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Oliasさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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41.  さよならくちびる 《ネタバレ》 
冒頭からいきなり「解散」の宣告で始まる。しかもその理由の説明もなし。これはもしかしてありがちサクセスストーリー系音楽青春モノとは違うのでは、という予感が走りますが、はたしてそのとおりでした。一つ一つのシーンの撮り方が丁寧だし、台詞も軽くない。だから、すべてが本音のぶつかり合いになっています。また、デュオのくせしてちっとも仲が良くない主人公2人の関係性も心地良く感じますし、それを扇の要のごとく的確につないでいる成田凌もいい仕事をしています。いろんなライブハウスの風景をきちんと作り込んでいる点も含め、制作側の手抜きのなさを感じます。難点は、このグループの立ち位置自体がはっきりしないこと(インタビューでは「飛ぶ鳥も落とす勢い」と言われていながら、ライブではガラガラだったりするし、かと思えば最後の函館では突然満員で大受けだったりするし)。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2023-12-26 00:45:09)
42.  忠臣蔵外伝 四谷怪談 《ネタバレ》 
深作監督はもともと「赤穂城断絶」で忠臣蔵はやってたんだけど、あの作品は、この監督らしからぬオーソドックスにまとまった感じのものでした。しかし、この間に商業的実績を積み、好き放題できるようになったということなのでしょう。忠臣蔵と四谷怪談を1つの話にセットして映画を作るなんて、そんなことができるのはこの人だけです。そして、両方がきちんと描かれて、しかもつじつまが合っているという驚くような世界が展開されています。●爆乳+お岩メイク+ブリザードアタックと、頑張りまくった(監督の無茶な要求に応えまくった)高岡早紀には敢闘賞を。渡瀬恒彦や火野正平は、必要以上に前に出てこないのが、かえって存在感を増しています。石橋蓮司や渡辺えり子の白塗りはいらなかったんじゃないかな。そんなものがなくても、あるように見える芝居ができる方々なのですから。そして、せっかく真田広之を内匠頭にしたんだったら、松の廊下では、もっとこれでもかというくらい暴れまくってから取り押さえられてほしいところでした。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2023-11-23 00:44:08)
43.  CURE キュア 《ネタバレ》 
中盤くらいまでは、ああ「セブン」と「羊」がやりたかったんだねー、とはいえこういう正面切ってのサイコサスペンスって和物では貴重だし、くらいの感覚で見ていました。ところが終盤に向けての折り畳み方というか、凝縮の度合いが凄い。一番怖かったのは、実は間宮の関係ではなくて、「テーブルの上の生肉」。二番目が、ラストのウェイトレスのアレ(画面内の一番奥なのが良い)。あと、役所広司は話の展開とともにどんどん疲れて荒んでいく(間宮につけ込まれるほどに)という設定のはずですが、あまりそうは見えませんでした。ここはメイクで何とかしてほしかった。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2023-10-04 01:48:13)
44.  GAEA GIRLS 《ネタバレ》 
長与千種が主宰する団体「GAEA JAPAN」についてのドキュメンタリーです。最初に長与の試合が出てきて、まあ主役はやっぱり長与なのか、と思っていたらどうも風向きが変わってくる。つまり、その長与はGAEAの中でどう選手を育成したのか、というのが本題なわけです。その中で、練習生の竹内彩夏にスポットが当たっていき、プロテストに取り組む目標が構築されていきます。全体の撮り方は、合宿所の日常をつなぎ合わせた感じで、文字説明も必要最小限。本来なら、もっと整理してよ、と言いたくなるのですが、この作品においてはそうはなりません。それは、リングですべてを示す、という選手たちの無言の哲学と、この映像の撮り方が一致しているからだと思います。一方で、途中で逃げる人もいるんだけど、それもそのまんま撮っている静かな容赦なさが、緊張感を高めています。●しかししかしやっぱり、この作品を引き締めているのは長与千種その人でありまして、数か所出てくる説諭というか説教というかカマシ入れのシーンは、ごく短時間であっても、見ている側の背筋が思わず伸びるほどの鋭さがあります。本当にこの人は、天賦のプロレスラーであるとしか言いようがありません。また、代表の杉山由果は、いかにもなビジネスウーマンという感じで出てくるんだけど、この人の目力と言葉の迫力も凄いんだ、これが。
[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2023-10-03 00:59:24)
45.  しとやかな獣 《ネタバレ》 
狭い団地の一室で、出てくる人出てくる人が、ことごとくろくでもない人たちばかり。しかも全体としては奇妙にバランスがとれているという不可思議さ。途中、満を持して登場した蝶々さんがあっさり跳ね返されるくらい(そしてそれを納得してしまうくらい)、室内に負のオーラが充満しています。●その中でも圧倒的に怖いのは、山岡久乃のお母さんです。物腰や口調は善人っぽいのに、根本の根本がずれています。ほとんどサイコパスの領域です。その上で、やって来る人にはいかにも礼儀正しく腰低く接したり、ちょっと息子を叱ってみせたりする演技など、あまりの怖さに泣いてしまいそうです。普段はいい人キャラが多い久乃さんだからこそ、その怖さも際立っています。●カメラもやりたい放題なんですねー、斜め上から会話をする2人を撮りつつ、画面の隅で、壁向こうで立ち聞きをしている別人物をフレームに入れているショットなど、美しさに目眩がしそうです。まあ、勢い余ってやりすぎなところもありますけどね(人物の来訪に合わせて、玄関口で足元から真上を撮るカットとか)。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2023-06-09 21:20:58)
46.  土佐の一本釣り
土佐の漁師の漁やら生活やら恋物語を綴った作品かと思いきや、それだけにあらず。登場人物を配置して動かすだけではなく、何というか、その中に、漁師たちの文化というか、慣習というか、回路というか、そういったものまで自然と浮かび上がっているのです。それぞれのキャラが、芝居をするだけではなくて、画面の中で呼吸をして生きています。それは、傍目には驚くような行動や発言でも、全員が迷いなく自信満々に行い切っていること(そしてそれを一貫して引き出している演出の腕)によるものでしょう。一方で恋物語の部分については、スーちゃんのセーラー服女子高生姿が存分に拝めるという贅沢すぎる付加価値もさることながら、適度にすれ違いや心理の綾も織り込んでいて、単純には終わっていません。また、宍戸錠、加藤武、蟹江敬三、阿藤海といった熟練の皆様の渋いサポートぶりも心地よいところです。それにしても、スーちゃんという人は、「世界の歴史で最も、しかめっ面が可愛らしい女優」なんだなあ。
[DVD(邦画)] 7点(2022-12-05 00:11:48)
47.  おろかもの 《ネタバレ》 
結婚を前にした兄が浮気していて、妹がその浮気相手と対峙する、というスタート。しかし、物語はその枠組を外れない一方で、この四者間の心理の綾をフルに使いこなしています(結局、「婚約者間」でも「兄妹間」でもその話題は正面から出ない。この奥床しさと、それがもたらす奥の深さ)。また、人物造形の作り込みと、それを把握した役者の繊細な演技が作品を的確に支えています。兄はいかにもな遊び人風ではないし、逆に誰にでも優しいのがこの事態を招いている。婚約者は地味なんだけど、何に対しても動じないし、むしろ一番先を正確に読んでいる。浮気相手は、おっとり系ながら、切り返しは鋭いし、一方で漠然とした不安も抱えている。そして主人公の妹は、それらの個性を正しく受けて、見る側の誘導役として機能しています。また、演出面でも、中盤のここぞという場面での長回し数回にも目を奪われましたが、クライマックス、花嫁のスッとした僅かな移動ですべてを表現する腕!これには唸りました。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-10-11 01:33:04)
48.  女系家族 《ネタバレ》 
いや、もう、何というか、これぞまさにドロドロ映画ですよ。三姉妹の存在的重量感だけでただごとではないのに、それに浪花千栄子大姐御が被さって加わってくるわけです。番頭やその妻だってろくでもないし、端役に見える山守にも見せ場ありだし、そうそう田宮二郎兄貴だってどうしようもないです。皆が皆、当たり前のように我の利益しか考えていません。この徹底ぶりはむしろ爽快です。それに対峙するのが若尾様なのですが、当然ながら無力です。しかしその、虐げられるほど滲み出てくる色気が、その他全員のむき出しの欲得と拮抗しているという、不思議なバランスを見せつけています(そしてそれがラストのカタルシスにつながることはいうまでもない)。ホネはシンプル(つまりは遺産相続という一点の枠内のみ)なのに、演技と演出でここまで面白くできる。ドラマとはこうあるべきです。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-10-04 02:25:12)
49.  張込み(1958) 《ネタバレ》 
前半、「ただ張り込んでいるだけ」なのにじわじわと醸し出されてくるスリル感。張り込みというからには、その拠点から対象宅をキャッチするミドルショットが軸になるんだけど、それを存分に入れ込みながら、要所要所ではすっと対象宅内にカメラが入ったり、またときには町中に繰り出したりと、まさに変幻自在である。また、美術関係や小道具やエキストラのさりげない丁寧さも、物語を支えている。さらに、浦辺粂子婆様の風格がもたらすコメディ部分も堪能しましょう。●後半は一転して追跡描写になるんだけど、ちょっと単調で長いかなと思わせつつも、追跡以外の余計な要素に浮気していないのは良い。秀子ちゃんの前半との変化も、さすが女優だなー。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-04-12 01:27:29)
50.  無法松の一生(1943) 《ネタバレ》 
当時の美術品の一つ一つが美しい。さりげないカメラの移動が美しい。もちろん園井恵子が美しい。そして、(検閲部分とは別の)省略と飛躍が美しい。大尉が熱を出しているシーンの次には、一足飛びに墓参りのシーンになる、この跳躍力。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2021-10-11 23:19:20)
51.  洲崎パラダイス 赤信号 《ネタバレ》 
筋だけみれば、まったくどうということのない話。つまり、「駄目カップルが巻き起こすあれこれ」の一言でまとめられてしまう話。しかしそれを、この作品は、絶妙な脚本と演出で、無限の広がりを持つ別世界にまで高めている。それは、各登場人物の出し入れのトリッキーなほどのタイミングであったり、そこから重ねられる心理の綾だったり、おかみさんや蕎麦屋の娘の的確な設定だったり(そしてもちろん終盤に登場する「彼」も!)、ということである。●途中で男がふらふら出ていく神田の電気店街は、その暑さと熱さがこちらにも伝わってきて、幻想的ですらある。その男の足取りは、オアシスを離れた旅人が砂漠を放浪するもののようにも見えてしまう。●そして実は、どこまでもカメラ内では脇にしかならない、決して焦点が当たらないあの子供2人が、いい味とアクセントを出しているのではないかと思います。
[DVD(邦画)] 7点(2021-05-24 00:50:05)
52.  あゝ声なき友 《ネタバレ》 
復員兵が戦友の遺書を配って歩く話なのだろうな、と思いながら見始めたら、最初の小川真由美との絡みが妙に長い。何だこれは、と思っていたら、それが本筋にすっと絡んでくるトリッキーさ。そして本題の遺書配達では、一番ぞくっとしたのは、倍賞千恵子や市原悦子のパートのように、「結局たどり着けない」部分をきちんと盛り込んでいること。そう、全部が全部たどり着けたら、それはおかしいというか、都合良すぎるよね。それから例えば、いざ配達できても、相手先からは感動とか涙とか感謝のリアクションは全然ない。このトーンの統一も、作品に気品と節度をもたらしています。一方で、最初は進駐軍放出鍋の街頭販売を一緒にやっていながらその後着実に出世していく財津一郎が、いい感じのアクセントになっています。●作品としてのキズは、輪島のパートで主人公が突然正義の味方になってしまう点かなあ。この部分だけ、急にテンションが高くなって浮いています。ここは、真実はあくまでも灰色の向こう側にしておいて、それでも長山藍子はすべてを飲み込んで江原に寄り添っていく、とかの方が心理の綾が出たのではないかと思います。
[DVD(邦画)] 7点(2021-05-12 00:34:33)
53.  聖の青春 《ネタバレ》 
単に将棋にネタとして乗っかっただけの内容だったら許さんぞと思いながら見始めたのですが、予想外に良い内容でした。村山も羽生もいちいちいろいろそっくりで楽しいんだけど、何といってもMVPはリリー・フランキーの森信雄!単に雰囲気が似ているというだけでなくて、すべてのシーンのすべての芝居が、「村山への師匠愛」というこの人の本質を体現しています。●それから、将棋を指す指の動きの一つ一つはもちろん、対局中の仕草、記録係や立会人の作法、控え室の光景や大盤解説の風景まで、きちんと丁寧に作っているのがよく分かるのです。それと、対局中って(終了後もですが)、当然ながら沈黙が支配する世界になるのですが、それを恐れずに(ヘタな台詞だの何だの入れずに)堂々と撮りきっているのも素晴らしい。●降級時の切れ負けの一局、相手のモデルは田中寅彦ですよね。ほんの一瞬の登場なのに、こういうところも丁寧です。●気になるキズは、クライマックスの対戦中、あの安食堂サシ飲みシーンを回想でそのまま出してしまったこと。ここはそんな回想なしの方がよかったと思うのですが、かりにやるとしても、対戦の風景に台詞だけを断片的にかぶせる、とかでしょ。そうでないと、2人が対局に集中していることにならないよ。●しかしいずれにしても、村山聖という早世の天才の名を後に残した作品としての功績は大きいと思います。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2021-05-09 00:10:53)
54.  男はつらいよ 花も嵐も寅次郎 《ネタバレ》 
「田中裕子とジュリーへの恋愛指南」の一言で片付けられそうな気もするのだが、よく考えるとそれにとどまらない奥の深さがある。マドンナはジュリーを、当初は二枚目だから気が進まないと言い、デートしても何も喋らないのが嫌だと言う。もちろんその逆が寅さんであって、スナックでいきなり「今夜は飲んじゃおう!」とノーガード全開になってしまう描写にもそのベクトルは示されている。しかし、いざいい雰囲気になると引いてしまうのは寅の宿命でもあるし、まして結婚の心理がどうのこうのという相談には、寅は一切対応できない。もはや自分の中で処理しきれずにグシャグシャになる。あの、せっかくの相談の場から席を立ってしまう一幕に、そのあたりの心理の綾が凝縮されている。●それにしても、後にはいろいろ癖のある役や影のある役も多かった裕子さん、この「どこにでもいるような地味目のデパートガール」役の、何とも初々しく、そして神々しいこと!「おしん」で国民的女優に躍進するのはこの翌年なので、よくその前の貴重な時期を収めておいてくれたと思います。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-11-02 00:57:36)
55.  男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋 《ネタバレ》 
何と今回、恒例の「冒頭、旅先から寅が帰ってきてとらやのメンバーと一騒動」がない。その分、マドンナとの関係がじっくりこってりじわじわと描写されて、まるで一般のラブロマンス映画のようです(!)。挿入音楽も、ほかの作品では聴かないような「ザ・メロドラマ」な曲の連発です。またそういう演出に、いしだあゆみがぴったりなんだな。この人の場合、あまり表情を動かさなくても、目力とさりげない動きだけで芝居ができるんですよね。そしてそして、これまでありえなかったマドンナからのこっそり手渡しメモ(おばちゃん曰く「付け文」)、この予想しないたった1枚の紙がもたらすインパクト!この作品はもうここで十分です。鎌倉のシーンはおまけです(とらやでの対面状況で、デートがどうなるかはもう予想できますからね)。●再見して気づいた点。前半の仁左衛門のマドンナへの説教が、後半に効いている。これを生真面目に受け止めたかがりは、寅に対する思い詰めた純度高いアタックを、一点集中で全力で行う。もちろん寅がそれに耐えられるわけはないのだが、その凝縮された情念の強さは、寅を通り越してとらやメンバーすら動揺させるほどであった。それは、結果としてではあれ座敷ではなく店先のテーブルで済まされる応対や、おばちゃんの「恨むわよ、あの人」の台詞に象徴されている。そうして本作のかがりは、とらやを訪れたマドンナとしては唯一の「歓迎されざるマドンナ」となった。そのあたりの冷徹なほどの厳しさが、シリーズの中でも作品のオリジナリティを際立たせている。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-10-18 02:49:11)
56.  男はつらいよ 寅次郎頑張れ! 《ネタバレ》 
マドンナの登場がやたら遅く、初期作品の作り方に戻ったような感じ。ただ、藤村志保さんという典型的和風美人はこの作品世界との適合度は高いと思っていたので、これは何とももったいない。一方で、若者二人の恋愛譚は、中村雅俊と大竹しのぶという人材の力も加わり、制作側にとっても、当初の想定以上に話が広がり、異様に出来が良くなってしまったのではないだろうか。とりわけ大竹しのぶは、弱冠20歳にして、とらやの面々をコントロールするほどの求心力を発揮している(実家から戻ったシーンの存在感!)。サブゲストとしてはこれまでも桜田淳子や檀ふみという強力な例があったが、作中における磁場力はそれ以上だ。それと、もっぱらコーチを受ける立場だった青年が、最後に一言で場の色を塗り替える逆転の構図。●それと忘れてはいけないのは、パチンコ屋の杉山とく子さんではないでしょうか。最初は相互反発そのものだった寅さんとワット君が、ここで邂逅し、共鳴する。その変化の媒介を、ごく自然に(それも笑わせながら)行って、シーンの価値を高めているのです。これこそが役者の演技ですし、このシリーズは随所でこういう人たちに支えられています。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-08-27 00:45:08)
57.  男はつらいよ 寅次郎夢枕 《ネタバレ》 
お千代と助教授の初対面以降、寅さんは瞬時にシフトチェンジして仲介役(引っかき回し役?)を務めるようになる。なるほど、中期以降に出てくるキューピッド系の話の源流はここにあったのか、と思いつつ、ラストはもちろんこの2人がくっついてハッピーエンドなんだろうな、と予想する。ところがまさかの逆プロポーズという剛速球が飛び出して、ここでのドラマの重さは、それまでの割とマイルドだった雰囲気との落差が大きすぎなのです。追い打ちでラストのとらやの談笑場面、もうここでのお千代の静かなるアクション(そして1人だけ笑っていないさくら)の突き抜け度は圧倒的です。そんなわけで、終盤入口までとその後の10分では、まるで別の作品のようでした。●マドンナ関係以外では、せっかく正反対の寅と助教授を掛け合わせていながら、そこにギャップや変化の表現があまりないのが惜しい。それと、とらや場面も、笑いが少ない(おいちゃんの電話場面は例外ですが)割には気まずく沈黙するシーンが多く、ちょっと暗い感じ。●このシリーズではサブゲストにもこだわりがあることが多々ありますが、前半部分、わずか数分間の登場の田中絹代のインパクトも強力。ところで、この奥様の役は、別にビッグネームを当てなくても成り立ちます。そこにあえて絹代さんを持ってきたというのは、絹代さんこそが山田監督自身のマドンナだった、のかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-06-13 00:32:17)(良:1票)
58.  男はつらいよ 望郷篇 《ネタバレ》 
これはもう完全に「さくらの物語」ですね。最初に寅に説教をかまし、寅が就職活動(?)をするとなれば本人以上に真剣に悩み、それなのに寅から理不尽に逆上されてもそれに怒るでもなく、最後に旅立つ寅を一人で見送る。後のさくらの立ち位置がここで完成されています。第1作のラストと並んで、これがあったからこそ後の長期シリーズ化につながった、ともいえるかもしれません。●長山藍子姉は出番遅いんだけど、あのミニスカワンピと浴衣の可愛さですべて許す。●それとびっくりしたのは杉山とく子小母さんの、まるでとらやの一員であるかのような作品世界へのはまりっぷり。と思ったらテレビ版ではおばちゃん役だったんだそうで、そりゃそうだ。●ラストにマドンナがとらや(の関係者)を訪れる、という王道パターンも、ここで確立されています。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-05-04 01:22:46)
59.  悪魔の部屋(1982) 《ネタバレ》 
大会社社長の御曹司夫人がある日謎の男にホテルの一室に監禁され・・・となれば、どんだけ直球のエロ作品かと思ってしまいますが、さにあらず。エロ部分以外にもきちんと目配りをした真面目な作品(!)です。まず、サブの部分が内田良平(社長)と堀内正美(御曹司)という時点で、サポートは十分(しかも、進行を邪魔しないように、最低限のカットですべてを表す周到な配慮)。また、性質上ホテルの部屋内でのシーンが続くのですが、限られた中でもカメラワークを駆使し、長回しも再三ぶち込んでくるなど、工夫が溢れています。肝心の(?)セックスシーンも数回ありますが、何というか、それぞれの意味づけであったり、登場人物の心理変化であったりといったものにも考慮がなされているのです。終盤には謎の男の背景が明かされ(この過程でのフラッシュバックインサートの効果もなかなか)、復讐の完遂というサスペンス風味に重心がスライドしていき、そしてラストシーンも、物語として着地しています。いや、ここまでいろいろ考えて作られたものとは予想していませんでした。
[DVD(邦画)] 7点(2020-03-07 23:36:39)
60.  小林多喜二
昭和一桁日本の黒歴史の1つとして間違いないのがこの小林多喜二の最期(拷問死)なのだが、その多喜二の伝記映画ともなれば、思わず見る側も居住まいを正してしまう。ところが、序盤からいきなりナレーションの横内正が(もしかしたら主人公以上に)画面に出まくって、カメラ目線で喋る喋る。何とも驚異のメタ構成であり、伝記映画というよりは半ドキュメンタリーみたいな感じである。おまけにそのナレーションはかなりしつこいし、芝居部分でも、そこはいらんだろというシーンが、実際のところいくつもある。それでもなお作品が心に残るものとなっているのは、山本圭先生と中野良子様というキャスティングが絶妙なのと、そして何より、とにかく多喜二の人生と存在を後世に伝えたいという制作者のまっすぐな執念が、作品全体から噴出しているからなのです。
[DVD(邦画)] 7点(2019-11-08 01:33:46)
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