1. ロッキー・ザ・ファイナル
非常にシンプルな映画でした。でも、シンプルであるがゆえに、勇気、努力といったメッセージが何の不純物もなく、観ている者の胸に飛び込んできます。年をとり、エイドリアンを亡くし、実の息子とも離ればなれに暮らしているロッキー。変わって行く街並、時代、人々。その中にあってロッキーだけは変わらない。エイドリアンとの愛で得た幸せを、出会ったこの地で一生大切にしていく老後が、前半のシーンでしっくりと描かれています。ただ悲しいだけじゃない。なぜならエイドリアンはいつもロッキーと一緒だから。ただ、こういう老後が本当の自分なのか、このままの生き方が本当なのか、その確認のため再びリングに立つ後半。映画的な興奮は、ロッキーのテーマと共に最高潮に。本能に訴える映画音楽として、この曲ほどアドレナリンが沸騰するものはない。そして、ラスベガスの試合。殴りあい、血がとびあい、汗が舞う。肉体の激突が語る多くの言葉に観ているこちらも目が潤む。魂は年をとらない。人生ほど重いパンチはない。どんなになっても前に進むんだ。そんな言葉のラッシュに、胸が熱くならない訳がない。過剰な音楽の演出もなく、試合終了後のロッキーの「さあ、帰ろう!」というセリフに涙が出た。そうだよね、エイドリアンのいるあの街に、またエイドリアンと生きていくんだよね。本当の自分をみんなに見せて、そして自分でも確認できて、良かったねロッキー。笑顔が本当に眩しくて、眩しくて。いい映画でした。最終章に相応しい作品でした。 [映画館(字幕)] 9点(2007-04-23 10:22:47)(良:7票) |
2. 街の灯(1931)
《ネタバレ》 自分ごときがチャップリンの映画を評するなんて。なぜならチャップリンの映画は、チャップリンの人生そのもの。しかも、その人生(=映画)が、どれだけ全世界のひとに「夢」「愛」「希望」「幸福」を与えてきたことか。リアルタイムで観ることなど不可能な自分に、故淀川長治先生は講演で、あらゆる著作でこの人物を、生き様を教えてくださいました。あたかも、目の前にいるかのような臨場感をもって。その時受けた感銘は、映画そのものをビデオやDVDで観ても決して薄れることなく、観る度にたまらない感動を伴って自分を包み込むのです。だから、冷静なレビューなど到底難しく、この映画の神様に対しては、どの作品も最高の評価になります。思い出として語るのを許されるのならば「街の灯」は、ビバ!チャップリンシリーズで上映された頃、満員の映画館で観ました。盲目の少女のために、その手術代を用意しようと奮闘します。自分は貧しくとも他人の不幸はみていられない。一生懸命なチャップリン。最後、目が見えて、2人が見つめあう。「あなただったのね」と分るシーン。チャップリンの少し申し訳なさそうな、それでいてうれしいような表情で映画は終わります。涙がこれでもかと流れます。この1本で一生分の涙を流すような、止まらない感動が両目からあふれます。横のおばさんが 「ええ人やねえ」と言っては、ハンカチを目にあてていました。ロビーでは、若い人がベンチに座りながらおいおい泣いていました。人が何の見返りも期待せず純粋に相手のことを思い、何かをしてあげること。「善意」を越えた「愛」をふり注ぐこと。この映画では、その大切さをしっかりしっかり伝えています。ちなみにハンカチをもってなかった自分だったので、パンフレットが濡れて大変でした。でも、それもまた思い出なので。 10点(2004-03-11 10:11:46)(良:5票) |
3. ニュー・シネマ・パラダイス
《ネタバレ》 これはもう映画の魔法。観ている人の気分を、幸せにしてくれる映画しか持ち得ない魔法ですね。映画しか娯楽のない時代の、ある街の、ある少年の話が、こんなにも泣けるなんて。主人公の友人である映写技師はただフィルムを回すだけ。たくさんのフィルムを回すだけ。自分では作品をつくらない。それは、他人の人生を多く見てきたことと同じ。だから、主人公の人生もフィルムと同じように、冷静に見ることができ、駅でのあんなアドバイスが出来るのですね。でも、映写技師は作品をつくっていた。世界でただひとつ。ただ1人の人に見てもらうために。その時、観客も主人公と同じ映像を真のあたりにする。検閲されたキスシーンの連続。遠い過去に忘れ去られた想い出の断片集。観客1人1人に送られた「過去」という記憶のメッセージ。感傷的と言えなくもないですが、人生において過去の自分を見つめる、思い出す事は、決して無駄なことではないはず。今の自分を再確認するためにも、こうした魔法にならよろこんでかかりたいと思います。 10点(2004-03-03 11:03:37)(良:4票) |
4. サウンド・オブ・ミュージック
《ネタバレ》 何回目かのリバイバル上映で観た時、「すべての山に登れ」が流れ「The End」の文字が出た時に、場内割れんばかりの拍手が起きました。中には立ち上がって拍手する人も。もちろん自分も思いっきり手をたたいていました。「ああ、映画ってこんな感謝の仕方があるんだ」と中学生の自分がもの凄く感心した想い出があります。それから、何度もビデオで、またDVDで観る度に、そのことを思い出し、ラストでは拍手するのですが、段々と感動する場面が変わって来ました。大人になったら大人の感じ方があるのですね。トラップ大佐との微妙な恋の交わし方、特にマリアと手を取り合って踊るシーンは今の方がグッと来ます。あと、修道院長のマリアのためを想いうたう「すべての山に登れ」は、これから何かを目指す若い人には、ぴったりの内容ですし。「すべての山に登りなさい。野を越えて、川をわたり、あなたが本当に愛することのできるものを見つけなさい。」うう、涙が・・・・。幅広い層に受けるのは、そうした題材を、マリアと子供達の歌と踊りを美しいスイスの風景に見事に溶け込ましたからなんでしょう。どの時代でも、この作品は「拍手」を持って迎えられると思います。 10点(2004-03-01 21:53:12)(良:4票) |
5. 雨に唄えば
《ネタバレ》 この映画については、自分の父親からその面白さ、歌の良さ等、何度も聞かされていました。音痴な父が、上機嫌な時に、必ず「シンギン・ザ・レイン~」と唄っていたので、「あの親父を唄わせる程の映画とは、どんな映画なんだろか」と劇場での上映を待つ事、何十年。MGM傑作選だったかで、昔のミュージカルのリバイバルのラインナップでこのタイトルを見つけた時は、「やった」と思いました。朝一にも関わらず、上映前から、長蛇の列。何とか座れましたが、その客層たるや、おじいちゃんからヤング(古い表現やなあ)、一番下は小学生か、君は?まで、実に幅広く、満員の状態で、誰もがうれしそうに上映を待っているのです。さあ、始まると爆笑、爆笑、そしてうきうき、涙と、顔面柔軟体操みたいに、誰もが楽しそうに観ているのです。親父が唄っていたあの「シンギン・ザ・レイン~」のシーンになると、どこからともなく、ハミングする人もいたりして。「ああ、分るわ。分る。こんなに楽しい映画だもの。唄いたくなるよなあ」サイレントからトーキーになる、映画界の大きな節目を、ロマンチックに、時にお洒落に、そしてお笑いで描いて、終わるのが本当に惜しくなる映画です。でも、これ以上は無いハッピーエンドで、席を立つ人ももの凄く満足していました。アメリカ映画のアメリカ映画たる所以を、(明るく健全なストーリー)楽しい音楽と歌で見せつけたまさしく傑作です。どの世代にも楽しめるなんて、なんて幸せな映画なんでしょう。 10点(2004-03-03 16:16:50)(良:4票) |
6. オールド・ルーキー
《ネタバレ》 アメリカ映画で描かれる「野球」というスポーツには、日本では考えられない程「特別な想い」があるのだろうか。「ナチュラル」しかり、「フィールド・オブ・ドリームス」しかり。その根底には必ず父と息子の絆が存在しています。この作品でもそう。転校、転校でおそらく父とのキャッチボールなどしていない主人公が、独り黙々と金網にボールを投げるシーンでは、どうしようもない寂しさがつきまといます。「野球よりも大切なものがある」その父親の言葉に反感を覚えながらも、またもや独りで ボールを投げては、「野球」への想いを温めていた場面はやはり切ないものがあります。でも、大人になり、教職に付きながら、テストに合格し、メジャーのマウンドで投げた後、父親にそっとボールをわたす瞬間、ああやっとキャッチボールができたんだな。長い長い時間を経て、ようやくボールが届いたんだな、と思わず涙。父と子の、最初の通過儀礼としてのキャッチボール。アメリカは、それがないと何も始まらない国なんだなと、改めて思いました。 8点(2004-02-18 15:03:58)(良:4票) |
7. スーパーマン リターンズ
今作を観る前に、ドナー監督の「スーパーマン」をDVDで観ました。あの有名なオープニングタイトルの爽快さを今作でも感じることが出来、その時点で私の評価は高得点域に。しかも、内容はドナー版のクラシカルな作りを意識して、最近の映画に見られるアップテンポな進展ではなく、ひと昔前のハリウッド大作ロマン映画なる香りさえ漂わせています。たとえは乱暴ですが、ミスタードーナツのオールドファッションのような感じですか。今作の監督がドナー版をとても愛しているのがよく分ります。ヒーローがヒーローとして存在すること。それは、単純に世の中の悪い事、また、災害や事件から人々を救う事。スーパーマンが遥か地球の空の上、耳をすまして世界のニュースを聴いている場面では、なぜかうっとりとしてしまいました。特撮部分の出来もすごく、飛行機を救う場面などは、思わず声を上げそうでした。メジャーリーグのグラウンドに降り立ち、皆の声援を浴びる場面ではなぜか涙が。年をとっても、自分の中では、まだヒーローを欲しているんだなと納得。これって、サンタクロースの存在を信じていることと同じ現象なのかな。 とにかく、面白かったです。クリストファー・りーヴが演じて完璧なものとしたこの偉大なヒーローを、もう新しい作品はみることが出来ないだろうと、くじけてた心に見事よみがえってきてくれました。出来るならもう少し大きなスクリーンといい音響装置の中で観たかったです。公開初日なのに、え、なんで、この劇場で?とショックでした。 [映画館(字幕)] 9点(2006-08-21 18:52:59)(良:3票) |
8. ザ・マジックアワー
《ネタバレ》 映画を愛する人、映画が好きな人、そんな人にはうってつけの作品です。もちろんそうでない人にも全然いいです。ただ、映画に何か思想なり、メッセージなり、自分と向かい合う問題提起だったり、娯楽以外の何か、またはその他もろもろを求める分には、全くもってお薦めできません。笑って、しんみりして、ああ楽しかったね、と終る。それだけの作品なんです。それだけの作品なんて、他にもたくさんあるのだろうけど、この作品には、少なくとも作り手の楽しませる工夫がまじめに画面に滲み出ています。いかにもなセット、時代も現代なのか、はたまた昔なのか?ホントに日本なのか?ギャングがのさばっているには平和な印象を受けるのは?なんだかとても現実離れしている世界が目の前にあります。でも、それが映画というものなんですね。つくられた箱庭の中で、あれやこれやの騒動がおこり、同じ箱庭の中で解決していく。監督の頭の中に、きちっと組み立てられたものが、上手に伝えられていると思いました。現実にはありえない話だからこそ、面白い。現実とは違う次元に連れていかれるから楽しい。あくまで娯楽。多くの観客が、エンドクレジット中、席を立たなかったです。拍手も起こりました。車椅子で観賞に来ていたおばあちゃんが笑ってた。無骨そうなおやじさんがパンフレットを恥ずかしそうに買っていた。そんな気分な映画なんです。言葉では伝わりにくい何か幸せなものが、この映画にはたくさんありました。 [映画館(邦画)] 9点(2008-06-25 11:18:24)(良:3票) |
9. 東京ゴッドファーザーズ
《ネタバレ》 日本のアニメーションというのは、なんとも凄いものだなあ。言葉が悪いですが、実写の映画よりも「映画」しているのが、その感覚、その描写に見事に現わされています。オープニングタイトルとそれに続くスタッフの紹介なんて、もろ自分好みです。はい。 看板やのぼり、ネオンサインに脚本家の名前や監督の名前なんて、東京という箱庭の中でしっかり自分達の遊びを実現しているみたいです。いいセンスだなあ。そして、お話も、「そんなことはないだろう」なのですが、存在感のある三人のホームレスのお陰で納得できてしまうのですね。声優に俳優を起用するという点で見事プラスになっています。あと、冬の年末の東京の描写が物凄い。雪との対比。町中の壁や灯りまで、よく書き込まれているなあ、という次元を越えて、ずかずかと見ている者の目の中に入り込んでくる臨場感があります。この美術だけでも堪能できます。捨て子の親を探す、東京ロードムービーの趣の中、見せてくれるのは「奇跡」。離れた肉親との絆、苦い過去を持つ者の弱さ、はかなさ。清子を中心に描かれる三人の人間模様は決して明るくはありません。でも、力強い。社会の底辺だろうがなんだろうが、どっこい生きている。そんな逞しさがあるからこそ、清子を救うという行動に出るのだろうし、きっと神様もそんないじらしい努力を重ねる三人に「奇跡」を与えたのだと思います。こんな愛すべき奇跡があるのですね。心の一番深い所で泣いてしまいました。良かったです。素晴らしく良かったです。 10点(2004-05-31 18:25:53)(良:3票) |
10. ダイ・ハード4.0
《ネタバレ》 幸いにもこのシリーズは全て劇場で観賞することが出来ていて、今回の新作も迷いもなく前売りを購入して観に行きました。3作目からもう12年。1作目では、まだふさふさ感のあったマクレーンの頭ももはやスキンヘッド状態。観ているこちらも確かに年はとっているのだが、DVDの普及により、1作目の活躍が昨日のように思えて、まだまだ若い現役のマクレーンが印象強い。しかし、今回の作品は、確かに1作目の素晴らしい脚本には巡り合えてはいないけれども、面白かった。楽しかった。年を重ねた主人公を認識させる最初の娘とのシーン。平気でアップでみせる顔の傷や皺や皮膚のたるみ、同行するハッカーに愚痴る今までの活躍の結果に得た空しささなど、ただの人間としての主人公がよく描かれています。スーパーマンばりのアクションだけど、そこには必死になって、うろたえながらも、しぶとく粘り強く生き抜く姿があって、感動してしまった。悪党との格闘でも決してスマートじゃない。こんにゃろ、死んじまえ、ばかやろうなどの暴言をはきながら(吹き替え版も鑑賞しました。野沢那智さんが声を当てられていました)どうにかこうにかやっつける。クライマックスのトラックと戦闘機のチェイスもありえないだろうの場面だけど、これはサービスと考えました。最後には、自分も撃ちながら敵をやっつけるのだから。究極のアナログ戦法と言えるのでは。サイバーテロという超近代的な事件に対し、鳩時計とさえ言われた主人公の奮闘。その対比。コントラスト。人間の底力をこれでもかと見せつけるマクレーンにただ拍手です。 [映画館(字幕)] 9点(2007-07-19 16:18:26)(良:3票) |
11. ALWAYS 三丁目の夕日
《ネタバレ》 予告編で東京にやって来た六子が工事中の東京タワーを車の中から見上げるシーンがあり、それだけでこの映画は絶対見なくちゃだめなんだと、何かに憑かれるように劇場に足を運びました。邦画を初日に見るなんて行為はここ何十年の中でもなかったことでした。そして見終った後、予告編で決意したことは少しも間違っていませんでした。昭和という言葉自体に、既にノスタルジーを感じてしまいますが、それは物であったり、風景であったり、また世相を表す文化や風俗に対して抱いてきたこと。この映画を見る限り、それらはあくまでも視覚の手段に過ぎず、それらのものよりも人間自身、その時代を生きている人々全てに何か暖かい、優しい昭和を猛烈に感じます。緻密に再現されたセットとCGの中で、実に生き生きと役者さん達が演じている様が、演技を通り越して、まるで古いアルバムの中でしゃべっているようなそんな錯覚を覚えました。東京生まれではないし、33年に生きていた訳でもありません。しかし、懐かしい、ホントに懐かしい時間を、この映画はもたらしてくれます。日本人が日本人であった頃、面白い事や悲しいことがみんなの共有物であった頃、そして何よりも人が確かに見えない何かでつながっていたことが、よく描かれています。ラストに人々が見つめる夕日のなんと美しいこと。あの頃の人々と比べて、今の自分、今の人達はどう変わったんだろう。あの頃に思い描いていた未来とは少し違っているかも知れません。でも、この映画を作った人達、そしてこの映画に感動した人達には昭和の、あの夕日町三丁目の人々の思いはちゃんと伝わっているんだと思います。映画が終っても席を立てずに、ただただ、涙していました。また、愛すべき映画がひとつ増えました。なんだかありがとうと言いたくなる素晴らしい映画でした。 [映画館(字幕)] 10点(2005-11-07 10:32:46)(良:3票) |
12. バイオハザードII アポカリプス
《ネタバレ》 音響効果の優れた映画館での観賞が幸いして、物凄く楽しめた作品でした。アクションに徹した内容が分かりやすく、テンポよく、そして迫力があって、言葉による説明が省けて断然良いです。そのためか、もう劇画、漫画、はたまたアニメーション然とした処はありますが、主人公のアリス、そしてゲームから抜け出てきたかのようなジルの見せ場づくりには大成功ですね。特に教会でのアリスの登場シーンとモンスターをやっつける処などは、鳥肌もの。どうすればカッコイイのかを考えて、考えて見せきった感じがして、興奮しました。「バイオハザード」というゲームをやった方なら、ピンとくる小ネタ(教会のろうそく、ドアを開けるシーン、ネメシスを落とすヘリのシーンなど)もちゃんと用意してあるあたりもうれしかったです。それにしても、ゲームが各国の恐怖映画、ゾンビ映画、をモチーフにして作られて、それがまた映画に対して影響を与えてこういう形で昇華されるなんて、これも一種のコラボレーションじゃないのかな。クレジットの最後に大きくカプコンの文字が出て来たときには、日本人として自慢したくなりました。(自分が大阪人なので大阪に本社があるのもうれしい)アリス計画の始動するパート3が早く見てみたい。そんな気にさせる映画です。 8点(2004-09-21 09:26:25)(良:3票) |
13. スパイダーマン2
《ネタバレ》 感動しました。あまりにも面白くて。アメコミヒーローの世界観を見事に映像で見せ切っているところに。漫画と言えばそれまでですが、コマ割の中で見せるアクションの数々も構図や色彩でカッコイイものですが、映画ではそれ以上の迫力ある表現が成されていて、何度も画面を見ては唸ってしまいました。摩天楼を舞台にしたアクションでは、あの浮遊感、あの爽快感はもう他の作品では味わう事の出来ない迫力。さらに、アクションだけでなく、今作のテーマもいいです。ヒーローであるが故の悩み、ヒーローであるが故の孤独をトビー・マグワイアが好演。どこにでもいる普通の青年役を普通に演じて、よりスパイダーマンを魅力ある存在に見せています。(劇中、スパイダーマンを辞めて自由を満喫するシーンで『雨にぬれても』がかかります。大きいスクリーンで聞く事はもう無いだろうと思っていたのに、なんと嬉しい事でしょう!今作のスタッフはセンスがいい!)そんな、主人公が再びマスクを手にスパイダーマンになり、戦う決意の元、暴走する列車を止めるシーンでは涙が溢れました。自らマスクを剥ぎ取り、先頭車両に立ち、必死で止める様は、まさしく本作のクライマックス。やっと止まった列車から落ちそうになったスパイダーマンを乗客の手が支えます。黒人の手もあれば、白人の手もあり、様々な人種の手がスパイダーマンを運び入れます。「まだ子供じゃないか」の声にポロリ。子供達の「お帰りなさい」にポロリ。悪役がそこをどけと言っても 「俺を倒していけ」という乗客一人一人のスパイダーマンを守る姿勢に涙がドドドドッ。心突き動かされました。こんな描写があるからこそ、ヒーローが戦うべき理由があるのですね。最後、MJにも正体がばれますが(この時のMJの表情もいいですね。「あなただったの?」分りかけてはいたけれど、はっきり確信したときのなんとも言えない表情がたまらなくいいです。)とにかく、スカッとして爽快。それでいて、ググッとくる感動。娯楽大作としての見応えもたっぷりある本作品。あと2回は見るでしょう。こんなに身近に感じられるヒーローなんて、滅多にあえないですから。 9点(2004-07-12 12:18:29)(良:3票) |
14. クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲
《ネタバレ》 涙、ただ涙。号泣したのは久しぶりです。大阪万博、拓郎の曲、夕焼けの街角、豆腐売りのラッパ、ほんの何十年か前の世界に強烈なノスタルジアを感じて、観ているこちらまで、ひろしと同じように染められていきます。でも、この映画の主題は「明日」。 ひろしには思い返すべき、個人の歴史があります。しかし、しんちゃんやひまわりにはこれからの歴史があります。明日を生きる歴史があります。過去を額縁に飾って見るのは、昨日にすがって生きているのと同じ。とても強く、たくましいメッセージで、その発信をしんちゃんにさせているところが、本当にうまいです。 塔のてっぺんまでひたすら走る、走る、走るその姿に、「がんばれ!」と涙声をかけては、必死になる何かを、捨ててはいけないんだと教えてもらっています。アニメとか実写とか、そんな垣根など、この作品の前では「無」に等しい。40代の人、必見です。 10点(2004-03-01 22:08:00)(良:3票) |
15. 風の谷のナウシカ
ごめんなさい。映画館で観た時に寝てしまいました。その後、眠ったところまでまた席についたまま見ようとしたのですが、睡魔が襲ってきます。断念して、その何年か後、TVやDVD(レンタル)でやっと本編を通して見ることが出来ました。何故、眠かったのだろうかと考えると、別に大画面でなくても良かったのかも?という一つの答えが導き出されました。自然と人間が共に生きていくために大切なことって、何?そのひとつの方向性を見い出しナウシカが奔走するのですが、心が震えてこず。メッセージばかりが強くてセル画の裏側から制作者の顔がどうしても浮かび上がってきます。その主張するものが大きくて、ピンとこなかったのかも知れません。大画面を活かした展開でもなかったし、そういうメッセージならば本でも充分伝わるような。どちらかといえば(言葉は悪いかも知れません)宮崎氏の趣味についてのエッセイを見ているような(自然と人間についての僕の覚え書き、みたいな)そんな錯覚が今でもあります。名画と呼ばれ、愛されている作品なれど作家性の出過ぎた点では、自分は少し敬遠したい映画です。 5点(2004-03-29 21:10:53)(笑:1票) (良:2票) |
16. ガチ☆ボーイ
《ネタバレ》 初日のレイトショー、と言っても映画の日で1000円で観賞できたのだが、これは3000円払ってもいい。なんか他の話題作に押されて、お客さんがとても少なかった。それでも主人公の恋が破れる後半からは、鼻水をすする音がそこかしこに。かくいう自分も最後のプロレスの試合の場面では嗚咽をもらすほどの泣きっぷりで、感動しまくり。マリリン仮面を必死に応援してるプロレス仲間以上に、握りこぶしを作って声を出している自分にびっくり。横の妻もびっくり。感情移入どころじゃない臨場感が、自分に満ち満ちてきて、後にも先にもこんな興奮はないのでは。記憶をなくすという難病を背負いながらも、プロレスで得た痣や痛みを心の記憶に残し、毎日を生きる。佐藤君の無垢な笑顔が切なさを増させるのだが、単純なお涙頂戴ではない。必死という言葉を自分も使うことが多々あるが、毎日毎日、昨日までの記憶をノートで確認しながら、毎日毎日決意するなんてこと、自分のいう必死とは明らかに違う。主人公の方が必死に生きている。平凡な日なんてない。毎日が違う。昨日の続きではない今日。体が覚えている最後のドロップキックは自分にも向けられた主人公の生き様そのもの。毎日を生きるということを真剣に感じさせてくれて、御礼を言いたいくらいです。最高の映画でした。 [映画館(邦画)] 9点(2008-03-11 19:05:23)(良:3票) |
17. スクール・オブ・ロック
《ネタバレ》 映画関係の雑誌でこの映画のタイトル、そして少しの内容説明だけで、観たくて観たくてたまらなくなった作品です。GW公開と聞いて前売り券も購入。そしてついに初日。朝一番で劇場に駆けつけました。パラマウント映画のロゴマーク出現、そしてオープニングタイトルまでまさに「ロック」してます。カッコいいです。 ロックに魅せられ、ロックそのものの主人公が名門学校の臨時教員となって、生徒の心の箍をはずし、コンプレックスをなくし、共に熱くなるという展開は、過去にも多くの作品あり。「今を生きる」「陽のあたる教室」「ミュージック・オブ・ハート」など。しかし、今作品がそれらと一線を画するのは、ジャック・ブラックのキャラクターの濃さと、むしろ反社会的なロックという音楽。確かに生徒、親御さん、頭の固い教師との和解などはあまりにも予定調和です。それでも見せてしまう、観てしまうこの勢いとこのテンポ。ロックの魂を心底感じさせるこの高揚感は一体何?ラストのロックバンドのコンテストシーンでは、涙、涙、涙。一途に、馬鹿に、必死にやっている人間ほどかっこいいものはない!デブでさえない主人公がもう素敵に見えてくるんだから。思わず拍手してしまいました。笑いもふんだんにあり、ロックの歴史も勉強できて、そしてエンドクレジットまでたっぷり楽しませてもらって、いやあ最高!宝物になる愛すべき映画。 最近、楽しいことないっていう人、見たらきっと幸せになるよ。 10点(2004-04-30 12:02:31)(良:3票) |
18. フットルース
この映画には、映画ファンにあるまじき行為をしでかしてしまい、大変申し訳なく、ひたすら誤りたい思い出があります。それは、ロードショー当時、居酒屋でお酒を飲んだ後、オールナイトでも観に行こうという事で、男2人劇場に足を運んだのです。当然、オールナイトですから、終電はなく、朝まで観ようかと座席に着いたのですが、1回目、初めてだし、ストーリー知らないから 面白く観れたのですが、問題の2回目。多少のお客の入れ変わりがあり、新しいお客さんが私達の前の席に来たのですが、そんな事気にもとめずに、本編が始まると、主人公がピンチになったりすると友人曰く「こいつさっきも(1回目)同じ失敗しやがって、学習能力ないのか?」とか、「同じ曲ばかりかけやがって、さっきも聴いたわ?」と映画にいちゃもんをつけはじめたのです。私も「そうや、そうや」と合いの手を入れ、しばし漫才状態。後ろの席の人は2回目なので、笑ってましたが、前の席では怖いお兄さんが睨みを効かせてきて、私達をびびらせ、だまらせる計画を実践しだしたのです。それに、過剰に反応した我が友人は文句を言いながら、前のこわもて兄ちゃんに「ちょっと出ろや」と喧嘩を売る始末。私も「他人です」なんて顔もできずにロビーに出る事に。「何、ぺらぺらしゃべってんねん。おもろないやろが!」と向こうか切り出したら、友人一言「じゃあ、面白くしゃべってあげる」と返して、殴られていました。私も殴られました。痛かった。友人は殴られても酔いがまださめてないのか「俺の解説、間違ってたか?」ちゃうわ、アホ!眼鏡割れるし、劇場の人には怒られるし。結局、始発まで外で待ってました。映画の方は、青春MTVてな感じで、物語よりも音楽が良かったです。感想なんてところじゃなかったのが事実なんだけど。お酒を飲んでの観賞もしていませんし、人に迷惑もこれ1回こっきりです。 6点(2004-03-03 15:04:29)(笑:2票) |
19. バイオハザード(2001)
《ネタバレ》 「バイオハザード」のゲームは何作かプレイしたことはあります。恐怖の演出はよく出来ており、その当時ゲームのジャンルではなかったサバイバル・ホラー・アクションという分野を確立させた画期的なソフトであったと思います。映画化の噂はいくつも飛び交っていました。果して、あの恐怖がどのようにスクリーンに反映されているか。興味の点はそこにつきます。しかし、この作品はゲームと違い、アクション映画としてのテイストをふんだんにまぶして、視覚的な面白さを追究しています。ゲームから拝借したのは世界観だけで、全く独立したスタイルで「映画」になっています。ゲーム未プレイ、又は全く知らない人も馴染める作りには好感が持てます。ただ、やたらと多いスローなアクション演出は(緩急のメリハリだと思いますが)見慣れているせいもあってあまり新鮮さは感じず。主人公が脱出する後半の展開も施設の内容や様子が詳しく描かれていないため、そのルート、時間的な面で緊張感があまりありません。最後のクリーチャーとの戦いは面白いのですが。2が出来るラストシーンの見せ方は、それなりにショッキングな印象を与えてくれています。惜しむらくは、パニックがあったであろう街の様子を、もっと陰湿に、もっと黒い雲が街を覆い昼なお暗いという雰囲気で見せてくれればと、欲を出してしまいます。その方が、主人公のこれからどうする?という不安感を募らせる幕切れになるのでは。 6点(2004-03-15 09:40:59)(良:2票) |
20. ガメラ2 レギオン襲来
《ネタバレ》 はっきり言って、私はゴジラがきらいです。子供の味方なのか、敵なのか、その所在をはっきりさせて欲しい!中途半端はいけません。怪獣たるもの、その大きな図体でどっちつかずにいるなんて、狭い日本では迷惑です。なんて、全然ガメラに関係ないんだけども、怪獣映画というと過剰にゴジラアレルギーが噴き出してしまうので、ガメラも同じかと思ったら、全然違うのでビックリ。映画なのです。しっかり。それも超大作。特撮にも力入っています。セットも凄いです。効果音も耳に響きます。ガメラの造形もシャ-プで凶暴そうで、これぞ怪獣になっています。また、ドラマの盛り上げ方もうまい。自衛隊の描き方もそつが無く、きっちりまとまった作品です。特に、ガメラが地球の守護神というのがいい。大きくでたもので、地球ですか。でも、これぐらいの存在意義があった方が、他の星の怪獣と闘うには充分な理由があるというもの。納得、納得。「ガメラはレギオンを許さない」なんて名台詞ですね。普通は「やっつける」「退治する」等の言葉なのでしょうけど、「許さない」には、命に代えても守るべきものがあるという決意の現れが込められています。平成ガメラシリーズとして3作が製作されましたが、その中でもこれが1番でしょう。過去の怪獣映画のジャンルでも、この作品の完成度の高さには及ばないのでは?と思ってしまいます。 9点(2004-03-03 14:40:39)(良:2票) |