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21.  樹の海
古くから自殺の名所として知られる富士山麓の青木ヶ原樹海を舞台にした群像劇。4つのエピソードから成るオムニバス作品だが、それぞれのパーツが微妙に絡んでいる点が、人間の運命の不思議さをまず感じさせる。各エピソードが前後しながら描かれていく構成は巧みで、長尺でありながら些かもダレる事なく興味を繋いでいく点では、実に効果的である。テーマは人間の「生と死」を見つめたものだが、決して陰惨な物語ではなく、「死」と対峙して始めて「生」の意味を知るという、むしろ「人生賛歌」という肯定的な意味での「再生の物語」だと言える。「生」の象徴である富士山が「正」のイメージならば、その裾野に広がる樹海はさしずめ「負」のイメージということになろうか。しかしながらこの樹海こそが「生命の宿る源」なのであり、生い茂った木々に抱かれて、人々は生まれ変われるのである。そういう意味においても、樹海はこれ以上ない舞台設定だと言える。映画の中で実際に自殺してしまうのは一人の中年男だけだが、この「田中さん」を演じる田村泰二郎の“死にっぷり”は見事(?)で、自分が生きてきたという痕跡を残すことで、死してなお人に知って貰いたいといういじらしさと、死にたくて死ぬのではないという深い孤独と哀しみを感じさせる。生き延びた萩原聖人のセリフ、“田中さん、臭いがきつくなってきましたヨ”などと、夜を徹してのこの「死者との対話」はアブノーマルながら、むしろ人生のしみじみ感を溢れさせている。そしてそれ以上に感銘を受けたのが津田寛治と塩見三省の居酒屋での芝居。二人の何気ない会話には、庶民のささやかな生活感というものが滲み出て、今まさに生きているという実感が込められて描かれている。時間の経過と共に徐々に客が少なくなっていき、やがてガランとした店内風景の描写。 そしてひとつのアクセントとしての、ぞんざいな女店員との間の取り方の巧みさ。店を出た後、意気投合した二人が調子外れで「遠い世界に」を口ずさみながら夜の町へ消えていくまでの一連のシークエンスと、小さく折りたたんだ虎の子の壱万円札への思いを鑑みると、新たな人との出会いと一期一会の切なさに、胸に込み上げるものがある。東京タワーの置物、ピンクチラシ、携帯電話、お供え物といった小道具も実に意味深く、また瀧本智行は初監督としての気負いをまったく感じさせず、ベテランのような充実した仕事ぶりである。
[映画館(字幕)] 9点(2005-09-27 18:31:16)(良:1票)
22.  火火(ひび)
信楽焼で有名な滋賀県は信楽を舞台に、実在の陶芸家神山清子とその息子とを中心に描いた、感動のヒューマンドラマ。映画は焦点の絞込みという意味で、前半と後半とでは作劇がまったく違った形で描かれている。言わば構成の妙で見せる作品である。夫に去られた彼女が極貧の中、孤軍奮闘で二人の子供を育てながら、女性陶芸家として名を成すまでの凄烈な生きざまをみせる前半と、陶芸家を目指しながら志半ばで白血病に倒れた息子と、病魔との闘いを共に歩むというのが後半である。そして全編を通して言えるのは、本作は明らかに「闘いの物語」であるということだろう。生活の為。あるいは陶芸家として成功する為。そして命を守る為。それぞれの場面で執念のように命の炎を滾らせる神山清子という女性を、田中裕子が緩急自在の演技で魅せきる。生きていくことに厳しく陶芸家として自他共に妥協を許さないという、シリアスで清冽な姿を見せる一方で、心の底では優しさ溢れる肝っ玉母さん的な人情家といった面を、コミカルに演じ分けてしまう。才能とはいえ、永年培ってきた彼女の芸の幅の広さと奥の深さ所以だろうが、改めて上手い女優さんだと感じるし、演技もその姿形も、そして雰囲気さえも、いつまでも若々しい人である。骨髄バンク運動が展開される中、壮絶な闘病生活を強いられる後半の主役でもある息子・賢一。彼を演ずる窪塚俊介も意外なほどの好演(兄貴よりも上)で、将来が楽しみな若手ホープである。ややもすると嫌味になりそうなテーマを内包した本作だが、演出・構成・演技それぞれが絶妙のバランスを保ちながら光彩を放っている秀作である。
[映画館(字幕)] 9点(2005-04-08 01:10:38)(良:2票)
23.  父と暮せば
「TOMORROW 明日」「美しい夏キリシマ」と描き続けた黒木和雄監督の戦争三部作締め括りの一本。前二作が群像劇だったのに対し、今回は室内劇でありそのほとんどが二人芝居で成り立っている。舞台では珍しくも無いが、 いざ映画となると古今東西を問わず、極めて稀有な例と言えるのではないだろうか。どちらかと言えば集団劇を得意とする黒木監督にすれば、かなり大胆でありかつ実験的な試みだったに違いないが、実に味わいのある見事な作品となっている。二人芝居ともなればその演技力も然ることながら、戦中戦後という時代を間違いなく生きていた人間、そしてその人となりをより的確に表現することを要求される。やや散漫な印象を受けた前二作の群像劇に対し、今回はテーマがより明確になり引き締まった印象を受けるのも、二人の好演に他ならない。黒木と二人三脚で数々の名作を世に送り出してきた原田芳雄は言わずもがな。娘を愛するが故に叱咤激励し心の支えとなる、力強い父親像を自然な演技で体現してみせ、そして、揺れ動く乙女心を「たそがれ清兵衛」からさらに清楚なイメージで、この時代を生きている女性として可憐に演じきった宮沢りえも然り。本来からすると悲惨で重苦しい物語ではあるが、カラッとした明るさをもたらしているのも、二人のキャラ所以だろうか。地味だが心揺さぶられる名作である。
9点(2005-01-16 18:15:02)(良:1票)
24.  宇宙大戦争
円盤のシャープなデザインが酷似していることから見ても、本作が東宝特撮映画の傑作「地球防衛軍」の姉妹編であることは明らかだが、基本的なコンセプトは同じでもアプローチの仕方がまったく異なるという、やはりこれももう一つの本格的侵略SF映画の傑作だったと言える。地球を遥かに臨み監視する宇宙ステーションが円盤に攻撃されるところから始まる物語は、鉄橋の整備士のカンテラがゆっくりと浮上した瞬間、鉄橋もろとも上空に吸上げられ、その影響で特急列車が谷底へ転落していくシーンへと繋がる。このオープニングの一連のシークエンスは、圧倒的な科学力を有した何者かが、外宇宙から地球への侵略を始めたという不気味さを漂わせ、観客を物語に一気に引きずり込むにはこれ以上無いほどの強烈なインパクトを与えている。ナタール星人の地球侵略に対しその月面基地を先制攻撃するなど、 この映画の特徴として言えるのは、人類がかなり攻撃的に描かれているということ。そしてそれによって舞台設定が次々と変わっていく点にある。中でも月面上での探査艇と円盤との壮絶なバトルは迫力十分で、脳にチップを埋められた隊員がスパイとして操られ、探査機の破壊を命ぜられるスリルと相俟って、本編の最大の見所ともなっている。その前段の月に向かう途中、冒頭の宇宙ステーションで犠牲になった搭乗員が、座席に座ったままの姿で宇宙空間を漂っているというシーンがある。スピップ乗組員が、遠く離れていく彼に敬礼し哀悼の念を表すという、本編の最も感動的なシーンとして忘れられない。その後、地球上で迎え撃つ数々のメカも登場し、地対空、空対空といった円盤と地球連合軍側との戦闘シーンは最高潮に達する。終盤に登場するナタール星人の強大な破壊力を有する母船が意外なほどの迫力不足で、実に呆気ない結末を迎えるという点が唯一の不満として残ってはいるが、人類の英知を結集し徹底的に戦いを挑み、堂々と勝利してカタルシスをもたらすというこのストレートな冒険活劇は、物語の骨格が確りと構築されていること以上に、本多猪四郎と円谷英二という希代の才能があればこそ実現した作品だったと言っていい。しかしそれにしても「インデペンデンス・デイ」など、こういった本格的な正統派侵略SF映画が昨今ほとんど創られないのは、極めて残念なことである。
9点(2004-09-28 16:44:06)(良:1票)
25.  MIND GAME マインド・ゲーム(2004)
人間の精神世界を実験的な手法でアニメ化した、まったく新しいタイプの作品で、その独創性と斬新さだけで言えば宮崎アニメをも凌駕していると断言してもいいほど、今年最も興奮し魅了させられた一本。舞台はしっとりとした下町情緒溢れる大阪。この静かなオープニングは極めて写実的な画調であり、出演者には声のみならず、彼らのナマの顔をアニメの登場人物たちに被せて、そのキャラを際立たせるという演出テクニックがユニークであり、また生活臭を感じさせる関西弁と相俟って実に効果的だ。が、焼き鳥屋での大騒動で、主人公の西が“一度”あの世へ行ってからは、物語が大きく動くと同時に画調も変化する。丸みを帯びた写実的なきめ細やかさから、鋭角的で奔放な線画に変貌するや、夢とも現実ともつかない異空間へと舞台が移っていく。アニメとはいえ、アイデア満載で何故かリアルで手に汗握る湾岸線でのカーチェイスから海へダイブ。気がつけばクジラのお腹の中へ。ここでの様々な出来事は現実には有り得ない、実に破天荒な設定だが、アニメだからこその説得力をも感じるし、これこそがまさにアニメとしての醍醐味というものだろう。そしてこの作品のハイライトは、何と言ってもクジラからの脱出劇。まさに怒涛のクライマックスであり、 地獄から天国へと這い上がるといったイメージで描かれるこのシークエンスは延々と続けられ、生への渇望というものを否応無く感じさせられる。その画像の力強さと躍動感、エネルギーの凄まじさには圧倒されてしまうが、言葉でうまく表現できないのが口惜しい。“イメージの洪水”とは、まさにこういう映像をこそ言うのだろう。いずれにせよ本作はアニメーションの真髄というものを嫌というほど感じさせられた傑作である。
[映画館(字幕)] 9点(2004-09-14 00:38:22)(良:1票)
26.  下妻物語
ロリータ桃子と暴走族イチゴという、まったく相容れない個性のぶつかり合いから生じる、女の子の友情物語。男の友情を描いた作品は数多いが、女のそれはと言うと、すぐには思い出せない。そもそも“女に友情などあり得ない”などといった風説がマコトしやかに流されていた事にも由来するのだけれど、本作がそれをものの見事に覆し実証してみせてくれたのである。それは凝りに凝ったストレートな面白さと表現すればいいのだろうか。現実離れした劇画チックな画面構成と独特の色彩処理で、我々を寓意にみちた世界へと誘う。その摩訶不思議な感覚の心地よさ。そのカラッとした明るさは青春の輝きそのものであり、CM界でその名を馳せた中島哲也の、場面場面の画作りへのこだわりと冴えが大きくモノを言った作品である。そして、ひと癖もふた癖もある登場人物の中でも、とりわけヒロインたちが揃って魅力たっぷりで、しかも嫌味が無いというのも近頃では珍しく、そういう意味においても深田恭子と土屋アンナは絶妙のキャスティングであり瞠目に値するほどだが、その二人も自分の役廻りをよく心得え、体当たりの演技で期待に応えていたと思う。
9点(2004-09-09 18:41:36)
27.  誰も知らない(2004)
努めて過剰な演出を避け、ひたすら冷徹な眼差しで対象を凝視し、刻々と変わる日常を淡々と綴ることで、現代の病巣をえぐり出していく。是枝監督が培ってきた“必要以上にドラマを作らない”という精神が静かなしかし力強い感動を呼び起こす秀作。ベルイマン作品流に言うと「ある家庭の風景」とでも表現できようか、一見何処にでもいるような母親と4人の子供たちの物語。「母子家庭」という言葉そのものも久しいが、母と子が肩を寄せ合って懸命に生きていく感動のドラマかと思いきや、ここでは母親がなんと家庭を放棄してしまうのである。失踪同然の母親から見離された子供たちの生きざまが物語の中核をなすのだが、彼らは母親を決して恨むこともなく怒りを顕わにもせず、むしろ自分たちの宿命だとさえ悟っているかのようである。ある程度の年齢にもなれば、子供は親の考え方を肌で感じるもの。それは性癖でさえも。引越しをしてきて子供を連れてお隣さんにきちんと挨拶するという、表面的にはいかにも躾の行き届いた面がある一方で、自らの幸せだけを願うという身勝手さをも併せ持つ母親。しかし、通り一遍の自堕落な女としては描かず、極めて普通の人間として描いているのがこの作品の恐いところ。男にはだらしないものの、子供には出来得る限りの愛情を注ごうとするこの母親を演ずるYOUの自然な演技は、彼女の奔放なキャラそのままで素晴らしい。学校に憧れを抱き、友達とゲームなどで遊ぶという、ごく当たり前の好奇心旺盛な子供たちの姿は、画面の中で生き生きとして輝いている。しかし貯金が底をつき彼らの生活もしだいに荒れ果てていく。ライフラインを絶たれるという悲惨な生活も、やがて生きる知恵を覚え、弟や妹の面倒を見る柳楽優弥クンの懸命ぶりが後半に描かれていくが、なけなしの小銭で母親に電話するエピソードがとりわけ胸を打つ。ここに登場する大人たちは身勝手ではあるが、決して悪人ではなく、生きていくのに精一杯な普通の人間たちである。それだけに、大人社会のその不可解さに翻弄される子供たちの姿がより痛ましい。そしてそんな子供たちがいることを、誰も知らない。いや、知ろうとも思わない。現代とはそういう時代なのだろうか。
9点(2004-08-19 01:20:31)(良:2票)
28.  昭和歌謡大全集
本作は或る通り魔殺人に端を発し、その復讐を果たす為、おばさんグループと若者グループとが死闘を繰り広げ、その挙句の果てにアッと驚く結末が用意されているといった、まさに過激で奇想天外な現代の寓話だと言える。とは言うものの、その日常生活は極めて現実的に描写され、再三出てくる食事のシーンなどでは、おばさん対若者といった図式が明確に示されていて面白い。ここに登場する若者たちは、マニアックでオタクっぽく何処にでもいそうなガキとして描かれる一方、おばさんと言っても、樋口可南子を始め彼女たちの何と生き生きとして魅力的なことか。オンナを棄てた女にはとても見えないところがご愛嬌で、キャスティングの巧妙なところ。そして、この両陣営に協力するのが中年オヤジというのが共通項としてあって、この作品のキモでもある。中でも若者に荷担する原田芳雄演じる金物屋のオヤジが傑作。この男、女どもにはさぞや苦々しい思いで生きてきたのであろうか、若者たちにその武器使用の理由を聞くや、嬉々として武器を売りつけるという闇の武器商人といった趣で、中年男性の象徴として強烈な存在感を示している。(核爆弾を“原爆”と言わせるところなど、いかにもタイトルの「昭和」という時代を意識したセリフだ。)さて個々の殺戮シーンには、そのテクニックを強調されはしても思い入れというものは無く、あくまでも直截的であり即物的に描かれていく。特に“♪チャンチキおけさ”のシーンは秀逸で、昭和の流行歌が効果的に使われた一例でもあり、決して刺身の妻などではないのである。それにしても、お互いに絶命するまで限りなく続くこの復讐劇と昭和という時代とに、果たしてどれだけ深い意味合いがあるのだろうか。本作は村上龍が終始描いてきた現代社会の不条理さを映像化し、現実と非現実とが渾然一体となって醸し出され、閉塞感漂う世の中の鬱積したものの吐け口をひとつ間違えると、歯止めが利かないままとんでもない方向へ進んでしまうという事を、見事に提示した実に面白い作品となったわけだが、彼らの悪夢は昭和から平成になって、さらに深刻でより過激になっている事を再認識する必要がある。所詮、寓話などと笑ってはいられない、「今」とはまさにそういう時代なのだ。
9点(2003-11-26 15:38:48)(良:2票)
29.  赤い橋の下のぬるい水
人間の生と性を終始一貫描きつづけている今村昌平監督ならではの大人の寓話。物干し場から鏡を光らせて、ひたすら乞う清水美砂のしぐさや表情がなんともいじらしく、仕事を放ったらかしてまでその期待に応えようと必死に彼女に向かって走りに走る役所広司ともども、実にユーモラスに描かれている。従って二人のまさに凄まじい“濡れ場”も、どこかカラッとしていて些かのエロティックさも感じさせない。様々な登場人物たちにもそれぞれに比重が置かれ、実に無駄がない。
9点(2001-12-02 00:01:11)
30.  GO(2001・行定勲監督作品)
校門のゲートを何度も軽々とカッコ良く飛び越えるという象徴的なシーンは、まさに古い傷に縛られずに過去の壁を鮮やかに飛び越えていけるエネルギーを感じとれるし、それと同時に主人公の青年のこのほとばしる様なエネルギーと向こう意気の強さに、韓国の人の持つ血というものを感じ無いわけにはいかない。彼の命の輝きとその純真さがたまらない魅力だし、それをものの見事に演じる窪塚洋介は凄いと言うしかない。韓国人と日本人との対比も面白く、脇を固める出演者や製作側の熱気というものも十分伝わってくる。今年一番熱い日本映画だ。
9点(2001-12-01 23:39:22)
31.  忘れられぬ人々
愛する人を守るために人は何ができるのか。作品は戦後を生き抜いてきてなお、晩年になって新たな人生の転機に直面した三人の男たちを、同じくこの難しい時代を生きていくことに悩み・苦しむ若いカップルを対比させて描いていく。その描き方はひたすら暖かく穏やかで詩情溢れるものだが、作者の目は鋭く“今”を突いている。国の為に必死の思いで戦ってきたかつての戦友同士が、丘の上から街並みを見下ろしながら「俺たちがあんな思いをしてまで戦ったのは、こんな日本にする為だったのか・・・」と嘆く。その言葉が深く心に響く。終盤、悪徳霊感商法に業を煮やし、義憤で殴り込みをかけるという展開には驚かされるものの、ひたすら家族や友情を大切にし誇り高く生きてきた彼らと、実際の出演者たち(いずれ劣らぬ名優たちは円熟した深みのある演技で、その存在感を余すことなく見事に表現している!)とがオーバーラップして何とも魅力的な作品となっている。彼らは僕にとっても、まさに“忘れられぬ人々”である。今年も素敵な作品にめぐり合えて良かったという感想に尽きる。
9点(2001-10-26 00:56:36)
32.  千と千尋の神隠し
R・ゼメキス監督作品「コンタクト」のワンシーン。J・フォスターが乗ったポッドの落下する一瞬に見る夢幻空間。成長過程にあって人間誰しもが経験していくであろう大人への憧れと不安というものを、千尋が体感したのはまさしくこのまばたきするほんの一瞬の夢の出来事だったのだろうか。両親を助ける為に働くことを余儀なくされ、様々な人々と関わり合いながらやがて生きていく為の知恵をつけていく。冒頭、車の後部席に横たわったペスミスティックな表情の彼女と、トンネルの向こうを振り返るラストのその横顔との決定的な違いを、少女の成長と見るのは早計かもしれないが、しかし多様な見方が出来るのはそれだけ懐が深い作品だということだろう。とは言うものの、宮崎ワールドのまさしく豊穣なイマジネーションと極彩色の世界を思う存分堪能することが、この作品の正しい楽しみ方であることは言うまでもない。
9点(2001-09-25 00:20:00)(良:1票)
33.  太陽を盗んだ男
「青春の殺人者」のあとに撮った、寡作映像作家=長谷川和彦の最後(?)の劇場公開作品で、公開当時圧倒的な支持を受けた一種カルト的な人気を獲得した作品でもある。ストーリーは奇想天外である反面、まったく日常に起こりえないとも言えない部分もあり、そのテーマ性は重要だ。きめの細かい描写の積み重ねと、ダイナミックなアクションとが渾然一体となった面白さがあり、これは観た者でないと分からない痛快さだ。
9点(2001-09-02 15:43:09)
34.  ガメラ 大怪獣空中決戦
円谷特撮作品の古き良き伝統とその香りを継承しつつ、従来の怪獣映画の殻をものの見事にブチ破った作品として高く評価しておきたい。 ミニチュア特撮の精密さやその見せ方の旨みばかりでなく、本編の人間ドラマと特撮部分との違和感もなく、実に完成度の高い作品と言える。
9点(2001-08-25 23:14:49)
35.  椿三十郎(1962)
黒澤作品としては「天国と地獄」と並んで最も強烈に印象が残っている「用心棒」の姉妹篇。時代劇であるにも拘わらず、登場人物のセリフは現代劇調で喋らせるという、ユニークな手法が話題ともなった。コミカルでほんわかした雰囲気と凄まじい殺陣の見事さといった、緩急自在の黒澤演出は素晴らしく、ラストの決闘シーンは今尚語り草ともなっている。
9点(2001-08-19 00:19:36)(良:1票)
36.  犬神家の一族(1976)
旧家にまつわる呪いに彩られた、おどろおどろの連続殺人事件という割には妙に明るい作品に仕上がっている。それは監督の作風と爽やかなテーマ曲に因るのだろう。それにしても金田一は犬神家の周辺をうろうろするものの、決して次々と起こる殺人事件を事前に阻止したりはしない。すべての殺人が完了してから、おもむろに真相を説明するのだから呑気なもんだが、市川監督はこうした知的ミステリーの楽しみを気負うことなく余裕すら感じさせながら撮っているという印象だ。
9点(2001-05-13 18:16:00)
37.  新幹線大爆破(1975)
当初、高倉健が悪役を演るということでセンセーショナルな話題となったが、いざ観てみると大納得。しかし感動作ではあるものの、その印象はあまりにも切ない。佐藤純弥監督のダイナミックでパワフルな演出は、当時流行のハリウッド製パニック大作に決して引けを取っていない。
9点(2001-04-01 19:53:35)
38.  雨あがる
水煙を上げ叩きつけるような雨、豊かな人物描写、殺陣の動と静の美しさとその見事さ、地響きを立てて疾走する馬、そして夫婦愛。黒澤が撮っていたら、やはりこのような作品に成っていたであろうと思えるぐらい、完成度は高い。まさに彼の遺産をものの見事に受け継いだ黒澤組の紛れもない勝利である。
9点(2001-04-01 17:25:50)
39.  回路
部屋に一人閉じこもって、まるで生活のすべてであるかの様にインターネットに没頭する若者たち。映画は、生きていながら死んでいるような、そんな彼らに対する批判あるいは皮肉を描いているともとれる。だから「繋がっているようで、繋がっていない」というセリフが妙に真実味を帯びてくるのである。どこまでが日常で、どこからが非日常とかいった境界が、ここには見当たらない。だからすべてが現実であり、すべてが夢のようでもある。終盤、上空を飛行機が炎を上げて突如出現し、やがて落下して爆発炎上を起こす。この予想外のスペクタクル・シーンは、数々の幽霊の描写(これがかなりリアルで怖い!)ともども、いつか見た夢の中に出てきたシーンと錯覚をおこす程、我々に不思議な感覚をもたらす。
9点(2001-02-25 00:03:46)
40.  異人たちとの夏
若くして死に別れた両親との再会。ある日それは何の前ぶれもなく、ごく自然に訪れる。たとえ幽霊であっても、束の間、優しい父と母に出逢えて昔に帰れるとすれば、こんなに嬉しくて元気の出ることはないだろう。この作品はかつてこの世を去っていった者たちへの、思慕と尊敬とを一種のファンタジーとして描き、我々の心を癒してくれる。すき焼鍋を囲み、主人公を励ましながらやがて消えていく両親との、刹那的な再会と別れのシーンには万感迫る思いでした。
9点(2001-02-18 23:47:52)
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