1. いつか読書する日
久しぶりに良質の邦画を観た。とにかく田中裕子のほとんど中年男のようなしどけなさと、幼女のような素朴さ、時折見せる妖艶すぎる表情にまいってしまった。淡々とした日常。そこにはさまれる認知症老人の問題や、児童虐待などの深刻なエピソード。在宅で家族を看取るということ、長すぎる恋の顛末、そして死。これだけの要素を盛り込みながらも、どこまでも静かで上品なユーモアが散りばめられていることに感嘆した。書庫に並んでいる固い本のタイトルにも監督のこだわりが感じられる。中年以降のものにはたまらない作品。 [映画館(邦画)] 10点(2006-04-14 17:07:48)(良:1票) |
2. 非・バランス
とにかく小日向文世の存在感だけですでに8点。 どんな役を演じてもコヒさんはあったかい。 そして厳しい。なぜか凛々しい。私のまわりの人は誰も 賛同してくれないけどセクシー。 地味万歳!日本中に菊ちゃんが散らばれば、思春期を 傷つきながらも上手に泳げるワカゾーが増えるだろうに。 [地上波(字幕)] 8点(2005-07-31 17:14:38) |
3. 花
人はどうしてギリギリのところに辿りついた時にはじめて「気づく」んだろう。深刻な病気になってようやく生きている意味を自分に問い、身近な人の大切さを再認識し、お金やステイタス以外のものの価値に気づく。 気づくことに遅すぎるというのは無いかもしれないけれど、気づかなかった「後悔」から自由になるのは難しい。 そういった後悔をともなう葛藤や、人や人生への愛おしさが凝縮された榎本明の演技は一見の価値あり。大沢たかおは、ちょっとしたいい加減さやだらしなさをあざとくなく演じて、観ていて一番感情移入しやすいキャラクターだった。 で、どうしても牧瀬里穂のテンションの高さだけが残念で仕方ない。同じ意志的な女性でも、もう少し透明感があって懐かしい雰囲気を醸し出すような人をキャスティングしてほしかった。 8点(2004-06-25 14:43:04) |
4. ふたり(1991)
行ったことも無い尾道への憧れが募りました。音楽の効果もあるのでしょうが質のいいジブリ(高畑監督の方)のアニメーションを見ているように錯覚するほど映像や現実感の薄い言葉が美しいです。石田ひかりはあの歩き方や表情など「愚図だけど愛らしい妹」を見事に演じていましたね。最近はどうも意地悪で才気走った役柄が多い中嶋朋子の優しい姉役も文句なくはまってました。惜しむらくはちょっと長すぎます。 7点(2004-05-03 20:32:13) |
5. 模倣犯
こちらでのレビューに事前にしっかり目を通して おいたので、まさに「どの程度のトホホ映画か」「本当に怒りがわいてくるほどつまらんのか」という所を覚悟してTV放映を観た。そしてやっぱり意味不明だった。ステーキを丁寧に食べるところとかパイナップルを2人で食べるところとか、意味シンに見せておいて「・・ただそれだけ」。最後の赤ん坊は「輝かしい未来」「愛を信じる力」みたいなものを暗示させたいのかもしれないけど、そんなものは見る側にまかせてほしい。中井君は世間への露出度が高すぎてあのしゃがれ声がどうしても「バラエティ」色を出してしまう。 なのに「俺タチは無臭だ」と言われても・・・。人気者を使いたい気持ちはわかるけれど、こういう映画こそ北野映画を見習って新人からそれこそ「無味無臭タイプ」を抜擢するべきだったと思う。木村佳乃の役もキーパーソンのはずなのに最後に犯人を追い詰めるセリフを言わされてすぐピースどっかんじゃ、「私の立場は?」。本当に劇場では無くTVで色々雑用をしながら観てちょうどよかった。・・点数・・困った・・箱にたぶん数分間は入れられてしまったであろう赤ちゃんに免じて1点。 [映画館(字幕)] 1点(2003-12-27 11:48:16) |
6. ナビィの恋
いいですねぇ~おばあのときめく心。 おばあの中に「この年になってみっともない」という 卑屈さが微塵も無いのがいいです。 それもこれも60年つれそったおじいの人柄が大きく 寄与してるんでしょうね。 「今日は風が凪いでいて舟が出せる・・・体に気をつけて」 というようなことを、ふだんの会話 とまったく同じ口調で言ってしまうおじい・・ってすごい! 沖縄は日本だけれどほんとに「フシギの国」。死ぬまでに一度は行って泡盛飲んで踊り倒したいな~ 8点(2003-12-09 10:31:34) |
7. Kids Return キッズ・リターン
石橋凌・・・一瞬こんな親分さんなら素敵、と思わせておいて、怖すぎます。気合いの入った目は伊達じゃないです。この人っていったいほんとうはどういう人なのかなぁ。とはいうものの、この映画は暴力シーン一切受けつけない私でもギリギリセーフでした。動きもセリフも最小限に抑え、かつ最大限効果的に使う北野監督の良さが随所に見られ、結構悲惨なストーリーにも関わらず(久石譲を音楽に起用したのも勝因か)観終わった後、清々しい気持ちになりました。他の北野映画はちょっと食わず嫌いのままで置いてあるけれど、この映画は良いですっ。 8点(2003-10-23 18:12:20) |
8. ヤンヤン 夏の想い出
ビデオを借りたのですが、できれば映画館で見るべき映画でした。 約3時間は家事の合間にちょこちょこ見るには長過ぎます。でも透明感のある映像が良かったです。痛々しいくらい正直な登場人物のセリフの端々にも「おっ」と思わせるものがありました。 ただ台湾の女性は、理知的な容姿なのに、突然エキセントリックになる人が多いのかしら?と刷り込まれそうになる位、女性たちが激しかったのにはびっくり。何十年ぶりに出会った恋人の前で、昨日別れたかのように恨み言を言うシーンなどにはちょっと?でした。 ヤンヤンのお姉さんはデビュー当時の百恵ちゃんを彷彿とさせる雰囲気で、青い果実という爽やかさにプラス1点。 7点(2003-10-13 20:59:11) |
9. スウィートホーム(1989)
こちらでの評価はさんざんなようですが、面白いです。怖いです。かなり前に観たのに色んな場面が鮮明に思い出されて、もしもう一度機会があったとしても、ひとりで観る勇気はありません。豪邸のセットも邦画にありがちなちゃちさを感じなかったし、キャストもはまってると思います。伊丹十三と宮本信子が競演している、というだけでも、今となっては貴重ですね。 7点(2003-08-08 17:41:06) |
10. 鉄道員(ぽっぽや)(1999)
原作は日本人の泣けるツボを心得ている作家さんらしくぐっときました。映画は・・・う~ん健さんが出ているので「素晴らしい!」と言いたいところですが、小林稔待とのカラミがどうにもこうにもクサイ。「オレは男としてアンタ(健さん)に惚れ込んでるんだよ~」ってそんなに言いたいかなあ。広末涼子がミスキャストという意見多いですね。確かに素朴な田舎娘っぽくないかな。遠野凪子あたりじゃダメだったかしらん。健さんの嫁役は田中裕子であってほしい。個人的に。 5点(2003-08-07 22:33:45) |
11. 火垂るの墓(1988)
14才と4才の壮絶な体験と死。今おもちゃを叩きつぶすように人の命を奪ってしまう少年達はこの映画を観たら何を感じるんでしょう。「妹なんておっぽって自分だけ逃げる」くらいの事は言いそうで空恐ろしいです。戦争はどんな理由をもってしても肯定したくないけど、いったい人の心の荒廃はあの頃と今とどちらがすすんでいるのかと思うと言葉を失ってしまいます。 8点(2003-07-22 22:40:06) |