1. 荒野の七人
《ネタバレ》 映画はこれくらいが面白いですねー。難しいことをする必要なんてない。 悪い奴らがいる。虐げられる人々がいる。それを助けるヒーローがいる。たったこれだけで映画はこんなにも面白い。 1人1人仲間を集めていくとこなんて最高に楽しい。仲間集めは祭りの前の高揚感を感じさせます。 過去に読んできた、数多くの少年漫画でも、こんなシチュエーションたくさんありました。この映画にインスパイアされた人ってたくさんいるんじゃないかなぁ。ああ、でもこの映画も『7人の侍』をオマージュして作られたものでしたね。 ずっと面白かったのですが、最後はちょっと盛り上がり切れなかった感じも。 まず村人たちの手のひら返しが唐突すぎて呆気にとられます。 そもそも、村人たちに選択肢はなかったはず。カルベラの言いなりになっていたら、自分達が、子供たちが飢え死にしてしまう。だから最後の手段として、助けを求めたのではなかったのか。村を存続させるには、もう戦うしか手段が残っていなかったはずなのに、話が変わっております。 そして、やっすい報酬で、ほとんど無理やりボディーガードを頼まれたわけだから、助ける義理がなくなったのならほっとけばいいじゃん。でもなぜかほっとかない7人。なんで?死に際のカルベラも聞いちゃってるじゃん。『なぜもどってきた・・・』。それね。さあ、どう答えるクリス。・・・って答えんのかーい。 一番まずかったのは、カルベラが思ったより良いやつだったこと。 なんたって7人を釈放してあげる。銃も返してあげる。 にもかかわらず、カルベラ一味に奇襲をかける7人。命を助けてくれたことに恩は感じないのだろうか・・・。これじゃぁどっちが悪党だかわかりゃしない。 あと、クリス、ヴィン、チコ以外の4人の最期も、もうちょっとどうにかならんかったものか・・・。 [ビデオ(字幕)] 7点(2023-08-28 12:35:49) |
2. ゴッドファーザー PART Ⅱ
《ネタバレ》 前作が面白かっただけに、すごく残念な出来。 父親として、マフィアの首領として、マイケルとビトーを対比させていくのは面白いと思います。 そのぶん尺が長くなるのは仕方ない。仕方が無いとはいえ、無駄なものはもう少し削ぎ落してほしいと思います。 で、2人分の人生を描く分、それぞれのストーリーはどうしても薄くなりがち。もちろん、限られた時間でしっかり描くことができれば、中身が薄いなどと思うことはないでしょうが・・・。残念ながら今作はどちらのストーリーも薄いです。そしてその薄い内容で3時間越えは正直きついですって。最初の2時間なんて、退屈で仕方なかった。 そしてこれだけの尺をとっておきながら、突然マイケルが公聴会に呼ばれていたり、ビトーがいつの間にか町で権力を握っていたりと、大事なところは割愛。いやいや、描くべきはそこでしょう。祭りだとか、演劇だとか、パーティーでみんなが踊っているシーンより大事なとこでしょう。 本筋と関係ないシーンやエピソードが多い割に、大事なところは説明不足。 行間はあなたの想像力で補いなさいと、いささか不親切設計。 それでもお話が面白ければよいのですが、何しろ暗い。そしてたいして面白くない。 ファミリーに対してはいつも温厚だった1作目のビトーに対し、ファミリーに対しても感情的に声を荒げてしまうマイケルの小者っぷりも見ていて痛々しい。せめてケイとは仲良くしててほしかったかな。 最大の見せ場であるラストは、前作と同じパターンを踏襲・・・ま、いいケドね・・・。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2023-08-11 02:55:28) |
3. ゴッドファーザー
《ネタバレ》 長いので何回かに分けて見るつもりだったのに、あんまり面白くて一気に見てしまいました。おかげで寝不足の一日になってしまった。 どーしても古い映画は敬遠しがちだったのです。 理由➀ 様式美がもてはやされていて、実際の面白さはそーでもなかったりするから。 理由② 様式美に凝り固まっていて、テンポが遅そーだし、退屈そーだから。 理由③ 各ジャンルのパイオニアってだけでもてはやされていて、実際の面白さはそーでもなかったりするから。 そんな自分の浅はかな固定観念をものの見事に粉々にしてくれました。『色褪せない』ってのはこーゆーことなんですねぇ。 小難しい映画かと思っていたのですが、そーでもなかったのも良かったです。 確かに人物相関図はやや複雑ですが、中心人物たちだけ押さえておけばストーリーは割とシンプル。実は単純な成り上がり系ストーリー。マフィアのドンの息子でありながら、堅気の主人公マイケルが、運命に翻弄されてマフィアの世界へと否が応にも巻き込まれていく物語。ファミリーのなかでも、一人だけ非マフィアでボンボンな感じのマイケルが、次第に頭角を現していくのはある種痛快でした。危険で予断を許さない状況のなか、マイケルの一挙手一投足に期待せずにはいられません。 それにしてもアル・パチーノにもこんなに若いときがあったのですねー。最初アル・パチーノだと気づきませんでした。 兄のソニー、相談役のトム・ヘイゲン、暗殺実行役のクレメンザなど、脇を固める面子も強烈な個性。1人1人に大なり小なりドラマあり。にも関わらず、ファミリーの存亡をかけた駆け引き、闘争、そして世代交代というこの映画の本流も決して見失わない見事なストーリー構成。なんとバランスの良い映画なんでしょう。 ただひとつ難を言うなら、マイケルとアポロニアのエピソードは個人的には不要でした。 マイケルには一人の女性を愛し、基本はストイックでいてほしかったものです。アポロニアとのエピソードは、なんだか極上のウイスキーに混ぜられた不純物のようでした。 それにアポロニアが死ぬやいなや、ケイ・アダムスのところに戻っていって、なんと節操のない。 マイケルの好感度を下げるだけのこのエピソード、本当に必要だったのでしょうか。 それにしてもあれだけ事が大きくなるのを避けて慎重に動いていたのに、結局暗殺という力業でカタをつけちゃうんですね~。 もちろん、偉大なるゴッド・ファーザーの死を待っていたというのが理由なんでしょうけど、・・・・それを踏まえても、だったら状況がこれだけ悪化するまえになんとかなったんじゃないかという気も・・・ [ブルーレイ(字幕)] 9点(2023-07-24 00:50:39)(良:1票) |
4. コンプライアンス 服従の心理
《ネタバレ》 これが実話だってんだからもうびっくり。こんなのに騙される人がいるとは。オレオレ詐欺よりレベル低いでしょう。正直、『これだから低学歴は・・・』って思っちゃうレベルです。 同じ中間管理職の立場ですから、サンドラの気苦労は身につまされる思い。店長という職が、その責任、重労働に対していかに薄給であるか。サンドラには共感できるし、その苦労はわかるんですけど、だとしてもこの対応はまずい。サンドラはいい歳した大人ですから。もっと冷静に対処しないと。頭悪すぎでしょう。 『ベッキー、あなたのことを名指しできているんだから』って、いやいや、あなたが最初にベッキーの名前を相手に伝えたせいですから!サンドラは承認欲求のかたまりなので、ちょっとおだてられるとすぐに懐柔されちゃう。でも、電話の相手の所属を確認したうえで、警察に連絡してウラをとるくらいのことはしてくださいよ。 被害者の方も全く身に覚えがないなら断固拒否しなさいよ。連行されたって怖くないでしょ。潔白なうえに物的証拠だってないんだから。もう終始イライラしながら見ていました。 よー考えたら、『本部長に代わってください。』と最初に言えば済んだ話では? 同様の事件が70件?アメリカ大丈夫か? [ブルーレイ(字幕)] 4点(2023-06-23 20:47:45) |
5. 拷問男
《ネタバレ》 他の方がおっしゃっているように、タイトルで損しているのは間違いないです。 とはいえ、原題のままだと、ドラマかなんかだと勘違いして見た人が卒倒しちゃいそうです。 いや~、拷問する側の人間にこれほどまでに感情移入するドラマがいまだかつてあっただろうか。これはもう、前半の作りこみが良かったのだと思います。過剰なまでの娘への溺愛ぶり。そして娘もパパが大好き。そこからの悲劇。娘が見つかったときの描写の辛さといったら・・・。父親も母親も、娘が見つかったという一報を受け、安堵し喜び、思わず笑みがこぼれ、迎えに行ったらそこには変わり果てた娘の姿が・・・。女性警官が吐くところを見せて、父親に最悪の事態を想起させるシーンなんか本当によくできています。まさに天国から地獄です。 ただ、一言だけ言わせてもらうなら、そんなに娘が大事なら離婚なんかするんじゃないよ。 確かに窓を直さないのも問題だけどサ。それ以前にせめて娘が大きくなるまでは、離婚せずに家族仲良く暮らしていればこんなことは起きなかったんだから。そこだけはずっと心にひっかかっていました。 おそらく、なんとなくですけど、離婚の原因は奥さんのほうにあるんだろーなー、という気はしましたが・・・ [DVD(字幕)] 7点(2023-06-14 01:18:23)(良:1票) |
6. コレクター(2012)
《ネタバレ》 あれれ?なかなか厳しい評価を受けていらっしゃいますね~。 個人的には好きなんですけど。わかりやすくて。オーソドックスで。 へー、実話をベースに…。いったいどの辺までが実話なんでしょう…。 相棒のケルシーがまさかの…これは奇をてらったどんでん返し。電話で連絡していた相手は警察ではなく犯人だったとはね。どうりで応援が全然来ないわけだ。 …確かにラストのネタばらしのやり方はまんまソウ…。でもソウのネタばらしのやり方好きなんですよね。 よくパクリだなんだと批判されがちな世の中。でも面白い映画の面白い手法を取り入れて、それで映画が面白くなるんだったらそれで良いじゃないかと思う今日この頃。 それより気になったのは捜査のもたもた感。 主人公のパパさん刑事マイクは、表彰もされたことがあるような優秀な刑事らしいですが、ちょっと優秀さが控えめでした。 容疑者が勤務する病院に頭から血を流している従業員がいます。 犯人は娘が誘拐される直前、娼婦から瓶で頭を殴られています。 ・・・・・・いや、気付こうぜ。そこつっこまないのはあからさまに不自然でしょ。 気になったのはそこくらいかな~。 犯人宅でのやりとりは終始緊張感がありました。これで捜査のほうが手際よくテンポよく進んでいたら、相乗効果でもっと面白かったかも。 最後がバッドエンドすぎるので後味は悪い。 でもその過程は楽しめます。 エンタメとしては良質なサスペンス作品だと思いますけどねー。 [DVD(字幕)] 7点(2023-05-02 01:44:56) |
7. 恋するシェフの最強レシピ
《ネタバレ》 いや、まあ嫌いではないんです、こーゆーテイストのラブコメ。ラブコメは王道が一番と思っている私とは相性が良いはずなんです。 例えば、お互いの素性を知らないまま、料理で会話をしているところなんか最高に楽しい。 女性シェフのほうが、料理を出している相手の正体に先に気づきます。それから自分の正体を必死に隠そうとしている様子がなんともかわいくて面白くて好き。 ただそこから先、しだいに王道から外れていっている気がするのです。 特に突然ふたりでラリッちゃう展開が意味わからない。 更に、突然家に来なくなる社長。唐突に出てくるライバル女シェフ。突然クビにされるキッチンスタッフ。 なんだかこの辺から話の展開が急に速くなるうえに雑になって、気持ちがついていきません。 前半~中盤のノリでいってくれたら最高に良かったのに… 一番不可解なのは、自分を含めてキッチンの従業員をとつぜん全員解雇するような男をよく好きになれるもんだと。 そこがまったく共感できなかったので、終盤はずっと醒めた目で見ていました。 クビにされた従業員たちほったらかしでかわいそうじゃないですか? お互い近づかないようにするためのアイテムだったはずが、最後はお互いを見つけるためのアイテムに… こーゆーアイテムの使い方、伏線の張り方はすきなんですけどね~ [DVD(字幕)] 6点(2022-12-14 04:10:15) |
8. コンテイジョン
《ネタバレ》 淡々としたドキュメンタリーチックな映画。 2年前にコロナが世界中に流行し始めた頃を思い出します。 クラスターやロックダウン、濃厚接触者の隔離に、ウィルスの変異、実行再生産数から導き出される予想感染者数、この映画で想定されていたことはコロナ禍においてすべて現実のものとなりました。奇しくも感染源までほぼいっしょなのがまるでコロナを予言しているかのようで恐ろしい。 誇張した表現や演出はほとんどありません。リアル路線。リアルな作風は退屈と結びつきがちですが、この作品ではリアルな作風が感染症の恐ろしさと崩壊していく社会を強調していて効果的に働いています。 子供やケイト・ウィンスレットといった、普通の映画では犠牲にならないような人たちが次々と犠牲になっていきます。ケイト・ウィンスレットがその他大勢の人たちと埋葬されていくのは胸が詰まります。 世界規模のパンデミックを題材にしているわけですから、膨大な情報量をまとめなければなりません。1つ1つのエピソードが薄味になってしまうのは致し方のないことなのでしょう。だからこれだけリアル路線でいくのであれば、映画ではなくドラマでじっくり見せたほうが良いのかもしれません。 一番最後に『1日目』をもってくるストーリー構成は素晴らしいと思います。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2022-06-21 01:32:25)(良:4票) |
9. コロンビアーナ
《ネタバレ》 こーゆーわかりやすい復讐もの好き。ひねった作品も良いけれど、ただただ理屈抜きで感情移入できて楽しめる作品は最高です。 映画や漫画や小説ではすごい数のネタがあふれかえっている状態です。もはや類似作品が出ちゃうのはあたりまえ。むしろ、『ありきたり』や『普通』の何が悪いんだろうと思います。堂々と二番煎じで面白い作品を世に送り出してほしいものです。 映画が始まってすぐ、少女カト レアは両親を殺され、マフィアから追いかけられ、何とか国外へ脱出します。序盤から最高にスリリング。この少女役のアクションが凄いです。 時は経ち、『暗殺者になりたい』宣言から15年後。ここからカトレアを演じるのはゾーイ・サルダナ。ここで二度目の見どころ。ミッション・インポッシブルが始まります。留置場でのミッションは成功するとわかっていてもハラハラ。序盤の逃走劇とはまたちがうドキドキを感じられるのです。 ガモーラ役のときは気付かなかったですけど、この人演技もアクションも上手なんですねー。特に叔父さんたちを殺されて泣き崩れちゃうシーンは真に迫っていてぐっときちゃいました。ただちょっと悲しすぎるかな・・・。 ストーリーそのものは単純。ですがシナリオは結構練ってあってずっと緊張が途切れない。ラブロマンスでややダレるときがありますが、写真のくだりのために必要なロマンスですから仕方がない。カトレアは圧倒的強さなんですが、急に弱くなったりピンチに陥ったりするのがやや不自然。そういった細かいところで気になるところはありつつも、やはり理屈抜きで最後まで面白い映画でした。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2022-05-22 16:38:19)(良:1票) |
10. ゴーストバスターズ(2016)
《ネタバレ》 オリジナルのほう結構好きでした。 オレンジ色の捕獲レーザー、緑の食いしん坊ゴースト。これをオリジナルのほうで最初見たときは、そりゃあわくわくしたもんです。 こちらではどうでしょう。 おそらく映像技術はオリジナルのときより大きく進歩しているのではないでしょうか。色鮮やかで躍動感のあるゴーストたちがたくさん出てきて、それを見られるだけでも間違いなく楽しい。 でも1作目を見たときの、子供心をくすぐるわくわく感が何となく足りない気がするのです。 それは見ているこちら側の問題なのか、それとも演出やストーリー構成の問題なのか。 とはいえ、ストーリーがあってないようなもんなのは、今作もオリジナルもいっしょ。 『はみだし者が集まって何か大きなことを成し遂げる。』『世間から認められる』といったノリが守られていることが大事。こーゆーノリ好きなんです。 ラストはニューヨークの人々がゴーストバスターズに感謝の念を表してハッピーエンド。 みんなで屋上からその夜景を眺める画は悪くないんですけど、やっぱりなんかカタルシスが弱い・・・。 おそらくオーディエンスがゴーストバスターズの最後の活躍を見ているシーンがないせいだと思います。ヒーローものにオーディエンスはつきもの。観客って大事です。 4人のユーモアに富んだ会話やユニークなアイテムの数々など、エンターテイメントとしての工夫はなされているんですが、もう少し上手に盛り上げてほしかったものです。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2022-04-10 20:27:10) |
11. ゴールデンスランバー(2009)
《ネタバレ》 過程はすごく面白い。でも結末はものすごく気に入らない。 森田は青柳をはめたわけですから、あのような結末になっても仕方がありません。自分の家庭の金銭トラブルを解決するため、早い話友人を売ったわけです。 それに対し青柳は善良な一般市民。理不尽なトラブルに巻き込まれるのは良いとして、そのまま報われない結末を迎えるとはいかがなものか。 こーゆー理不尽系サスペンスってのは最後に大逆転してカタルシスを得られるから良いのです。最後まで理不尽なままで終わってどーする。 だいたいあんな形で生き残っても社会的には死んだも同然。顔を変え、戸籍を失い、身分を証明するものは何もないのに、これから先どうやって生きていくのでしょう。仕事も失い、家族や友人に会いに行くことさえできません。 好きだった人は別の人と結婚し、幸せな家庭まで築いています。 冒頭のシーンと最後のシーンがつながっているからってそれがどうした。ただ辛いだけです。そんな辛いだけのサプライズなんていらないです。 『大変よくできました。』をもらったって全然嬉しくない。『よくできました』のほうで良いから、竹内結子と2人で生きていくほうがずっと良いに決まっています。 壮大なカタルシスを期待して2時間以上も我慢して見続けた結果がこれか。期待させるだけ期待させておいてこれはないです。 こんなに怒りを抱えてしまうということは、それだけ作品に没入できたわけですから、映画としては悪くないんでしょう。 でも『私も見たかった』という妻には『見なくていーよ。』と言っときました。 [DVD(邦画)] 5点(2021-08-15 14:51:11) |
12. コインロッカーの女
《ネタバレ》 韓国映画特有のひりひりとした緊張感と『痛さ』と『怖さ』を感じられる映画。 闇金の女ボス、マ・ウヒを演じるキム・ヘスも、イリョンを演じるキム・ゴウンも圧巻の演技。 マ・ウヒもイリョンも裏社会に生きる無慈悲で非情な人間。でも冷たい視線や表情の無い佇まいのなかに、時折感じられる家族への情。それを自然に感じさせてくれるから凄い。 ストーリーは申し分なしと言いたいところですが、ちょっとサスペンス寄りにしすぎてしまったかも。青年との交流の中で、イリョンの心情の変化をもう少し時間をかけて丁寧に見せてくれていたら、その絶望はより際立ったものとなり、他の追随を許さない名作になっていたかもしれません。 そう、これは決して楽しい映画ではありません。韓国映画ではよく見かける破滅型のストーリー。イリョン以外の家族はみんな壮絶な死を遂げます。ですが見終わったあとにあまり尾を引かない不思議な映画。イリョンが第二の人生を始めたところで幕を下ろしたからかもしれません。 自分が捨てられていたコインロッカーを開けると、そこには養子縁組の書類が。それまでグレーだった母親の愛情が確信へと変わる最後のサプライズ。 [DVD(字幕)] 8点(2021-06-10 02:43:56) |
13. 孤高のメス
《ネタバレ》 脳死移植を題材にした医療ドラマ。こじんまりとした作品ながら傑作。 好青年の死、脳死移植=殺人罪、扱っているテーマは実は重い。 ですが映画自体は重くなりすぎない絶妙なバランス。当麻医師(堤真一)のちょっと天然で、恋愛に関しては朴念仁というキャラが良い意味で明るい味付けをしています。コメディテイストな演出を加えることで、とてもメリハリの効いたストーリ構成になっています。オペ中の曲を多数決で決めるシーンやお見合いのシーンのようにさりげないひとコマが実に良い。『ロックなんてとんでもない。メスが暴れてしまうよ。』は名台詞です。 その一方で、オペシーンの緊張感が凄い。また、序盤での野本医師のひどいオペがコントラストとして効いているため、当麻医師のオペには緊迫感とともにある種の高揚感が感じられます。これは医療界のヒーロードラマです。 その対比として分かりやすいのがオペ中の出血量。生々しいビジュアルが多いので、そーゆーのが苦手な人は注意が必要かもしれません。 命を救われた市長は町のために残りの人生全力を尽くすと近い、悪徳医師はきっちり罰を受ける。 語り手の看護師の息子が医者となり、当麻先生の病院に赴任してくるラスト。幸せな余韻が残ります。 押さえるべきところをきっちり押さえる、見方によってはステレオタイプなドラマと言えるかもしれません。 ただ私は古い人間ですから、このお手本のような、しっかり知に足のついたドラマのほうが素直に感動できるし、面白いと思えるのです。 [DVD(邦画)] 8点(2021-04-18 18:15:46)(良:1票) |
14. 5年後のラブレター
《ネタバレ》 人が病気やらなにやらで死んで、それで涙をさそう映画ってのは本来苦手。 だけどストーリーに惹かれて鑑賞。 『5年前に死んだ渉から届く、息子への挑戦状。それは宝探しのゲームのスタートだった。』 なんか良さそう。で、見てみたら、やっぱり悲しい話でした。もちろん悲しいだけではありません。『楽しい』や『優しい』もいっぱいつまった良き作品です。でも全体の7割くらいは『寂しさ』と『悲しさ』が満ちていて・・・。特に向井理さん演じる渉の辛い気持ちが痛いほど伝わってきて、彼が出てくるシーンは見ていられなかったですね。 その一方で、渉と菜緒の友人、知人を1件1件訪ねて行って、少しずつ新しい事実がわかっていく展開ってのは楽しい。出演者の皆様の演技も、自然体でとても雰囲気の良い映画でした。 渉は死んじゃったけど、渉は菜緒と歩夢に『店』と『思い出』と『人とのつながり』を残してくれたわけですね。 最後はハッピーエンド。ですがこれは危険なサプライズかもしれないです。 渉が死んだとき、菜緒は深い悲しみを経験します。それは想像もできないほどの『喪失感』と『絶望感』だったでしょう。それを5年という歳月が少しずつ癒してくれたのです。やっと日常が戻ってきた頃に、再び渉を強く思い出してしまうこのイベント。これは凄く残酷な側面がある気がするんです。映画なので結果オーライってことで良しとしますが、このサプライズに心の中から賛同するのは難しいなあ・・・ [DVD(邦画)] 8点(2020-11-24 10:35:20) |
15. 恋人まで1%
《ネタバレ》 『遊び人』ではなく『遊び人を気取りたい20代』という感じ。 金もあれば元気もある。学生ではないから社会的な縛りもない。将来のことを漫然と考えつつ、でもまだまだ遊んでいたい誰しもが経験のあるお年頃。 真っ先に所帯をもった医者の友人は奥さんが浮気。とても幸せそうには見えない。そんな友人がいれば、結婚どころか真剣な付き合いさえまだいいか、と考えちゃうバカ二人。そんな惰性で生きる若者2人が、運命の人と出会っちゃったら、さあどうする?みたいな、ストーリー。 テイストとしては嫌いではありません。 面白いのは唯一真面目に、一途に奥さんを愛していた若き医師は、奥さんではない別の女性と次の一歩を踏み出してみようと決意すること。ある意味、他の二人とはまた違うカタチの希望を見出すわけです。 ベクトルは違っても、3人がそれぞれ人との付き合いを通し、人間的に成長していく様子が微笑ましい。 ただ映画としては盛り上がりに欠けるし、少々共感しづらい部分もあります。 コメディとしては笑いどころが下ネタオンリーではあまりに稚拙。 ヒロインがイモージェン・プーツなので、それなりに魅力ある作品に仕上がっているだけという気もします。 悪くはないですが、今一歩です。 [DVD(字幕)] 6点(2020-08-19 13:08:33) |
16. ゴーン・ベイビー・ゴーン
《ネタバレ》 よくある幼児誘拐。ミステリーサスペンス。と思いきや、実は善悪の判断基準を問うドラマ性の強い作品。法律に照らし合わせればドイル警部達は加害者で母親は被害者。しかし法律という枠組みを取り、倫理やモラルといった人間的視点で考えてみると、確かにドイル警部たちはアマンダの救世主なのかもしれない。 職業柄、そしてその経験上、レミー、ドイル、ライオネルはネグレクトな母親の元にいるアマンダの末路が見えていたのでしょう。そして法の壁の前では救えないことも。ヘンリーの逃亡計画を知ったライオネル達が強行手段に出たのは仕方ないのかもしれません。 パトリックの活躍により事件は明るみに出てしまいます。アマンダのことを一番に考え心配していた人たちは、一人残らず不幸な結果となります。叔母のビーは追い出され、レミーは死に、ドイルとライオネルは逮捕されます。事件を解決したパトリックは探偵料をもらえないどころか、最愛の人を失ってしまいます。麻薬におぼれ、娘への愛情が一番薄い母親だけが幸せな結末を迎えるという皮肉。 こーゆー映画ならではの、すべての謎が明らかになったときのカタルシスは微塵も感じられません。 見ている間は引き込まれますが、見終わったあとには充足感より虚無感が圧倒的に勝ります。 映画としての完成度は高くとも、好きか嫌いかで問われれば間違いなく好きではない作品です。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2019-11-29 03:32:52) |
17. コッホ先生と僕らの革命
《ネタバレ》 『スポーツもの』というよりは、スポーツを題材とした教育ドラマといった趣。実話がベースなので、心揺さぶられるほどのドラマはなし。でもサッカーを通して子供たちの諍いがなくなっていく様子、サッカーにはまって一人一人が精神的に自立していく様子に元気がもらえます。 で、良い映画なんですが、こーゆー作品にしては、気になる点が多々あり。 まずハートゥングのいじめ。これが結構陰湿。で、その発覚はなし。当然お咎めもなし。のこぎり事件の濡れ衣もそのままだし、靴事件もそのまま。そーゆーのを放置されると、ちょっともやもやします。コッホ先生が来たことで、いじめられっ子のボーンシュテッドのいじめの環境が変わっていく過程が、少しでも良いからほしかった。 正直コッホ先生は『サッカー』と『子供たちにサッカーをさせること』にしか興味がないように見えます。『ばれたら退学になる』と言ったボーンシュテッドに対し、『ばれるわけがない』と言ったのにはびっくりする。 結局はサッカーでクラスに絆が芽生え、物事が良い方向へと動いたけれど、偶然の産物に因る部分が大きい。視察団が来るきっかけを作ったのは生徒たち。ラストの逆転劇は、友人イアンの来訪によるもの。肝心なところでは、何かしているようで何もしていないコッホ先生。彼にそこまで魅力を感じきれなかったのが正直な感想です。 使用人の女性は仕事をクビになったまま。ボーンシュテッドは何も悪くないのに、退学になったまま。結局この2人がこの後どうなったかわからないまま雰囲気だけハッピーエンドで幕が下りちゃいました。 [DVD(字幕)] 6点(2019-09-15 17:18:04)(良:1票) |
18. 恋するモンテカルロ
《ネタバレ》 『ロードムービー』や『ラブコメ』かと思っていたのですが、『なりすまし系』ですか。苦手なんですよね、このジャンル。いつばれるかとひやひやするので、落ち着かない。悪いことをしているのは明らかなので、居心地が悪いのです。 もちろん、それがメインテーマの『潜入捜査』や『スパイもの』であれば平気なんです。ですがこれは『ラブコメ』がメイン。『なりすましちゃっている現実』が気の休まらない状況をつくっちゃって、三者三様の恋愛を全然集中して見られなくなります。 途中からはネックレスまで気になって、3人がどこの誰とどんな恋愛しようがどーでもよくなってきます。『早く現状をなんとかしなさい!』という気持ちのほうが勝ってしまいます。これって『ラブコメ』としては致命的だと思います。 グレース、メグ、エマ、一人一人の恋愛エピソードは悪くなかった。いっそ『なりすまし』なんて奇をてらったストーリーはやめて、直球3本勝負のラブコメに徹したほうが楽しめたかもしれないです。 [DVD(字幕)] 5点(2019-09-05 13:40:00)(良:1票) |
19. 恋とニュースのつくり方
《ネタバレ》 サクセスコメディ。ラブコメの要素があるものの、基本はお仕事コメディ。ラブコメは添え物程度。 駆け出しのプロデューサー、ベッキーがどのようにしてこの業界で成り上がっていくのかがポイント。 仕事を突然クビになり、やっと見つけた転職先は人気低迷の報道番組。まさに定番のストーリー展開で、本来であれば自分とは相性が良いタイプのライトコメディ。 いまいちだったのが盛り上げ方。 番組の打ち切りを宣告され、『6週間以内に視聴率を上げてみせます。』と啖呵をきる主人公。『いいぞいいぞ、面白くなってきたぞ。』と見ていたら、その方法が誰でも思いつくような低俗な企画ばかり。序盤の人物描写で『仕事に夢や信念を持っている主人公』『マイク・ポメロイが憧れのニュースキャスター』と、本格志向なのかと思っていたので、視聴率さえ上がればなんでもいいのかと、ちょっと残念な気分に。 で、そんな低俗な企画で視聴率が上がって、『トゥデイ』からお声がかかる始末。これこそがまさにご都合主義だろうと、ちょっと期待とは違う落としどころ。マイク・ポメロイが独占取材に成功するエピソード。ベッキー自身もそーゆーのを積み重ねていくような、そんな芯のあるサクセスのほうが好みです。この作品は思っていたのと悪い意味で違いましたね。 ただ、レイチェル・マクアダムスはかなり好きな女優さん。彼女が主演というだけでも見る価値はありました。働くレイチェルは凄く魅力的です。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2019-08-30 21:48:34)(良:1票) |
20. 小悪魔はなぜモテる?!
《ネタバレ》 ラブコメながら、これといった恋愛イベントがないのはつらい。いや、あるにはあるのだが、何ともパンチの弱い。トッドがもっと序盤からオリーヴを心配する片思い的存在としてクローズアップされていたら、鑑賞後の感想はまた違ったものになるかもしれません。 コメディも、どうも自分とは相性が合わなかったみたいで笑えません。やたらと性にオープンで寛容な両親。ゲイの友人をストレートに見せる企画。キリスト教にはまるクラスメート。どれも笑うポイントなんでしょうが、好みじゃない。 また、出てくる奴が親友にしろカウンセラーにしろ、ろくなやつがいない。魅力的な人物が乏しい。コレ系のラブコメにおいて魅力的な脇役が乏しいってのは、致命的な気がします。 主人公は良かったです。わりとはっきりものを言うくせに、困っている人は放っておけないオリーヴ。そのオリーヴを演じたエマ・ストーンが魅力的。 ただ、最後は結局自らネタバレしちゃうんですね。できれば、自分たちのために苦境に立たされたオリーヴを、周りの人間が助けてくれるようなラストが見たかったです。ちょっと薄情じゃないですかね。 [DVD(字幕)] 4点(2019-08-04 18:30:39)(良:1票) |