1. ガッチャマン
《ネタバレ》 という訳で、タツノコプロなら「みなしごハッチ」「タイムボカン」シリーズ、「新造人間キャシャーン」という40過ぎのおっさん…どうでもいいや。前評判からして「ひ~どいう~わさの、ガッチャマ~ン」である旨は聞いてたのだがここまでやっつけ仕事なのは如何なものか。名作アニメの実写化という時点でオリジナルを超えるのは難しいし、40年前のアニメなので2013年時の社会情勢との乖離があるのは仕方がない。正直配役も不満はあるが多分松坂桃李や剛力彩芽あっての企画なのだろう。問題は原作への愛着感がまったく見受けられないという事が素人目にもわかる、という事に尽きる。関係製作者にキャラクターに対する愛情や敬意があり、そのイメージを壊さないように設定や脚本・配役を立てるという当たり前の事を順守するという点、この「ガッチャマン制作委員会」というのはわかっていないらしい。出演者曰く、「世界観はこちら(演出や脚本)で構築するので、原作は見なくて良い」という指示をする製作者自体、この名作アニメは単なる金儲けの一環で「国内が駄目でも、ソフト化+他メディアの展開+海外上映等でカバーするもんね」という意図が見えて虚しささえ感じる。世界の半分を17日間で征服→13年後ってその間何してたのギャラクター。そんな人類の危機下にも関わらず東京はのんきな日々で白鳥のジュン両手ショッピング。ジュンの婚活。健とジョーとある人物の三角関係。戦闘直前まで「俺は…」みたいな語りを滔々とするガッチャマン。力不足のCG。水野晴郎先生が「シベ超」に掛けた情熱の1%位、あればなぁ…。 [映画館(邦画)] 3点(2013-08-30 09:58:35)(良:4票) |
2. じゃりン子チエ
《ネタバレ》 先に述べておく。極・私的高畑勲監督の劇場映画最高傑作は「火垂るの墓」でもなく「平成狸合戦ぽんぽこ」でもなく、(「パンダコパンダ」には傾きそうになるが)この作品である。...思い起こせば映画好きの友達と激論を交わした。友曰く、漫画+TVアニメと雰囲気が違う/ヒラメちゃんが出てこない/いきなり「ゴジラの息子」映像の挿入はそぐわない/吉本芸能の大御所を使った声優陣がうっとおしいなど。...いやいやその観点が可笑しいのだ、わからずやめ。この劇場版での高畑監督の意図は「(原作とは異なる)1960年代後半の大阪を舞台としたじゃりン子チエ」物語・ファンタジーの創出であり、はるき悦巳原作の完璧な再現であったTV版とは違うのだよ。吉本芸人に求められてるのは関西社会の雰囲気であり演技ではない。そしてチエちゃん一家の生きる活力=明るさにフォーカスをおいた原作よりも、人生の浮沈盛衰=現実感ある市井の生活に視点をおけば悲哀感が出てくるのは当然。そこがいいんじゃないか。(家族旅行が原作では金閣寺→遊園地に変更されたのも印象的。映画表現においては「遊園地=不安の隠喩(メタファー)」でもある) こんな議論も最後は「世界名作劇場の高畑作品最高」→「『ハイジ』は別格として『母をたずねて~』と『アン』、どっちが好きか」になってゆくのでした...。高畑監督ご冥福をお祈りします、そして有難うございました。 [ビデオ(邦画)] 8点(2018-04-06 10:31:13)(良:3票) |
3. ワイルドバンチ
《ネタバレ》 モンティ・パイソンの短編にペキンパーの流血描写を茶化したコメディがあり、それを見た若き日の私は「イギリス人は馬鹿だ」と本気で頭にきた事を思い出します。この人の映画の本質はやはり「時代遅れの人達への共感と古きよき時代への郷愁」ではないのでしょうか。ペキンパー自身が西部劇の黄金時代から衰退期を経た、時代遅れの生き方を余儀なくされた映画監督だったのだからその思いはひとしおです。生き残ってしまったソーントン、時流に置いてきぼりにされてなお生き続けていくことの苦しみはいかばかりか(ロバート・ライアン最高) だからこの映画で最高に輝いている場面はそういったダサい男達が見せるふとした幸せや喜びをかみ締めているシーン、メキシコの村を離れるところや銃器を強奪後に酒を飲みあい笑い会うあれだと思うのですよ。それをスローモーションの流血描写だけことさら強調して映画の情報誌によく書かれている「今のアクション映画の原点はペキンパーだ」という文章、あれはこれから映画を見る皆様、そしてペキンパーに失礼だろうがとこの映画が大好きな私は思うわけですよ。文章が雑になってきましたので頭を冷やしてきます。 [映画館(字幕)] 10点(2006-04-16 23:08:38)(良:3票) |
4. エイリアン
《ネタバレ》 私はこの映画、「セックスとジェンダー」という体と精神両面から男性に虐げられる女性の深層恐怖を「異性人=エイリアン」で表現した作品と認識しています。他の方も述べられているのですが成長したエイリアンはまさしく男性器のメタファー、卵という媒体を通じて生まれたチェストバスターは望まれない妊娠=レイプへの恐怖を表しているようにしか思えません。そして平凡パンチを口の中に押し付け殺人をもくろむアンドロイド、これなんかはあまりにも露骨な男尊女卑主義者の典型でしょう。マザーコンピューターは「おふくろさん」にも関わらずやることはパワハラ、この皮肉。リプリーが一人になってからこの映画は素晴らしい展開を見せていますがそれは彼女が対するのはエイリアンだけではない、パワハラやセクハラといった人の心の奥底に潜む暗い、「目に見えないもの」への反抗・戦いだからこそ。もう一つ、最後に彼女が振り絞って歌う「君は僕の幸運の星」~「雨に唄えば」だよ!このセンスに脱帽。こういった世界観を生み出せるか単なる勢いかが監督スコットとキャメロンの違いであり、この作品は監督スコットの最高傑作。 [映画館(字幕)] 9点(2007-12-31 20:15:51)(良:3票) |
5. 男はつらいよ
日本全国の観衆に感動・誇り・人の心の暖かさ・生きてゆくことへの活力・涙等を約25年間与え続けた上、邦画の低迷期に唯一その存在意味を知らしめたこの長寿シリーズが無ければ多分日本における「映画」文化は没落したであろうし、庶民文化としての「落語」というジャンルは壊滅の道を歩んだものと自分は思っている。そんな愛すべきこの作品にどうして低い評価をつけられようか。そういった点も含めてこの点数。 [映画館(邦画)] 10点(2008-10-18 22:19:24)(良:3票) |
6. 誰かがあなたを愛してる
極私的チョウ・ユンファの最高傑作はまさしくこれ。異国の地で暮らしている寂しさを漂わせつつ、精一杯の明るさで振舞う彼の演技は素晴らしい。また若くしてこの世を去ったダニー・チャン、この後映画界を引退したチェリー・チャンにとってもこの映画は「最高の瞬間をフィルムに残せた」奇跡の一本。 [映画館(字幕)] 10点(2006-06-03 00:26:42)(良:3票) |
7. 浮雲(1955)
《ネタバレ》 正直若い頃にこの映画を見た感想は「退屈」、それしかなかった。「稲妻」「おかあさん」「乱れる」を観ていてじゃぁこの傑作に!と臨んだらこれだ。あり得ないくらいの暗いトーンに繰り返し流れる重苦しい音楽。森雅之が演じる富岡の屋久島赴任に伴う高峰の「私も連れてって!」に関しては最後憤怒の情すら湧いた。なんじゃそら。ところが今日この映画を見直して本当に胸うたれた。年を経れば経るほど恋愛には不安や暗い面が伴うこと。と同時に若き日の想い出はなぜか明るく楽しかった事しか覚えていないこと。昔の想い出から抜けきれないまま(日光のあるシーンというのが過去の赴任地=インドシナの想い出のみというのが深い)、どこまでも墜ちてゆく彼ら二人とそのような世界を構築した監督成瀬の凄みを感じてしまった。無駄なベッドシーンばかり挿入し「性欲まるだしでーす」みたいな不倫を取り扱うばかりの今の邦画界はこの映画を観て、猛省していただきたい。同じ時期に大石先生とゆき子を演じていた役者高峰の素晴らしさ(この人の魅力は顔もさることながらあまり美声とはいえない「声」)もあるけれどやっぱり森雅之の演じた富岡=邦画史上どの役者も真似できない、役柄の造形につきる。高峰さんの訃報を受けて書いたこのレビュー。今頃天国では成瀬&木下監督が早く高峰さんと新作を撮りたいとウズウズしているよ!改めてご冥福をお祈りします。 [映画館(邦画)] 10点(2011-01-01 13:07:26)(良:3票) |
8. 洲崎パラダイス 赤信号
《ネタバレ》 別れた方が良いのは十分わかっている。お互い仕事は見つかったし、自分をちゃんと支えてくれるパートナーも出来そうだ。それに流れ流れた恋の行く末が悲劇となってしまった例をこの眼で見てしまったのだから、、、、でも別れられない二人。本当に忸怩たる思いですなコリャ。それでも赤信号を越え深川の洲崎門を離れていく二人の乗ったバスは素敵な未来へ向かって行くと信じたい! 90分にも満たない小品ですが私も好きです。 [DVD(邦画)] 8点(2006-04-14 21:26:22)(良:3票) |
9. 人間蒸発
《ネタバレ》 (もろネタバレです)「ドキュメンタリー」というジャンルに分類されているこの映画ですが実際の所は真実と虚像のごちゃ混ぜになった内容で今村昌平の弟子である原一男の映画「ゆきゆきて、神軍」「全身小説家」の先駆けという内容でしょう。映画が進むにつれ「真実を映し出す鏡たるドキュメンタリー」といったお決まりのパターンにはまる事などまったく無く、男の存在なぞはついぞ出てこない。なぜゆえに失踪したのかも提示されない。この男と婚約者、その姉との三角関係が現れて観客はそこに原因があったのか、とかんぐりたくもなるがそれも単なる推測、勝手な想像として流しているだけであって実際はわからない。そもそも失踪した男の存在すら虚構で、これは「実録」という名を借りたフィクションなのではないかとも思う。でも私はこの映画を高校生の時に見て、物の見方、特にメディアというフィルターを通して映し出されたニュース映像は100%それが真実を示しているわけではなく、第三者(撮影者とか、編集とか監督など)の視点から見た事実にしか過ぎないのかなという啓蒙を与えてくれたという意味で大いに良い映画だった。ただこれは(今でもお昼のワイドショー、巷のゴシップ紙なんか典型的だが)記事になっている・写されている人間の思いをまったく無視し、視聴者に判断をゆだねるという無責任な行為であって不快になる人も出てくるだろう。そういった意味では賛否両論、問題になりやすい映画でしょう。 [映画館(邦画)] 9点(2006-04-19 23:44:06)(良:3票) |
10. グロリア(1980)
《ネタバレ》 若き日の自分なら多分この映画に「4」くらいしか付けなかったと思う。アクションは妙に中途半端だし(敵役もこれといった印象は残らない)助けられる子供もナタリー・ポートマンは何とかしたいがこのガキはドーデも良いやという感想しか起こらなかった。ところが不思議なもので年を重ねてこの映画を見るとその雰囲気、例えば冒頭の朝のニューヨークの場景や子供を連れて逃げたホテルの部屋で夜一人佇むグロリアを映すショットといったその「空気」にやられてしまっている自分がいる。カサベテスのベストではない気もするし、元々自作撮影用の資金集めの為に他者に提供する目的で書いた脚本で彼自身本当に撮りたかったかどうかは?なのだがそれが彼の代表作になり、愛妻ローランズはアメリカインディー映画界のミューズ(女神)になったのだからわからないもんだ。マイナスはラストのあの音楽。「ロッキー」のビル・コンティは無いんじゃないの? [映画館(字幕)] 8点(2007-05-20 20:43:32)(良:3票) |
11. 二十四の瞳(1954)
《ネタバレ》 美しい小豆島の自然描写と学校唱歌の効果的な使い方だけではない、監督木下の描写あってこその映画。それは桜の木の下を電車ごっこで走るショットの幸福感や教え子達を戦地へ送る際のテープを持つ手のアップカット、または走る自転車をロングショットで捉えたところはどこまでも続いていく道の厳しさ・そして希望へつなぐ道行きを感じさせるのがやはり並の監督ではうまくはいかない所。そして戦争に巻き込まれる市井の憤りや無念さを静かな風景との対比でちゃんと描き出している点が「静かなプロテスト」木下の面目躍如たる部分。ラストに近づくにつれ泣いてばかりいる「大石先生」高峰秀子の演技は通常の役者が演じたら嘘くさいものになってしまう(リメイクはほとんどそう)が、失ったものへの想いや歳月の重さ、そしてそれでも生き続ける難しさと生きることへの希望が混在した名演技だからこそ観客は皆納得されるのだろう。と書いてますけどねぇ、この映画私にとって「パブロフの犬映画」、つまりラストはいっつも泣かされっぱなしなんですよ!国民必見の一本。 [映画館(邦画)] 10点(2008-04-05 19:42:25)(良:2票) |
12. 死霊の盆踊り
《ネタバレ》 おっす!おらNbu2!おらもレビュアー仲間にいれてくれよな!(野沢雅子さんの声で) という訳で今年最後の映画鑑賞、アラフィフおじさんがこの度32年ぶりのスクリーンリバイバル・HDリマスターを劇場で見ましたよ。もう何と言うのか...劇場で映画を鑑賞して「2001年宇宙の旅」「アラビアのロレンス」「燃えよドラゴン」を見たのと同等の衝撃=何にも感慨が起こらないという衝撃、虚無の感情が脳内を駆け巡った90分。 自分はこれまでワースト映画は見てきたつもり、だった。「デビルマン」=怒り:漫画史上空前絶後の傑作台無し、「北斗の拳」=哀しみ:バツが悪そうに演技する鷲尾いさ子や真剣に吹替えしてる神谷明、「シベ超」:驚き=情熱に対する映画の面白さがここまで反比例している実例、そして「北京原人」:おぱーい。...悪いなら悪いなりに感情感想を抱くし、込められるだろう。がこの作品、怒り哀しみ驚きおぱーいといった歴代のワースト作品に対して感じた要素がてんこ盛りにも関わらず、なんにも感じない。あるのはただ「他になにか有益な時間の使い方があったのでは」「何故俺は、劇場まで来てこの映画を見ているのだろうか」という禅問答。ラスト救助隊が助けに来た時、マジで「助かった~!」って思ったよ。巻き戻し早送り、ストップ出来ねーんだから。 で思ったんだ、これは映画ファンにとっての予防接種のようなもの、新井選手にとっての護摩行そのものだって。この先どんなにつらい映画ライフを送ろうとも「俺は『盆踊り』を劇場でお金を払って90分時間をかけて、鑑賞したんだ」って。心の苦しみ、全てオーケー。映画製作者や関係者にも希望の一本かもしれない。「下には下がある」と(それはそれで困ったことだが)。フェリーニ「道」でリチャード・ベースハートがジュリエッタ・マシーナにも言うてたやないか、「どんなものにも意味がある、この石ころにだって」。だから映画の内容はともかく1点を献上する。んじゃ、またな! でもこの映画が人生最後に見た映画だとしたら...絶望だな。 [映画館(字幕)] 1点(2019-12-30 18:43:39)(笑:2票) |
13. 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
《ネタバレ》 冷戦状況下の世界、「自由を求める為の戦い」とか「社会主義は理想的な世界」という名の下で進められていた軍備拡張の風潮の理由として「ただヤリたいから」と男の性欲と同レベルで説明されちゃぁ、カックンてなものでしょう。選民思想(もろナチスドイツ)下、地下で繰り広げられる世界は男のパラダイスでストレンジラブ博士もおっ立っちまうだろうし、溜めていたものを吐き出したコング少佐、「イヤッホー!」と言っちゃいますよね。この映画を見て笑った、というのはまったく無く「あ~あ、 やっちゃった」という感想のみでした。100年後に「冷戦とはこんな状態だったのよ」という資料として名が残るかもしれません。 [DVD(字幕)] 9点(2006-05-06 12:02:27)(良:2票) |
14. 砂漠の流れ者
《ネタバレ》 ステラ・スティーブンスはこの映画が撮影された当初、腹を括ってヌードになったにも拘らずそれを汲み取ってくれない、現場ではただ撮影を進めていたペキンパーに対して不満があったそうな。ところが時が経ち改めて映画を見ると「本当に自分のきれいな体に敬意を持ち、スクリーンの上で『聖女』として扱ってくれた」として最大限の感謝を持っているという話を本で読んだ。(アリ・マッグロウ、イセラ・ヴェガと並ぶペキンパー3大聖女と私は名付けたい)この映画を包むのは大いなる「優しさ」と西部劇の持っていた「大らかさ」。だからこそ自動車に引かれて死んでしまう男の最後ですら尊厳さの漂う不思議な映画になったのではないでしょうか。ペキンパー映画の純粋なエッセンス。 [ビデオ(字幕)] 8点(2006-08-27 11:15:42)(良:2票) |
15. 本日休診
《ネタバレ》 今を去ること十数年前、仕事で行った中国農村部の連中はメチャクチャだった。持って行ったカセットウォークマンに驚愕され、風邪を引いたというので手持ちの薬をあげたら次の日から何十人という者が俺のところに来た。冷蔵庫にあった自分のジュースや飲み物を勝手に開けられ帰宅してみたらいつの間にか宴会が始まっていた。自分の部屋はみんなの立ち寄り所と化し、20代前半の自分が何故か老若男女の人生相談(仕事から恋愛まで)まで聞く羽目になった。もう行きたくない、だけど離れる時は寂しくてしかたなかったし皆オイオイ泣いてくれた。そんな個人的な話から入って大変恐縮なのだが、この映画に出てくる人々が皆自分、Nbu2の体験した「純粋で素朴な」あの農村のみんなと重なってしかたがないんだ。指を詰めてもらいたいチンピラ・生きる事に必死なおばさん・そして戦争の疵により心を失っている青年、皆温もりを求めてさまよっている。仕事は休診でも心へ温もりを与える事には休みはない。ちょっと加味してこの点数。主演柳永二郎もいいが、確かにこの映画は女性陣の方が印象に残ります。今もあの農村のみんなは、同じ空・飛ぶ鳥を見上げているのかな。 [映画館(邦画)] 9点(2008-08-15 13:30:42)(良:2票) |
16. ザッツ・エンタテインメント
《ネタバレ》 MGMミュージカル・アンソロジー第一作目のこの映画のポイントは誰がなんと言っても「スター」これに尽きる。アステアはある意味別格なのだがやっぱりこの映画会社を支えていたのはケリーとジュディだったのだなぁ、と胸が熱くなる(特にジュディの「愛しいクラーク・ゲイブルさま」は本当に嬉しい)テイラーやシナトラはここではおまけ。やっぱり特筆すべきはエスター・ウイリアムス(水中ダンスのあの絢爛さを見よ!)とかミッキー・ルーニー(ジュディとのお約束「音楽をやるんだ!」カッティングの連続には笑ってしまう)を見て幸せに浸ろう。DVDは私の宝物。でなぜこの映画が9点か、といえばそれはラスト、なぜ「巴里のアメリカ人」なぞを持ってくるんじゃ~!これこそ本当に「ザッツ・エンタテインメント(from バンド・ワゴン)」だろうが! [ビデオ(字幕)] 9点(2006-12-29 23:22:53)(良:2票) |
17. パンダ・コパンダ
「生まれてきてよかったんだ、と子供にエールを送るのが児童文学」 (by 宮崎駿 岩波新書「本へのとびら」より) これは個人的な感想なのだが、高畑監督はご自身が監督するアニメに関して 理念というのか伝えたいテーマを予め立てた上、そこから逸脱しない様に 気を使いながら作品を手掛けられた方なのではないか、と思う。 例.「ハイジ」=「アニメ的な大自然の風景描写+魂の救済」、「母を訪ねて~」=「国境と貧困」、 「赤毛のアン」=「女性の社会進出」、「ホルス」=「神話の創造」 (その点キャラクターと基本的なプロットを設定した後は多少の逸脱をも 気になさらずに進めていた宮崎監督とは異なる制作アプローチだった気がする) で、原作/脚本宮崎駿のこの作品に関して高畑監督が心がけたのは 「アニメーションによる児童文学の再現」。 大人には理解できない、子供の突拍子もない創造力や行動を描写している児童文学。 真面目な高畑監督はその再現をこの機会に真摯にとりくんだ、そこが私は好きなのだ。 この映画をスクリーンで見たのは2008年のリバイバル上映時。 今回レビューを書くために改めて見直したが、大人の自分にはこの面白さは もう理解できない。一抹の寂しさを感じると同時に制作50年を迎えるこの映画が ちゃんと今でも手軽に見れる事に感謝。 [映画館(邦画)] 6点(2021-08-06 17:55:18)(良:2票) |
18. 無法松の一生(1943)
後年の三船+高峰阪は邦画のリメイクとしては相当よく出来たものと考えているくらいなのだが、それでも検閲によって中途半端になったオリジナルを愛すのはやはり物語を流れる雰囲気が素晴らしいから。宮川一夫のカメラ。監督稲垣の造形。まさにスクリーンの花、園井恵子。誰が欠けてもこうもいかなかっただろうけどやはり阪妻。粗野な行動と繊細な感情、力溢れた肉体に心優しい精神、そしてあふれ出す想いとそれを胸にしまい込む態度。相反する要素を持つキャラクターを「哀愁溢れる」姿態で見事に創り上げた、これが阪妻の名優たる由縁でしょう。阪妻、彼は男の持つ「哀愁」で映画ファンの心を鷲掴みにしたのでありました。邦画界における「心優しい、愛すべき乱暴者」の原点。 [映画館(邦画)] 10点(2007-11-10 10:32:49)(良:2票) |
19. 狩人の夜
《ネタバレ》 私にとっての「画竜点睛を欠く」映画はこれ。現実に無理矢理引き戻されるようなラスト、取って付けたようなクーパー婦人(リリアン・ギッシュという配役は凄い)の説明臭い台詞で終わらせず最後までダーク・ファンタジーで突っ走って欲しかったという事で減点をしたが、名優チャールズ・ロートンの描き出した「マザーグース風の話を悪夢調にアレンジしたもの」という雰囲気は見事に描き出されている。伝道師ハリーを演じるミッチャムのとろけたまなざし・有名な「LOVE&HATE」の入れ墨。水の中に浮かぶシェリー・ウィンタースの死体のカットの美しさ。逃げ惑う兄妹を取り巻く沼地や動物の不思議と綺麗なこと!まさに悪夢の御伽話の世界。映画雑誌には「幻の名作」と書かれているけど、そこまで気負わずに。あとこれ見るなら夜!部屋の電気を消して! [ビデオ(字幕)] 8点(2008-03-08 12:50:50)(良:2票) |
20. 異常性愛記録 ハレンチ
《ネタバレ》 輝男、どうしてあなたは輝男なの?いいじゃぁなひか、輝男なんだから。とにかく深畑を演じる若杉英二のアドレナリン500%位ぶっ飛んだ演技に気持ち悪い以前に可笑しくて仕方がない。「ウハハッハハ×10」と笑い彼女に傍若無人な振る舞いを行うも、最後は極まって「ノンコ~、愛してるよ~」でオールオーケー。按摩に体をモミモミされつつメイクラヴ。ぷよぷよな身体に女性用下着を着込み、外国人女性のレズショーを覗きつつ自分はゲイとカモナレッツプレイ。その反面自分にとって耳の痛い話題にはツンツンしノーテンキュー。なんなんだこいつは!(笑)常人なら気色の悪い、観るに耐えない題材をここまでエンターテイメントに仕立てた輝男、あんた最高だよ。更にひどい目に遭うのが黄色いショールに赤ストールを真知子巻きにした橘ますみなのだからたまらない。ラスト若杉英二と吉田輝雄の対決シーンは何故か(いや、お約束の)雷雨。ここでヒロインが絶叫する「ハレンチよぉ!」そしてドンガラガッシャーン!!!で観客はドッカンドッカン沸きまくるのでした...。こりゃ観る人、選ぶな。なんちゅうレビューなんだ、こりゃ。そして自分にこんなレビューを書かせるような映画を撮りあげた輝男に完配。いや完敗、ううん乾杯だ。 [映画館(邦画)] 8点(2008-08-16 02:42:38)(笑:1票) (良:1票) |