1. 安城家の舞踏会
《ネタバレ》 時代の転換期に起きる出来事と言ってしまえば、そうだが、 戦後のGHQによる解体により、華族が地位を奪われた。 ネットで調べると、結構苦労された方々もいるという。 何より驚きなのが、日本映画に、このような歴史が刻印されていること。 古い日本映画を訪ねると、日本の歴史もよく分かる。 原節子は、やはり女優なのだなぁと感心。 小津さんに可愛がられている彼女しか知らないと、原節子を分かったことにはならない。 現実を見て、崩れ落ちる一族を支え、毅然と対応していく強い女性。 そんな女性も、やまとなでしこの一面なのだ。 ラストのホールでの父親とのダンスが、切なく悲しく、そして美しい。 [DVD(邦画)] 7点(2025-02-03 21:58:38)★《新規》★ |
2. 出来ごころ
《ネタバレ》 サイレントの小津は、冴え渡っているねぇ・・ 親子と工場仲間と飲み屋のおかみ。そこに世話になる女性が一人。 これだけの界隈で、人情噺が爆裂する。 もう笑いあり、涙ありとは、この映画のこと。 この頃のサイレントの小津さんを知らないで、小津を語るなという話。 近年、小津さんのサイレント何本かをリメイクした短編集みたいな映画が 出ているが、冗談じゃない!小津さんは、本物を観なきゃいけないです! 余談)古谷三敏という漫画家による「ダメおやじ」という漫画があるが、 あれは、本編の坂本武が元ネタじゃないだろうか? そっくりなんだよね、顔が・・ [ビデオ(邦画)] 8点(2025-02-01 23:36:11)《新規》 |
3. 東京物語
《ネタバレ》 この映画、若いころに何度か観たが、 小津さんのサイレントやトーキー初期の作品を最近、よく観てて、 それで改めて、本作を見返したら、色々発見があった。 やはり思うのは、小津さんの「一人息子」があっての「東京物語」だろうということ。 「一人息子」のほうは、母親が上京してきて、競争社会の東京に失望を覚えた息子を母親が 𠮟り飛ばす話なのだが、それでも息子には人情があって、それが何よりもの親孝行だという話である。 本作「東京物語」は逆だ。それなりに東京で生活をしている子どもたちの、 いつしか親のことを事務的にこなす子供の変貌ぶりに、父親の笠智衆が落胆する話だ。 「一人息子」とは真逆だ。 この話の続き(京子と父親の話)が「晩春」になるのだろう。 小津さんの中で、映画で描いた家族は、現役時代、ずっと生きていたのだろう。 [DVD(邦画)] 7点(2025-01-26 22:44:15) |
4. ツィゴイネルワイゼン
《ネタバレ》 自分らの世代には、夢中になったルパン三世の映画監督として、鈴木清順の名は刻まれた。 それがこんな大監督だったとは・・ 互いの妻を交換しようとか、昨日女を死なせてきたとか、 とかく無茶苦茶な男を、原田芳雄が怪演している。 そこに芸者と、もう一人そっくりの女が出てきて、この二人の女が この男の連れ合いになる。まるでヒッチコックの「めまい」を観ているかのような 不思議な感覚に襲われる。これが着物の美しさと波長が合い、 幽玄の美を醸し出す。 楠田道代の美しさも、ここに花をそえる。 大谷直子の地味な美しさが、後半、効いてくる。 あの世とこの世の間の、女性の美しさは、地味な女しか醸し出せないものかもしれない。 思ったより、目が離せなくて、あっという間の2時間20分だった。 傑作! [DVD(邦画)] 9点(2025-01-12 21:19:14) |
5. 浮草
《ネタバレ》 いや~どうなんだろう? 「浮草物語」を最初に観て、面白いストーリーだと感激したのだが・・ 思うに、京マチ子と中村鴈治郎じゃ生臭くて、主人公の身勝手さが強く鼻に残るようになっている。 思うに、サイレントって、喜劇が主だよね。 だから、この「浮草」のストーリーも人間喜劇扱いだと、ラストもそれほどイヤらしくなくなるのだね。 あと、本作は子役が活きてないのも、その理由か・・ 小津さんも、この話、好きだったんだろうね。 だから、2度も創っている。 京マチ子が嫌らしい女と可愛い女が両立してるキャラを巧く演じている。 良作♪ [ビデオ(邦画)] 8点(2024-12-21 01:00:07) |
6. 他人の顔
《ネタバレ》 安部公房と勅使河原監督のタッグ、いいよなぁ。 この世界を自分なりにのみこんで、その後に、世界に実験または装置をしかけて、 そこから人間、とくに現代人の孤独を浮き彫りにしていくという、世界へのアプローチがいい。 「砂の女」では砂地獄に作られた家であり、本作でいえば顔を変えることができるという技術であったり・・ 自分の顔にコンプレックスを抱いてる男が、顔を手に入れた後、 やってみたかったこととは? そこに何とも言えぬ現代の哀しさが出てる。 もう一組、顔に傷のある女性も出てくるが、 こちらはテーマのために作られた設定のようで、未消化だった。 面白い!良作! 豆情報・・診察室のデザインは、建築家の巨匠磯崎新によるものらしい。 [映画館(邦画)] 8点(2024-12-19 22:27:53) |
7. 砂の女
《ネタバレ》 面白い! 最初は、男と女の寓話かと思ってた。 確かにそうなのだが、人生ってこんなもんじゃね?みたいなラストがいい。 岸田今日子が、実にはまり役。 なんというか、あんなひどい環境で、女として生きてる感が出てて、巧い。 ただ、今までの死んでいった男たちとは、子ども出来なかったのかな? 今までの男たちの末路が知りたい。 [映画館(邦画)] 10点(2024-12-11 20:29:24) |
8. ブルーピリオド
《ネタバレ》 面白かった。 原作のファンなので、映画化は楽しみだった。 出来上がってくる絵の作品が、何より雄弁で、面白い映画に仕上がってる。 似たようなのに「美しき諍い女」や「燃ゆる女の肖像」があるが、 本作は初々しく、いきなりこれだけ描けたらお前も天才だよ、と言いたくなる(笑) 原作の清潔さを壊さず、透明感のある、いい俳優を使っている。 良作。 [DVD(邦画)] 7点(2024-12-10 23:42:45) |
9. トラ・トラ・トラ!
《ネタバレ》 いや~、金かかってるねぇ。 最近のCGになれた映画鑑賞眼には、新鮮にうつる。 とにかく、実写レベルの撮影には、説得力がある。 特にゼロ戦のシーンには、これアニメじゃないよなぁ、と凄いものを見てしまった感が残る。 その分、金かかってんだろうけど・・ 黒澤明が、監督する予定だった作品。 しかし、この映画のアメリカのプロデューサー2人が、編集の達人だった。 黒澤さんも編集の達人。 この事実が、黒澤さんのこの映画からの退陣につながるんですね~ アメリカと日本のガチンコバトル。 めったに観れない内容の映画だった。 [DVD(字幕)] 7点(2024-12-06 01:16:05) |
10. 津軽じょんがら節
《ネタバレ》 津軽海峡の荒波と、三味線と、目の見えない女性。 もうこれだけでドラマチックな絵ができる。 瞽女(ごぜ)といえば「はなれ瞽女おりん」も名作です。 是非! ベンベン♪ [DVD(邦画)] 7点(2024-12-04 23:46:11) |
11. 大人の見る絵本 生れてはみたけれど
《ネタバレ》 サザエさんの波平は、この映画の斎藤達男だね。 すると、カツオは突貫小僧なのかな・・ とにかく小津さんのサイレント観てると、デジャブ感がある。 サザエさんで見た原風景がここにある。 「お前たちがお父さんより偉くなればいいじゃないか」の母親のセリフから、 「お父さん、お辞儀したほうがいいよ」と子どもの成長した姿まで 父親の哀愁が、コミカルに描かれる。 子どもが荒れる理由はわかる。 戦争に負けて、学生運動が起きたのも、案外、こういう子ども心なのかもしれないな、と思った。 [インターネット(邦画)] 7点(2024-11-27 02:16:05) |
12. 東京の女
《ネタバレ》 小津と言えば、出演俳優が、会話するシーンで、 こちらに向かって、各々がしゃべる演出を思い浮かべるが、 それは、この映画で完成されている。 いわく本作は「視線の一致しない切り返し」をはじめて体系的に 使った作品とみなされている。 それはハリウッドのエルンスト・ルビッチ(「結婚哲学など」)の演出から学んだようだ。 またサラリーマン家庭の映画を多く扱った松竹蒲田の作品でもある。 だから、非常にピュアな話である。 純情な男性の、もろい姿が描かれている。 [ビデオ(邦画)] 7点(2024-11-25 14:18:58) |
13. ゴジラ-1.0
《ネタバレ》 結局、誰かがやんなきゃいけなかったんだ! 日本で生まれたゴジラが、他国のモンスターとやりあう海外映画で 終わらせるわけには、いかなかったんだから・・ 山崎監督、お疲れさまでした。 ゴジラビヨンドを今風に言ってるとこがクール。 監督、あなたの東京オリンピックは、終わりましたか? 本当に力作だと思います。 [DVD(邦画)] 7点(2024-11-22 23:06:05) |
14. 浮草物語
《ネタバレ》 これはよくできた映画。 小津さんをして、「比較的よくいった作品」と言わしめた本作は、 カラーでもう一度、2回目の映画をつくっている。 それが「浮草」である。 巡業する旅芸人一座親方に、子どもがいた。 今の彼の愛人が、その倅を、仲間の女に誘惑しろという場面。 怖い女ごころですね。 でも、それだけの話じゃないんだな、これが。 そこが嬉しいところ。 名作! [ビデオ(邦画)] 9点(2024-11-22 00:31:12) |
15. 人生のお荷物
《ネタバレ》 老いてからの子どもは可愛いが、将来を考えると、親として憂鬱だという話。 歳離れた娘3人、やっと片づけたと思ったら、孫みたいなやんちゃな男の子がいた。 父役が斎藤達雄。この人か・・名前はよく聞くが。 なんともいい演技する人だなぁ・・ なんだかんだで、子どもは可愛い。それで幕。 山田洋次の「キネマの天地」で、松竹蒲田の映画が大好きという場面があるが、 つまり、こんな映画なんだね。納得。 [インターネット(邦画)] 7点(2024-11-19 00:03:06) |
16. 天河伝説殺人事件
《ネタバレ》 これは、市川崑の作品の中でも特に評価が低い。 多分、能の舞台を台無しにしてる場面が出てくるからだと思う。 それ以外はいいんじゃない?面白かったけど・・ 「道成寺」が見せ場である。 「二人静」で異母兄弟が競い合い、勝者を跡継ぎにするという話に 重点を置いても、面白くなりそうな話ではあるけど・・ 岸恵子さん、ホントにどんな姿勢でもお美しい。溜息。 浅見光彦事件簿第1弾ってラストにあるけど、第2弾以降あるの? [DVD(邦画)] 7点(2024-11-17 20:19:20) |
17. 東京の合唱
《ネタバレ》 小津安二郎版「自転車泥棒」ですなぁ・・ (ただし、こっちは自転車買ってもらえるんですけど・・) こっちはデシーカみたいな暗い話ではなく、貧しさを笑い飛ばす映画になってます。 しかし、サザエさんの原型じゃないかと思いました。 カツオにワカメにタラちゃんが出てきます。 しかし長谷川町子は、ずっと子供の楽しい時間を描きたかったんだろうなぁ・・ 本作みたいに、社長にたてついて、生活に困るような亭主にせず、 サラリーマンの典型のマスオさんを夫にしたんだろうなぁ・・ それはそれで楽しいのですが・・ でも、ラストの合唱のしみじみさは、小津さんの方じゃないと出ませんなぁ・・ しかし、そうすると、ワカメちゃんは高峰秀子になるなぁ・・ [インターネット(邦画)] 8点(2024-11-14 23:46:45) |
18. 僕達急行 A列車で行こう
《ネタバレ》 なんと!九州北部の鉄道を紹介してくれた! 自分は、キハ型くらいしか知らないが(鉄道のことは知らないのだ) 久大本線やら篠栗線など、地元の路線が出てくるのが、嬉しかった。 九州に機関車の基地なんかあるんだね~。森田監督、勉強になりました。 映画は、オタクに恋愛はむつかしい、という、まぁありふれたテーマでは ありましたが、趣味友がいるのが幸せなんだね、人生は、結局。 鉄道の話題で、夢中になって、旅してる二人のシーンで、おしまい。 森田監督、お疲れさまでした~ [DVD(邦画)] 7点(2024-11-11 21:54:16) |
19. 夜明けのすべて
《ネタバレ》 三宅監督、いいですねぇ 今泉監督みたいにさりげない会話ですけど、あざとさがないと言うか・・ ホントに男女が会話してる傍で聞いてる感じがする映画なんですね。 上白石さんの地じゃないか、って感じのキレ方も、女子あるあるで、いいですね。 ただ話に一本芯があってもいいのかなって気もします。 二人のやりとりが、もっとラストのほうのプラネタリウムの果実となってれば、 もっと見ごたえあったと思います。 北斗七星の説明がどう仕上がったか、気になってます。 [DVD(邦画)] 7点(2024-10-26 19:19:56) |
20. 幸福(1981)
《ネタバレ》 刑事ものの秀作。 だが、テレビの刑事ものと同じような鑑賞後の印象しか残らないため、 目立たない作品になっている。 ここで傑出しているのは、水谷豊の人間性。 あ~こんな人、もっといてもいいよなぁと思ってしまう。 その後、水谷は機械みたいな人間を演じることが多くなるのだが、 この作品の水谷みたいな俳優、もっと欲しい。 何というか、ギラギラしたとこがないんだよなぁ・・貴重な存在。 [DVD(邦画)] 7点(2024-10-20 23:09:23) |