661. 子宮の記憶 ここにあなたがいる
《ネタバレ》 出だしのところがあまりにも安直で、主人公の元の生活の描写も目的地を見つけ出すまでの過程も全部すっ飛ばして進んでいるので、説得力が全然ありません。その後の脚本も全体的にグダグダで、何かありそうな脇役も使いこなされていなくて、あっさり墜落してしまいそうだったのですが、それを救っているのが松雪泰子の演技です。生活に疲れて希望もなくなりながら、どことなく妙な色気のある感じを、巧いバランスで表現しています。熱を出した松雪に主人公が添い寝をするシーンは、何ともいえない心理の綾があり、こういうところをもっと見たかったのですが。 [DVD(邦画)] 4点(2014-01-01 05:17:54) |
662. 零戦燃ゆ
主演若者3人の演技力がすでにどうしようもないんだが、実はその責任の7割くらいは、説明台詞と説明ナレーションしか書けない脚本家にあるのではないか。零戦という対象に対する敬意もなければ知識もない、上っ面だけのやりとりを延々と聞かせられた挙げ句、空中戦シーンはどのシーンも似たような角度から似たような絵しか撮っていない。これでは、見るべきところがありません。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2013-12-31 02:56:12) |
663. もどり川
《ネタバレ》 この原作は、設定とトリックの性質上、映像化はとてもしにくい作品のはずなのですが・・・はたして、原作が持っていた気品もなければミステリーもない、というかほとんど別作品みたいな結果になってしまいました。大体、この話は、苑田岳葉の放蕩生活の裏に隠された背景やそのプロセスがテーマになっているはずなのに、ここでの岳葉は、ただ単に放蕩を繰り返しているだけ。また、一番大事な、「二度の心中未遂に至る理由」や「二度目の心中未遂からの3日間」の描写もまったくありません。要するに、問題編だけ(しかも間違った解釈で)出しておいて、解答編を出していないのと同じなのです(!)。ミステリー史上に残るこの原作に対する冒涜もいいところです。あと、キャスティングでこれだけ美女軍団を揃えていながら、全然使いこなせていないのも問題。というわけで内容的には0点なのですが、女優陣の皆様の脱ぎっぷりの潔さに3点。といっても、カメラもまた全般的に最悪で、濡れ場の数々もちっとも美しく撮られていないのですが。 [DVD(邦画)] 3点(2013-12-19 01:36:08) |
664. 風花(1959)
《ネタバレ》 単純メロドラマと見せかけておいて、時系列操作、同一シーンの角度を変えての繰り返し、同一アングルによる時制飛ばしなど、結構実験的なこともやっているのですね。一番インパクトがあったのは、当たり前のように家の人間とは別に台所の一隅のようなところで食事をしている母子の姿、そして、粗末な納屋のような別棟で淡々と生活を送る母子の姿。この辺を強調せずに自然に出しているからこそ、その背後にある、背筋が寒くなるような理不尽さが際立っている。そして、縁談が決まって祖母が内心を吐露するシーンでは、頑強に家を守ろうとしていた権化であるかのような祖母が、一気に家全体を放逐するかのような逆転が起こり、ラストの嫁入りを単なる愁嘆の場ではなく、必然性と重みを持った場とすることに貢献している。写生のやりとりも後で回収するなど、脚本も丁寧。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2013-12-15 01:29:39) |
665. 地下鉄(メトロ)に乗って
美術や照明関係の安っぽさだけで、制作者の志の低さが見て取れるのであるが、脚本もものすごく荒っぽい継ぎ接ぎだし、役者の演技も全然ついていない。原作の有名さに、関わった人全員が油断しまくったとしか思えません。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2013-12-04 02:09:34) |
666. 阪急電車 片道15分の奇跡
《ネタバレ》 脚本も演出も、説明的で事務的で機械的でどうしようもないんだけど、電車内に世界が限定されているとか、いろんな登場人物の多重交錯という設定とかは好みなので、それなりに見入ってしまったのも事実。とはいえ、結局は設定に寄りかかっただけということにはなってしまうのですが。表現として目を引いたのは、前半の電車内で白ドレスというシュールな光景と、ラスト近くの中谷美紀と少女のやりとりくらい。この少女は、「私、実はいじめられてるんです」とかいうことをいちいち言わないからこそ、すべての登場人物の中で存在が最も光っているわけで、何でほかの人たちにも同じ扱いをしてあげなかったのか、不思議でならない。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-11-26 02:19:02) |
667. 細雪(1983)
この四姉妹の目眩くような豪華なぶつかり合いを見ているだけで十分楽しめる一方、逆にそのキャスティングによりかかって人物描写の中身は不足していないかという気もするのだが、まあいいか。吉永小百合の出番をきちんと切り詰めているのが、かえって作品のバランスに安定感をもたらしている。その意味でも、岸恵子と佐久間良子の存在のこの作品における意義は大きい。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-11-25 02:56:36) |
668. 小川の辺
無難に無難に行っちゃったなあ。すべてがあらすじからの想像の範囲内で、映画というよりも、原作のプロモーション・フィルムを見ているかのようです。あと、それって明らかに現代的口語表現では?と思ってしまう台詞があちこちにある脚本の雑さも気になりました。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2013-10-22 01:39:54) |
669. やればやれるぜ全員集合!!
背景の作り込みができていないので、その中での可笑しさも出てこない。つまり、とりあえずドリフを出しておけ、という制作上の安直さを感じてしまうのです。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2013-10-08 01:12:15) |
670. 幸福のスイッチ
《ネタバレ》 肝心の主人公が、背景もなければ出発点もなく、ただ単にごちゃごちゃと自分以外への不満や文句を垂れ流しているだけなので、その時点でほとんど内容的な興味が湧きませんでした。あーそれと、お父さんの浮気がどうのこうのって部分は、話の筋の上で全然機能しておらず、明らかに無駄ですね。しかし、私にとって唯一目を引いたのが、すまん、実を言うと、中村静香ちゃんなのだ。演技力はぎりぎり基本クリアレベルながら、画面の一部にいるだけで人目を自然に集める雰囲気がある。途中、意図的なほどださいダウンベストやジャージで登場するのは、まともな衣装にしてしまうと、主役より目立ってしまうのを恐れられたからなのだろう。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2013-10-01 02:20:30)(良:1票) |
671. ハッピーフライト(2008)
《ネタバレ》 肝心の綾瀬はるかのCAが、職業モラルも低ければ接客技術もCAとしてのトレーニングもなっておらず、見ていて苛々させるだけ。あのドジでノロマな松本千秋でも、いざ本番でお客さんの前に出たときには、人前に出して恥ずかしくない状態にはなっていたのを見習え。なおかつ、キャラクターとしても実は役に立っておらず、ストーリーの上でも、また危機を乗り切る上でも、ほとんど有効に機能していない。なので、最初から設定が成り立っていないのです。ほかの人たちもことごとくステレオタイプで面白みがないんだけど(客側含む)、唯一、自然な存在感を爽やかに発していた田畑智子に3点。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2013-09-23 02:05:44)(笑:1票) (良:1票) |
672. 八日目の蝉
《ネタバレ》 誰がどういうことを考えてそうなってしまったのか分からないのだが、最大の敗因は、井上真央の側に重点を置きすぎてしまったこと。●原作では、まず逃亡時の部分を全部一続きにまとめることにより、先がどうなるか分からない、どこから誰が追ってくるか分からない主人公の不安感に読者を巻き込み、また逃亡終了の際のあっけなさ、容赦なさを際立たせることができた。しかも、そこから現在の話が始まることにより、自分が物心ついたときにはすべてが終了していて、その十字架を背負わされることになった、娘にとっての環境の理不尽さをも実感させることができた。この作品では、同時並行の形をとることで、永作の側は単なる過去の回想同様の扱いになってしまっている。裁判後(出所後)の永作が完全に無視されているのが、その象徴。●ラストの部分は、ほとんど別作品といってもいいくらい改変されているが、とりあえず、物語の最大のクライマックスである、岡山港でのすれ違いの場面を奪ったのはなぜなのか。また、娘が新たな視野に気づくのが、「その子はまだ朝ご飯を食べていないの」というたった一言であるところに意味があるのに、現像された写真などという分かりやすすぎるアイテムを持ち出しているのは、見る側をなめているとしか思えない。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2013-09-15 01:42:50) |
673. ホームレス中学生
《ネタバレ》 すでに指摘されていますが、前半のホームレス生活が、服は綺麗なまま、髪はサラサラ、お肌はつるつるで、何のリアリティもありません。友人宅で食事にありついた際の描写にしても、えらく落ち着いて普通に食しており、それまで飢えた生活を送っていた人にはとても見えません。なので、そこから3人の生活が始まるに至っても、予定調和にしか見えないのです。なお、当時27歳の池脇千鶴が女子高生というのも凄いキャスティングなのですが、いろいろな意味で巧すぎで、周りの芝居を助けています。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2013-09-02 00:59:34) |
674. 男はつらいよ 噂の寅次郎
《ネタバレ》 大原麗子という人は、絶品の美貌と同時に程良い庶民性があり、そして人生の影のようなものも表現できて(しかもそれがとらやの中で浮いていない)、つまりこのシリーズのマドンナとしては完璧な適役なのです。そして、麗子様のキュンとするような声であんなことやこんなことを言われると、見ている方まで一緒になってどきどきしてしまうわけですが、それだけに最後の切なさ、そしてあっさり旅立ってしまう寅次郎の宿命が際立っています。●改めて見てみると、この作品は、マドンナの魅力を引き出すために脚本も集中している。冒頭恒例のとらや騒動(今回は起こっていること自体はハッピーなのも良し)から、まだ大物化する前のピン子のスパイシーなアクセント(実は麗子さんより年下だったとは・・・)、そして博父との出会いと同道というドラマが、まるで一筆で流れるように描かれて、ここぞというタイミングで満を持してマドンナ登場。以後は怒濤のマドンナ一本筋。その中でキラキラした湖面のように交錯するマドンナの光と影(離婚しそうな状態とした後という設定をフルに生かしている)。シリーズを代表する傑作だと思います。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-08-27 01:33:08) |
675. 明日への遺言
《ネタバレ》 米軍の国際法違反の観点を俎上にきちんと挙げた点は評価したいが、それ以外の作り込み方の部分がグダグダで。まず、カメラがあまりにも単調で(4パターンくらいを使い回しているだけでは?)、照明の安っぽさもテレビドラマ並で、法廷としての迫力が皆無。中将の妻視点のナレーションで進行していながら、では法廷での進行を受けて妻や家族はどう影響したか、という描写がないので、もっともらしく登場する意味がない。法廷劇でありながら、その背後で被告人と弁護人はどのような意思と方針をもってそこに挑んだのか、という観点が存在しない。藤田まことがその辺のいいおじさんっぽくて、軍人のトップとしての威厳や格式が感じられない。などなど。大事な内容ではあるので、誰か、きちんと作れる人にきちんとリメイクしてもらいたい気分です。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2013-08-19 02:25:13) |
676. 眉山
登場人物の造型も安直、場面設定も安直、台詞もこの上なく安直。大体この娘って、心理的にはほとんど母親依存症の領域に達しているのではないでしょうか。何よりも腹立たしいのは、こんなレベルの作品が、夏八木勲の晩年の出演リストの1つに名を連ねてしまうこと。 [CS・衛星(邦画)] 1点(2013-08-14 00:30:38) |
677. おにいちゃんのハナビ
《ネタバレ》 引きこもりそのものについても、あるいはそこからの脱却についても、描写があまりにも安直で、浅薄。したがって、物語は最後まで何も始まっていません。それと、進行側がこう進めてほしいと考える台詞をそのまま言葉にするしか能がない脚本には、耳を覆いたくなったのであるが、何でこんな脚本にゴーサインが出たのだろうか? [CS・衛星(邦画)] 1点(2013-07-31 01:43:12) |
678. 男はつらいよ 純情篇
《ネタバレ》 最初に見たときは、若尾文子のマドンナの存在がどうも浅くて物足りなかったのですが、再見してもそれは変わりませんでした(笑)。よって、寅さんの恋の病というのも、あまり説得力はありません。ただ、若尾さんが問題というよりも、この作品はサブエピソード部分の出来が良すぎて、マドンナの出る幕が狭められてるのですよね。冒頭の宮本&森繁の強力なドラマとか、博の退職騒動の盛り上がりとか(もしかして、「寅さん相手に服を脱ごうとした女性」というのは、シリーズ中絹代が唯一なのでは?そして、宮本さんの驚きの視線を受けた切り返しの寅さんの「険しい悲しみ」の表情も凄い)。●シリーズの歴史という観点から見ると、(1)源ちゃんが本作から帝釈天に居着いている、(2)柴又駅での見送りシーンが初登場、という点でも重要な作品です。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-07-27 13:01:22) |
679. 鍵泥棒のメソッド
《ネタバレ》 過去の作品ほどのひっくり返し技はありませんでしたが、同じことを繰り返しても仕方ないので、それはそれでよいのです。アフタースクールに続き今回も印象的だったのは、1つ1つの場面に妙に真剣なこだわりがあって、それが笑いを醸し出しているということ。例えば、今回では、人が入れ替わったら当たり前のように段々と部屋が綺麗になっているとか。それから今回は、全部を説明し切るのではなく、いくつかはわざと説明を止めて、気づくかどうかは見る側に任せるという手法も採っていますね。 [映画館(邦画)] 8点(2013-07-23 02:01:15)(良:1票) |
680. スイートリトルライズ
《ネタバレ》 こういう不倫モノは、まず、当事者の生活感を十分に出しておいて、そこから逸脱する背徳感を押し出してこそ、感情と現実のギャップがドラマたりうるのです。ところがこの作品は、夫婦がもともとどんな生活をしているのかもよく分からないし、いざ不倫へと乗り出してからも、感情の乱れや葛藤がほとんど見受けられない。つまり、制作側が都合良く敷いたレールの上を都合良く進んでいるだけなのです。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2013-07-22 20:58:35) |