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tottokoさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2017
性別 女性
自己紹介 周りに映画好きな人があまりいない環境で、先日はメリル・ストリープって誰?と聞かれてしまったりなのでこのサイトはとても楽しいです。
映画の中身を深く読み解いている方のレビューには感嘆しています。ワタシのは単なる感想です。稚拙な文にはどうかご容赦を。  

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1.  穴(1960) 《ネタバレ》 
なんとかっこ良い映画だろう。一コマ一コマに無駄が無く寡黙にきびきび人物紹介を済ませ、隙の無い脱獄計画を行う。モノクロが映えるパリの巨大地下空間の画も圧倒的。縦横無限につながる通路、トンネルに吸い込まれ小さくなってゆく灯り。地図が作成不可と言われるほどの巨大な異空間が舞台装置として満点。 そしてつくづくと「脱獄に必要なのは根気と丁寧さ」を思い知らされる長ーい固定カメラ。コンクリの壁を破る、鉄柵をヤスリで切る。ひとつひとつの作業をじっと見守るかのように画を動かさない。この我慢強いことは他の脱獄モノの追随を許さない。 ことごとく「しっかり描き切る」んですよね。差し入れの品を検品する場面も然り、散った土砂を刷毛できれいに清める場面然り。外した扉をはめ直す時はがしゃん、と心棒がはまるまでちゃんとやる。熱量の高い描写に、絡め取られるように酔ってしまいそう。 隣の房から反対側の房へと物品を受け渡しする、あそこも鮮やかだったなあ。 各キャラクターの性格も五人それぞれが見事に描き分けられており、だからこそ観てる者はラストにやられてしまうのですね。誰に、ってガスパールに。リーダーのマチュー、ねえやっぱり新人は引き入れるべきではなかったのだよ。完璧に進んでいた脱獄計画。ただ一つの穴が新入りの彼だった。でも、四人の仲間も我々も「ガスパールを入れてやれよ」って思ってたんだ。あの衝撃のラストまでは。 ガスパールは見るからに誠実な好青年。差し入れられた食料も気前良く皆と分かち合い、育ちの良さが滲み出る。 だけど、観客はラストシーンを経てから思い至る。そんなに良い奴だったか?と。相続した財産を使い果たした後は金持ち女のヒモになり、あげく義妹に手を出す奴。痴話げんかの末に刑務所行き。ふと頭をよぎるは所長と面談した時の金のライター。エンドロールを観ながらワタシは叫んでしまった。あああれは袖の下だったのか・・。しょてから抜かりなく権力に取り入ってたなんて。ラストで冒頭の伏線を回収するなんて・・! 脚本も画も役者もなにもかもが凄い。半世紀以上も前にフレンチノワールは完成しているのだなあ。
[CS・衛星(字幕)] 10点(2019-11-02 15:20:56)(良:2票)
2.  セントラル・ステーション 《ネタバレ》 
この映画の熱量の高さにすっかりあてられてしまった。ブラジル社会へのカルチャーショックといってもいい。21世紀、この情報化社会になっても映像で迫る”極端さ””すべての物事の濃さ”には一日本人としてただ圧倒されるのみ。駅にあふれる人人人、万引きしただけで射殺され、駅に子どもが一人寝ていても誰も顧みない。代筆屋が商売になる識字率の低さ、臓器売買の闇。まず舞台となるこの社会が容赦ないのですっかり肝を潰された。なんとゆるくないことか。 ドーラは、皆ひどいオバサンだと言うけれど、たぶんかの国では「普通の」平均的な大人なのだと思う。社会そのものがサバイバルな状況では、山といる孤児一人ひとりにかまっていたらキリが無いのだ。 男の子が良い。私が少年にめっぽう弱いということを差し引いても。ジョズエはサバイバル社会の子らしくめそめそはしないけど、そこは子ども、若い頃のジュリエット・ビノシュに似たキレイな顔を時々ふっと曇らせる。ドーラとけんかし、だけど頼りにもし、彼女がへこんだら逆に励ます。ああ泣ける。 まったく予想もつかなかった終盤の展開は素晴らしかった。奇跡的に見つかった暖かな血のつながりと、ドーラ曰く「飲んだくれ」父親のおぼろげな実像。ああ良いラストだった。もうドーラは他人の手紙を投函せずにしておいたりはしないだろう。
[CS・衛星(字幕)] 10点(2017-01-22 18:18:51)(良:2票)
3.  裏切りのサーカス
原作未読で臨んだところ、やはり一度目の観賞では全体像を掴むことは無理だった。でも、二度三度と観直して、一つ一つの場面の意味が分かるにつれて緻密に織られた脚本の見事さに仰天する。2時間という限られた時間の中に隙間なく美しく整えられたプロット、意味深い場面の連続に集中力は必要とするけれど、とても面白い。 諜報部員を演じる俳優陣の、職業柄、顔の皮膚の一番上っかわだけ動かしているかのような曲者演技が素晴らしい。特に主人公のG・オールドマン。表情筋をほぼ動かさずして、暗い淵を覗いているような瞳の演技だけで老獪なスパイの孤独を滲ませる。 スパイが生身の身体を張って、国家の誇りをも代弁していた時代。冷戦下に行き交う謀略と、個人の愛情や屈折した思い。非常にとっつきにくい印象を受けるけれども、話の流れさえ分かればこんなに深くて味わい深いスパイ映画はそう無いだろう。 数多の名画と同じく、年月が経っても複数回の観賞に耐えうる名作だと思う。
[CS・衛星(字幕)] 10点(2014-01-22 00:09:50)(良:1票)
4.  ひまわり(1970) 《ネタバレ》 
何度も観ているけど、分かっちゃいるけど、また号泣。オープニングの、マンシーニの音楽と地平線まで埋めつくす金色のひまわり、ここでいきなり涙腺にくるけど、堪える。ロシアの大地が広くて美しいなあ。無数の十字架と黄金色の畑、反則なまでに甘美な音楽。きりっと男らしいソフィア・ローレンと子犬のような瞳のマストロヤンニ。ロシアで探し当てたマストロヤンニと言葉も交わさず列車に飛び乗るソフィア、ついに涙腺決壊だ。後戻りできない現状を、苦さを噛みしめて受け入れる二人。二度と会うことはないだろうと悟った二人の、別れの駅。未練を残すマストロヤンニの瞳と、ぽろりと涙をこぼすソフィア。ここに至っては私は嗚咽状態である。泣く行為は心をすっきりさせる効果があるというけれど、この映画は泣いても泣いてもつらい。切ないよ。まぶたが腫れ上がってしまうので、観賞時は選ぶべし、と学んだ映画でもあります。
[地上波(字幕)] 10点(2013-04-11 00:55:19)(良:1票)
5.  オーケストラ! 《ネタバレ》 
映画が紙の媒体と決定的に違うのは音を伝えられる、ということ。クライマックスの演奏会は圧倒的。音楽の凄みに何度観ても泣く。アンヌ・マリーが(額に怒マークをはりつけて)ソロパートを奏でるその音色が金色の一筋となってするすると天上に昇ってゆく。彼女の音に叱咤され鼓舞されて、ダメ団員たちの音楽家魂に火がついてついには太く力強い音の奔流になってほとばしる、この瞬間は肌が粟立つほど。N・キンスキーの再来と見紛うような、神々しいまでのM・ロランの立ち姿と合わせて永久保存したい位の美しい舞台だった。前半から中盤にかけての、すったもんだな喜劇っぷりも好き。ネタは定石なれど、団員フルばっくれは予想できなかったなー。旧共産党の栄光の残滓もなにやら切なく、圧政のもと起こった悲劇も織り交ぜて話に奥行きも持たせている。笑って、やきもきして、戦慄して、うっとりして、泣いた。感情のほぼ八割方を喚起させられたこの映画、私にとっては満点。
[DVD(字幕)] 10点(2011-09-28 00:25:50)(良:1票)
6.  ダンケルク(2017) 《ネタバレ》 
ノーランに1940年のダンケルクに連れて行かれました。 押せ押せのドイツ軍の猛攻から、とにかく逃げの一手のダンケルク。袋小路に追い詰められた鼠のごとく海岸に集まったイギリス兵。 彼らと一緒に息をし、なんとか故国に帰ろうとする自分がいました。物凄い臨場感です。陸にあっては爆撃に怯えて砂に伏せ、海にあっては魚雷によって開けられた横穴からなだれ込む海水に首まで浸かり、あるいは墜落した機体の脱出口が開かず猛烈に焦る自分がいました。106分間もう恐ろしくて恐ろしくて。海原に無数の民間船が見えた時は泣きそうになったもんね。 今作においてノーラン監督は主人公を設けず、柱となる人間ドラマもほとんどありません。出ている人物は皆モブシーンの群像のようです。ドイツ兵すら姿を見せません。雨あられと銃弾が降ってくる描写のみです。このことこそが監督の意図するところなのでしょう。エンドロールに流れる「ダンケルクに人生を左右されたすべての人々へ捧ぐ」が胸に刺さります。 あの場にいた全員が主人公であるけれど、でもその無意味なことに戦争の不条理で非道なことを思い知ります。 映像は美しく、大空や水平線の広がりに目を奪われます。紺碧に輝くドーバー海峡、そこに真っ黒に広がる重油のシミ。かぶさるハンス・ジマーの不吉な音楽。キューブリックの‶フルメタルジャケット”以来の、画と音で迫りくる不条理の極みでありました。 帰投する選択を捨て、同胞らのために燃料を使い切り捕虜となった英国空軍パイロットの立ち姿。お気に入りのトム・ハーディとあってはいっそう涙無くして見られません。 銃口交える戦闘シーンは無し、ただ逃げ惑う戦争映画ですがこれもまたあの戦争のリアルなのでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2020-12-01 00:00:48)(良:2票)
7.  レネットとミラベル 四つの冒険 《ネタバレ》 
年月が経っても、心の底で大切に輝き続ける思い出とか出会いとか、そんな一作。 女の子って、友だちって、こういうこと。大事なことを共有したくて、その実現に一生懸命。意地悪な大人に絡まれたら一緒になって憤ってくれる。他愛ない議論と延々続くおしゃべり。洗練されたファッションの子と、野暮ったい子の取り合わせ。ああ、かつて通ってきた女子ワールドの面倒くさくも好ましいエッセンスを凝縮したかのようです。 会話もリアル。「青の時間」を邪魔されてパニくるレネットに「わかった、明日もいるから」と言うミラベルの台詞にあーめんどくさい子ねえ、という呆れとか女の子ならではの優しさが感じられて、十代のあの頃がとても懐かしい。 思い出す限り、こんな風に女の子の心の内を細かいひだまで描いた作品は邦画では見たことが無かった。そういうジャンルは大島弓子とか吉田秋生らの手によって少女漫画でしか接することがなかったあのころ。美しい映像で外国のそれも年配の男性によって撮られた繊細で愛らしい女子ワールド。とても新鮮で、驚きをもって迎え観たものでした。
[ビデオ(字幕)] 9点(2020-08-24 23:31:26)
8.  パターソン 《ネタバレ》 
ジャームッシュが綴る心穏やかで美しい日常の一篇。彼の作品は映像で表す「詩」であると、改めて認識させられる一本です。 生活の一つ一つに、それこそパートナーからマッチ箱に至るまで愛と関心を抱いて日々を送るパターソン市のミスター・パターソン。運転するバスの故障を除けば波乱らしい波乱の無い彼の一週間。だけど無味なんかじゃなく、彼のフィルターを通して、淡々と過ぎる日常の豊かで尊いことが饒舌に語られます。 出会う詩人仲間は深夜のランドリーでラップを刻む男だったり、10歳の女の子だったり。双子の乗客や通行人らが作品のリズムを生みます。 静かで何気ないこの世界観に大きく貢献しているのがアダム・ドライバー。大げさな表情やアクションを要求されない本作において、アダムの繊細な役作りは見事です。優しく温厚なパターソン氏、静かだけれどその表情が多彩なのです。モノトーンに凝る彼女には譲歩しっぱなしにも見えるかな。でもお互いにこの上なく優しいカップル。カップケーキ売れてよかった。 そしてこの映画、小さく笑わせてくれるシーンがたくさんあるのです。会社の配車係であるインド系同僚の愚痴(もはやボヤキ芸の域)には笑ってしまうし、毎日かしぐ郵便受けの謎が解けたときは「オマエかーい!」と誰もが突っ込むことでしょう。 そうそう、本名はネリーというワンちゃん、亡くなってしまったのだとか。名演技でしたねえ。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2020-05-03 23:45:05)
9.  わたしは、ダニエル・ブレイク 《ネタバレ》 
ケン・ローチが引退を撤回してまで撮りあげた、渾身の作品と思います。 かつて「ゆりかごから墓場まで」と言われた英国の福祉が機能不全となって久しいと聞いてましたが、もはや人間の尊厳をも削り取るシステムになってしまっているとは。 ダニエルが振り回される所定手続きの複雑怪奇なことったら、喜劇さながら。見ているこちらも電話が先なのか書類提出が先なのか、どっちなんだよ、と思います。60過ぎて受ける「履歴書の書き方講座」や形だけの求職活動といった茶番。40年も大工一筋だった男にウェブで手続きしろと言い放つ。煩雑な手続きに疲弊しているのは職員も同じで、彼らも余裕が無くて辛そう。ちょっとでも温情をかけて処理したら上司に「前例を作らないで」と叱責されます。この女性職員はダニエルに手続きをあきらめないよう励ましてくれてたんですけどね。ラストには葬儀に出席している姿も見えました。 ダニエル・ブレイクは本当に良い奴なのです。他者を労わる心を持ち合わせ、まっとうな権利を行使するために他人のために声を上げることのできる隣人なのですよ。 そして、こんな苦境にあってもキレの良いユーモアを忘れないのが英国人の偉いところで、私が傑作と思うのは「保留音のBGMをマシなものに変えろ」でした。 格差とか移民問題とか、山ほどの問題を抱える現状はかの国の政治家だって百も承知なのでしょうが、一市民として思うことはダニエルのような善良な市民がこんな目に遭う社会は嫌だ、この一点に尽きます。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2019-10-09 18:52:06)(良:2票)
10.  木靴の樹
ほんの100年ほど前の、イタリアの寒村での名も無き人々の暮らし。土地を耕し家畜を世話し、子供を育て、祈りながら肩寄せ合って日々を送る。車も電気の恩恵も無縁の時代に生きた人たちを見ていると、歴史というのは大きな事件だけで作られているのではないのだなあとつくづく思う。無数の、彼らのような庶民・農民たちによって育まれた生活を受け継いで今の我々は生きている。 働くだけで一杯の日常だけど、人は恋をするし年に一度は華やかなカーニバルもやってくる。より貧しい恵まれぬ人には祈りと共に施しをし、物売りの行商人との丁々発止の掛け合いは生活者のたくましさも感じる。 先人の生きた足跡をあふれる情操で再現したパルムドール受賞作。全体通してシビアなタッチなので、心楽しくはならないのですが、苦く辛いラストを含め”人間が生きること”に圧倒された180分でありました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2018-11-15 20:18:10)(良:1票)
11.  最高の花婿 《ネタバレ》 
いやー、何度声を上げて笑ったことか。深刻な社会問題であろう移民のネタを軽く笑いに代えるとは、フランスの成熟度の高さを思い知るなあ。 ヴェルヌイユ家の両親の気持ちって大多数の人が抱いているのと同じですよねきっと。「自分には差別意識はない」と。でも我が人生に宗教の違う他民族の人間が身内となる事態が発生したら、ちょっと平静ではいられない。”希望の星”末娘の相手は真打ちともいうべきアフリカ系。「なんでこんな目に?」とまで言っちゃってましたねえお母さん。 この作品の凄いのは「偏見は存在します」とはっきり認めながら、その馬鹿馬鹿しさをコント仕立てで表出してるそのセンス。移民の婿三人が互いの出自で感情こじらせつつ、黒人現るとなると結託して「パパラッチ風作戦」で末娘の結婚を妨害しようとするくだりは、あまりの無意味さに脱力笑い必至です。 鬱気味の三女の絵とか、ちょっとイラっとする神父とかがまた別口の笑いとしてお話のアクセントになってます。エスプリの効いたフランス映画です。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2018-09-18 18:38:36)(良:1票)
12.  暗殺の森 《ネタバレ》 
”人として当然持ち合わせるべき情操”の無い映画だ。それはつまり主人公のファシストの男の性質そのままである。この男のたどる半生をこちらは見守るわけだが、13才の時の決定的な事件により彼は情感を喪失したらしい。元娼婦の女に恋情を抱く部分はちょっと人間ぽいと思ったけれど、それすら驚愕の展開を迎えるわけで。なぜ彼女を見殺したのだろう。この男の冷たさは分かっていたつもりだったが、この暗黒場面には心底 冷えた。 感情は無いながら、映像は凄まじく雄弁で、ひとつひとつの場面の端麗さ、幽玄なこと。「青を意識した」とは監督の言葉。でも私個人的には強烈なのは「赤」だった。新婚旅行での列車の個室を照らす夕陽。森で絶命する女の、金髪・白いコートにそこだけ鮮血で真っ赤な顔。 私は芸術という分野には疎いけれど、この作品の織り成す映像美は”キレイな”他作品とは格が違うような気がする。青い森、白い精神病院、迷宮のような貴族の男の居城。 映像アート系の映画はえてして監督の独りよがりも多く、話がちんぷんかんぷんというのにも出会うけど今作品は男の半生と時代との整合性もきちんとあって物語として理解が難しくない。冷たさと色彩に圧倒される巨匠の傑作。
[ビデオ(字幕)] 9点(2016-01-05 00:29:03)(良:1票)
13.  太陽がいっぱい 《ネタバレ》 
海の青、痛いほどのA・ドロンの美貌、名曲の誉れ高き音楽、そしてこれ以上ないラストシーン、何もかもが鮮烈で、半世紀経った今の映画には薄れてしまったロマンというべき耽美さに溢れています。 野犬のようなドロンの、暗い危険な瞳。マルジュを追い込みにかかる場面、彼の瞳にどんどん寄ってゆくカメラ。マルジュならずとも陥落するってもんです。 眼底にちかちかと残って離れない陽光と、その眩しさの中で行われる殺人という後ろ暗き行為。アンバランスで危うくてドロンの存在そのもののようで、今でも各場面が鮮やかに思い出せる名作です。
[ビデオ(字幕)] 9点(2014-09-24 00:21:13)
14.  最強のふたり 《ネタバレ》 
ドリスが素敵だ。天性の爛漫さ、心根の良さ。試用期間をクリアできた訳、それはフィリップの機嫌がしごく良好に保たれたから。フィリップがドリスを気に入った訳、それはドリスが彼を憐れまないから。そして介護疲れを知らない強靭な若い肉体だったからでもありましょう。ホントに頼りがいのある見事な筋肉だ。ユーモアのセンスも合う二人、障害者ネタのジョークは観ていて冷や冷やするものもあるんだけど、二人して大きな口を開けて笑ってくれるのでほっとする。そうだ、そもそもフィリップはこういう“遠慮”を嫌っていたんだった。 教養が無くとも、ドリスの率直な感性は結構ツボを突いていて、オペラの席ではフィリップまでつられ笑いする。幸せな笑いの共有。互いの欲するものを持ち合わせて、与え合うことのできる二人はまさに最強な組み合わせ。 卵や、文通相手や家族の問題などたくさん散りばめたエピソードを綺麗に回収して、鳥目線の空撮とともになだれ込むラストシーンは美しく、胸がぎゅっとなります。
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-18 00:06:29)(良:3票)
15.  プロヴァンス物語/マルセルのお城 《ネタバレ》 
前作の幸福感の裾野をさらに広げての続編、マルセル思春期へ突入。前半のマルセル初恋物語もどこかとぼけた味わいで好きだけど、やはり圧巻は後半大きな存在感を放つマルセルのお母さん。息子のために校長夫人相手に意外や政治力の高さを披露、丘へ週末ごとに出かける計画を立てる母。近道の幸運や、屋敷の主人の厚意を得られるのもひとえに彼女の慎ましい美徳がかの老紳士の心を捉えたから。親切な人あれば、意地悪な人もいて窮地に陥る一家のくだりでは、落ち込む父に貯金を打ち明けて場を和らげる母。かくも母は美しく優しく偉大で、彼女から幸せの磁場が発生しているかのようなマルセル家。今作でも幸せのおすそ分けをいただいた。だからラスト5分は画面がにじんで胸がつかえて言葉にならなかった。私は本当にこの映画の人たちが大好きだったのだ。
[ビデオ(字幕)] 9点(2013-08-18 23:17:10)
16.  さよなら子供たち 《ネタバレ》 
ルイ・マルが、表現者として、また、その時代を体験した者の義務としておそらく心の傷を抉るような思いで撮ったであろう作品。ルイ・マルの筆致は実に淡々と、日記をつけるように日常を語る。好きな本の話をしたり、相手の家庭に興味を持ったり、ケンカもしながら友情を育むカンタンとボネが微笑ましい。その日常を突如として切り裂く戦争の爪、静かに筆記具を片付けて従容としてゲシュタポに従うボネ。チャップリンの映画に笑い、ピアノが上手で博識で、つややかな頬の少年を待ち受ける苛烈な運命を思うと、胸が潰れそうだ。 
[映画館(字幕)] 9点(2013-07-14 00:53:44)(良:1票)
17.  インド夜想曲 《ネタバレ》 
光と影の映像の魔術に絡めとられて二時間頭も身体も痺れっぱなし。じっとり暑いインドの昼の喧騒と翻ってただただ黒い幽玄のごとき夜。J・Y・アングラードの深い瞳に連れられて、青い夜光灯が点滅する夜行列車に乗ってるうちに酔いつぶれた。謎かけのようなナイチンゲールという言葉や失踪した友人のことなど、結局明かされることはないのだけど、途中からどうでも良くなってしまった。魔法にかかってふらふらだったからだ きっと。
[映画館(字幕)] 9点(2011-08-10 16:13:15)
18.  パリの調香師 しあわせの香りを探して 《ネタバレ》 
大人の人生が交錯する話を描くなら、やっぱりフランス映画はすごく巧い。人生への考察が深くてそして本作は優しい。品があって上質なのでした。アンヌの着用しているコートのように。 エマニュエル・ドゥヴォスが頑固な芸術家(調香師)を演じているのだけどこれがまた見事に‶取り扱い面倒な人”で。じろっと人を見る目線とか冷たく反論するその口元とか、さすが大御所女優の演技力です。その頑なさが彼女にとっては防御たる鎧と気付いてからは、どんどん親しみを覚えていきました。 運転手ギヨームの人生についても丹念な描きっぷり。娘の共同親権を得るために奮闘する姿は健気そのもの。世の父親にありがちな、ティーンの娘の気持ちを正確に量ることができなくて失敗したりする姿には、笑っちゃうけど泣けました。ユニコーンついてるトレーナーは着ないですって。(なんでこんな良い奴が離婚沙汰になるのかしらという疑問はちょっと湧きますね) 人生の挫折を乗り越えて新たな局面に進むとき、一緒に力と思いやりを分かち合える人が側にいるのってほんとに僥倖なこと。観た後はこちらにも幸せな気分を分けてもらえました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2024-02-26 22:31:07)
19.  Summer of 85 《ネタバレ》 
オゾン監督のタクトが冴えわたる繊細で美しい思春期。初恋の喜びと、その喪失による心の痛み。十代のキラキラを見事に体現した新鋭二人バンジャマンとフェリックスが素晴らしいです。 アレックスは純粋で一途。ダヴィドは奔放で小悪魔的で、男女間の恋愛に置き換えてもよく見かけるこの構図。 ダヴィドみたいのは人を惹きつけるんですよねえ、かっこ良いもん。だけど彼の魅力である明るい軽やかさは時に誠実さとは距離が遠いものであるんですよね。 ちょいちょいそんな彼の性格は顔を出してたのだけど(ヨットを片付けてくれてなかったとか)、恋は盲目。アレックスはダヴィドを慕い続けて破滅へ向かってしまう。わたしが好きなのはここで飛び出す英国女子ケイトの恋愛金言。「あなたが愛していたのは彼ではなかったのだと思う」 そうなんだよね 結局人は自分の理想に恋い焦がれるもの。無理に理想のカタチをはめられても相手は「重い」と負担に感じるのです。 フランスの海辺の風景も美しいし音楽も80年代ぽくて(ロッド・スチュワートだ!)素敵です。しみじみと心に沁みました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-10-03 16:14:28)
20.  さらば友よ 《ネタバレ》 
いやあーもう何、グッとくるこの二人。神経質そうなピリピリ感を纏ったドロンと、人を食ったようなニヤニヤ顔のブロンソン。こりゃ絶対ソリ合わなさそうだもんね。実際やたらと殴り合ってるし初めのうちは。 あんま聡明な印象じゃないんだよね二人とも。ドロンは賭けゲームも下手だし女には良いように使われるし。大体数字も揃ってないのに金庫開錠に臨もうだなんて。(しかも女はちゃんと知っていたわけで) ブロンソンはブロンソンで怪しげな手段で小銭稼ぎしてるし。女の子に妙な辱めを与えての、あの妙なパーティは一体。 ああそれにブロンソンたら得意なはずの「表面張力寸止めコイン投入技」に肝心な時に失敗してんの。パリ警察にしつこく苛められるブロンソンてのもまた見どころではあります。 互いが互いを売らないと決めた漢気あふれる終盤は、静かなれど胸アツ。ドロンが立ち去るブロンソンにタバコの火を差し出すラストはハードボイルド映画界でも屈指の名場面と言えるでしょう。 ‶yeah"が渋く耳に残るオッサンたちの物語。そして二人ともやっぱり脱ぐんだな、これが。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-05-09 22:44:23)
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