Menu
 > レビュワー
 > 六本木ソルジャー さんの口コミ一覧
六本木ソルジャーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 823
性別 男性

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順12
投稿日付順12
変更日付順12
>> カレンダー表示
>> 通常表示
1.  シリアスマン
面白いけれども、何が面白いのかよく分からない映画。 捉えどころが難しい映画であるが、不思議な魅力のある映画といえるかもしれない。 理不尽な出来事の全てがシリアスなものではあるが、癖のあるユニークなキャラクター、シニカルな内容のためかシリアスになれないようになっている。 映画自体は実は相当に深いのかもしれないが、「シリアスマン」はシリアスに見る映画ではないだろう。
[映画館(字幕)] 7点(2011-04-02 21:42:33)
2.  白いリボン 《ネタバレ》 
ミヒャエル・ハネケ作品は鑑賞した事があるが、自分には向かない監督だと思った。したがって、今までは避けていたが、カンヌのパルムドール受賞作ということもあり、再チャレンジしてみた。合わないところはあるが、確かにこれは凡人が作れるレベルの映画ではないと思う。モノクロ画面の構図など芸術的な作品でもあり、テーマも深遠だ。面白い作品ではないが、つまらなさは感じられない。意味が不明瞭な作品ではあるが、飽きさせることもない。 結末もオチも明らかにはしていないことも凡人とは異なるところだ。もちろん意図があって明らかにしていないのであり、もし明らかにしていれば、逆に失敗だったのではないか。明らかにしないことによって、観客に多くのことを考えさせることとなっている。そもそも犯人が誰かといったことなど、本作にはあまり意味はないことだろう。 個人的な解釈では、第一次世界大戦がキーワードなのかなという気がした。抑圧されていたセルビア人の一人がオーストリアの皇太子を暗殺したことによって、世界全体が狂った戦争へと驀進していく。そのような狂気の伝播、抑圧されたはけ口をあの村の出来事を通して描いたように個人的に感じられた。 ①村人の妻の転落死→キャベツ畑の荒らし→村での孤立→村人の主人が自殺する。 ②牧師が自分の娘が教室で騒いでいると決め付けて娘を叱り付ける→その報復として自分が飼っている鳥を殺される。 ③自分の子どもを疑う→抑制する→ジギや赤ん坊への暴力へと繋がる。 ④男爵が村民を押さえつける→村民が子どもを押さえつける→子どもがジギに報復する→男爵夫妻の関係が破たんする。 カーリへの暴力、夢の話、医師の家族の行方など、解釈が難しいものもあるが、医師の罵倒を聞く限りでは、だいたいの結末についての察しもつく。基本的には、ボタンの掛け違いのよる苛立ちが、次第に強大に膨れ上がり、悲劇的な末路へと導かれている。 過去のドイツの話ではあるが、現在にも通じるような負の連鎖が常人では描けない手法で描かれており、興味深いものに仕上がっている。 パルムドールに値するかどうかは専門家の判断に委ねるしかないが、受け手側の自分のレベルが低いためか、正直言って面白いと思えるほどのものではなかった。 鑑賞中は全体像が把握できなかったので、ひょっとすると再見すれば、評価はかなり高いものとなるかもしれないが、初見ではやや難しい。
[映画館(字幕)] 7点(2011-01-24 21:33:10)
3.  人生万歳! 《ネタバレ》 
ウディ・アレン監督は既に70歳を超えている。最近の作品ではキレのなさを感じており、年齢による衰えのようなものを感じていた。 今回ももはや期待できないかと思っていたが、そのようなことを思っていた自分を嘲笑うかのような驚きを与えてくれる作品に仕上がっている。 確かに、過去の作品の焼き直しのような作品ではあるが、以前と比べて劣ることのないキレを見せている。 シニカルさ、アイロニカルさはまさに健在であり、自由自在、変幻自在にストーリーを展開させる妙は見事であり、「なんでもあり」というテーマを上手く表現している。 ボリスの元に転がり込んだメロディと同じように、ボリス(アレン)の毒にこちらも侵されてしまいそうだ。 あまりにもストーリーが自在すぎて、ボリスとメロディが結婚することなどが、普通に見えてしまう。 アレン自身が投影されており、アレンが主演しても良いような作品ではあるが、他の人が演じることで新味が出たような気もする。  過去の作品の焼き直しように思える作品ではあるが、ただの焼き直しとも思えない点はラストの展開だ。 『人間には二種類のタイプがある。孤独の奴とそうでない奴であり、孤独な奴は最後まで孤独である』というようなオチを思い描き、ラストは再び孤独になったボリスの自殺で悲劇的かつ現実的に締め括るのではないかと、鑑賞しながら勝手に考えていた。 しかしながら、アレン監督はさらにもう一転させて、夢のあるような展開にさせている。 ただの個人的な勘違いかもしれないが、アレン監督が老年に達したことからこそ、このような境地に到達したのではないかとも思われる。 『我々が生を受けたことですら奇跡的なことなのだから、何が起こっても変じゃない。何でもアリの人生、何が起きるか分からないから人生は面白い』ということをアレン監督からのメッセージとして受け取った。 監督40作目となる本作を見て、またこれからもアレン監督には監督を続けていってもらい、今後も作品を見続けていきたいと感じさせてくれた素晴らしい作品だ。
[映画館(字幕)] 8点(2011-01-04 22:57:31)(良:2票)
4.  シングルマン 《ネタバレ》 
デザイナーのトム・フォードのことはそれほど好きではなかったが、本作のデキは素晴らしいと言わざるを得ない。全体的に高い“美意識”に支えられており、彼が描こうとしたヴィジョンも明確であり、才能の高さをひけらかす様な嫌らしさも微塵も感じさせない。単なる道楽ではなくて、彼がGUCCI、イヴ・サンローランを捨ててまで、映画の監督にこだわった理由というものがきちんと見えた気がした。 最愛の恋人を亡くし、自殺を決意した男の、いつもと変わらないようで何かが変わっている一日を通して、彼の『過去』『現在』『未来』を浮き彫りにしている。 『人生』『孤独』『恐怖』『希望』といった哲学的な要素を交えながら、前向きに生きることができるような一筋のまばゆい光が感じられる。 どんよりとした曇り空が晴れるような感覚、海の中で呼吸ができないでもがいている中で陸地に辿り着いたような感覚を味わえる。 ラストの展開は結果的には同じかもしれないが、明確な違いを打ち出している。 大切なことは“結果”ではなくて、“気持ち”の問題であろう。 孤独から逃げた果てではなくて、最愛の恋人に迎えられるというハッピーエンドと捉えることもできる。 彼の専門分野のファッションについてももちろん輝いている。 しかも、映画の本質とは無関係に輝いているのではなくて、映画を盛り立てるための道具としてしっかりと輝いている点が素晴らしい。 登場人物のキャラクターの性格や生き様をファッションなどのライフスタイルという形を通して代弁しており、デザイナーならではの感性が活かされている。 『ウィンザーノットで』と指示を書き加えるシーンには、主人公がイギリス人であるという誇りが込められているだろう。 また、トム・フォード自身ゲイであることは有名であり、本作もゲイを扱った映画である。ゲイに対する差別や偏見などを直接描いた部分がないにも関わらず、ゲイに対する差別や偏見なども本作を見ることで緩和していくような気がした。 彼らも我々と何一つ変わることのない普通の人間であり、普通に誰かを愛する人間であるということが描かれている。 声高々にストレートに主張してうっとうしいと思わせることなく、自分のメッセージを相手の心に伝えているということも評価できる部分だ。 男同士のラブシーンもあるが、嫌らしさなどは全くなく、トム・フォードのセンスの高さが垣間見られる。
[映画館(字幕)] 8点(2010-10-14 23:17:29)
5.  シャネル&ストラヴィンスキー 《ネタバレ》 
他のシャネル作品が微妙なデキだったが、いい意味での裏切りを味わうことができる。3本の中では文句なしに自分の好みであり、かなり気に入った。シャネル及びストラヴィンスキーを描くのにふさわしいセンスの良い作品に仕上がっている。ファッションセンスは抜群であり、構図はまるで絵画を切り取ったようだ。カメラワークもかなり凝っており、その動きを追って、撮影方法を想像するだけでも満足できる。他の2作とは異なり、伝記的な要素はかなり省かれている。伝記的なものを期待していると肩透かしを食らうが、そういった視点から描かないことで、シャネル及びストラヴィンスキーという存在をほとんど知らなくても楽しめる作品となっている(ストラヴィンスキーについては彼の名前と代表作の名前しか知らなかった)。シャネル及びストラヴィンスキーという過去の偉人というよりも、一組の男女という捉え方を外していない。彼らは紛れもない芸術家であるが、そういった捉え方をすることで、現代に生きる我々も近くに感じやすく、共感しやすくなっている。自分の気持ちに真っ直ぐで正直でありながら、正直にもなれないところもあるシャネル、人間としての弱さもあり、強さもあるシャネルをより身近に感じられるのではないか。伝記的な要素は少ないながらも、エルネスト・ボーによる「CHANEL N°5」の完成、「春の祭典」の初演時の喧騒など要所はきちんと押さえられているところも好印象。シャネル及びストラヴィンスキーの罵り合い一つとってもセンスが良い。映画らしく激しく罵り合うのではなくて、分別のある大人の男女らしく静かにかつ心にグサリと刺さるように罵り合っているところをとっても、この作品の素晴らしさを感じることができる。芸術家としてダメになりそうなストラヴィンスキーをあえて突き放すことで創作意欲に向かわせるというシャネルならではのやり取りも彼女らしく面白いところだ。ストーリーらしいストーリーがなく、説明もカットされており、ハリウッド映画のように人物の内面には単純には切り込めないので、鑑賞するには難しいところもあるが、見る人によってはかなり評価を高くできる作品に仕上がっていると思う。“黒い服から白い服を着る”“音楽が情熱的なものへと変わる”それだけでも彼らの心情が雄弁に説明されている。終盤間際に一瞬方向性を失ったかのようなところもあるが、その辺りには触れないでおこう。
[映画館(字幕)] 8点(2010-05-22 23:40:52)(良:1票)
6.  シャーロック・ホームズ(2009) 《ネタバレ》 
つまらなくはないが、期待度が高かっただけに少々物足りなさも覚える。全体的にドキドキ感やワクワク感には乏しく、爽快感やサプライズも感じられなかった。もっとホームズを危機やピンチに陥らせて、もう少しハラハラさせた方がよかったのではないか。危機に陥ったとしても明晰な頭脳で切り抜けたり、本当に危険な際にはワトソンが助けてくれたりしないと盛り上がらない。屠殺場でのアイリーン救出劇や大爆発といった展開はもちろん用意されているが、基本的には予定調和気味の仕上がりといえる。 アクションをメインにしてもよいが、ホームズらしい謎解きという要素がほとんど見当たらないのも残念だ。ホームズがおかしな動きをしたり、やたら変な物をクローズアップして、伏線的なものはきちんと張っているが、観客が推理するという仕掛けにはなっておらず、観客はやや置き去り気味となっている。最後に一気にネタ晴らしされても、「ふ~ん、そうだったんだ」位にしか感じられない。 その肝心のトリックや謎や陰謀も分かるごとにテンションが下がってしまった。自分に従わない国会議員を殺すというどうしようもないネタには拍子抜けであり、トリックは古典的かつ既視感があるだけではなくて無理があるものばかり。ブラックウッド卿自身にカリスマ的な“悪”が見えてこないのもマイナスだ。 そのようなネタやトリックを無視できるほど、ホームズとワトソンの相棒愛やコンビが光っていたかというとそうでもない。ロバート・ダウニーJr.は頭脳明晰ではあるものの、人間的にやや足りず、女には甘いというルパンⅢ世のような親しみやすいユニークなキャラクターには仕上がっているが、アイリーンは峰不二子、ワトソンは次元や銭形のようなキャラクターには仕上がり切っていないため、肝心のホームズとワトソンの友情や信頼感などをそれほど深いものだとは感じられなかった。 変装して彼を見舞い治療するという姿にはやや驚いたものの、それだけでは足りない。 モリアーティ教授の登場は嬉しいが、こちらもどうしようもない動機にはテンションが下がる。モリアーティ教授を登場させるくらいならば、ホームズもブラックウッド卿も実はモリアーティ教授の掌で転がされていただけ、事件は何も終わっていない、むしろ今から事件が始まるというオチくらいのものを出して欲しいところ。 そうしないと続編に対する期待感を欠くこととなるだろう。
[映画館(字幕)] 6点(2010-03-15 21:03:57)(良:3票)
7.  ジュリー&ジュリア 《ネタバレ》 
ユニークな構成かつハートウォーミングなテイストに仕上がっており、思ったよりも楽しめる作品だ。劇的なストーリー展開や驚くような感動的なオチもなく、不満な部分も多々あるが、二つのストーリーを上手く編集し組み合わせることで、それほど飽きることなく鑑賞することができる。 女性が書いた原作作品を女性監督が監督したことで、女性が女性らしく描かれている。 単調な仕事の中で自分の人生に疑問を持ち、何かで埋めようと必死になる姿や、時にはポジティブに、時にはネガティブに振舞う姿や、わがままで自己中心的、負けず嫌いで自分勝手な姿など、作り物ではない等身大の女性の姿が描かれているように感じられた。女性の観客は彼女たちをより身近に感じられて、自分も頑張ろうという気持ちになれるのではないか。 そのような妻たちを支える夫たちにはそれほどスポットが当てられていないが、要所要所で彼らの優しさが垣間見られるように製作されている。料理に没頭する姿にそれほど文句も言わずに、ひたすら付き合い、甘いケーキにはつまみ食いをして無言の励ましや賞賛を与えつつ、時には適切なアドバイスを送るという夫の鑑のような存在だ。 逆に、落ち込む妻たちをなんとか励まそうと努力しても、夫たちの苦労も知らずに“ピザ屋の2階”“パリに戻りたい”というような無神経なわがままを言ったりもする。 しかし、この辺りが個人的には非常に上手いと感じられた。 現実の人間は“聖人”ではなくある意味では“自分勝手な存在”なので、よりリアリティ度が増すように計算されている。 ジュリーに対するジュリアの誤解の件がやや尻切れになっているが、完全に美談にしたくはないという想いもあったのだろう。途中で彼女をネタにするようなコメディアンのシーンを盛り込んでおり、このような類と彼女が誤解したのではないかという想像させるようになっている。コメディアンのシーンも計算して盛り込んだように思われる。 それにしても、ジュリアの書物がジュリーに影響を与えて、ジュリーのブログが読者に影響を与えて、読者となった新聞記者の記事が出版業界に影響を与えて、出版物が映画界に影響を与えて、そのようにして出来た映画を我々が鑑賞するという流れは非常に不思議な気持ちになる。時間や空間を超えて一つに繋がっているということを改めて認識させられる。
[映画館(字幕)] 7点(2010-03-11 22:47:02)(良:1票)
8.  重力ピエロ 《ネタバレ》 
原作は未読。伊坂作品のいかなる作品の1ページも読んだことはない。 雰囲気や仕上りは悪くはないので、評価は低くはない。しかし、「どこが良かったか」と問われると、なかなか答えが見当たらないという困った作品。家族の絆に対して感動できるものでもなく、不可思議なストーリーやサスペンスに関しては文句を付けるレベルではないが、回りくどさにやや疑問点も生じてしまう。 “たかだか・・・”という事柄がいかに関係者を苦しめるかが痛いほどに伝わってくるが、一歩間違えれば「改心しない犯罪者は殺してもよい」という極端な結論が導かれてもおかしくはない。どんなに苦しいことがあっても、笑って明るくしていればよいというメッセージは心に響くので、ありきたりでキレイごとのオチになるかもしれないが、“復讐”を果たすことなく、犯罪者にある程度のダメージを与える程度に済ませてもよかったかもしれない。復讐を果たすことである程度スッキリとするかもしれないが、別の苦しみにさいなまれることになるだろう。しっかりとしていないかもしれないが、兄なのだから、やはり弟を止めないといけない。兄だからこそ、弟を止めないといけないというべきだろうか。逆に、兄が犯罪を企てているとすれば、弟だからこそ、兄を止めるということもあるだろう。「グレープ」のやり取りのように一緒になって、笑って明るくすれば、弟の心の傷を癒してやることができるのではないか。“血”よりも家族の“絆”は濃いのであり、“最強の家族”というのはそういうことではないだろうか。 (統計学的なデータは分からないが)暴力的な性質は先天的にひょっとして遺伝するかもしれないが、犯罪に対して犯罪で仕返しをするというのはいかがなものか。自己の遺伝子を否定したいにも関わらず、自らそれを認めることにはならないか。せっかく産んで育ててくれた父母の恩に報いることにもならないだろう。どんなに苦しいことがあっても、“復讐”をしなくても最強の家族の“絆”はそれを乗り越えることができるはずだ。 もし、“復讐”を肯定ないし是認できるレベルにもっていきたいならば、もう少し深く兄弟の内面に切り込まないといけない。“法律”“倫理”といったものを超越できる作品レベルに達しないと、「殺人はやっぱりダメだよ」という意見が多くなっても仕方がないだろう。原作を読んでいないので、こういうことしか言えない。
[DVD(邦画)] 6点(2010-02-08 23:09:26)
9.  沈まぬ太陽 《ネタバレ》 
202分という上映時間の割には、長さを感じさせない映画に仕上がっており、この点に関しては大いに評価したいところだ。 原作は読んだことがないが、その膨大な原作を練りに練りこんで脚本化して、一人の男の半生を興味深く描き込むには相当な労力を要したことだろう。 飽きるということは全くなく、むしろもっともっと色々なことを深く描いて欲しかったというところが正直な感想。 ただ、つまらないという印象は全くないが、男の人生・生き様に関して、深く感銘を受けるというものもなかった。 実際の事故や人物をベースに描いているので、深くえぐり取ることができずに、ぼやかさざるを得なかったのかもしれないが、ストーリーを流すことを主眼に置きすぎて、ポイントが少々ズレてしまったところがある。 企業も政治も何もかも「どろどろ」としているが、その「どろどろ」が上手く活きていないような気もする。 上映時間だけは長いが、長ければそれだけ深く描けるということはないようだ。  観客に訴えたいポイントを“核”にしなければいけないが、その“核”が少々見えてこない。 『苦しみの果て、悲しみの果てのアフリカの地で恩地が何を見て、何を感じたのか』が自分には深いところが分からなかった。 恩地とココロを通わして、何か同じことを感じ取ったり、考えることができなかったのは自分が幼すぎるからだろうか。 「逃げずに立ち向かい戦い続けた男」「波から落ちないように戦い続けた男」「戦うことから逃げてしまった男」など、様々な男の生き様と、その男を支え続けた女の姿が描かれている。 自分自身の性格が「逃げずに戦う男」ではなくて、「戦うことから逃げてしまう男」なので、本作の“核”が感じ取れないのかもしれない。 兄が妹に対して、「生きている時代が違うから分からない」というセリフがあったと記憶しているが、まさにそういう感想だ。  ただ、人類が生まれた地であるアフリカという場所に立って、再び生れかわれる、再びスタートできるというような気持ちがあったのかもしれないというようなことは感じられた。 自分自身との苦しい戦い、悲しみの果てにも人間はやり直せるというようなメッセージをもっと本作から深く感じ取りたかったところだ。
[映画館(邦画)] 6点(2009-11-02 00:30:44)
10.  しんぼる 《ネタバレ》 
バラエティ番組はほとんど見ないが、ダウンタウンの番組だけは見ることが多い。 松本人志を信奉しているわけではないが、彼の笑いには多少の理解があるつもり。 あまりにも世間一般の評価が低いので、それほど期待していなかったものの、好意的には鑑賞してみた。 第一ステージだけを見させられれば、それほどつまらなくはない。 醤油や漫画などありがちでベタな笑いを交えつつ、脱出方法が思いついた際の描き方、狭い空間に閉じ込められた際の回想シーンなどユニークなアイディアも盛り込まれている。  しかし、第二ステージ以降の面白みに欠ける展開と、あまりにも不可解なオチへと繋がるため、全体的にはどうしても高い評価をしにくくなってしまう。 松本人志自身、納得できているとは思えないどうしようもないオチだ。 世の中の奇跡や事象は、天使や神のような存在の悪戯によるということでも伝えたかったのだろうか。 メッセージ自体はそれほど悪くはないものではあるが、あまりには話が漠然としすぎており、かつ話が大きく跳びすぎており、観客は付いていけず取り残されてしまうのは仕方がない。 あまりにも投げっぱなしなので、深読みする気も起きない。  こんな訳の分からないオチにせずに、マジメに作ろうとすれば、これほどつまらない作品にならないようにはできたはずだが、松本人志は普通の映画を作る気はないようだ。 普通の映画ではない映画を見られるということだけが本作の存在意義になるだろうか。 松本人志監督作品でなければ、世に出るレベルではないだろう。 普通の映画を撮る必要はないが、もう少し熱意のあるマシな映画を撮って欲しいところだ。 密室ネタのアイディアから話を膨らますことができず、最後はタイムアップになって、放り投げたとしか思えない映画になっている。
[映画館(邦画)] 3点(2009-09-13 23:57:59)(良:2票)
11.  G.I.ジョー(2009) 《ネタバレ》 
元ネタに関しての知識は一切なし。 頭脳を1秒も使うことのない、くだらないバカ映画だろうと期待度ゼロで臨んだが、本作は見るに耐えないバカ映画ではなくて、素晴らしいバカ映画だった。 映画には常々“深み”が必要であると説いてきたが、本作には“深み”は一切要らない。 いい意味での“浅さ”をスティーヴン・ソマーズ監督は徹底的に追求してくれた。 最近のアメコミ作品は「ヒーローとしての苦悩」といった面に、ことさらスポットが当てられてしまい、肝心の映像やアクションがイマイチ楽しめないものが多かった。 本作はアメコミ作品ではないが、そういった面を排除して、徹底的にアクションやユニークな世界観を追求しているので、それを存分に堪能することができる。 頭脳を使うことのないバカ映画だが、「それで何が悪い!」という思い切りの良さを評価したいところ。 こういう映画も、ときには必要ではないか。 本作を楽しめるようなココロをまだ持っていることが少し嬉しかった。 本作は、我々が子ども時代に空想していたような世界が繰り広げられている。 訳の分からない兵器を巡って、訳の分からない組織同士が訳の分からない北極の基地で戦いを行う(往年の「007」シリーズの近代化したような感じ)。 メチャクチャな兵器が多数登場して、それらを使い壮絶な銃撃戦を行って、派手に人間やクルマや建物などが吹っ飛ぶ(クルマが電車に吹っ飛ばされたあとに軽症で這って出てくる辺りが最高)。 訳の分からない因縁をもった、訳の分からない名前の忍者が、訳の分からない誓いを立てて、訳の分からない戦いを行う(変な“東京”が良い)。 クスリのようなもので操作された恋人と戦いながら、愛のチカラで乗り越えたり、黒幕が意外な奴だったりというベタさ加減がさらにツボにハマる。 こういったことは、まさに人形を使って、我々が子ども時代に想像しながら遊んでいたような世界ではないか。 童心に返って、バカっぽい世界を楽しむことができた。 各キャラクターも自分の役割を認識しているかのように、ノリノリで“個性”を発揮している。 イ・ビョンホンも意外といい味を出していたのではないか。 それほど悪くはない悪役だったと思う。 ぜひとも“続編”を製作してもらいたいものだ。
[映画館(字幕)] 8点(2009-08-12 00:10:49)(良:3票)
12.  12人の怒れる男(2007) 《ネタバレ》 
アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされており、評判もかなりいい映画のようなので、恐らく世間一般的には良い映画なのだろう。 しかし、個人的には恐ろしいほど相性が悪かった。見ていて「オマエラいい加減に話進めろよ!」と怒りが何度もこみ上げてくるほどの苛立ちを覚えた。 「12人の怒れる男」というよりも、「12人のイカれた男」ではないかというほど、クレイジーなやり取りが繰り広げられているとしか思えなかった。 タチが悪いことに、オリジナルのネタを下手になぞっているから、怒りがさらにこみ上げてくる。 オリジナルも日本版は好きなのに、ロシアのリメイク版には何一つ良さを見出すことができない。 事件の本題にはほとんど触れずに、勝手に自分の話をして、話が終わったとたん、いきなり「無罪」に変えるといわれても、「はぁ?」としか感じない自分の見方が悪いのか。 なぜ「無罪」に変えるのかがオリジナルに比べて、何一つ理解も共感もできなかった。 本作は陪審員制度を通して、陪審員のそれぞれの思想やバックボーンなどが自然と明らかになり、国が抱える問題点や闇が浮き彫りになるという仕組みではなくて、それぞれが自分のことを事件とは関係なく喋っているようにしか思えない。 訳の分からないロシアのおっさん達が自分の悩みをぶちまけて、演説を単に繰り返しているようにしか感じられない映画を自分は評価することはできない。 また、彼らは“議論”をしているというよりも、根拠も証拠もなく、ほとんど推論と思い込みだけで一方的に話をしているとしか感じられなかった。 とてもではないが、知的な会話や、高度のやり取りがあったとは思えない。 ロシアという国は陪審員制度とは相容れない国であるということを伝えようとしているのならば納得できるが、恐らくそういう趣旨の映画ではないだろう。 オリジナルとは異なるラストも結局何を伝えたかったのかが理解できない。 有罪を超越した「有罪」という概念は素晴らしいが、落とし方がすっきりしない。 結局、彼らは偽善者だったということか(ホームレスを世話しているのならば、面倒みられないのか)。 また、何度も繰り返し描かれる犬のシーンと、少年をイメージしているつもりの鳥のシーン、少年のダンスシーンもうざいとしか感じれらなかった。 恐らく見方を完全に誤っていると思うが、こういう見方をする人もいるということをあえて伝えたい。
[映画館(字幕)] 2点(2008-09-27 00:53:21)(良:1票)
13.  ショーン・オブ・ザ・デッド
高評価されている作品のため、期待していたが、全然合わなかった。 一言でいえば、あまりにも真面目すぎるのではないか。 この程度の中途半端なゾンビ映画をみても面白くもなく、もっとパロディや笑いを前面に押し出した方がいいと感じた。 ハリウッドのゾンビ映画と比較しても、大きくは差がなく、それほど個性的には思えない。 面白いのはクイーンの曲に合わせて殴るくらい。 ああいうノリが全体的には足りないのではないか。 
[DVD(字幕)] 4点(2008-09-02 20:22:45)
14.  JUNO/ジュノ 《ネタバレ》 
作り物のような別世界のストーリーではなく、ナチュラルで身近に感じられる点が本作の良さではないか。 賞を狙って背伸びしてカッコつけるのではなく、ジュノたちのようにありのままの姿を自然体で描こうとしている点に好感がもてる。 本作には、映画やドラマにありがちな劇的な事件や劇的な変化があるわけでもない。 ただただ、それぞれの登場人物がゆっくりと前に向かって歩んでいこうとしているだけだ。 したがって、感じ方はなかなか難しいものとなっている。 つまらないと感じさせる部分は皆無だったが、「メチャクチャ感動した」「メチャクチャ面白い」「非常に共感した」というようなことはなかったのが正直の感想。 アカデミー賞で評価されるほどの作品かどうかはやや疑問だ。 ただ、男性と女性、又は年代(特にティーンかどうか)によって感じ方が異なる作品かもしれない。 個人的に強く感じたことは、人生においては失敗するということは何度もあるけれども、深く悲観する必要はないということではないか。 人生が完璧ということやパーフェクトということはあり得ない。 あの夫婦や、ジュノの父親も一度は失敗している。 失敗や何かを恐れて行動しないよりも、自分を偽らずにありのままの姿を晒して、自分らしく生きろということだろう。 あの夫婦のうち、夫の方はあきらかに自分を偽っていた。 そして、妻は夫に偽りの姿を演じさせることを強要していた。 自分らしく生きることができないと夫婦関係や恋人関係には歪みは生じるということなのだろう。 そんな欠点のある妻に、ジュノは自分の息子を託したのは、子どもを持ちたい・子どもを愛したいという彼女の気持ちには偽りがないとジュノは感じたからではないか。 彼女は子どもが欲しいという気持ちをありのままさらけ出していた。 分かりやすいコメディタッチの女子高生妊娠モノ映画と思われがちだが、演技・演出・脚本など、細かい部分を繊細に描かれているような気もする。 一般向けというよりも、やや玄人向けの映画と思われるので、自分には少々向かないところもあった。
[映画館(字幕)] 7点(2008-07-02 23:39:33)(良:2票)
15.  ジャンパー 《ネタバレ》 
“テレポーテーション”という面白い素材を扱って、どうすればここまでつまらなくできるのかというほど、ヌルい。 脚本に中身が全くないだけでなく、肝心のバトルシーンにも見所はない。 どうしようもない理由で始まったジャンパー同士のバトルもあっけなく終わり、“パラディン”という組織のサミュエルとの最終バトルも拍子抜けだ。 サミュエルとのバトルには心理戦もないので、面白みに欠ける。 「ジャンパーには、以前こんなバカがいた」というネタを前フリにしているだけで、ヒネリがまったくなく、無策で特攻するヘイデンがあまりにもバカバカしい。 また、サミュエルは高圧電流の鉄線と謎のナイフを使うだけで、特殊な才能を有しない、ただのザコであり、あれでは盛り上がりようがない。 “テレポーテーション”能力を使って、サミュエルの裏をかいたつもりが、「実は俺もジャンパーなんだよ」とサミュエルにひっくり返されるいうサプライズで観客を驚かすような発想はないものか。 サミュエル以外にも“パラディン”の強力な刺客がいてもよかった。 「ボーン・アイデンティティ」と同じになるが、あの形式は悪くはない。 ヘイデンを追い詰めるジャンパーハンターとしては、魅力に欠けたのではないか。 ヘイデンへの追い込みの足りなさが目立つ。「ボーン・アイデンティティ」と同じ監督とは思えない。敵の組織が強ければ強いほど盛り上がるものだ。 ダイアン・レインというサプライズはあったが、はっきり言って“効果的”とは思えない使い方だ。ヘイデンが絶体絶命な場面でないとあまり意味がないのではないか。母親とハンターとの葛藤がまるで感じられないものとなっている。 レインだけではなく、劇中のキャラクターに喜怒哀楽が全くないので、キャラクターに一切の魅力を感じないものとなっている。 大金と労力を懸けて作り出した特殊効果を漫然と眺めるだけであり、非常に“長く”感じる90分程度の短い映画だ。 さらに、好きな人には申し訳ないが、ヒロインの女性に華がなさすぎるのもマイナスか。はっきりいって、主役の器とは思えない。 好きだった幼なじみをバーに見に行ったら、夢を壊されて愕然として、ヘイデンは立ち去ろうとしたのかと思った。 一番驚かされたのは、会話の途中で渋谷と銀座の間を超瞬間移動していたことだろうか。
[映画館(字幕)] 4点(2008-03-02 23:54:57)(良:1票)
16.  ジェシー・ジェームズの暗殺 《ネタバレ》 
誰かがいつ撃たれてもおかしくない、そんな凄まじいまでの緊張感が保たれている。この緊張感を保ち続けた技量には感服する。視覚的な構図など、非常にセンスを感じさせるので、そういった視点からも相当楽しめた。工夫されて撮影されており、撮影者はただものではない。 本作に描かれているジェシー・ジェームズ自体は意外と大した男ではないのかもしれない。常に疑心暗鬼に襲われ、仲間を疑い、仲間を背後から撃ち殺す。そんなどうしようもない男だ。決して「伝説」になるような立派な男ではない。 「現実」とは異なり、「伝説」は一人歩きして大きく膨らんでいくものだ。ボブは、その「伝説」に魅了されていた一人の男だ。しかし、アイドルはしょせん偶像である。 憧れていた男が実は全然大したことがないと分かったら、どうするだろうかという点が劇的ではないが、きちんと描かれていたと思う。 尊敬に値しなければ、自らがその「伝説」に終止符を打ち、自らが「伝説」を継承しようと考えたのではないか。または、愛情が深い余りに、「伝説」が虚構だとバレる前に「伝説」のままで幕を閉じさせたかったのかもしれない。 影が光を憧れるという構図としては、少々「リプリー」にも通じるところがある。 しかし、「現実」というものは冷たいものだ。 自らもその虚構の「伝説」に憧れたように、人々もその「伝説」に憧れている。 ボブは賞賛されるべき立派な“英雄”ではなく、「伝説の英雄」を殺した“裏切り者”“卑怯者”扱いされるのが、実にアイロニカルで面白いと感じさせた。 ジェシー・ジェームズも仲間を背後から撃ち殺していたが、彼は英雄であり、同じようなことをしたボブは裏切り者と蔑まされるのである。 面白いと感じたのは、ジェシー・ジェームズの最後の行動だ。 疑心暗鬼の塊だった彼が最後にソファーに銃を置いたのは、最後に仲間を信じてみたくなったからではないか。裏切られると思う自分の心が嫌になり、仲間を信じる気持ちに賭けてみたくなったように感じられた。 ジェシー・ジェームズがこのように「裏切り」に絶えず怯えていたとするのならば、ボブもまた「裏切り者」というレッテルを貼られるのを恐れていたのではないか。 だからこそ、観客のヤジに過敏に反応したのだろう。 「伝説」と「現実」、「理想」と「現実」、このギャップの溝にジェシー・ジェームズもボブも嵌まりこんだような気がする。
[映画館(字幕)] 8点(2008-01-15 00:34:45)
17.  地獄の黙示録 特別完全版 《ネタバレ》 
カーツ大佐が、死ぬ間際に口にしたHORROR(恐怖)とは、いったい何であっただろうか。カーツ大佐は根っからの軍人だと思う。しかし、ベトナム戦争でのアメリカの戦い方は、キルゴア大佐を見てのとおり、圧倒的な強力の武器を背景に、緊張感の欠けたただの子どものシューティングゲームのようになっている。一方、前線では指揮官不在で命令系統が全く機能していない。「これではアメリカは勝てっこない」と、カーツ大佐でなくても、誰でも感じるのではないか。自分のキャリアを捨てて、グリーンベレーに入隊したとしても、戦況が変わるわけでもなく、軍人としての渇きを潤すことはできなかったのだろう。だからといって、軍を捨てて故郷に戻ることはできない。冒頭のウィラード大尉と同様にもうすでに故郷はなく、ジャングルに戻ることしかできなかったのだろう。「軍」を捨てて、「故郷」を捨てても、軍人である以上、「戦」や「ジャングル」を捨てることはできなかった。自分の頭の中は正常であっても、魂はどんどんと狂っていく。自分の魂が狂っていくさまを、カーツ大佐は冷静に客観的に自分の正常な頭で眺めていたのだろう。それこそまさに「恐怖」なのではないかと自分は感じた。 キルゴアのように「頭」が狂ってしまえば、「魂」までも狂うことはなく楽にいられたかもしれない。フランス人一家は、頭も魂も正常であるけれども、彼らが土地や家族という「根」を張っているから耐えられるのであり、根を張っていないものには、あの苦痛は耐えられないだろう。 だから、ジャングルの奥地に入り込み、自分の王国を創らざるを得なかった。「王」になったとしても、自分の渇きを潤せたかどうかは疑問だ。「たまにおかしなことを言ったり、度を越える」とデニスホッパーが語っていたように、ここにも彼の居場所はなかったのかもしれない。だから、カーツ大佐は「死」を望んだのだろう。自分の死と王国の後始末をウィラード大尉という、本物の「軍人」に頼んだのも、少しは理解できるような気がする。 以上は、自分が感じた全くの個人的な見解であるが、映画としてはあまり面白くないとは思うし、無駄に長すぎる。後半はベトナム戦争とはどんどんとズレていっているようにも感じるので、あまり高評価はしたくない。
[DVD(字幕)] 6点(2006-08-24 00:15:06)(良:1票)
18.  Shall we Dance? シャル・ウィ・ダンス?(2004) 《ネタバレ》 
オリジナルに比べてバランスの悪さが目立った。 オリジナルはダンスや夫婦などのパートナーの在り方や信頼感を問いた作品であるが、本リメイク作は、その視点がだいぶ欠けているのに、ストーリーや流れだけをオリジナルに近づけようとしているために、バランスが悪くなっていると思う。 オリジナルにもっと近づけるか、それとももっとアメリカ的に大胆に脚色した方がよかったのではないか。
[DVD(字幕)] 5点(2006-06-22 00:00:12)
19.  シリアナ 《ネタバレ》 
ジョージクルーニーのオスカー受賞に伴い、本作も注目を浴びるだろうが、本作に関しては是非鑑賞前に公式HPなどでストーリーや背景について事前に確認してほしい。ストーリーや登場人物などはいたってシンプルであるが、必要以上に細かく切り刻んだために物事の本質が何であるか、何を訴えたいのか、焦点がぼやけた演出となっているので、前広に情報を入手した方がよいだろう。 物事に対して批判しようとするとき、「ボウリングフォーコロンバイン」のように批判対象から完全に逆サイドに立って描くというやり方がある。一方、本作ではアメリカ、中東などの石油業界を取り巻く巨大な渦の中に人々が巻き込まれていく姿をかなり冷めた目で客観的に、かつ感情的にならないように描いている。しかし、「トラフィック」のようなアメリカでは身近な問題である「ドラッグ問題」ならばやや第三者的な描き方をして、鑑賞者に「どう思うか」を問いてもいいかもしれないが、石油問題に関しては身近に感じる人は少ないだろう。この身近ではない問題に対しては、第三者的ではなく、もっと踏み込んだ形で感情的に人々に問いた方がもっと説得力を増すと思う。この描き方では、あまり知らない一般人が映画を見たとしても、世界で最も恐ろしいタブーに震撼するというよりも、「へぇー、そうなんだ。」程度の感想しか持たないだろう。<以下ネタバレ>ジョージクルーニー演じるボブはテロとは無縁の中東の王子(アメリカ寄りから中国寄りにシフトしようとする)をテロの首謀者だからと殺害を命じられ、それに失敗し、あっさりとCIAから駒のように切り捨てられてしまう。真相を知った際の表情、ラストの行動にはそれなりに彼の感情を感じられるが、彼の長年信じてやってきたものが何だったのかという苦悩、悲哀は分かりにくい。合併話の調査を命じられたホリデイ弁護士はラストにはまさに羊を面を被った狼のような行動をするわけだが、彼の心情の変化と父親の関係も伝わりにくい。 アメリカから中国へシフトしようとしたナシール王子と、新米派の父親や弟の確執もあっさりとしすぎている。これらの確執の中で仕事を失い行き場をなくしたワシームをテロへと駆り立てた動機と神学校との関係もまた伝わりにくい。上手く描けばもっと面白くなる題材だと思うが、個人的には全く面白みを感じられる映画ではなかった。
[映画館(字幕)] 3点(2006-03-07 22:17:47)
20.  ジャーヘッド 《ネタバレ》 
「オマエはケニーGか」一人で爆笑していた。 冒頭とラストのオムツがどうのこうのとか、まだ砂漠にいるとかどうのこうのとかはよく分からなかったけど、それ以外はなかなか良かった。手にした銃の感触は消えないとかそんなことも言っていたが、果たしてこの映画はそんな映画だっただろうか、ちょっと疑問。 イラクとの戦闘シーン(切れた電池を取りに銃弾の中を走るシーンなど)はあったけど、アメリカ兵が死亡または負傷する目立ったシーンが、訓練と誤射というのがこの映画のすべてを物語っていると思う。それなりにサムメンデスのアイロニカルで斜に構えた感じと空虚さが交じり合った空気は悪くはないと思う。
[映画館(字幕)] 7点(2006-02-13 01:35:44)(良:1票)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS