1. デス・トゥ・スムーチー
ストーリーは面白い。上映時間の短さからもわかるように、編集作業に相当根をつめたようで、テンポもよく小気味いい。ただ各登場人物の描きこみがもうひとつ。特に悪役が複数登場するので、このあたりの区別をもっとしっかりと見せて欲しかったのが残念だ。また、登場人物の心の動きが読みづらい。まずキャスリン・キーナー演ずるノラが、モープスに心を開いていく過程。はじめは穴が空いた番組の顔として、モープスのことをただのつなぎだとしか思っていなかった彼女が、徐々に心を開いていくわけだが、彼の人となりを理解していく過程がほとんど描かれていない。よった勢いで彼に詫びを入れる前に、そうする決心と、勇気を振り絞る状況というものが必要だったはずだ。また、心に鉄の扉を持っている理由はこの時点ではまったくわからない。ひとつのなぞときとして、ここも描きこんで欲しかった。レインボーがモープスにひざをなでられただけで改心してしまうところも拍子抜け。さらに、モープスに裏切られ、親分が殺された最後の手段が、舞台上の殺し、というのも短絡的。スピナーのいとこのアイリッシュマフィアは、名実ともにかなり強力だが、やっていることがチンピラのそれに近い。 6点(2004-05-01 00:09:27)(良:1票) |
2. イングリッシュ・ペイシェント
この映画を、「ユージュアル・サスペクツ」や「レッド・ドラゴン」に見られる、表情を奪われた重症患者を語り部とする映画と比較してみた。前掲に見られるようなグロは一切排して、一人の人間の、魂の懺悔、あるいは後悔といったものを美しく表現している。肉親でないにもかかわらず、こういう患者を献身的に介護できる人間の感情が少しできたようにも思える。主演のレイフ・ファインズは、デーモン・ヒルに似ているな、と思いつつ(笑)、感情を抑えながら、一方では号泣でその心情を表現しているのは、少しアイデア不足か?とも思っていた。この人が「シンドラーのリスト」の、発狂少尉だと知ってビックリ。死に行く人間の蜻蛉のような命の美しさは、演技力で表現しているものだったのか。 9点(2004-04-18 07:11:08) |
3. シャイニング(1980)
うーん、ニコルソンの狂気、ここにきわまれり・・・という感じなのだろうけど、どうしても納得いかないのは、奥さん。やっぱり、好きで結婚したんでしょ。子供にとっても、唯一の父親なんでしょ。いくら怨霊が乗り移ったとしても、氷漬けになった肉親から逃げ切れて、はいよかったとはいかない。ニコルソンが狂っていく過程で、奥さんが心配する場面、子供を傷つけて心から後悔する場面、それらも氷漬けだ。。。 5点(2004-03-21 03:21:59) |
4. バリー・リンドン
全編から「モンティ・パイソン」の匂いがプンプンする。話はそれなりに悲劇で、それを強調するレディ・リンドンの美しさには、他の作品にみられるおふざけ感は感じられないのだが、「・・・すべてあの世」のクレジットも含めて、やはりキューブリックはこのエピソード自体を笑い飛ばしているように見える。オープニングのナレーションは「フライング・サーカス」の常套手段だし、親子の強盗はセリフも「デニス・ムーア」にそっくり!景色も似ている場面がたくさん出てくる。黒澤監督がこの映画を絶賛したそうだが、はたしてモンティ・パイソンを知っていたのか・・・。 9点(2004-03-21 03:13:17) |
5. 時計じかけのオレンジ
ミッドセンチュリー系の家具や服装は今の時代にとてもマッチしていて、古さをまったく感じさせない。キューブリックお得意の、物陰に隠れて批判や皮肉をぶっ放す雰囲気が全編に蔓延していてあきさせない。最後はやはりドヒャっとぶち壊して終わるというところも徹底している。 8点(2004-02-28 21:22:08) |
6. アラビアのロレンス
圧倒的な映像は後世に残るべき美しさだと思う。ロレンスの描写については実在の人物というだけあって、ただの判官びいきにたよった英雄として描くのではなく、人間として生きていく仮定での様々な懊悩が差し込まれていて見ごたえがある。ピーター・オトゥール、アンソニー・クインの演技も見事だが、特に目を引いたのはオマー・シャリフ演ずるアリの潔さだ。砂漠の主のように現れ、神がかったロレンスに次第に惹かれていく。そして再び失望のうちに砂漠に戻っていく・・・。話が進むにつれて、我々も彼に対して愛情を持つようになる。名誉と物欲一筋のアウダと、ナルチシズムに酔うロレンスとの間にあって、実質上彼らの統率を取っていたのは彼である。最後にこの機軸が崩れ去るときのシーンは、哀愁がにじみ出るようで、忘れられない。 9点(2004-02-28 21:14:28) |
7. ファーゴ
陳腐なストーリーにもかかわらず映像美とセンスを感じるユーモアでまったくあきさせず見せていくのはさすがだと思ったが、最後のミンチシーンは映画全体の輪郭からはみ出していて違和感がありいただけない。映像の一片一片が作品を語るものであってほしいと思うのはわたしだけだろうか。 7点(2004-02-17 17:45:10) |
8. ハンニバル(2001)
一回見ただけでは理解できなかった。自分の知的レベルもあるが、これは致命的。前半部分でのクラリスの描き方が薄かったのではないかと思う。残酷シーンはそれなりにお洒落に見せることはできているものの、本題が不可思議すぎて残酷描写も浮いてしまった感じ。やっぱりジョディ・フォスターで撮って欲しかったとは思う。 4点(2004-02-06 23:35:33) |
9. プラトーン
舞台はベトナム戦争であろうが何であろうがよかったのではないか?ベトナム戦争を語るとき、自国に対して何のメリットももたらさなかった、というありがちなアメリカ合理主義から結局抜け出すものにはなってはいなかったと思う。トム・ベレンジャーのキャラクターに随分助けられている。 5点(2004-02-02 19:51:15) |
10. 戦場のピアニスト
隠れる、見つかる、逃げる、食べ物探す~の繰り返しで、中盤はとてもだれてしまう。ピアノを弾くシーンは着弾のサイン。史実を忠実に描くという姿勢はわかるが、あまりにもアイデア不足ではなかろうか。主人公の俳優はいかにも悲しげな表情だが、その内側からはあまり感じ取れなかったのは残念。ホロコーストはなんども映像化されているために、ピアノという横軸がこの程度ではかなり弱い。ドラマ「赤い激流」のほうがピアノへの情熱を熱く感じたのは私だけだろうか。 5点(2004-02-01 22:18:30) |
11. 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
こういうの好きですねぇ。モンティ・パイソンっぽくて。ピーター・セラーズはほんとに全然わからなかったです。これだけふざけた内容でありながら、しっかりお金かけて作ってるっていうのは、すごいですねぇ。 8点(2004-01-12 22:18:53) |
12. 未来世紀ブラジル
この映画の少し後、「ペーパレス」という言葉が登場しましたが、みんなメール文書をプリントアウトしているのを見て、「未来世紀ブラジルかよ」とつぶやいていました。しかしこの世界観はスゴイ。デニーロも数ある出演作の中で、他とは違ったカッコ良さを見せています。ジョナサン・プライスの、監督にまで振り回され困っているようにも見える淡々とした演技がよい。マイケル・ペイリンにももう少し暴れて欲しかったけど。 7点(2003-12-23 17:16:22) |
13. エイリアン
《ネタバレ》 チームリーダー顔のジョン・ハートがいきなり腹を食い破られて死んでしまったのも衝撃。エイリアンとしては挨拶がわりといったところでしょうか。単純なストーリーを幹にして、リドリー・スコットお得意の効果的な演出で、最後まで手に汗握る展開を堪能しました。猫を使うところがなんとも心憎いです。その後の映画界に多大な影響を与えた、教科書的映画ではないでしょうか? 10点(2003-12-21 16:08:11) |
14. エンゼル・ハート
冷たそうな石畳、室外機、地獄の底に通じているかのようなエレベータ・・・。ともすれば薄っぺらいホラー映画になるところを映像で格調高く見せていた。ミッキー・ロークが徐々に事の重大さに気がついていく演技も展開を盛り上げるのに役立った。引き出しに物を無造作に入れるところや、ゆで卵を剥くシーンは、やっぱり真似しましたね。しかし、サイファーは、デニーロよりももっと敵役がいたのではと思います。 7点(2003-12-21 15:51:37) |
15. グラディエーター
《ネタバレ》 それなりに迫力もあり、それなりに面白いストーリーだが、今ひとつ感情移入できない。それがために最後の大観衆の場面でも盛り上がりに欠ける。そういう印象を持ちました。これはそれぞれの登場人物が持つ葛藤と、それに対応する実行動に、微妙なズレがあったからではないでしょうか?暴君コモドゥス自身が闘うことを選んだことにしても、見方によっては自ら死を選んだのではないかとも思えるほどの自殺行為ですし、相手を弱らせる策を講じているくらいだからそうではないらしい。マキシマスはローマ帝国に忠誠を誓ったのか、それとも先帝を愛していただけなのか。などなど、単純な「動機と行動」に対して納得できないところがあったのが原因ではないかと思います。先帝アウレリウスは名君ではあったとは思いますが、あそこまで庶民的だったのでしょうか・・・。 7点(2003-12-17 10:28:42) |
16. ミッション
やっぱりこの映画は巨大スクリーンで見たい。最初の滝落としのシーンは自分の足もすくむほどでした。ジェレミーアイアンズがよい味出してます。その後の出演作からは創造できないほど、大人物を演じきっていますね。さすがの奴隷商人デニーロもその徳に触れることになるのも頷ける、という名演技だったと思います。最後のシーンは、映像と音楽だけですべての虚しさを表現していましたね。重い題材ですが、楽しめ、感動できる作品だと思います。エンニオ・モリコーネへの弟子入りを考えたきっかけとなった作品です。(考えてるだけですが・・・。) 8点(2003-12-16 22:26:27)(良:1票) |