41. ダニー・ザ・ドッグ
《ネタバレ》 ハードなアクションかと思いきや、実は『ちょっと深イイ話』に見せかけて、『浅イイエンターテイメント』というしめくくり。でも嫌いじゃないです、こういうの。意味ありげで、あんま大した意味はないっていうの。 最初からジェット・リーのアクション目当てだったので、それを見れただけでも満足。むしろ、なかなかヘビーなドラマを仕込んでくれたおかげで、見応えのある作品となっています。 その一方で、クライマックス辺りのドタバタアクションには少し物申したい。おいてけぼりの部下たち。そのまま放置で突然舞台はコンサートホール。今までの丁寧な脚本作りが嘘のようなこの適当な展開はいったい・・・?そして欲を言うならば、ダニーがサムとヴィクトリアを守りながら戦うといったシチュエーションにしてほしかった。押入れに二人を押し込んじゃった後は、ひたすらバート一家とダニーとの一騎打ち。せっかくダニーが見つけた『本当の家族』との絆を描く絶好のチャンスなのに、その二人が全く絡んでこないってもったいないです。 前半~中盤くらいまではグイグイ引き込まれたんですが、ラストのバトルとオチが弱い典型的な竜頭蛇尾的作品。 [DVD(字幕)] 7点(2017-11-08 12:43:49) |
42. ミニミニ大作戦(2003)
《ネタバレ》 スパイじゃないけど、テイストはスパイもの。 チームのメンバーが『リーダー』『金庫』『パソコン』『ドライバー』『爆弾』、飛び入りで『メカニック』と、最小限に抑えたのは良かったですね。とは言え、ジェイソン・ステイサム以外のメンバーもめっちゃ運転上手くて、彼の個性は殺されちゃっています。 冒頭でドナルド・サザーランドがあっさり退場しちゃったのも凄く残念。 そしてエドワード・ノートン。素晴らしい小物っぷり。頭は良いが、意志が弱く、信念がなく、銃と暴力に頼り、スマートさの欠片もない。なんてわかりやすい小悪党。彼がしょぼければしょぼいほど、チャーリー一味のスマートさが際立ちます。 それに、今作のノートンは良い意味で存在感をノーマルにしてくれたので、最初気付きませんでした。正確に言うと、『誰だっけこの人?』くらいの感じです。逆に、なぜかジェイソン・ステイサムのほうが裏切りそうな人相していたので、最初のサプライズはものの見事に、はまりました。もしかするとこのサプライズに驚いていたのは日本で私だけかもしれませんが。 まあなかなか良作だとは思いますが、『スパイもの』としてはいたって平凡。突き抜けたところはありません。 無難にそつなく、面白くなってはいますが、映画そのものが『ミニミニ大作戦』といったところでしょうか。 キャストが豪華メンバーなので、内容的にはB級でも、雰囲気的にはA級のオーラでまくりです。 ラストはこれ以上ないくらいすっきりとした仕上がりで、良いんじゃないでしょうか。 [DVD(字幕)] 7点(2017-06-06 05:00:07)(良:1票) |
43. ターミネーター2
《ネタバレ》 はじめて見たのは中学生の頃か、高校生だったか・・・。当時では考えられないT-1000の流動的な映像に度肝を抜かれたのを覚えています。 その映像技術に頼りきらず、その映像技術から更に工夫されて生み出されたアクションの数々。 初見のときにはこれ以上無いくらいに胸が躍り、そして今見ても十分に面白いと感じられます。 ストーリーはどうでしょう。 テーマは大きい。『世界の滅亡』『人類の存亡』。 それに対して、ストーリーはシンプル。 1.『人類(抵抗軍)のリーダー』を『殺そうとするもの』と『守ろうとするもの』の闘い。 2.事の発端となる人物及びチップの破壊。 壮大なテーマでありながら、ストーリーは限りなく単純化したことで、大変わかりやすいエンタメ作品へと仕上がっています。 自分達が作りたいものを、誰がみても楽しめる作品へと仕上げる。これぞプロの技ですね。 ただ、子供の頃には気にも留めなかったことが、気になっちゃうのが大人であります。余計なことを考える邪念が入り込んでくるんですよね。 『T-1000』をサラ・コナー暗殺に1984年に送り込めばいいじゃん。とかね。 だからね、タイムスリップものを楽しみたいときは、『ドラえもん』を見るような温かい気持ちにならなきゃだめなんですよね。 じゃないと、中古品が新品ロボットからターゲットを守るっていうシンプルながらもアツいストーリー、そしてアクション、そーいったものを純粋に楽しめる自分ではなくなってしまったと感じ、愕然とするわけです。 ですから、今だったらはっきりわかります。 そして自信をもって言えます。 これは『子供向けアクション映画』なのだと。 それを大人でも楽しめるようにプロの技でコーティングされた傑作なのだと。 ただ残念ながら、わたくし個人としては、傑作とまではいきませんでした。 子供の頃の自分であれば、満点ですけどね。 [DVD(字幕)] 7点(2017-04-18 03:48:43)(良:2票) |
44. サン・ジャックへの道
《ネタバレ》 ロードムービーはどちらかと言えば苦手なジャンルです。ここでの評価がよほど高くなければ見ることはありません。 結論から言えば、素直に最後まで飽きることなく見ることができました。 ロードムービーの良さというものを堪能できた気がします。 まず第一に風景。 そして第二に、一緒に旅をする仲間との連帯感。 第三に、旅の過程において変化・成長していく一人一人の心。 第四に、宿や食事、洗濯に歯磨き、買出しなどの、旅先ならではの生活感。 そういったものが、矢継ぎ早に次々と映し出されていくスピード感と心地よいリズムが、この作品にはあります。そう、1つ1つのシーンが短いのがこの作品の特徴ですね。長い長い旅なのに、スピード感があるので、最後まで一気に見れてしまうのです。 小粒なエピソードを、軽快なテンポで見せてくれるので、まさに一緒に旅をしているような感覚になります。 三兄弟の長男社長が、『俺は最後まで旅を続ける』と言ったとき、すごく共感するんです。観ている側も同じ気持ちになれるってのは、ロードムービーとして貴重。 ただ個人的にこの作品で残念な人物が、三兄弟の中で仕事をしていないダメ人間の次男。 飲んだくれ。頭が悪い。自制心がない。人に依存する。平気で嘘をつく。自己中心的。空気が読めない言動、行動。私は、こーゆー人間が一番嫌いなんです。 そんな人間でも、例えば劇中で他人の荷物を持ってあげるとか、心の変化が見られればまだ救いがあったのですが、一切ありません。 むしろ、後半になればなるほど、彼に対するいらいらは募るばかりです。 それに、これは自分の問題ですが、『宗教』『世界史』、本当に疎いのです。 おそらく夢の世界を含め、宗教や哲学的なメッセージが発信されているように感じるのですが、その真意が知識不足でつかめず、残念。 とは言え、誰が見ても楽しめるように作られている作品ではあります。 特に、メインの9人以外の登場人物を頻繁に絡ませる演出は素敵ですね。 これによって、9人の擬似家族の絆が、コントラスト効果によって、より色濃く鮮明に浮き上がる感覚が好きです。 [DVD(吹替)] 7点(2017-04-03 14:11:16) |
45. レッド・サイレン
《ネタバレ》 序盤はサイコホラー。中盤からはサスペンスアクション。 緊張感があって面白い。 女捜査官に助けを求める娘。『母が家政婦を殺しました。』 これだけで面白そうなのに、娘を助けるもう一人の傭兵あがりの男。偶然娘が逃げ込んだ車が、戦闘のプロの車。随分都合の良い展開ではありますが、そんなことはどうでも良いのです。面白ければ。 アリス、ヒューゴー、スターロ刑事、母親エバ・クリステンセン、それぞれが強い個性をはなっていて良いですね。 母親から逃げながら、同時に死んだと言われている父親に会いに行くという設定も良い。 複雑になりすぎない程度に、複数の要素が絡み合うストーリー展開が楽しい。 アクションの一番の見せ場かもしれないビジネスホテルでの攻防。ここがあまりに暗すぎて何が起きているのか雰囲気しかわからないのがもったいない。その分恐怖感はあります。 冒頭の意味深なプロローグ。警察機構と富豪エバの癒着。スナッフビデオ。 映画に面白い味付けを出来そうな調味料は他にもありましたが、その辺はさらっとスルーされてしまいましたね。 そのぶん、映画がわかりやすくはなっていますが、最後まで見てなんとなく物足りなさも残りましたね。 やや尻すぼみ感のある作品です。 [DVD(字幕)] 7点(2017-02-03 13:07:40) |
46. ボーン・アルティメイタム
《ネタバレ》 シリーズの中で、一番ついていくのが大変でしたね。 疲れた頭にムチうって、頑張ってついていった結果、『え?それで終わり?』っていうのが率直な感想でしょうか・・。 スパイ系アクションとしては見所満載で高水準。常に相手の一歩上をいく、爽快な頭脳戦は健在。 『記者と接触を試みようとする前半。』 『ニッキー・パーソンズ(ジュリア・スタイルズ)と行動を共にする中盤。』 どちらも記者やニッキーを守りながらピンチを脱するという展開が今までにないパターンで面白い。 ジェイソン・ボーンはもう無敵感丸出しなので、『ボーンが守るべき対象を守りきれるのか?』というシチュエーションは、新たな緊張感を生み出すことに成功しているようです。 ただ、今までのシリーズと違い、後半からクライマックスにかけてが今いち盛り上がりません。 『迫りくる危機をどう回避するのか?』の1作目。 『最愛の人を奪った者達への復讐』の2作目。 それに比べると、この3作目の動機はパンチが弱い気がするのです。 正直言うと、3作目ともなると、『ボーンはいったい何者なんだ?』っていうのに、・・・そもそも興味が湧かない・・・。 前菜、メインディッシュは凄い良かったんですけどね!やはり〆のデザートも大事っていうことです。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2017-01-30 04:14:02)(良:1票) |
47. スパイ・ゲーム(2001)
《ネタバレ》 エンターテイメントとしては結構小難しい作品ですね。 もちろんわかる人は難なく楽しめるのでしょうが、私のような小市民がこの映画を楽しもうと思ったら、頭から煙り出しながらでないと無理です。 この作品のストーリーは大きく2つ。 ミュアー(ロバート・レッドフォード)とビショップ(ブラピ)の過去のエピソードを巡る回想シーン。 中国当局に監禁されたビショップをミュアーがCIA本部にいながらにして助け出す現在のシーン。 前者はドラマ性が強く、後者はサスペンス色が強い。 前者はドラマ要素が強いためわかりやすく、とっつきやすい。また、ブラピの魅力全開なので、面白い。引き込まれます。 それに対し後者の『現在』を描いたストーリー。これがわかりにくい。 ミュアーが何をしようとしているのだろうと、わくわくしながら見ることはできますが、はっきり言って結論が出るまではさっぱりわかりません。で、難しいわりには、結果を見た後のインパクトは弱い。 結局CIAは、ビショップが何か重大な任務で動いていたのかどうか、それをミュアーに確認したい。ミュアーはすべてを話してしまうとビショップが見捨てられてしまうため、情報を小出しにし、その間にマスコミにリークすることで、『アメリカ政府』VS『中国当局』の図式を作ろうとする。そしてアメリカ政府の司法取引を利用して救おうとしていたのでしょうか。 ところがそれが寸前で失敗。仕方がないので、ミュアーは強硬手段に。 違っていたらごめんなさい。簡単に言えばこんなストーリーかと思います。 面白いストーリーだとは思うのですが。やはりわかりにくいのが難点か。 今何やっているのかわからないと、緊張感も生まれないですし。 そもそも今回の騒動の事の発端はミュアーにあります。ビショップの行動も愛ゆえとはいえ、自己中心的なものであり、プライベートなものでもあります。よって一応のハッピーエンドではあるものの、爽快感は得られにくい結末というのが個人的な感想です。 作戦名を聞いたときにビショップが涙ぐむのは感動するんですけどね。 [DVD(字幕)] 7点(2016-10-16 07:06:25) |
48. ヴィドック
《ネタバレ》 内容的に派手な作品ではありません。 ですが、最初から最後まで人をひきつける吸引力のある作品です。 妙な緊張感と、気持ち悪さ、知的好奇心をくすぐる展開、様々な要素が混在しています。 登場人物たちは、脇役も含め、個人的には非常にカルトな雰囲気を感じます。正直外見は気持ち悪い。そしてアップも気持ち悪い。 ですが中身はいたってまともな人が多い。非常識な外見に、常識的な中身。 そして外見が一番スマートで爽やかな好人物が、異常殺人鬼という逆転の発想。 そんな意図はないのかもしれませんが、人は外見からでは判断できないという皮肉すら感じちゃったりして・・・。 まあ一方で、犯人の意外性に対し、その真相に対してはあまり心が動きません。なぜかって? おそらく『誰が犯人?』ということに興味がわきづらい作品だからでしょう。もっと言うなら、誰が犯人でもおかしくないことが犯人探しへの興味を削いでいると言ってもいいかもしれません。 ですから、誰が犯人かなんてどうでも良い。むしろその動機に興味があります。なぜ『政治家』『科学者』『医者』の3人が狙われたのか。ですがその3人の共通点も中盤くらいで明らかにされてしまいます。 したがって、ミステリーという側面では、やや面白みに欠ける作品かもしれません。 ですが、話の落とし所が気になります。ですからプロットや演出は良いのだと思います。 ただ、よく時代背景がわからないのですけど、革命みたいなのが起こっていて、そっちのほうが『おおごと』に見えてしまったために、殺人事件が『大事の前の小事』みたいな印象を受けてしまいました。ちょっともったいなかったかも。 猟奇的な殺人事件というのは、平和な日常の中で起きるからこそ、その猟奇性が増すのだと思いました。 そしてタイトルに問題ありなのも同感です。 それとも、すべてはヴィドックが仕組んだシナリオというミスリードの意味でもあったのでしょうか。 [DVD(吹替)] 7点(2016-09-18 23:06:47)(良:1票) |
49. ハンニバル・ライジング
《ネタバレ》 『妹を食いやがったな。妹との約束だ。おまえらも食ってやるぜ』なるほど。理にかなっています。 ある出来事がトラウマになっている場合、そのトラウマの元凶に自分がなることで、トラウマを克服するというケースがあります。 原作は知りませんが、映画を見た限りでは、レクター博士はそれに近いのではないでしょうか。 ある凶悪犯のルーツを辿るサスペンスドラマとしては十分に面白い。 ですが、ハンニバルシリーズとして見ると、期待値の高さに相応しい傑作、とは言い難いものがありますね。 グレアム、クラリスの両名は、レクター博士の異常性を、相対的に強調するような存在だった気がします。 この作品の『妹』、そして『レディ・ムラサキ』。この両名は、『人間ハンニバル』の輪郭を、私達に見せてくれているような気がします。だとすると、レクター博士の熱心なファンに受けが悪いのもうなずけますね。 更には、『妹の復讐』という動機の部分を明確にしてしまったことで、ますます彼の神秘性は失われてしまいます。 そして、鎧、刀、原爆といった日本的マストアイテムの登場。これは良くなかったかもしれません。生粋の日本人である私達にとって、『チープな作り物』というイメージを意識させてしまいます。 そんななか、レクター博士を演じたギャスパー・ウリエル。彼は良いですね。この作品の掘り出し物的人材じゃないでしょうか。レクター博士の狂気を、予想以上に表現してくれていたと思います。 悪党達を、凶悪な暴力でねじ伏せる、悪の華。その美しさは、この作品でも十分に堪能することができました。 中盤以降のサスペンスアクションな展開には、十分満足しています。 ただ、ちょっと長いですね。 このシリーズはどれも尺が長めなのですが、基本的には必然性のある長さで、鑑賞中にその長さを感じません。 ですが、この作品は、その長さを感じてしまいます。間延びしている部分があるのでしょう。そしてその長さに必然性も感じません。 駆け足気味だとドラマに深みや重みがなくなります。 今作が、その性質からストーリーの深みを大切にするのはわかります。 ですが、あまりにもったいぶって冗長になると、間延びして緊張感がそがれます。 なかなかバランスが難しいですね。 [DVD(字幕)] 7点(2016-07-01 13:35:33)(良:1票) |
50. ファム・ファタール(2002)
《ネタバレ》 宝石強盗。狂言誘拐。自分とウリ二つな女。予知夢。 現実感と虚構感が絶妙なバランスで交じり合う世界。これにまたミスマッチなのんびりとした音楽が流れます。 この独特な雰囲気。これがフランス映画特有の味わいなのでしょうか。アメリカ映画ではなかなか感じることができない空気感ですね。 レベッカ・ローミンは、善人の顔と悪人の顔、人間の二面性を見事に演じきっていたと思います。更にリリーは全く別人に見えるので凄い演技力です。 そしてもう一人の主人公、アントニオ・バンデラス演じるニコラス・バルド。やはりこの人、かっこいい。ずば抜けた美形ではないのに、表情の作り方や立ち居振る舞いでこうもかっこよくなるものかと、感心します。 サスペンスとしても面白いのですが、人間ドラマとしても非常に興味深い作品。何となくニキータを思い出すプロット。 最後の15分間は一瞬何が起こったのかわからなくなる展開。ほぼ反則技の大技ですが、個人的にはこれはアリです。 正直、ちょっと内容に対して、スローすぎるテンポに集中力が切れそうになることも。テンポはもう少し速いほうが好きかもしんないです。 『ファム・ファタール』って『男を破滅させる魔性の女』という意味と、『男にとっての運命的な恋愛の相手』の二つの意味があるのですね。なるほど。そう考えると、『こんな形で出会わなければ~』を体現したかのようなクライマックス。サクセスストーリー並みの幸福感が得られるだけでなく、まさにタイトルどおりの結末となったわけです。良い。 [DVD(字幕)] 7点(2016-05-28 16:32:24)(良:1票) |
51. 11'09''01/セプテンバー11
《ネタバレ》 【イラン】・・・子供達にとって見たことがない出来事は無いものと同じ。彼らにとっての『世界』は周りの日常のみ。そしてその日常の中にも等しく『死』が存在することを表現できている。映画としてのパワーは足りない。5点。 【フランス】・・・聴覚障害の女性とそのラブストーリー、その世界とテレビで起きている出来事の対比が凄まじい。7点。 【エジプト】・・・最も多角的な視点で物事を捉えている。『民主主義の国は国民にも責任がある』というのは正論だが、その正論をもってテロを肯定することはできない。6点。 【ボスニア】・・・ちょっとよく状況がつかめない。予備知識が必要。3点 【ブルキナファソ】・・・貧しい国では、遠い国で起こるテロより、喫緊で切実な課題が山ほどある。そんな国では、テロの首謀者ですら、子供達の夢や希望をかなえるための対象となってしまう。6点 【イギリス】・・・予備知識が必要。2001年9月11日のテロでは被害者であるアメリカも、1973年9月11日では加害者で、他国民の命を大勢奪っているという痛烈なアメリカ批判。ただ、それをこのタイミングでするのはどうかと思う。表現方法も、映画というより説明不足なニュースのよう。4点 【メキシコ】・・・断片的に切り取った映像、ニュース、被害者達の声を媒介に、圧倒的な臨場感と存在感を生み出すことに成功している。改めて同時多発テロの凄まじさを感じる。8点。 【イスラエル】・・・マスコミ批判?ちょっと何が言いたいのか最後までつかめなかったが、タイプ的にはイランに似ているのかも。説明不足。5点 【インド】・・・アメリカ在住のイスラム教徒が半年にわたって受けた迫害の物語。実話であり、わかりやすく、テロのまた別の側面を知ることが出来る。8点 【アメリカ】・・・言葉が出ない完成度。涙が出てくる。20点。 【日本】・・・異色作。ラインナップに入っているのが日本として恥ずかしい。ラスト、『聖戦ナンテアリハシナイ』って言っちゃった。言っちゃったらダメじゃない?2点。 [DVD(字幕)] 7点(2016-04-15 00:06:34) |
52. URAMI ~怨み~
《ネタバレ》 親友、妻、上司、自分にとって本来ならば大切であるはずの人たちから裏切られ、ひたすら馬鹿にされ続ける主人公ヘンリー。真面目な人間であったが、ついには自分を見失い、殺戮を始めてしまいます。 わかりやすいストーリー。感情移入しやすいキャラクター。個人的にはこーゆー作品は大好きです。 ただホラーやサスペンスとしてはいささかパワー不足かもしれません。なぜなら殺されちゃう人たちがどいつもこいつもクズばっかで、善人はきっちり生かされているわけですからね。非常にモラルのしっかりしたプロットです。言わばこれはもう『ダーク・ヒーローもの』にはいるんじゃないでしょうかね。 また、実際の殺人より、ヘンリーが序盤妄想の中で繰り広げていた殺人のほうが衝撃が大きいということも関係あるでしょう。特に電車の乗り降りの妄想シーンの迫力は凄いものがあります。頭をグシャッッ。ですからね。否が応にも期待値は高まってしまうわけです。ですから余計に仮面をつけてからの計画的犯行が物足りなく感じてしまうのでしょう。 それに、ヘンリーの良き理解者の存在、ロージーやトムの存在が良くも悪くもこの作品のブレーキとなってしまいましたね。もしロージーやトムがいなければ、ヘンリーの周りには救いようの無いクズばっか。『どいつもこいつも皆殺しじゃー。がははははー。』ぐらいにふっきれちゃったほうが、スカっとするグロホラーに仕上がったんじゃないでしょうか。 ですが少なくともこの作品は、観る人の興味を最後までひきつけることには成功しています。 総体的に見ると、非常にバランスのとれた良作にはなっています。 ラストのラスト、めちゃめちゃB級臭いオチのつけ方も個人的には大好きです。 [DVD(字幕)] 7点(2016-02-23 22:12:53) |
53. バティニョールおじさん
ライトコメディみたいなのを勝手に予想していたのですが、予想を覆すシリアスで結構重い内容のドラマでした。まさかナチスものだったとは。実話だというのも驚きです。 美術商に逃亡資金のために画を売りに行ったとき、事情を察した美術商は『そこまでする価値が?』と問います。すかさず答えるバティニョール。『俺にはある。』一見飄々としたバティニョールおじさんの本音、その本音の中には覚悟と信念が存在することを示す重要なシーンです。 そう、これはまさにバティニョールおじさんの罪滅ぼしの物語。 自分がハム泥棒と間違えてユダヤの一家にクレームをつけに行ったがために、ユダヤの一家は逃げ遅れてドイツへ連行されてしまいます。ドイツの強制収用所へ送られることがどういうことか。 ところが、一家の息子が駅で脱走し、バティニョールおじさんの元へとやってきます。最初は関わりを持つことをためらうバティニョール。これも重要なシーンでしょう。ここですぐに子供を匿うことが人としては正しい行いなのですが、それができないくらい逡巡してしまう、そんなバティニョールを見せることで当時のパリ市民の置かれている微妙な環境というものが非常にリアルに伝わってきます。 プロットとしては、『ライフ・イズ・ビューティフル』に似ているかもしれません。 ストーリーだけなぞれば重く息苦しく理不尽な戦争ドラマ。ですがバティニョールおじさんというキャラクターが見事にその雰囲気を中和させています。 子供達は結局両親と生涯会うことはできなかったそうですが、バティニョールおじさんが子供達の『パパ』になることを示唆するラストに一筋の希望を感じることができました。 [DVD(字幕)] 7点(2016-02-22 20:53:16)(良:1票) |
54. クリムゾン・リバー
《ネタバレ》 ちょっと話を整理します。 『教授の娘と言っていたクライマーの女性。実は村娘。シスターの娘。双子の片割れ。生まれたときに、本当の教授の娘とすり替えられていた。・・・。大学側。大きくなったら、別人なのに同じ顔だから、二人が双子なのがばれる。よし、母親のほうに残してきたほうを殺そう。』 これが動機?じゃあ学長こそまず殺されるべき。結局学長はどうなったんでしょうね。 どうしても気になる謎が。母親が機転を利かせて、娘の死を偽装したわけですが、では代わりに死ぬことになった事故写真の少女は誰?もしかして、すり替えられた本当の教授の娘を身代わりに殺させた?だとしたら罪もなく命を奪われたその少女が一番可哀想なんじゃ・・・。 点と点がつながって線になり、線と線がつながってひとつの画を描き出す。全体像がようやく見えてきたとき、感動と興奮同時に味わうことができる。これがサスペンスの醍醐味と思っているのですが、この作品、最後まで見ても感じづらいですよねー。難しいというよりただの説明不足、情報量の不足でしょう。 あまり考えすぎると悪い意味で深みにはまるサスペンス。きっと、下手な推理はやめて、過程だけを目で追って楽しむと、意外とすんなり物語にはいっていける気がします。つまりは期待しすぎたらだめだってことですね。そうすれば名作の部類に入れてしまいそうになるほど、不穏な空気を満喫できると思います。 猟奇サスペンスの攻防としては、かなり良いほうだと思いますけどね。 [DVD(字幕)] 7点(2015-11-24 13:34:04)(良:1票) |
55. リトル・ストライカー
《ネタバレ》 技術はあるのに勇気が持てないサッカー少年が、第三者からキーアイテムをもらって活躍し始めるっていう、よくあるサクセス・ストーリー。そのよくあるサクセス・ストーリーが好きです。 むしろ、ちょっと予想と反したのは、サッカー以外の人間ドラマが結構多いこと。校長とスポンサーの確執に始まり、監督ウィラルの過去、転校生との恋、いじめっこ達とのからみ、極めつけはお母さんの元カレ、今カレのエピソード。あんまりいろいろつめこんじゃったので、少々散漫に感じる部分もあったりなかったり。 それでもサッカードラマは面白し、主人公をいじめるゴードンとその父親が気持ち良いくらいのクソ野郎で、映画に起伏を持たせてくれるので、見ごたえ十分、爽快感ばっちりの快作には仕上がっていると思います。 ただやっぱりねー、スポーツドラマにスポーツ以外の要素をがんがん入れちゃうのって個人的にあまり好きじゃないです。前半のいじめはしつこいし、母親と新しい恋人とのエピソードは全編に渡って要らなかったのではないかと思います。 それに、いろいろ盛り込んじゃったから、細かい謎がいっぱい残ったままになっている気がしますよ。 本筋のストーリーはきれいに丸く収まりますし、みんなハッピーみたいなエンディングを迎えるので、細かいことを気にしない人には全然オススメできる作品です。 [DVD(字幕)] 7点(2015-09-14 02:55:53) |
56. アバウト・ア・ボーイ
《ネタバレ》 ともすれば地味な作品なのに、不思議なほどに見入ってしまいます。感情の起伏がはっきり見てとれるので、見ていて飽きないのかもしれません。 ヒュー・グラント演じるウィルの人柄は最高。軽薄そうに見えて情が深く、無関心そうに見えて意外と優しく、嘘つきなんだけど、大事なところではいつも正直者。好きではないが嫌いになれない『ウィル』という人物を、最高のバランスで魅力的に演じきっていたと思います。こーゆー役をやらせたら、ヒュー・グラントは天才的にはまります。 正直ゆーと、ストーリーは個人的に物足りない部分はありました。マーカスの恋の行方や、友人関係、ウィルの人生設計の見直しなど、どれか一つでもいいんで、もう少しだけ踏み込んで、建設的なストーリー展開を見たかった気はします。ラストの『ウィルとマーカスには支えてくれる人たちができた。』っていうのがこの作品のクライマックスなんでしょう。ですが、その結果具体的に二人の生き方が、どう変わったのか見せてくれないと、ただ雰囲気が良いだけの映画になってしまいそうです。 その雰囲気の良さだけでも高得点あげられちゃうくらいには面白い。ですが、せめてウィルにはなんか自分のしたい仕事やなりたい自分を見つけて、空っぽの自分からの脱却をはかろうとするきっかけくらいは、最後に見せてほしかったかな。 マーカスは『ブレない母親思い』がかっこよかったですね。もうちょっと音楽か勉強か、何かを頑張る姿を見たかった気もしますが、友人達からバカにされいじめられても母親を大切に思う彼は本当にかっこいいです。個人的にはこの作品の一番のポイントだと思います。 どちらかと言えば、ストーリーうんぬんよりも、人物の魅力を味わう作品。 落としどころが気になって最後まで見てしまうタイプのずるい映画という気もします。 どちらにせよ、そのプロセスは十分に楽しめるヒューマンストーリーに仕上がっていますね。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2015-04-27 04:00:33)(良:1票) |
57. シンプル・プラン
《ネタバレ》 娯楽作品とは言い難い内容ですが、見る人を選ばないとっつきやすさがあります。シンプルな内容だからこそ、ディテールにこだわって非常に質の高い作品に仕上がっている気がします。 はっきり言って、お金をネコババしようが、警察に届けようが、もっと上手いやり方はいくらでもあります。つまり、この作品の何がすごいって、穴のあるストーリーにも関わらず、ハンクをはじめとする登場人物たちの選択が、『本当にそれしかない』と思わせる演出の上手さだと思うんです。 で、そのストーリーなんですが、人間の隠れた負の部分をひっぱり出しちゃっているんで、見ていて決して気分の良いもんじゃないです。 特に、いわゆる『世間からのはぐれ者』であるジェイコブとルー、それに対するハンク夫妻の対比が凄い。人としての道を確実に踏み外していくのは、良き夫、良き妻であるはずのハンク夫妻のほうである事実が怖いですね。世間一般の水準にあてはめた『善人』『真面目』なんてものが、いかに表面的なものかってのを見せつけられます。ジェイコブとルーなんか、お金が手に入ってもそんなに変わらないので、逆に人としてまともに見えます。 ジェイコブの『飛行機なんか見つけなければ良かった』という台詞が切ないです。ラストまで見たときに、冒頭のハンクのナレーションが意味を持ち始めます。欲にかられて失ったものの大きさを実感させられます。 好きなタイプの映画ではないので、この点数が精一杯です。ですが、私個人の好き嫌いを抜きにすれば、単純に映画としての評価は満点だと思います。ハンクたちは失うものばかりでしたが、この作品を観る人は教訓を得られます。 ただ、小説や映画に感情移入しやすい人は注意が必要かもです。鑑賞前は『これはフィクションです。』『これはフィクションです。』『これはフィクションです。』と3回くらいおまじないをかけておいたほうが良いかもしれません。 [DVD(字幕)] 7点(2015-04-20 14:16:06)(良:2票) |
58. ゴールデンボーイ(1998)
《ネタバレ》 ストーリーはいたって平凡。ですが平凡だからこそ、恐怖と緊迫感、そして危機感をリアルに感じ取れるのかもしれません。 ブラッド・レンフロのトッド・ボウデンと、イアン・マッケランのドゥ・サンダーが非常に良く、二人の心理戦だけでも見ごたえがあります。時には手を組み、時には火花を散らす、二人の独特な間合いとそこから生まれる緊張感が面白い。 今までスティーブン・キングの原作は一度も読んだことがなく、だから逆にキング原作の映画を面白いと感じるのかもしれません。今作に関しても、小説を読んでいるかのような雰囲気、リズムが大変良いです。音楽もマッチしています。 ドゥ・サンダーの狂気をトッド・ボウデンが継承したことを窺わせるラスト。ですがやはりインパクトは足りないですね。それに、始めから『悪』を内包しているかのような少年でしたので、それが表面に顕在化されただけとも思えます。どうとでもとれるラストが、すごく良いようで、何か惜しい作品でした。 [DVD(字幕)] 7点(2015-03-14 12:43:57)(良:1票) |
59. TAXi3
《ネタバレ》 見ている側の『慣れ』もあるのでしょうが、シリーズが進むにつれて、スピード感や迫力が物足りなくなってきていますね。 『でかい車が他の車を押しつぶす』『家を壊して進んでいく』『タクシーが雪山を走っていく』面白いのですが、このシリーズの魅力ってそこじゃないと思います。 やはり公道で走ってこそのTAXi。 日常の世界の中に映し出される非日常だからこそ盛り上がるものがあります。そのラインを最初から超えちゃうととたんに作り物感が強くなるみたいです。ですので冒頭のローラーブレードや自転車での疾走が一番面白い気がしますね。 シリーズものとして、おなじみの登場人物、安定したコメディが繰り広げられる展開が大変良いです。すれ違いや勘違いトラブルもおなじみのパターン。もはや定番化したドタバタを楽しむ作品です。個人的には一話完結のドラマを見るノリで見ているので文句はありません。少々ダメだしをしちゃいましたが、やっぱり面白い作品です。 [DVD(字幕)] 7点(2015-03-04 14:17:14)(良:2票) |
60. ドーベルマン(1997)
《ネタバレ》 個性的なアウトローキャラが次から次に出てきて楽しいです。脇役がキャラだちしている作品は大好きです。ムス、闘犬ことピットビュル、神父、ナット、マニュ(スナイパー)。願わくば、このメンバーにドーベルマンとソニアが加わって、もう一度くらい盛り上がって欲しかった。最後の局面が、やられる一方で、なし崩し的にラストまでいっちゃって、・・・終わり。少々味気ないですね。クリスティーが汚い花火で盛り上げてはくれますが、映像だけではなくストーリーでの盛り上がりが欲しいところです。 ソニアとクリスティー刑事のエピソードによって、それまで客観視していた観客は、間違いなくソニアやドーベルマンに肩入れすると思うんですよね。実際私がそうでして。そこで、今度は仲間のために立ち上がるのかと思っていたら、この結末です。ソニアの奥さんにいたっては、子供を取り返して撃たれちゃって、ひどいもんです。でももっとひどいのは、その後劇中でそのエピソードに全然触れないことでしょう。奥さん報われないですよ。 映画としては面白いし、飽きないし、良いと思うんですけど、この作品が万人に愛されないのもよくわかる作品です。 [DVD(字幕)] 7点(2014-07-14 00:30:27) |