んでいる。この距離感が、崑のモダンたるところ。暗い話を、監督は一緒に閉じ籠もって暗く見てはいなく、外から見ている。田中・岸田がひっそりと話し合ってるあたりに漂うユーモア。弟の内面をほのめかすシーン、死なせた馬が可哀想と繰り返したり、アイスクリームで人に伝染させちゃいけないと言う場面などでは、常に姉を立ちあわせている。姉の目を通した弟にしている。そんなに悪い子じゃないのよ、って。姉にだけにはそう見せたい弟の甘えでもあるのか。そういうとこに、この二人だけの親密さが漂う。あるいは鍋焼きうどんで姉を試そうとするあたりも。外の人間に向かわない自分たち姉弟だけで閉じている親密さを、これじゃつまんないな、と弟が病床で述懐するところが切ない(これがけっきょく彼の最期の言葉になったのか)。日本映画では、ラストをピタッと決めるのがうまく出来ないのが多いんだけど、崑はうまいね。パッと断ち切る鮮やかさ。俳優では暗い田中絹代が素晴らしく、彼女の長い俳優歴のなかでも異色の代表作と言っていいだろう。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2011-06-30 12:15:48)
26.  女の中にいる他人
降り続く雨で、湿っぽいトーンが決定される。室内の陰影の味わいは横からの光が主になっているのだが、全体がモワーンとなにやらタレコメてる感じ。つまり湿っぽいのだ。フェイドアウトの多用も、その湿度上昇に関与してるか。あと顔が二つ以上、向きを変えて画面を埋める構図。妻と小林君。焼き場で草笛光子と小林君が何となく気になりあうシーンなど、いわゆるサスペンスの興奮とは微妙に違うような、でもやはりサスペンスの一種なのか、いい。停電の最中に告白しちゃうシーンもあったな。顔を合わせたがらない人々。まず観客はこの男と事件の関係をいろいろ想像するサスペンスがあり、次にそれがバレるかどうかというサスペンスがある。このつながり具合が、も一つうまくいってなかったようにも思う。それに題名がちょっと喋りすぎてる。輪郭線がにじむような画像処理など珍しいこともやっており、花火の夜の風景はストレートに美しかった。花火の音の効果もよろしい。次の『ひき逃げ』とともにこれは珍しいサスペンスものだが、気の弱い男としっかり女、という基本線は成瀬の本道だったわけだ。
[映画館(邦画)] 7点(2011-03-21 10:09:01)
27.  王将(1948)
大阪・浪花の典型ですな。上品なもの(東京的なもの)に対するもう理屈抜きの反感、人間臭さ、八方破れといったものの肯定、「男ドアホ」の世界であります。女房への甘えかかりも、あんな人ひとりで生きていけへんやろ、で釣り合いが取れちゃう。本物の坂田三吉は、それほど野人じゃなかったそうだが、一つの型がもう出来ちゃったもんね、この映画のせいなのか。阪妻はかなりクサいことやってるんだけど、浪花ってことでちゃんと型になっちゃう。これ江戸っ子だったら、ちょっとカナワンナアになるんじゃないか。蒸気機関車が走り抜けていく長屋の人懐っこい雰囲気も、浪花的。ちっとも「移動大好き」じゃないじゃないか、と思ってたら、会場から家へ走って帰るところでカメラが走った。三島雅夫と夜、縁台で昼の試合をやり直しているシーンなんか、いい。私のこれのノートの最後に、「ライオツ歯磨」とだけ書き込んであるんだけど、こりゃいったい何だったんだろう。
[映画館(邦画)] 7点(2010-11-08 09:54:27)
28.  女が階段を上る時 《ネタバレ》 
高峰秀子は、木下作品で明るくしっかり、成瀬作品で暗く不貞腐れ、と松竹と東宝で昼と夜を繰り返してたって印象があるが、今度「自薦十三作」で何を選んだか興味があった。そしたら断然「夜」の成瀬の勝ち。木下作品で選ばれたのは『二十四の瞳』一本だけで、ほかの作品のコメントでも、『喜びも悲しみも幾年月』は「演ってて面白くなかった、優等生すぎて」とか『永遠の人』は「脚本があんまり陳腐なんで」など、まるで成瀬映画の登場人物のようにグダグダ言ってる。もちろんこのコメントは演技者としての評価なわけだけど、高峰が木下作品の役にあまり満足していなかったのが分かって面白い(一観客としては木下の高峰も好きよ)。で成瀬作品で選ばれたのが三本、つねづね思い入れをエッセイなどで語っている『放浪記』と、公的な最良作『浮雲』の二編と本作。ちょっと意外な気もしたが、これでは彼女が“衣装”でスタッフに名を連ねており、そんな点でも思い入れが深いのかも知れない。いかにも成瀬的な、すがれ気味のバーの雇われマダムの話だが、脚本が黒澤映画の菊島隆三で(たぶんこれ一回きりだと思うが)どうもいつもと違うゴワゴワした手触りになっている。そのせいかどうか、高峰を含む女優陣よりまわりの男優たちの適材適所ぶりが光った。常連客の関西の実業家中村鴈治郎、銀行の支店長森雅之、こういったいかにも銀座のバーに出没しそうな男に混じって、加東大介が場違いの客として誠実そうにニコニコしている。また彼女の実家が佃島で、銀座の近くでありながらひなびた感じが漂い、そこにうだつの上がらない兄の織田政雄がピタリとはまる。ヒロインが病んだとき佃島に見舞いに来るのは、森ではなくその風景にピタリとはまる加東の方。加東はさらにひなびた、上流の千住のお化けエントツの近くに住んでいることもあとで分かる。子どもの三輪車がうるさく回るそのお化けエントツの見える荒涼としたシーンは、シュールな美しさが漂った。こう男優たちが東京の地理にふさわしく配置されているのが面白く、そういった非銀座的な男が絡むシーンが光るので、単なる風俗映画に閉じてしまっていない。
[DVD(邦画)] 7点(2010-05-28 12:14:23)(良:1票)
29.  男はつらいよ 拝啓車寅次郎様 《ネタバレ》 
出来の悪いときでも、やっぱりいいなあと思わせる一瞬がこのシリーズには必ずあり、それで許せてしまう。長浜での祭りの最中、満男が牧瀬里穂に「付き合ってるのいるの?」などとウジウジしてると、人込みの中からフラリと寅が現われて「いたっていいじゃねえか、そいつと勝負するんだ」と言って、また人込みの中に消えていくところ。このシリーズのカンドコロを押さえている。満男が社会人になっていて、さくらの結婚で始まったこのシリーズが一世代経過する時が近づいていたわけだ。寅が満男の会社に挨拶に行こうとした顛末を電話語りにしたことで哀愁が出た。ここで叱られたせいで、あんまり甥の恋愛に積極的に関わるまいと自制しているのか、寅はもっぱら説教専門、牧瀬とはあまり絡まない。かたせ梨乃の旦那が来たとき、神戸浩は「じ、じけんです」と言って寅のもとに走った。アタマとオシリの小林幸子は不要。
[映画館(邦画)] 7点(2010-05-26 12:03:07)
30.  男はつらいよ 寅次郎真実一路
大原麗子が寂しく亡くなった。彼女は二度『男はつらいよ』でマドンナになっているが、後者のこっちのほうが、よりキャラクターが生かされていた気がする。失踪した亭主(米倉斉加年)を、成りゆきで寅と探すことになるわけだが、その心配しつつも、思い出の地の旅行になんとなく浮き浮きしている感じが彼女に合っていた。若いころよく演じてた小悪魔的な雰囲気を残し、よろめき願望などという明確なものではないのだけど、けっこう息苦しかったサラリーマン主婦業の息抜きが出来た、という妙な解放感が表現されていた(遠距離通勤の住宅地、牛久沼の朝のスケッチがその前にあって、同じような家が並び、自転車通勤の人々の描写が、息苦しさをすでにサッと描いていたのが生きてくる)。そこらへんの心配と解放をさっぱりと食い違いなく演じ、下手するとベタつくコケットリーになってしまう寅への態度を、あのとんがり気味の顔でうまく流した。彼女はあと市川作品の『獄門島』や『おはん』でも、色っぽさを透明感でさらりと包み込んでしまう。異色なところでは木下恵介の『新・喜びも悲しみも幾年月』で、主なキャスティングが加藤剛以下優等生的ななか、彼女と植木等の二人が映画に味を着けていたのを思い出す。で、この『寅』、冒頭の夢がギララ登場のやつ。ギャグでは、一流証券会社の会議シーンのバナナが傑作(このシリーズでは、転がる芋の煮っころがしとかメロンとか、食べ物をめぐるギャグに面白いのが多いような気がする)。“地道な暮らし”をしているサラリーマンの亭主にとっても主婦にとっても手頃な息抜きの存在としての寅、という彼の立ち位置がよく見える作品になっていた。
[映画館(邦画)] 7点(2009-08-08 12:03:38)
31.  鬼火(1997)
老いの秋ではなく、青々とした夏が背景となっているので、なかなか街に溶け込めないムショ帰りの主人公の気分が生きてくる。墓参りして改心した原田芳雄が街に戻るが、しかし力仕事はもう無理、けっきょくヤクザのとこの運転手となりズルズルかかわっていってしまうあたりのリアリティ。世の中と合わないこの感じを突き詰めていけば、新しい映画ジャンルを拓くか、とも思ったが、けっきょくタメて爆発するという仁侠映画の大枠に収まっていった。スカッとはするけど、ああまたそこに戻っちゃったか、という気もある。古本屋での会話「ハイ、百八十万円」「釣りはとっといてよ、家でも建てて」なんてあたり、いいよね。
[映画館(邦画)] 7点(2009-01-31 12:17:02)
32.  お國と五平
『めし』と『おかあさん』という代表作の間に、こういう全然毛色の違ったものもチャチャッと撮っているのだ、この監督は。大谷友右衛門てのは、いま歌舞伎の女形の大御所の中村雀右衛門。こういう古典劇出と対照的に新劇出の山村聡が出ると、だいたい暗いインテリの役ということになる。内攻し懐疑的といった役どころ。お国と五平は宿に泊まると二階に部屋をとる。道中の人の中から仇を見つけん、という意味があるが、映画としては、ここから下々の掟のない人々の暮らしが覗けるという仕掛け。より自由である芸人がしばしば登場し、現代劇におけるチンドン屋好みを思い出す。あれは庶民の暮らしのゴタゴタから離れた自由人の象徴だったのかな。盆踊りや嫁入り道中もあり、まあロードムービーの趣。この人の映画では、なにやら思いつめて道を歩く人のイメージがしばしば繰り返されるが、このロードムービーは、それを拡大したものだったのかもしれない。封建社会の非人間性といった社会的テーマより、この二人のハッキリしない間の気分の揺れの方に、監督としては興味があったみたいだ。追いかけているようでいて、実は目的に追われている旅、別れるために一緒に旅を続けていた『浮雲』と比較できるようなできないような。街道の木洩れ日が実に美しい。
[映画館(邦画)] 7点(2009-01-21 12:18:05)
33.  大阪物語(1999) 《ネタバレ》 
沢田研二が舞台で「夫婦善哉」やったときはちょっと驚いたが、そうだ、もう映画では“無能=スカタン”の役やってたんだ。さらにさかのぼれば『男はつらいよ』で動物園の気弱な飼育係をやったとこにまでつながるかもしれない。大阪には“しょうもない男の系譜”ってのが、近松以来ずっと最近の町田康(これに出演している)に至るまで、文化として継承されていて、それを自慢さえしている。これの沢田、女癖が悪く賭け事に手を出しては失敗し、「芸人は何でも知ってコヤシにせにゃあかんのや」と春団治みたいなこと言って「あんたそないなたいそうな芸かいな」と言われると、エヘラエヘラ笑ってしまう。別れた女房と腹ふくれた愛人とみんなでクリスマスパーティやって、「ええクリスマスやなあ」と悦に入っている。でも娘に「父ちゃんカスか」と問うと「カスや」ときっぱり返され、するとメゲて失踪する。娘が尋ね歩くと、なぜか誰にでも愛されている…。もうこの父ちゃんのスカタンぶりだけで嬉しかった。後段、トオル君が出てくるとつまんなくなる。少女の成長物語には男の子がなくちゃならないとでも言うのか。
[映画館(邦画)] 7点(2008-12-12 12:19:09)(良:1票)
34.  男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎 《ネタバレ》 
寅は柴又でこそバカ扱いされるが、地方ではけっこう人物として見られることもあり、そのズレは興味深い。本作では、松坂慶子が弟の死を知ったとき、彼女は「なんで知らしてくれはらへんかった」って会社の人に言うが、身内の者として付き添った寅は「いろいろ面倒を見ていただいてありがとう」と感謝を述べる。こういうちょっと相手と距離を置いた“公の場”では、とても世慣れて大人なのだ。でも酔った松坂が宿に来て寝てしまう“私の場”になると、とたんにオロオロしてしまう。このズレ。その前に松坂が「弟のことをなんて呼べばいいかしら」と問うのに対し「ヒデでいいんじゃないの、俺なんて家ではいつもトラとかトラちゃんだぜ」っていうところ、テレビで見てるとつい見過ごすとこだけど、映画館ではすごくウケてた。なんか、柴又の寅と世間での寅との違いが、本人が意識せずにクッキリと出ていた。松坂、恋人がいたんなら悲しくて酔っ払ったらそっち行けばいいのに、とも思うが、その恋人ってのはヒロシタイプの真面目男らしいので、こういう場の慰め役にはならないってことなんだろう。で弟の死を知る場を一緒に体験した寅のほうに行っちゃう。ここらへんが寅の重宝なとこであり、またつらいところだ。松坂はこのとき寅とどうなってもいいと思ってたんでしょ、恋人がいるのに、フラッと。早朝ソーッと宿を出てタクシーに乗る松坂の場が印象深いのは、そういう酔いから醒めて、芸者をやめようとここで決心したからなんだろうなあ。
[地上波(邦画)] 7点(2008-10-19 12:19:31)(良:1票)
35.  ALWAYS 続・三丁目の夕日 《ネタバレ》 
もしかすると、ワイドの画面てのが一番懐かしかったかもしれない。怪獣映画が始まるときのワクワク感を東宝スコープマークで思い出していると、それがそのままラジオに重なり、ゴジラの襲来につながっていくニクい設定。まだゴジラが戦争の記憶にかろうじてつながっていた時代へと引き戻されていく。着ぐるみのゴジラがCGで再現されるところに、この作品の立ち位置が表われている。あたりさわりのない話に風俗図鑑を埋め込んだ構成。むかしの現代劇映画を見れば、時代考証の必要のないそのものズバリの懐かしの風俗を発見することはできるが、それらを集めた図鑑をパラパラと眺めるような楽しみがこの映画の味だ。拾った捨て犬を空き地で飼えた最後の時代か。狂犬病対策で野良犬が撲滅され、空き地も消えていく。戦争がらみの亡霊もやがて消えていくだろう。最後に東京タワーからの展望が出るかと思ったが、さすがにそれを作るのは大変だったか。
[DVD(邦画)] 7点(2008-09-01 12:13:48)(良:2票)
36.  女の園
そうか、この54年、木下恵介は高峰秀子に女先生と女学生の両方を演じさせていたのか。木下作品で暗い高峰は比較的珍しいが、かといって成瀬の高峰のように不貞腐れているわけではなく,まっすぐな向学心が家や学校によって妨げられていることから来る暗さなの。そのまっすぐさが、やはり木下。それまでお嬢さま専門だった高峰三枝子が、おっかない舎監役で新境地を開拓した。この延長線上に『犬神家の一族』の高峰三枝子がある。この舎監、ただの意地悪ではなく、彼女なりの信念があって衝突してるってとこがいい。それぞれの信念がぶつかり合う女の園、その扱い方に戦後民主主義に希望が託されていた時代を見ることが出来る。といっても“自由のはき違い”論ってのがもうこの頃からあって、根深いものだということも分かった。
[映画館(邦画)] 7点(2008-05-17 12:15:22)(良:1票)
37.  お遊さま
白黒なのに色が見える、って褒め言葉がよくあるが、「白黒は光と影で美しいのだから、それ褒め言葉になってない」と常々思ってた。しかし本作で困ったことに若葉の薄緑が見えるような気がしてしまった。美しかった。宮川一夫のカメラ、本作が溝口との初仕事らしい。堀雄二は後の脂ぎった顔を知ってしまっているので、どうも似合わない印象。谷崎似ということでの起用か。ロング好きっていうのは、移動しやすいってことでもある。カメラがすでに動きたがっている。その待機しているような緊張。人物たちの「三人」への誘惑。埋もれたがる願望。けっきょくそれぞれの孤独がある。東京のセットで向こうを走るおもちゃの汽車は、歌舞伎で、遠くにいる人物を子役が演じているような気分で見ればいいのか。
[DVD(邦画)] 6点(2013-11-09 09:31:43)
38.  男はつらいよ 寅次郎の休日
前作『ぼくの伯父さん』以後は、源氏物語で言えば「宇治十帖」にあたり、光源氏(寅に相当する)の過ちを光の後続者(甥・満男に相当する)が反復する世界である。じっくり諸行無常を味わわねばならない。久しぶりの夢では、カタンカタンと鳴る雅びなししおどしが、俗なゴトンゴトンの臼つきになっていく。コンとでは釣り人と酔うが、釣り人には帰る妻がある、と淋しい。泉ちゃんが来てて、二階のエレクトーンの音が途切れるたびに階下のヒロシがハッハッとするギャグが楽しい。「兄さんの甥でもあるんだぞ」ってのは、ほんとは安全ってことなんじゃないのか。寅が街の人に「俺の娘よ、ざまあみろ」ってのも、思えば哀しい。で日田での幸せそうなお父さん。女の人が宮崎美子で、夏木マリを裏返したタイプ。四人で仮の家族を構成し、満男に「いつも初歩的な過ちを犯してるじゃないか」と言われるのも哀しい。満男が寅にセーターを贈る。「もし伯父さんに奥さんがいたら」。冷静に観察されている寅であった。「伯父さんは本当に幸せなんだろうか」ってモノローグで語られちゃいまでする。まあ脇に回った寅に気配りをしたって程度であまり突っ込まないが、本シリーズのテーマの一つでもあろう。などと生々流転の風が吹き抜ける宇治十帖的な味わいであった。
[映画館(邦画)] 6点(2013-10-21 09:35:16)
39.  俺は待ってるぜ
水たまりの波紋が止まると店の名が浮かび、そこから裕次郎が出てくる。かっこつけてるの。手で風から囲ってタバコに火をつけたり、なにやらまぶしそうな煙たそうな表情をし、人生の重荷を背負ってる感じ。そして港にたたずむワケアリの女。80年代の前半ごろ、テレビのコマーシャルでここらへんの部分が使われてて、いったいどういう「かっこいい」シーンなんだろう、と想像し名画座で観たんだけど、これ、ただポストに手紙を投函するだけなのね。身に負わされた義理を苦渋のうちに終わらせたラストかと思ってたら、映画の冒頭。手紙出すだけでこれじゃあ大変だな、と同情した。日活アクションてのを観たのは初めてのころだったか。疚しさの過去を持っているのが、アウトローの条件なんだ、などと学習したものでした。
[映画館(邦画)] 6点(2013-07-12 09:30:17)
40.  おいしい結婚
平成版秋日和。親子も似せてある。不愉快な人物を登場させず、淡々とゴールインまでを描いていくんだけど、なんなんだろう、このうつろな感じ。『家族ゲーム』ではそこに焦点が当たっていたんだけど、もしかすると監督の作品で感じるうつろさは、意識的なものじゃなくて体質的なものだったのかも。現代のそういううつろさ・手応えのなさを、そのまま反映できるってのも才能の一種ではあろうが。都会の白いオフィスや原色の家具だけでなく、ラストの緑の野にもうつろさがある。南美江のおばあさんが弱かった。あれが重しになれたのかもしれない。おかしかったのは夫を送り出すときに異様に躁状態になる入江若葉。階段を一段ずつ上がりながらの会話。あるいは鍋を囲んでの会話。うまく合わない楽しさ。テーブルの配置も不思議。あとは、競技場での顔合わせのときのせりふの入れ方。
[映画館(邦画)] 6点(2013-06-27 10:04:19)
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