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プロフィール
コメント数 2476
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  ザ・ベイ 《ネタバレ》 
まあ良くある海洋モンスターものの変種バージョンといったところかな。海辺のスモールタウン、独立記念日というフェスティバル、予兆があっても楽観視して無策の首長、『JAWS』以来のお約束事をきっちり守っているので、その点では新鮮味はなし。唯一の工夫はB級低予算映画お得意のPOV形式で撮っているところだが、驚くべきことは監督がバリー・レビンソンだということ。『レインマン』のオスカー受賞監督が撮るような映画じゃない気がしますが、どうなんでしょうかね。考えてみるとたまたま最近観たロジャー・コーマンの『モンスター・パニック』というクソ映画とモンスターの種類が違うだけで展開はそっくりで、さすがに本作の方が丁寧に撮られていますね、そりゃ比べること自体が失礼ってもんですね(笑)。本作のモンスターはワラジムシの変種のような形態の寄生虫ということですが、成虫になったお姿はどう見てもゴキブリにしか見えない。こいつが大量発生する理屈は環境汚染による生態系破壊としているが、ステロイドを成長促進剤として使っている養鶏場から湾に流れ込んだ大量の鶏糞が原因(の一つ)とか、もっともらしいけどけっこう雑な設定です。モキュメンタリー形式で撮るならこういう細部に凝らないといけないんですよ。尺も短いし、暇つぶしにはちょうど良い映画としか言いようがないですね。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2025-01-16 21:38:14)
2.  サンシャイン 2057 《ネタバレ》 
この映画では2050年には太陽がなぜか活動が弱まって地球が凍り付くという設定だが、太陽という恒星は水素がヘリウムに変換される核融合によってエネルギーを放出しており、一説ではその燃料が枯渇する63億年後には赤色巨星となって消滅するそうです。その燃料となる水素の減少によって逆に太陽からの放射エネルギーは徐々に増大していて、5億年後には地球は焼け焦げた惑星と化して生命が存在できない環境となるだろうとの予測もあります。まあ今からたった50年後に太陽が活動縮小するなんてことはあり得ないことですが、そこはSFだから全然ありですね。 ほぼ宇宙船内だけでストーリーは展開し登場人物はモンスターと化すマーク・ストロングを含めても9人こっきり、イカロス2号の乗員たちは8人中3人が東洋系でわれらが真田広之が船長!でも序盤であっさり退場しちゃったのは残念でした。イカロス2号の外観や船内はよく造りこまれていると思いますが、“地球の核物質をすべて使って製作したマンハッタン島ぐらいの大きさの核爆弾”というのが宇宙船のどこに装着されているのか不明。ラストで太陽に打ち込まれるその爆弾はどう見ても普通(?)の大きさで、ちょっと大風呂敷を広げ過ぎじゃない(笑)。本作はダニー・ボイルと脚本アレックス・ガーランドの最後のコンビ作だけど、その後監督業に進出したガーランド作品の暴走ぶりを考えると、ボイルは彼を良くコントロールしていたなと思います。でもこれだけは言っておきたいんですよね、この映画は中盤以降の展開はその10年前に撮られた伝説の怪作SF『イベント・ホライズン』とそっくりなんですよ。なぜかモンスターと化したイカロス1号の船長マーク・ストロングの登場は、ここに由来していたとしか思えません。とは言え『イベント・ホライズン』ほどのモンスター風味は薄く、ガーランド脚本特有の哲学趣味というか臭みが濃厚だったのも確かですけどね。 けっきょく登場人物は全員死んでしまったが、人類は救われる(のかな?)という結末は陳腐ではあるけどラストカットはダニー・ボイルらしさがあって良かったと思います。彼は本作でよほど苦労したらしく「もうSFは二度と撮らない」と語ったそうですが、それは確かに正解だと思いますよ(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2024-12-10 22:06:28)
3.  サボタージュ(1936) 《ネタバレ》 
いやあ、正直言って驚きましたよ、まさか少年が運ばされている爆弾がバスを粉々にしてこの子まで死んでしまうとは!予備知識なく観ていたのであの“初めてのお使い”のシークエンスは、ハラハラ・ドキドキさせてどこかで爆弾が爆発しないか当初の目的を達成できないという良くある展開だとばかり高をくくっていたので、まさに“黒いヒッチコック”がこんなに若い頃の作品で見られるなんて予想もしませんでした。そこからのシルヴィア・シドニーが夕食の配膳をしている最中にオスカー・ホモルカを刺殺するまでの短いシークエンスは、そのピリつくような緊張感は圧巻で本作最大の見どころです。この指令を受けながらロンドンでテロを実行するオスカー・ホモルカが演じる男、もちろん明言はないけど時期的にナチス・ドイツのエージェントであることは誰でも判ったでしょう。でもこの男と妻であるシルヴィア・シドニーとの関係やキャラ設定がイマイチ甘いのも確かです。この怪しげな訛りが強い英語を喋る男は夫婦で米国から移住してきたという設定だけど、いきなりロンドンの中心部で自前の映画館を持てるというのはなんか不自然。まあ雇い主の某国が活動拠点として資金を出して映画館を買い取ったという推理(というか妄想)も成り立つけどね。このあまりに不釣り合いな夫婦だが、妻は彼が真面目で善良な人物だと信じて疑っていなかったのに、弟が爆死した真相を夫から聞かされても弟の死に激しいショックを受けているのに夫の正体にはあまり驚いている風には見えないんですよ。エージェントとしてのホモルカも無差別殺人に繋がるような指令には動揺は見せるが、けっきょく任務を放棄しないところもなんか判りにくいキャラであります。 ラストは辻褄合わせの様な一種のハッピーエンド(なのかな?)としてまとめているけど、最後の爆発はどこから爆弾が出てきたんだ?様子を探りに言ったペット屋が爆弾を持ち歩いていたということなのかな?ヒッチコックの娘がヒッチコックのフィルモグラフィ中でもっとも暗い作品の一つに上げているのは、なんか納得できます。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2024-12-07 23:37:08)
4.  サンクスギビング 《ネタバレ》 
『グラインドハウス』のフェイク予告編の長編映画化の第二弾は、イーライ・ロスと来ましたか。あの予告編群の中ではイーライ・ロス編が個人的にはなんか不条理感がマックスだった感じがしてたんだけど、いざ映画化されると王道的なスラッシャー・ムービーになったんでちょっと肩透かしを喰らった気分です。出演者も予告編版ではティム・ロビンスなんかも出てたのに、有名どころではジーナ・ガーションぐらいになったのはやはり予算の関係かな。まず冒頭の感謝祭セールで起こる事件が、ほとんどシュールなコメディにしか見えないところがイーライ・ロスらしいところです。登場する高校生グループやその家族などの犠牲者たちが皆感情移入できなさそうな奴らでしたが、余りに無造作な犯人フラグを始めに様々な登場キャラに立てるけど、そのフラグが次々に倒れちゃうので犯人の正体はぼんやり観ていても目途が付きます。まあイーライ・ロスの魂胆はそんな謎解きじゃないので、気にもなりませんが。お得意のスプラッター描写は今回もフルスロットル状態ですけど、あの人体丸焼き感謝祭ディナーは『グリーン・インフェルノ』の再現というか、私には『コックと泥棒、その妻と愛人』を思い出させてくれました、もっともあんな耽美性は皆無ですけどね。 振り返ってみれば、ストーリーとしてはやり過ぎ感は薄目でスラッシャー・ムービーとしては可もなく不可もなくという感想ですかね。調子に乗って続編が製作されるそうですが、やめといた方が良いと思いますがね。こうなるとこのフェイク予告編シリーズ、次回作はロブ・ゾンビの『ナチ親衛隊の狼女』にしてほしい、ニコラス・ケイジやウド・キアーなどのオリジナル・キャストを変えずにね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2024-07-30 23:00:05)
5.  さらば冬のかもめ 《ネタバレ》 
原題は“The Last Detail”、まあ“最後の任務”とでも訳すのが妥当かな。それを『さらば冬のかもめ』という詩情を感じる邦題にした配給担当者のセンスは素晴らしい、どう考えても水野晴郎じゃないよね(笑)。70年代の名邦題ベスト3を選ぶとしたら、私は迷わず選出いたします。たしかに“冬”の物語だったけど“かもめ”はまったく登場しませんでしたけどね。 募金箱からわずか40ドルを盗んだだけで8年の懲役を喰らった若い水兵を軍刑務所に護送する任務を命じられた二人の下士官、題材はちょっと変わっているけど展開自体は典型的な70年代ニューシネマお得意のロードムービーです。ジャック・ニコルソンが演じる“バッド・アス”ことバタースキー、葉巻をふかすこの映画のポスターはニコルソンのアイコンの一つになっているぐらいで、きちんと口髭を生やして実にダンディーです。40手前の中年男のセーラー服姿がこれほどカッコよくなるとは意外です。この反抗的で自由奔放な男が、生真面目で「俺とお前は海軍に一生務めるんだぞ」が口癖の黒人同僚を翻弄するさまは観ていて可笑しい。護送される水兵はランディ・クエイド、ガタイはいいけどガキっぽいというかちょっとおつむが足りないんじゃないかという感じが良く出ていました。同じ東海岸に位置する基地と刑務所を往復するのに一週間近くかけてもイイなんて、雑というかいかにも70年代の弛んだ米国の軍紀が垣間見れます。お題目を唱えることを布教する謎の日蓮宗若者集団、これはやっぱり例の学会なんでしょうね。ランディ・クエイドは彼らと交流した後は「ナムミョウホウレンゲキョウ」がすっかり口癖みたいになっちゃうのも可笑しい。彼を折伏しようとする女信者、どっかで見たことあるなと思ったら、若き日のナンシー・アレンでした。 すっかり二人と意気投合して友情関係を育んだと思わせたメドウズ=ランディ・クエイドでしたが、公園で突然脱走しようとするところはいかにもニューシネマらしい展開。でもそこでジャック・ニコルソンが銃を撃たなかったところは、明らかにそのパターンからは外れていました。メドウズはけっきょく予定通り収監されてしまうのでハッピーエンドと言えるのかは微妙なところですけど、なんかホンワカな気分になる味のある作品でした。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2024-07-12 22:14:32)
6.  ザ・フォッグ(1980) 《ネタバレ》 
ジョン・カーペンターの初期ホラーとしては、本作がいちばんまとまっているんじゃないかと自分は思います。もくもくとまるで煙の様な海霧が町を襲ってきて中から亡霊が復讐に現れるなんて、もう王道の怪談噺なんですよ。すでに80年代になってスプラッター系のホラーが主流になりつつあるときに、グロさを抑えた演出で勝負しようとしたカーペンター親父の心意気を買ってあげようじゃないですか。と言いつつも、イマイチ脚本が判りにくいのと雑なところのも事実。亡霊たちはけっこう殺しまくってた印象があるけど実際は100年前に自分たちをハメた連中の子孫6人だけ、意外と節操がありますね(笑)。この映画ではヒロインと言っても良い様な三人の女性キャラ、ラジオのDJ=エイドリアン・バーボー、町長=ジャネット・リー、ヒッチハイカー=ジェイミー・リー・カーチスが結局なんの交差もなくただその晩に町にいただけという展開は失敗でしょう。少なくともジェイミー・リー・カーチスは必要ないキャラだったんじゃないかな、まあこれは元祖絶叫クイーンである母親ジャネット・リーを引っ張り出すための戦略だったのかもしれません。もっとも本作ではジェイミー・リー・カーチスは絶叫するシーンはなかったですけどね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2024-02-23 23:07:25)
7.  三十九夜 《ネタバレ》 
私にはどうしても解せないのは、この映画なんで『三十九夜』というシェイクスピア劇の様な邦題になったのか?ということで、ジョン・バカンの原作小説や後に製作された二本のリメイクも『三十九階段』と(正しく)翻訳されているのに、なんかこうなったエピソードがあるんでしょうかね? ストーリー自体はかなり脚色されているそうですが、これが戦前の映画とは思えないスピーディな展開でなかなか面白い。主人公のハネイ氏については「カナダから来た」という以外は一切情報が提示されずに終わるけど、スパイ事件に巻き込まれてからは出会う人物が男女を問わず怪しげで非協力的なところがサスペンスを高めています。パメラとハネイが手錠に繋がれてからの展開はヒッチコック版スクリューボール・コメディという感じで、ヒッチコックにしてはかなり洗練されていました。“ミスター・メモリー”を使って機密情報を国外に持ち出すという原作にはないアイデアも、なんか突拍子もない気がしないでもないですか、スピーディな演出なのでなんか納得させられてしまいました。小指の先のないボス(ヘタ打ってエンコ詰めされたヤクザか!)と三十九階段なるスパイ組織の細かいところもスルーなので、悪役に対する恐怖が伝わってこないところは難点だったかと思います。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-10-27 22:33:16)
8.  座頭市物語 《ネタバレ》 
寅さんシリーズには負けるけど、日本映画史上屈指の長寿シリーズの記念すべき第一作です。いい歳して座頭市ものをじっくり観るのは初めての自分、市がヤクザだという事すら認識していませんでした。タイトルロールを観て伊福部昭が音楽担当と知ってちょっとびっくり、でも確認すると全作とは言わずとも座頭市シリーズではかなりの作品に参加していたんですね。時代劇での伊福部昭サウンドは、東宝特撮とはまた違った重厚さがあります。 26作も製作されたので後期のまるで超能力者みたいな市のイメージしかなかったんですけど、本作での勝新太郎はもう惚れ惚れするぐらい深みのある人物像で、その演技には圧倒されます。盲者である市が周囲の事物を感知できるのは鋭い聴覚と嗅覚が成せる業という描写にもけっこう説得力があり、現代的に言ううと市は絶対音感の持ち主というわけですね。意外と居合の技を見せるシーンは少なく、初めて抜くのは開幕三十分は過ぎてから。そして“座頭市と言えば仕込み杖”というイメージがあるけど、本作ではドスを杖代わりにしていて、終いにはそのドスも「平手御酒の供養に埋めてくれ」と言って小坊主に渡して捨ててしまう。こういうところはラストでバッジを投げ捨てる『ダーティハリー』と一緒で、まさかこれが大ヒットしてシリーズ化されるとは予想してない撮り方みたいな感じがします。平手御酒=天知茂の哀愁が込められた演技もまた素晴らしく、自分が今までに観た時代劇での天知茂のベストアクトです。 26本も製作されているのでとても生きているうちに全作観れる気がしませんが、機会がありましたら他の作品も観てみたいと思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-09-14 22:23:08)(良:1票)
9.  最後の決闘裁判 《ネタバレ》 
このストーリーはまさに中世フランス版#MeTooという感じでしたね。人妻が夫以外の男を「あの人はイケメンね」と言っただけで裁判で糾弾されるとは、なんともはやです。この頃は全世界でこんな感じだったんでしょうけど、さすがに「強姦では妊娠しない」という説には唖然とさせられました。こんなトンデモを聖職者が大真面目に言うんですから、凄いですよね。ということは、マルグリットがレイプされた直後の妊娠は、当時は夫であるジャンの子種ということになっていたんでしょうね。DNA鑑定はおろか血液型すら認識されていなかった時代ですから調べ様もないですけど、ル・グリの子である可能性だってあり得たんじゃないでしょうか。そういうことも考えられたので、マルグリットが被害を訴えたときに「ル・グリをお前の最後の男にはしない」とジャンが反応したんでしょうね、きっと。 誰が観たって『羅生門』をモチーフにした脚本であることは明白ですけど、三人のストーリーには基本的な事実には齟齬がないところが『羅生門』とは決定的に違うところでしょう。つまり誰も嘘を言っていない(ル・グリがマルグリットは自分を受け入れたと勝手に思い込んでいるとして)ということになってちっとも『藪の中』ではない、こうなってくると『羅生門』スタイルのストーリーテリングにした意味がない様な気がしました。ただ一つ違和感があったのは、ジャンの言いつけを無視して義母がマルグリットを一人にして外出した日に都合よくル・グリが彼女を襲いに来るところで、普通はウラがあるというのが定石ですよね、なんか肩透かしを喰らった気分です。 演じるマット・デイモンとアダム・ドライバーにしても、どっちも違う面で傲慢なキャラで、とても感情移入できないところが返って良かったと思います。室内での撮影はろうそくの灯だけが照明のような感じでちょっと観にくいのが難点ですが、屋外もすべて曇天下で撮影していて陽光が皆無、でもかえって中世的な雰囲気は出ていたかと思います。 そういやリドリー・スコットはデビュー作でも決闘がテーマだったし拘りというか原点に戻った感じですけど、調べるとフランス本土での最後の決闘裁判が行われたのは、この映画の史実のなんと150年後の1549年だったそうです。この映画のタイトル、まさに「看板に偽りあり」でした(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2023-06-18 22:42:10)
10.  ザ・ロストシティ 《ネタバレ》 
かつておバカコメディ『ウルトラ I LOVE YOU!』で世界を震撼させたサンドラ・ブロックがまたまたやってくれました!この人、コメディエンヌとしても並々ならぬ才能の持ち主なのに、自らがプロデューサーまで務めてこんなおバカ映画をまた世に放つとは、もう確信犯なんじゃないかとすら思えてきます。チャニング・テイタム、ダニエル・ラドクリフ、ブラピといった豪華な男優陣に囲まれて日頃のストレスを思いっきり発散させちゃいましたって感じかな。プロットもかつて撮られた秘宝もの・ラブコメの使い回しの感が濃厚ですが、もうちょっと工夫を凝らした脚本ならばもっと面白くなったと思われるので残念です。ブラピの扱い方もカメオ感がミエミエ、あのままストリートに残っていたら、まあチャニング・テイタムの存在意義がなくなっちゃったでしょうけどね。でもエンドロールに突然復活してきたのはファンサービスのつもりかもしれませんが、どう考えてもセンスが悪い。予告編を観た限りでは凄く面白そうだったけど、見事に騙されましたよ(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2023-03-10 21:55:13)
11.  最後の戦い 《ネタバレ》 
記憶の限りでは、自分が観たセリフのない映画はこれだけ、他には『人類創生』みたいに猿人が彼ら独自の言語(唸り声?)を発するだけという珍品はありましたけどね。この映画は決してパントマイム劇ではなく敢えてセリフを全廃することによって映像に観客を集中させる斬新な手法なのかと思いきや、人類が大気汚染によって声帯の発語機能を失ってしまった世界のお話しというのがリュック・ベッソンの設定だったそうで、それじゃあちょっとダサくないですかね。でも日本版ソフト発売時に、勝手にセリフを創って日本語吹き替えバージョンなんてものが出来なかっただけでも幸いかな。出演俳優も最小限だしさぞや低予算で撮られたんだろうと当然思いますけど、なんと330万フランもかかってしまったそうです。なんでそんなに?と訝しくなりますが、撮影経費というよりもベッソンに降りかかった数々の金銭トラブルの結果みたいで、24歳の若造がよくもめげずに完成させたものだと褒めてあげたい。 確かにセリフが無い分映像を必死で追いかけることになりますが、それでもストーリーというか世界線が理解できたとは到底言えません。中盤以降はジャン・レノを含めた三人の男が一人の女を巡って1対2に分かれて攻防を繰り広げていたということは辛うじて判りましたが、その女が死んでしまったのにラストで唐突にもう一人の女が現れ、つまりこの物語はオスがメスを求める(メスがオスを求める)生物本能がテーマだったというわけです。哲学的な語り口と思わせといてのこのオチは、やっぱ中二病が抜けきらない感が今でもあるベッソンらしいデビュー作ですね。
[CS・衛星(字幕なし「原語」)] 5点(2022-12-30 23:01:02)
12.  サボテンの花 《ネタバレ》 
女遊びをずっと続けたくて付き合う女たちには「自分は妻帯者で三人子供がいるんだ」と嘘をつきとおす、誰しも男なら憧れる(?)モテ男を演じるのがポール・ニューマンでもロバート・レッドフォードでもなくウォルター・マッソーだというところが面白い。どう見ても美男子とは言い難い男だけど、こうやってじっくり眺めると愛嬌があってなかなかイイ男に見えてくるから不思議なもんです。冒頭でヒロインが自殺しようとするところなんかは同じだけど、町山智浩氏いわくこの映画は『アパートの鍵貸します』の裏返しのようなストーリーで、これは納得です。脚本を書いたのがI・A・L・ダイアモンドだからですからねえ。まあ普通は妻帯者が独身男と偽って浮気するものですから、ある意味で逆転の発想なのかもしれません。この映画のゴールディ・ホーンはその愛くるしいピクシー・カットもあいまって、男だけでなく周囲の人間をみな幸せにするのに自分を犠牲にするのも厭わないまさに妖精みたいなキャラです。彼女はこの映画が素人からのデビュー作、とくに初期はこの映画のト二のキャラを使い回しみたいにしている感もありますが、どれもキューティクル感が爆発なので許してしまいます。かたやお相手になるのが大女優イングリッド・バーグマン、でもこんな大御所がコミカルな芸を軽やかに見せてくれるのは愉しい限りです。とくにミンクのコートを着てからのヘンなダンスは抱腹絶倒で、彼女のフィルモグラフィ中で最高のコメディ演技じゃないでしょうか。考えればほとんど六人の登場人物で回すストーリーですが、途中のこんがらがり具合は予想を超えるところがあります。でも最後には中年と若者のカップルにきちんと落ち着くところは心地よいです。
[ビデオ(字幕)] 7点(2022-07-08 23:50:48)
13.  裁かるゝジャンヌ 《ネタバレ》 
知って驚くしかないのは、この歴史的傑作のオリジナル・バージョンが80年代まで観ることが出来なかったということでしょう。28年製作のフランス映画ですけど試写の段階でカトリック教会の検閲で大幅にカットされ、劇場公開され世界に配給されたのはこの改変版だったわけです。サイレント映画ではよくある事例ですけどその改変版のフィルムも30年代には火事で焼失、80年代にオリジナル版のフィルムが奇跡的に発見されるまで、海賊版バージョンしか観ることが出来なかったんだそうです。 この映画の感想はもう“衝撃の映像体験”の一言ですね。ジャンヌが火刑されるまでの審問裁判のシークエンスでは、バストショットすら皆無のもう俳優たちの顔のどアップの連続、ジャンヌを含めてノーメイクの俳優たちが繰り広げる演技というか顔芸には圧倒されっぱなしです。デジタルの力もありますけど、サイレント映画とは思えないシャープな映像は圧巻です。ドライヤーは本来トーキー映画として製作したかったそうで、サイレントながら俳優たちにすべて脚本通りに演技させたそうですから、現代の眼でも違和感がない。ジャンヌ・ダルクを救国の英雄として描くのではなく、ルーズ・ルネ・ファルコネッティが演じるのはとても19歳には見えないくたびれた田舎の娘としか見えないのもリアル過ぎでしょ。後にはイングリッド・バーグマンやミラ・ジョヴォヴィッチまでもが演じるキャラですが、ファルコネッティは歴代ジャンヌの中ではもっともアレな女優だったんじゃないでしょうか。 ラストの火刑はほんと観ていて辛くなる、まさにトラウマものです、なんせジャンヌが焼けぼっくりになるまで見せるんですから。また刑場となるルーアン城の遠近法を無視したようなセットがまた印象に残ります。美術は『カリガリ博士』のヘルマン・ヴァルムの仕事ですから、納得です。でもこの美術構成は、ケン・ラッセルの『肉体の悪魔』でそっくり再現されており、美術担当デレク・ジャーマンの拘りが感じられます。
[DVD(字幕)] 8点(2022-06-06 22:08:33)(良:1票)
14.  ザ・スピリット 《ネタバレ》 
原作はフランク・ミラーじゃないそうですが、出来上がりはいつもの“フランク・ミラー・ワールド”というか“『シン・シティ』ワールド”という感じですかね。まあ言っちゃえば“ハードボイルド・コメディ”というジャンルになるかと思います。主人公がガチガチのヒーローなのに女癖が悪いというのが、アメコミ・ヒーローものとしては珍しいパターンじゃないでしょうか。ストーリーの方は“ヘラクレスの血”やローレライを出してきて雰囲気を盛り上げようとしていますが、正直なにが言いたいのか判りませんでした。たしかに出てくる女性キャラがすべてフランク・ミラー好みのナイスバディ美女ばかりというのは、いいサービスです。とは言っても、そこら辺はすべてサミュエル・L・ジャクソンの怪演に持っていかれてしまった感は否めませんけどね。サミュエルとスカヨハがいきなりナチス・コスプレで登場するシークエンスはほんと理解不能でした。しかし黒人がナチスの制服を着ると、ほんと似合わないものですね。そして爆死して粉々になったスカヨハが回収したサミュエルの体の一パーツは、やっぱりオ〇ンチンですかね、こんなところでベタな下ネタぶっこんでくるなよ! あのラストではどう観ても続編を撮る気満々という感じでしたが、幸か不幸か14年経っても実現していないみたいなのは、まあ当然と言えば当然でしょうね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2022-04-08 20:45:42)
15.  ザ・バニシング-消失- 《ネタバレ》 
なるほど、サイコパス気質のキューブリックが怖がるぐらいですから、やはりこの映画の禍々しさはタダもんじゃないという証左になるでしょう。しかしこの真綿で首を絞めてくるような恐怖の盛り上げ方は、たしかにトラウマ級です。オランダの映画にはこういったヤバさや不快感といった嫌な後味が残る作品が見受けられますが、ヴァーホーベンなんて可愛く感じてしまうレベルでした。 反社会性サイコパスの犯人像がリアル過ぎて恐ろしい。二人の娘を持つ理科教師、夫婦仲はごく普通で性格は几帳面で高血圧を気にする一見平凡な中年男。この男の恐ろしいところは、何度も失敗しながらもなんで女性を狙うのかが理解不能なこと。ナンパが目的なら判るけど、失敗から教訓を得てひたすら犯行手口を改善させてゆく執念には、淡々と見せられるだけにゾッとするしかないです。“キーホルダー”や“閉所恐怖症”といった伏線が戦慄のラストで回収されるところも見事です。また失踪したサスキアを探し回るレックスを執拗に狙う心理も、常人には理解しがたい。でも彼なりのレックスを追い詰める作戦は理にかなっており、5回も匿名手紙の呼び出しに応じるレックスから彼の心理を深く理解するまでに至る知性は驚異的ですらあります。レックスはこうなると蛇に睨まれたカエルも同然、理性は激しく警告しているのに催眠術にかけられたように睡眠薬入りコーヒーを飲んでしまうのは人間心理の闇を見せられたような気分です。これはオーウェルの『1984』的な現在の権威主義国家が、民衆を操る手法に通じるものがあるかと思います。 やはりあの絶望のラストは、『キル・ビルvol.2』のユマ・サーマンに影響を与えたんでしょうか、タランティーノなら本作を観ている可能性は十分ありますね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-04-05 22:56:22)
16.  座頭市(2003) 《ネタバレ》 
21世紀にもなって、これほど「め〇ら」というセリフが多用される日本映画が観れるとは、もう嬉しくなっちゃいます(笑)。「北野武が座頭市を撮る」と聞いてびっくりしたもんですが、観てみれば勝新太郎の『座頭市』とは似ても似つかず、“リブート”というよりも“リコンストラクション”と呼ぶのが相応しいぶっ飛びぶりでした。その強さはもう超能力者レベル、だいいち座頭市が金髪というところからしてどうかしています。自分は本作の特徴は“リズム”をとことん重視した撮り方じゃないかと思います。タップのリズムで野良仕事する百姓など時には意味不明なところもありますが、シーンが切り替わるタイミングなんかも含めて快調なリズム感はなかなか心地よい感じすらありました。まるでポリウッド・ムーヴィーみたいなラストはちょっとやり過ぎ感すらあり賛否が分かれていますが、自分は好みです。初めて観たときはまだ『踊るマハラジャ』などのポリウッド・ムーヴィーを知らなかったので、そりゃびっくりしましたよ。このセンスならダンス・ミュージカル映画を撮らせたら面白いんじゃないかな。思うにこの映画での座頭市は狂言回しみたいな役柄で、浅野忠信の浪人夫婦や盗賊一味を追う姉弟のエピソードがメインなのかなとすら思ってしまいます。だとすると、このサブストーリーの描き方(とくに浅野忠信パート)が弱いのは気になるわけで、ここが本作の最大の弱点なのかと感じます。またラストで座頭市の座頭市たる所以を否定する驚愕(?)のオチが用意されているわけですが、これなんかも勝新版『座頭市』のファンから嫌われる理由なのかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2022-03-19 22:26:02)
17.  3-4X10月 《ネタバレ》 
北野武、監督第二作目にしてやりたいことを全部ぶち込んできたというところでしょうか。というかこの一作で北野映画の基本プロットを全部手の内明かしたとも言うべきで、続いて撮った『あの夏、いちばん静かな海。』や『ソナチネ』は本作を因数分解したような感すらあります。音楽を全く使わず極端に少ないセリフ、そしてあっけにとられるラストといい一種の不条理劇と言えるんじゃないでしょうか。まだ俳優素人だったたけし軍団の面々も初起用、彼らにバラエティーのような騒々しい演技をさせなかったなかなかの慧眼です。とくにガダルカナル・タカの強面ぶりはかなりのもので、この人ヤクザを演じて凄ませたらピカイチです。あと渡嘉ちゃんのくりだすパンチは、さすが元チャンプだけあって惚れ惚れさせられます。どうせあのラストにするなら、もうちょっと続けて便所から出てきた柳ユーレイが実はあのチームのエースで四番打者、そして活動的な陽キャラだったと判らせるオチにしたら、パラレルSFみたいで面白かったんじゃないでしょうか。まあ北野映画に全般的に言えることは、SF要素というか発想が無いということで北野武のいちばん苦手な分野なのかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-03-10 22:38:41)
18.  サンセット大通り 《ネタバレ》 
70年前の映画とは思えない、現代の眼で観てもまったく古さを感じない鬼のような傑作。海外の映画サイトやキネ旬のオールタイム・ランキングには当然ランクインしていますが、面白いことに近年になってどんどん順位がアップしています。 死者のモノローグは『深夜の告白』でも使ったワイルダーお得意のストーリーテリングですね。この映画の凄いところは、ウィリアム・ホールデン周辺の仲間たち以外、つまりグロリア・スワンソン=ノーマ・デズモンドや登場する実在の映画関係者たちが、みんなセルフ・パロディとして登場することです。ノーマとブリッジをするメンバーは三人とも実在のサイレント時代のスターですが、この人たちを“蝋人形”だとモノローグで言わせちゃう脚本がエグい、その中の一人はバスター・キートンなんですからね。グロリア・スワンソンにしてもよくこの役を請けたなと感心します、グレタ・ガルボやメイ・ウェストには当然のごとく拒否されてますからねえ。『何がジェーンに起こったか?』のベティ・デイビスとジョーン・クロフォードの先駆けだったと言えるでしょう。ノーマのセリフにもあるようにサイレント時代の女優は顔というか表情で勝負、スワンソン自身もまるで歌舞伎の大見栄を切るような大芝居の連続で、ここは彼女のサイレント女優としての本領が発揮できたんじゃないでしょうか。そんな中でセシル・B・デミルだけはノーマに優しいいい人キャラ、さすがパラマウント映画の大御所・大監督だけあってワイルダーも忖度してしまったのかな(笑)。ノーマとマックス=エリッヒ・フォン・シュトロハイムの関係なんかも始めは不気味に感じるけどだんだん感情移入してきて、ラストの映画監督に戻って指示を出すところなんかは心に染みます。 この映画はフィルム・ノワールの傑作と分類されていますけど、私はビリー・ワイルダーが生涯撮った唯一のホラーじゃないかと思います。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2022-01-13 22:06:54)
19.  サハラ戦車隊 《ネタバレ》 
舞台は北アフリカ戦線、「トブルクが陥落した」というセリフもあるので1942年半ばという時代設定みたいです。この映画の影の主役はやはりⅯ3リー戦車、製作された43年にはすでにⅯ4シャーマンが登場していますが、当時のバリバリの現役戦車です。米軍が師団単位で本格的に北アフリカ戦線に投入されたのは42年後半のアルジェリアからですが、Ⅿ3戦車は英軍にも供与されたので、そのトレーニーとして米軍の分遣隊が先駆けて戦場にいたという設定ならばさほど無理がないかなと思います。“ルル・ベル”というのが戦車につけられたニックネームですが、『1941』に登場するⅯ3戦車もニックネームが同じで、つまり本作へのオマージュだったわけです。 この戦車が英軍部隊に出会ってイタリア兵とドイツ・パイロットを捕虜にして井戸がある拠点を目指すロードムービー風の前半がとくに秀逸です。英軍兵も南アフリカ兵やフランス人志願兵やスーダン人植民地兵がいて多彩な顔ぶれで、それぞれのキャラも丁寧に撮っていて好感が持てます。イタリア兵捕虜がヒトラーとムッソリーニを比較したりしますが、まだ大戦の形が付いていない時期なのにムッソリーニを好意的に語らせているのはちょっと意外でした。とうぜん軍の検閲が入ったはずですが、こういう余裕がアメリカのアメリカたる所以なんでしょう。 水を求めて攻撃してくるドイツ軍との戦いが繰り広げられる後半ははっきり言ってマンガみたいなお話しですけど、ドイツ軍を騙すための策略や拠点の陣地化する作業などは丁寧に描かれていて好感が持てます。とはいえ大隊規模の部隊が、いくら砂漠での戦闘であるとしても燃料・弾薬じゃなくて水不足で戦闘力を半ば失うなんてことは、現実ではあり得ないでしょう。旧帝国陸軍じゃないんだからそんな補給のヘマはしませんよ、ドイツ軍をバカにし過ぎです(笑)。 9人対500人というおとぎ話みたいな戦闘ですが、ボギーの側もけっきょく二人しか生き残れなかったというのはそれなりにシビアな結末だったのかもしてません。 ハリウッド映画とは言っても戦時中でしかも戦争ものなのでプロパガンダ的な製作意図はとうぜんあったでしょうが、そんな偏見を超えた普遍的な面白さを持ったエンタティメントだと思います。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-07-27 23:22:45)
20.  残酷・異常・虐待物語 元禄女系図 《ネタバレ》 
石井輝男・東映時代ポルノシリーズの一作ですけど、前作が悪名高き『徳川女刑罰史』なのでなんか大人しく感じてしまうのはヘンな感覚です。オムニバス三話構成で狂言回し的な役割で吉田輝雄が各話に登場しますが、まあぶっちゃけてしまえばあまり必要性がないキャラでした。 第一話の『おいとの巻』はありふれた感じの吉原を舞台にした廓悲劇といった感じで、『残酷・異常・虐待』の中で『虐待』パートという位置づけですかね。第二話の豪商の変態娘がヒロインの『おちせの巻』は『異常』パートになるんでしょうが、ストーリー自体は江戸川乱歩チックな趣きがあり、ラストの長吉がおちせを背負ってすすきの原っぱを彷徨うカットは、アンリ・ジョルジョ・クルーゾーの『情婦マノン』パクリというかオマージュでしたね。でもやはり強烈だったのは第三話『残酷』パートの『おみつの巻』でしょうね。まず小池朝雄の狂った殿様は怪演としか言いようがないです。側室の賀川雪絵はなんの脈絡も必然性もなく金粉塗り・ゴールドフィンガー状態にされちゃうところは、もうわけ判らん(笑)。そして『屋敷女』を四十年先駆ける妊婦腹裂き・胎児取り出しシーン、60年代の日本映画とは信じ難い映像です。とは言ってもよく観ればチャチな撮影ですけど、特殊メイクの妊婦の腹を刀で斬り開くところを正面から撮ってるのはちょっと酷い(血は全然出ません)。まあ取り出した胎児が大きめのキューピー人形みたいだったのは失笑ものでしたけどね。 当時の東映のラインナップを振り返ると任侠・実録ものとこういうポルノ路線でほとんどが占められていて、これじゃあ佐久間良子とかの大物女優が逃げ出したのは無理ないかなと思います。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2021-07-21 23:21:33)
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