1. 甘い罠
初期設定からすればスリリングな展開が期待できるし、また映像の雰囲気も落ち着いている。しかし、役者の芝居が騒がしくないのは良いとしても、逆に跳ねてないというか、何が起こっても淡々と処理しているだけのように見えてしまう。そうすると、そもそも何か危機が起こっているのか、という気になるわけです。終盤のシークエンスで、何がしたかったのかは何となく分かりましたが、それに至るまでが平坦でした。 [DVD(字幕)] 4点(2024-06-15 23:24:29) |
2. アドリブ・ナイト
《ネタバレ》 主人公がいきなり街中で声をかけられ、危篤の男に対して娘のふりをしてほしい、と依頼される導入部。とすると、これがハリウッドなら、ここぞとばかりにコメディチックに決めまくるのでしょうが、韓国映画はそうはなりません。いや、韓国がどうのこうのという以前に、この作品の独自の色は突出しています。とにかく暗いです。演技もカメラも照明も、全部が暗いです。その中でじわじわと話は進んでいきますし、登場人物間の小競り合い的なものはあっても、感情のぶつかり合いはありません。ただ、本当に監督が撮りたかったのは、終盤に延々と続く夜道の車のシーンと(以後は現地関係者は一切無視される潔さも良し)、その後の、すべてを光で包むラストシーンだったのでしょうね。終わってみれば24時間もないくらいの間の出来事だったというこだわりに+1点。なお私は、主人公の正体はやっぱりミョンウンだったというオチを最後まで確信していたのですが、そんな小細工とは無縁でした。 [DVD(字幕)] 6点(2024-05-13 00:07:53) |
3. 悪魔とダニエル・ジョンストン
《ネタバレ》 タイトルにあるとおりのダニエル・ジョンストンのドキュメンタリーです。幼少期からのいろんな映像や音声や写真、そして関係者の談話は細かく積み上げられており、下調べに手間をかけたことを窺わせます。ただ、途中からは、彼の奇行の数々のような方向に話が行っていて、肝心の音楽部分の突っ込みには向かっていないような・・・(「あの曲は素晴らしかった!」的コメントは多数出てきますが)。よって、与える印象が「何か変な人」になってしまい、肝心の彼があまり格好良さそうに見えないのです。制作側の対象に関する愛情は感じますが、その見せ方をもう少し考えるべきでした。あと、一番ドラマを感じたのは、実は、喧嘩別れした元マネージャーが、実はその後も当初のレーベル業務を細々と手作業で行っていた、というくだりだったりして。 [DVD(字幕)] 4点(2024-05-12 00:10:24) |
4. 紅い鞄 モォトゥオ探検隊
《ネタバレ》 チベットの遥か山奥に、小学校を建てた老人がいる。そこで、記者が取材のためにその地へ赴く・・・というスタートなのですが、それならある程度のところで現地に着いて、あとはその学校の状況や老人の行動が描写の中心になるだろうと予想する。ところが、いつまでたっても目的地にたどり着きません。そうです、この作品は、その道中の一行の苦難の歩みこそがテーマだったのでした。それはそれでよいのですが、いろいろ起こる出来事が、全部局所的な単発的なピンチであって、作品の中で機能していない。何かを切り抜けたら、次に何かが起こって、それも割とさっさと切り抜けてという感じです。また、その中で登場人物もあまり生きておらず、とりわけ、見た人は誰でも思うであろうあの情緒不安定女性医師の足の引っ張りぶり(映画という意味においても作中の一行の行動という意味においても)は、何であんな造形にしたのだろうと思うほどです。辛うじて、校長の娘(こちらの方がヒロインとしてよほど魅力的)には若干の物語があったという程度でしょうか。ただし、チベットの高山風景の数々については、撮影の手間は相当かかっていると思いますので、点数はそこに対して。 [DVD(字幕)] 4点(2024-03-10 00:24:25) |
5. アディクトの優劣感
棒読みの会話あるいはナレーションに、細切れの静止画あるいは文字列が適当に延々と被さってくるだけという作品。そもそも映画ではないことは確かですが、かりにそれではない何かの手法であると理解したとしても、何の表現にもなっていません。推察するにドラッグ・ムービー的なものがやりたかったのではないかと思いますが、トリップを表現するのではなくて、制作そのものがトリップしちゃってどうするの。もしかしてこれが、実験的だとか前衛的だとか先進的だとか思ってる? [DVD(邦画)] 0点(2023-12-29 01:37:49) |
6. あぶない奴ら~TWO GUYS~
チンピラが若い詐欺師に負債の取立に行ったら、そこから二人してトラブルに巻き込まれて、いつの間にか追われるようになって・・・という王道アクション・コメディです。したがって、設定から展開からハリウッド・テイストなのですが、至る箇所にどんくさいB級風味もちりばめられています。スリルのつなぎ方や笑いのとり方はそれなりのレベルに達しており、ネタをぎゅうぎゅうに詰め込んでくるのはサービス精神旺盛ともいえます。しかし、それらのネタの相互間は著しく未整理というか、登場人物はまともに説明もされないまま次々に怪しいのが出てきますし、結局誰が何をしたかったのかもよく分かりません。まあ、そういった勢いと執念で突っ走りという作り方は、嫌いではないです。 [DVD(字幕)] 5点(2023-12-24 00:06:07) |
7. UPRISING アップライジング<TVM>
序盤からいきなりばらばらといろんな人物が断片的に登場するが、それがいつしか統合されて一つの大きな流れになっていく。レジスタンスの団結の過程と、作品の構成そのものがきちんと一致しています。一人あたりの背景や詳細はそんなに突っ込まれてはいませんが、それがマイナスになっていません。それは、テレビ放映用とは思えないほど美術もエキストラもしっかりしている点に象徴されるように、その作品世界の作り込みに制作側が注力しているからこそでしょう。弾圧の理不尽さ以上に、それを跳ね返す「意志の強さ」が作品の根底に横たわっています。 [DVD(字幕)] 7点(2023-06-21 00:28:35) |
8. アイドル 欲望の餐宴(バンケット)
《ネタバレ》 古アパートの一室に引っ越してきた若いお姉さんと、その向かいに住む中国人のオッサンの話です。邦題は何か派手な感じになっていますが、そのようなことはありません(まあ、オッサンが元料理人という設定なので、料理のいくつかは出てきますが)。全体としては、地味なやりとりが薄暗い雰囲気の中で積み重ねられるといったもので、ドラマとしての動きはそれほどありません。食事が彼女を変えていく的な描写もしようとはしていますが、あまり機能していません。初期設定ではなかなかの微妙なバランスが面白そうだったのですが、それが後につながりませんでした。 [DVD(字幕)] 4点(2023-06-18 22:01:53) |
9. アラキメンタリ
あの「アラーキー」のドキュメンタリーです。そのアグレッシブな撮影実績から、どんな怖いオッサンが登場するのかと思いきや、一番印象的なのは、常に「とてつもなく楽しそう」であるということです。撮影中はもちろんですが、カメラ(の横にいると思われるインタビューア)に喋るときもそうです。まるで砂場で無我夢中で遊んでいる子供のようです。そこを確実に切り取っただけでも、この作品は意義があるといえるかもしれません。全体の構想や体系、さらには経歴のディテールなんかはあまり細かく考えられてないような気もしますが、そういうパンキッシュな作り方で75分を駆け抜けるというのも、この対象には適合しているのかも。 [DVD(字幕なし「原語」)] 6点(2023-05-23 01:35:59) |
10. アメリカン・ナイトメア(2002)
《ネタバレ》 何か曰くありげな姉ちゃんが、もっともらしくじわじわと一人一人毒牙にかけ・・・という導入部は、まあ見られないことはなかったのです。ところがそのまま同じような中身で最後まで進み、しかもその姉ちゃんは単に殺戮者だったというだけ。いや、単純ホラーなのは分かってるから、別に複雑な裏を設けよとかヒネれとかオチをつけろとかは言わないけど、やっぱり思いつきを羅列しただけで、安直すぎるのではないでしょうか。あと、何か催眠術にかかってるっぽかったあの男性は、結局何だったんでしょう。 [DVD(字幕)] 2点(2023-05-14 00:23:36) |
11. あかね空
一つ一つのシーン設定なり登場人物の動きなり発言なりもいちいち陳腐なんだけど、何よりびっくりしたのは、中谷美紀の(特に後の方の)台詞が、100%現代劇であること。制作者には、時代劇を作っているという自覚はなかったんだろうか。美術や衣装のセンスのないピカピカぶりも吹っ飛ぶほどの衝撃だった。中谷扮する母親が、子供に対する愛情がほとんど窺えず、むしろ情緒不安定系ヒステリーにしか見えないのも、そもそもそんな台詞を言わせられるのが、役者として苦痛だったのだろう。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2023-03-17 00:14:31) |
12. アナコンダ2
《ネタバレ》 蛇の映画なはずなのに、蛇がほとんど出てこないのですが・・・●大体この手の作品って、どうして何も起こってないうちからああだこうだと身内で対立して、足を引っ張り合うんですかね。蛇とか虫とか罠とかよりも、そっちの方がよっぽど危機だと思うのですが。したがって、その意味においても、肝心の蛇が怖く見えません。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2022-11-07 00:31:24) |
13. アヒルと鴨のコインロッカー
《ネタバレ》 前半がもたつきまくってかったるいとか、逆に後半は解説的映像がしつこ過ぎとか、制作上のアラはいくつもある。しかし、トリックをトリックとして成り立たせることに集中的に軸足を置き、ほかの余計な要素をしっかり捨てている点は評価したい。これがミステリー映画の模範とまでは言わないが、しかしミステリー映画とはこうあるべきだ。書店の多視点描写が何とも美しい。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2022-05-03 23:32:45) |
14. アマンダ・ピートの ピンクな気持ち ワタシは、Hなオンナのコ
《ネタバレ》 とりあえず若い兄ちゃんのグループがいて、それぞれ女の子を狙おうとする・・・んだけど、特にそれぞれに個性が感じられないのがスタートとして致命的である上に、そういう話だったらすでに日本の60's青春コメディでもいくつもあるよね。で、実はみんなが狙ってるのが同じ子だった、というところから話が動き出すのですが、肝心のアマンダ・ピートが、みんなで争奪するほど魅力的にはどう見ても見えません。しかも全体が下ネタやらお下劣トークに満ちていて、まあそれはわざとなんだろうけど、肝心の笑える部分が全然存在しない。つまり、見所がありませんでした。 [DVD(字幕)] 2点(2021-09-28 00:18:07) |
15. アートスクール・コンフィデンシャル
《ネタバレ》 とりあえず主人公が美術学校に入って、まあ何かいろいろとあるんですが・・・いろいろ入れ込んでいる割には、全然処理しきれていないというか、コンセプトが何も定まってないというか。せっかくマルコヴィッチやブロードベントやブシェミまで起用していながら(端役でアンジェリカ・ヒューストンまで!)、まったく使いこなされていない。一方で途中からなぜか連続殺人がどうのこうのというのが絡んでくるのですが、それまでの流れと整合しているわけでもない。というわけで見所はなかったのですが、ヒロインの彼女は可愛かった上に演技も落ち着いていたので、そこに4点。 [DVD(字幕)] 4点(2021-09-27 00:54:42) |
16. アイアンマン
やっぱり、シリーズ第一作のヒーロー誕生秘話となると、どうしても前置きの長さは避けられないのだな。ただ、この作品の場合、その背景に関して、武器商売がどうのこうのとか中東紛争がどうのこうのという妙に生々しい内容が続いているので、さらにバランスがおかしなことになっている。●ただしこの作品に関しては、主演にロバート・ダウニー・Jrを持ってきたという偉業については、力強く讃えたい。当時はすでにすっかり影が薄くなっていた、しかもその時点で40代のオッサンをこのヒーローにキャスティングするという英断がなければ、その後のMCUシリーズの発展もなかっただろう。実際、彼は滅茶苦茶楽しそうに芝居をしている。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2021-08-14 01:48:32)(良:1票) |
17. アダルト♂スクール
《ネタバレ》 結局、肝心の「クラブ」なるもののディテールが練られていないので、いくらそれっぽいシーンを重ねられても、別に笑えないのです。最後の課題突破云々のところも、別にメンバーの個性とも関係しないし、その辺の学園ものと変わらないんじゃない?あと、ジュリエット・ルイスの登場があれだけって、それはほとんど詐欺レベルでしょ・・・。 [DVD(字幕)] 3点(2020-05-21 00:57:52) |
18. アメリカン・ピーチパイ
シェイクスピアの中でも、「十二夜」は、400年以上前に書かれたとはとても思えないほどの洗練されたラブコメなのです。もっと何回も映画化されてもよいと思うのですが、あまりありませんね。で、この作品は、それを的確に現代の学園スポーツラブコメに置き換えています。元の脚本があれだけ優れているのですから、大筋を外さなければそれだけで面白くなるというアドバンテージはありますが、しかし、雰囲気を崩さずまとめ上げているのは見事です。マルヴォーリオ(に相当する役)の出番があまりなかったり、アントニオがいなかったり、トビーやアンドリューはほぼ名前だけだったりもするのですが、この辺をまともに入れ込むととても100分強では収まらないので、これは正解でしょう。一方で、主人公の両親とか兄の元カノとか、原作にない要素も上手くはめ込んでいます。 [DVD(字幕)] 7点(2018-10-31 00:25:41) |
19. アウェイ・フロム・ハー 君を想う
《ネタバレ》 発想は悪くないのですが・・・。施設内で別の男が出てきてどうこう、さらにその妻も出てきて、しかもそこに主人公夫妻の過去も投影されて・・・となれば、もっと生々しい生活感、もっといえば「男女感」で裏付けてくれないと、リアリティが伴わないのです。この作品はその辺の突っ込みが浅く、全体的にさらーと流されているので、何か作り物っぽく、観念的に感じられてしまうのです。 [DVD(字幕)] 5点(2018-04-14 02:24:53) |
20. アイガー北壁
《ネタバレ》 途中からはひたすら壁・壁・壁の世界で、見ているだけでめまいがしそうなほど映像としては強烈です。この撮り方の誠実性が、作品の存在意義を大きく支えています。一方、背景の人物描写なんかは割と簡素というかむしろぶっきらぼうなくらい素っ気ないのですが、そんな中でも、過酷な北壁と優雅なホテル内(そして途中からどんどんいなくなるギャラリー)の対比など、静かなメッセージも力強く伝わってきます。 [DVD(字幕)] 7点(2017-06-13 02:09:19) |