1. スラムドッグ$ミリオネア
クイズ番組の構成を映画の構成に応用し、格差社会の実態を描いた娯楽作。 貧困から一発逆転のサクセスストーリーはまさに“ボリウッドのインディアン・ドリーム”てか?「面白いストーリーに社会問題を織り込みアカデミー賞受賞!」の王道を行く。 元になったクイズ番組の、もったいぶって気を持たせる演出に嫌悪感を抱いたので本作も好みじゃない。出来すぎの展開だったが最後のダンスは楽しめた。 かつてプレイボーイとしてテレビのワイドショーをにぎわせたアノ俳優が、子役時代にやらかした“肥溜めにドボン!”のエピソードを思い出した。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2022-10-09 16:20:38) |
2. 頭上の敵機
《ネタバレ》 戦争映画ではあるが、人間ドラマとして興味深い作品。指揮官と部下の関係を通じ、優れて指導者論になっている。ストーヴァルの回想で始まる構成もいいね。 成果を上げるため部下には厳しい上司、「パットン大戦車軍団」はじめよくある上司像だなと思いながら観ていたが、終盤に精神の変調をきたす展開は予想外。組織におけるリーダーとしての葛藤や苦悩が描かれており、第二次世界大戦終結からわずか4年後にこのような映画が作られたことに驚き。 いかに優れた人でも強いストレスにさらされれば弱いもので、ピンと張りつめた糸ほど切れやすい。そんな主人公の内面をG・ペックは見事に演じた。 個人的には、部下たちから信望厚く細やかな人間性(不運を嘆く弱点含め)をみせるダヴェンポート大佐や、気配り上手なストーヴァル少佐にシンパシーを感じる。サヴェージとダヴェンポートの長所を併せ持った上司が理想かもしれないが。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-08-29 14:20:22) |
3. スティング
観るたびに騙される快感よ。すべてはラストに向けた布石であり、仲間たちの協力の結実が心地よい。 [映画館(字幕)] 9点(2020-03-22 11:30:16) |
4. 素晴らしき哉、人生!(1946)
キリスト教的価値観を謳った映画だが、アメリカ映画における一服の清涼剤と受け止めたい。初見後、主人公の人生は暗転してからの後半部分が長いと感じていた。再見すると、大金を紛失する(隠される)前の方が少し長かった。一方に偏っていない時間配分で、良い時もあれば悪い時もある人生を考えるとバランスのとれた編集だ。J・スチュアートは適役適演。 冒頭の天上における神様と天使の語らいシーンは作品に寓意が込められており、オッサンの2級天使という発想もユーモラスでいいアイデアだ。 会社の金を失い絶望した主人公に対して、天使は彼が生まれなかった世界を見せる。その殺伐たる世界を見せつけられ、彼はいかに有意義な人生を送ってきたかに気づく。「ベタな展開」といえばそれまでだがヒューマニズムに溢れており、人生における普遍的なものをファンタジーに包んで描いた映画だと思う。 “クサい”といわれるようなことを正面切って表現する・・・いいね。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2016-03-06 17:09:54) |
5. 砂の器
暗い過去を背負うため殺人を犯してしまう天才音楽家の宿命を主題とする人間ドラマであり親子の物語である。 捜査が難航し、迷官入りかと思われる殺人事件を二人の刑事が執念で追及する。美しい日本の四季の風景を織り交ぜながら捜査の過程を叙情豊かに描く。特に日本海沿岸の荒涼たる冬の風景が親子の心情と重なり印象深い。 父の難病により故郷を追われ、親子は巡礼に旅立つ。行く先々で迫害され過酷な運命に翻弄される父子の絆・愛の強さが描かれる。その後の離別から息子(和賀)が犯罪を犯すに至る経緯は、宿命から逃れられない親子の姿を映すとともに人間の業の深さが表される。音楽家として名を成し、良家との婚姻を控え前途洋々たる和賀は、ハンセン病の父親の存在を隠すために恩人・三木を殺す。動機として弱いが、差別を受けた者にしかわからない苦悩が和賀を犯行に追い詰めたと考えられよう。 終盤、和賀の指揮によるコンサート会場での演奏シーン。ピアノ協奏曲「宿命」は、まさしく彼の芸術家としての高揚感・まばゆい未来への渇望と、対照的に暗い過去を抱える複雑な内面を表現するものであった。 人権にも関わる深く重いテーマを描き、美しい映像と圧倒的な音楽の力で情緒に訴える手法だが、後味は悪くない。 [映画館(邦画)] 8点(2016-01-10 12:46:36)(良:1票) |
6. スタンド・バイ・ミー
ノスタルジー映画の代表的なもので、好きな作品だ。少年期に体験する冒険、友情、喧嘩、家族の葛藤などを通じて精神的に成長していく姿をしんみりと描く。主役W・ウィートンと悪童役K・サザーランドが対照的で適役だ。ブルーベリーパイの大食い大会はユーモラスだけど、ゲボを吐くシーンだけは好きになれない。逆に、好きなシーンは猛犬と恐れられた犬が、実は弱々しい小さな犬だったというオチ。伝説とはこういうもの、というナレーションには「そうそう」という思いだった。「ミネソタの猛虎」とか「AWAの帝王」と呼ばれたヴァーン・ガニアの初来日時のファイトがまさにこれにあたる。それまでは、「チャンピオンは強い」というイメージ(あくまでもイメージ)があったが、見事に壊してくれたもんなあ。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-08-18 11:51:52) |