1. ターミネーター:ニュー・フェイト
《ネタバレ》 「ターミネーター」ほど歪な続編を持つシリーズもないだろう。 有無を言わさぬ完成度を誇った2の呪縛。以降、毎回続編は「なかったこと」にして新たな3を作り続けている。 正統派の「3」、未来の戦争の「サルベーション(4)」、新たな三部作を目指した「ジェニシス」と、個性的な続編が続いたが、今回はシュワちゃんのみならず、リンダ・ハミルトンまで引っ張り出した「正統な続編」とのこと。 特徴は役者の年齢を加味して、作品内でも時間が流れていることである。 別のターミネーターにジョンが殺害され、どんな変化が起きたのか。 しかしながらプロットとしては、未来の要人を敵から保護するといういつものやつである。ジョンの死や強化兵士の投入など工夫がみられたが、冒頭~中盤はマンネリ気味に思えた。 またカーチェイスも迫力は満点だが、凡庸なものになっており少し残念である。音楽の変調などは「2」のチェイスを彷彿とさせるが、物量に任せた大味なシーンに感じた。 「2」では、不気味な敵、ハーレー FLSTF ファットボーイの存在感、そして片手装填のレミントンなど、プラスアルファとなる熱い驚きに満ちていた。 「3」でもクレーン車を利用した度肝を抜くチェイスが用意されていたので、ここでもっと頑張ってほしかったなと思った。 しかしながら中盤以降、シュワちゃんが登場してからは凄まじい盛り返しだ。 (監督のT・ストーリーが適切に演出できているかは、いささか疑問ではあるが)中盤以降に明かされるJ・キャメロンがに作り出した「設定」の上手さには舌を巻く。 協力者はなんとジョンを殺害したターミネーター。 しかも人間性が芽生え、カールおじさん史上最強のカールおじさんとして生活しているのである。 しかしこれは「2」の「理想の父親像」の発展として捉えられることができ、正当な続編という実感が沸く。 人が涙を流す理由を学ぶように、この個体も人の愛を数年かけて学んでいったのだ。 ちなみに犬が懐いている点からもカールおじさんの人間性が伺える。(REV-9は犬に吠えられている) またシリーズのテーマである「運命」への言及も巧い。 「サラ、お前は運命を信じるか?」 任務を完遂したターミネーターは、贖罪の念とともに生き続け、結果としてジョンを失ったサラに生きる理由を与えた。 心の奥にジョンという傷を抱えた二人が邂逅し、今、目の前には新たなジョン、ダニーがいる。 これを運命といわずなんというか。 「サルベーション(4)」では蘇ったマーカスが「セカンドチャンス」という言葉を使ったが、彼らにとってのそれはまさに運命が与えた救済なのだ。 ターミネーターをも運命に抵抗する戦士として登場させたアイデアには感服である。 シュワちゃんの猛ブーストはアクション面でも活きており、空から水中へのダイナミックな構成がキマる。(ちなみに劇中で活躍するハンヴィーだけど、シュワちゃんの要望で民生化してハマーH1が生まれたんだよ) 今回、人間として暮らす元殺人ロボットを演じたシュワちゃんだが、その演技は円熟味を見せており、本当にいい役者だなぁという面白みもあった。 欲を言えばグレースのドラマもしっかり時間をかけて欲しかったが、それでも「ニュー・フェイト」は感情面ににも訴えかけてくる良作に仕上がっている。 あえて「2」をなぞる構成も、このドラマを見れば納得できる仕掛けだ。 戦いを終え、ダニーは今度こそグレースを救うのだと異なる未来への思いを語る。今までシリーズを観てきた僕が一つだけ言えることは、「恐れるな、未来は変えられる」ということだ。 [映画館(字幕)] 8点(2019-11-09 21:05:44) |
2. 007/スペクター
《ネタバレ》 ガンバレル、そしてプレタイトル・シークエンスに続いてオープニングテーマが始まる。そこには過去3作の重要人物が登場する。 伝統的な一連の流れだけで、この作品に込められた意味や立ち位置が理解できる仕組みだ。 本作が目指すのは究極の「ボンド映画」であり、過去作品はスペクターへの壮大な伏線であったのだ。 実際、本作はどこをとってもボンド映画といった印象だ。 まずは世界を股にかけたロケーション。死者の日や雪山、列車に砂漠など、何かしらの特徴を持たせているのが面白い。ボンド映画らしいケレン味を演出する仕掛けだ。 それを活かしたアクションも素晴らしい。大迫力の映像の中に、忘れずユーモアを盛り付けているのが憎い所だ。さらにはタフなライバルの出現も熱い。ボンドに対峙する巨漢はジョーズを思い起こさせる。(ちなみにQの遠征は「消されたライセンス」を彷彿とさせる) 今回は敵が「組織」ということで、ボンドもスクワッドを組んで闘うのが新鮮である。普段は待機組のMたちだが、Mとマニーペニーは元工作員として描かれているため、こういった使い方もアリなのだ。クレイグ=ボンドの世界観を上手く昇華させていると言える。 メンデス監督の人間描写もボンド映画の中に活きている。 拷問で意識を失いかける中、マドレーヌの言葉に応え時計爆弾を持ち直すシーンは特に印象的だ。研究所に向かう車中で「怖ろしいわ」と漏らす彼女に応え、ボンドが無言で手を握る描写が事前にあるから、こういう大人のラブストーリーに説得力が出る。 惜しむらくはスペクター首領か。名優を投入して色気が出たか、首領にしては前線で体を張りすぎである。ボンドへの興味の表れともとれるが、参謀役がいても良かったかもしれない。 しかしそれを補ってなお余るほどの完成度だ。 思えば新ボンドが決まったとき、世間ではバッシングが起きたものだ。僕自身、クレイグ=ボンドに懐疑的だったが、しかしそんな感情は「カジノ・ロワイヤル」公開当日に払拭され、以降は新作が出るたびに新ボンドを確立された。炸裂する爆弾のように闘い、愛し傷つき涙を流す人間ボンドだ。 そして伝統的な様式美を携えた本作を観たとき、クレイグの起用やシリーズのリブート、新ボンド像への挑戦、それら全てが「スペクター」で繋がったような気がした。前3作の正統な続編、正常進化の結果がこれほど素晴らしい「ボンド映画」として結実するとは感慨深い。 [映画館(字幕)] 9点(2015-11-29 02:36:51) |
3. 007/スカイフォール
《ネタバレ》 五輪開催などの一大行事に湧くロンドンイヤーであった2012年。その締めくくりに相応しいコンテンツとして登場したのがスカイフォールだ。奇しくもシリーズの50周年が重なり、記念碑的ボンド映画の趣だ。 クレイグの007に通ずる興味深い点は、一人のエージェントの成長物語としての側面だ。既存のイメージをぶち壊して登場したクレイグ=ボンドが、今作では熟練の諜報員として描かれるのもそのためである。 そういった世界観の説明を孕んだプレタイトルシークエンスから実に良くできている。 状況変化に富んだアクションも圧巻だが、ドラマに秀でたメンデス監督の的確な人物描写も巧い。 引金を引くための駒。地球の裏側からの無線指示が招く結果。 これらは中盤のハビエルとの演技合戦できちんと回収され、「2匹のネズミ」を決定的に分かつ理由になる。 多くの部下を失ったMは、現場に復帰できないはずのボンドまで起用した。MI6に見捨てられたシルヴァはこの事実をMの裏切りと解釈するが、ボンドはどう捉えたか。 会話劇を通してプロの信頼関係を浮き彫りにする秀逸なシーンだ。 つまり、ボンドはこれをMからの信頼と受け取り、シルヴァとの対決に臨んだのだろう。 Mとボンドの信頼関係は、実は前2作でも盛り込まれた隠れたテーマでもある。お互いに信頼することで生き抜いてきたからこそ、今作でボンドがついにみせた涙が胸に突き刺る。信頼に応え任務を全うしても、かけがえのない人を失っては、ボンドでも感情を堪えられない。こういった人間的な面もしっかり表現できるからクレイグのボンドは良い。過去に「ボンドは泣かない」という監督の意向でレーゼンビー=ボンドが涙するシーンがNGとなったことあるが、そのことからもクレイグの007がいかに人間としてのボンドに迫っているかが分かる。 冷戦終結後に数々のテロリストと戦ったブロスナン=ボンドとは異なり、クレイグ=ボンドは実態の見えない組織を追った。現代の諜報戦におけるスパイの有用性を問うような闘いだが、本作では次の50年に向けた結論を打ち出している。レイザーブレードにDB5、無線機。良いものはいつの時代も残っていく。リザレクションの言葉通り、ボンド映画の伝統もまた復活し、受け継がれていくだろう。 [映画館(字幕)] 9点(2015-11-26 14:07:18) |
4. ターミネーター:新起動/ジェニシス
《ネタバレ》 「1」の前日譚となる未来の戦争から、舞台は見覚えのあるロスへ。 そこから始まる超展開の中、おなじみのセリフが響き渡る。 "Come with me if you want to live!!(生き残りたいなら来い!)" 本来なら、サラを守るために派遣されたカイルがクラブで言うはずの言葉。だが今はこの言葉に従ってついていくしかない。スカイネットとの戦いは、「Genisys」で新たな局面へと突入していく。今までのタイムラインをぶち壊し、より強力なターミネーターを出現させ、もはや何でもありの世界観で重量級のアクションを展開させながら。 思えば、「3」は基本的には「2」のプロットを流用し、「4」は現代をすっとばしてひたすら未来の戦争を描いていた。それに比べて本作は、まるでファンボーイが自分の夢を好き放題詰め込んだようなサービス精神あふれる作風だ。 しかしシリーズのエッセンスはいい意味で十分すぎるほどに踏襲され、なおかつ新起動ともいえる斬新な脚本も内包している。J・キャメロンが太鼓判を押す本作だが、もしかしたら作り手としてこうした挑戦をしたかったから本作を評価したのかもしれない。 また、過去作品では「運命を受け入れる」「運命を変える」といった具合に、運命をテーマにした戦いを描いていた。今回も例に漏れず「運命を突き進む」というテーマに基づいて作られているのも小さな感動ポイントだ。今作では、トリッキーで予測のつかない運命を描くからこそ、このテーマも活きてくる。「ターミネーター」である必然性を、ファンサービスや主演俳優の復帰以外でもアプローチできているのが素晴らしい。 もちろんシュワちゃんの存在感も忘れてはならない。 複数の時間軸を移動する設定も、これは同時にありのままのシュワちゃんを無理なく活躍させられる妙案である。そこを監督がしっかり理解しているから演出にもブレがない。鈍い音が響くガチンコの殴り合い、ことあるごとに挿入されるあのテーマ曲。老いても彼のスター性に陰りナシだ、いつだって僕のヒーローである。 総じて満足度の高い娯楽作品だった。ジェニシスはシリーズの正当な続編であると同時に、熱いシュワ映画に仕上がっているといえる。 [映画館(字幕)] 8点(2015-07-31 14:03:02)(良:2票) |
5. ダイバージェント
《ネタバレ》 最近の映画界では、ヤングアダルトはバカにできない顧客層となっているようで、「ハンガー・ゲーム」や、チョイ前では「トワイライト」などが、いずれも大ヒットを記録した。本作もその流れを狙って制作されたヤングアダルト向けのアクション大作である。 ティーン以外の大人層が、このストーリーを楽しめるかはいささか疑問だが、キャストは結構豪華だし、そのシリーズを通してブレイクしそうな若手の出演など、それなりに見所はある。「ダイバージェント」は、その点では中々楽しませてくれる。 主演はシェイリーン・ウッドリー。ジョージ兄貴主演の「ファミリー・ツリー」で、眩しい水着姿を披露した子だ。 その親友を演じるのはレニー・クラヴィッツの娘であるゾーイ。「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」に出ていたので、顔を覚えている人も多いだろう。更にシェイリーンの兄を演じるアンセル・エルゴート(新キャリーに出てた。)は、新作でシェイリーンと再演。イケメン俳優テオ・ジェームズも存在感があり、若手キャストにはいい面子が揃っている。 内容はというと、特にひねった展開もなく、大きなミスもないが典型的すぎる出来だ。 性格によって分けられた集団が、秩序を保つ世界に、どこにも属さない異端者が現れたことによって、世界が揺れ動くというお話。主人公はもちろん異端者ダイバージェントだ。 「イケメン吸血鬼に惚れられたアタシ」、「殺し合いゲームに抜擢された悲劇のヒロイン、アタシ」など、いつになっても中二びょ…、ヤングアダルト層は「特別な自分」が大好きだ。 ともかく主人公は異端者であることを隠すため、派閥を選ぶことにになり、一番楽しそうな「勇敢」を選択。そりゃそうだ。あのポッター君だってレイブンクローに入ってたら、冒険にもでなかったろう。本作は、リア充集団に入りたいという観客の願望も、しっかりと満たしてくれるわけだ。 この後は、鬼教官とダメ生徒の恋愛という、どこの図書館戦争と言いたくなる展開。背伸びして政治問題を絡めるものの、結局はショボいクーデターに納まっちゃうのも、この手のヤングアダルト映画っぽいところだ。 性格診断ですべてが決まるという斬新な世界観を提示したが、ふたを開けてみればヤングアダルトのテンプレ的内容。つまらないわけではないが、凡作といった印象か。 あと久しぶりにみたケイト・ウィンスレット…、デカっ! [試写会(字幕)] 5点(2014-07-06 01:06:42)(良:1票) |
6. ダークナイト ライジング
《ネタバレ》 全世界待望の一作だが、その重圧もなんのその、衝撃的にして壮絶、伝説の終焉を飾るに相応しい堂々たる出来栄えだ。 「ビギンズ」から本作まで、リアルタイムに映画館で観てきたが、やはり三部作すべてを観てこそ真に楽しめる造りになっている。本シリーズは、絶えず変容を続ける社会に合わせて、そのメッセージ性を変化させているように思うからだ。本作では、「絶望的に打ちのめされた後、人は立ち上がれるのか」という点と、「本当の英雄とは?」という点が深く心に残った。本作で、ゴッサムの人々(主に警察組織)はデントの真実を知らされ、深く動揺させられるが、立ち上がり蜂起する。一市民としてのブルースも例外ではない。最愛のレイチェルがデントを選んでいたことを知り、強敵に叩きのめされても、再び立ち上がりゴッサムに帰還した。「2」でデントは、犯罪あふれる世の中を「夜明け前」に例え、古代ローマの政治を持ち出して、混迷の時代における強力なリーダーシップの必要性を説いていた。しかし本作では、「自分の大切な人を守るため、マスクを着ける(闘う)。」、「ゴッサムの運命を市民に託す。」など、一市民の力を強調している。打ちひしがれた少年にコートをかけ、励ましてあげた真の英雄とは、まさに名も無き警察官、ゴードンだったのである。今、人々は真実を知り、屈することなく立ち上がらなければならない時代、一人一人が主役になる時代が来たということだろうか。「1」で影の同盟は、時代に沿った手段で世直しを行ってきたと言っていたが、平和を守る手段もまた、時代と共に変わっていくのだろう。 また本作は「バットマン」でも「ダークナイト」でもなく、「ブルース・ウェイン」の物語になっている。奈落の底での命綱無しのジャンプは、まさにブルース自身のライジング。マスクという命綱を放り、常人を超えたシンボルとしてではなく、恐れを抱いた一人の男としてブルースは立ち上がったのだ。闘いの後、バットマンは遂に本物のシンボルとなり、その志は引き継がれていく。そして彼は、ブルース・ウェインという一人の人間としての人生を歩み始めた。彼の過酷な闘いと葛藤の人生を観てきた僕らならば、守るべき人と共にいる彼の姿を、アルフレッドと同じ面持ちで祝福できるのではないだろうか。 [映画館(字幕)] 9点(2012-07-31 23:29:34)(良:1票) |
7. タイタンの戦い(2010)
《ネタバレ》 「ターミネーター4」「アバター」に続いて本作「タイタンの戦い」、快進撃の続くサム・ワーシントンの主演作。それにしても何故彼はいかなる役においても、それこそ半機械半人間、半ナヴィ半人間、半神半人間(何故かいつも普通の人間ではない)など、どの作品でも、いつも同じ掛け声で「イィ~~っ!!!」と叫んでいるのだろう。どーでもいいか。 [映画館(字幕)] 6点(2010-08-10 16:11:41)(笑:1票) |
8. ターミネーター4
《ネタバレ》 非常に高い期待を持って鑑賞したが、スケール感は期待以上の出来。今までのマックG作品ともターミネーターシリーズからもかなり毛色が違うが、満足いく作品に仕上がっている。荒廃した世界の描写は限りなく乾いており、ヒロイックなアクションは極力抑えた激しくリアルな戦闘が繰り広げるあたり、本作の映像やアクション、演出からは非常にドライな印象を受ける。「いい人のように見えるマーカスが死刑囚になった理由」「マーカスと女性レジスタンスの関係」「ジョンの指導者としてのカリスマ」「かつて機械と友情を育んだジョンが、今マーカスとどの様に接し葛藤するのか」と、もっと深く掘り下げられるポイントが多々あるが、それらをバッサリ切り取り、必要なだけ描くことで、感傷的な作品になることを回避しているようだ。それでも僕は、マーカスの心の熱さやジョンの思いに感情移入して、最後まで興奮して本作を楽しめたので、(いろいろなドラマを切り取ったことはもったいないとも思うが)観客に物語を補完させる手法は評価したい。ラストで機械と人との違いをジョンが言っていたが、このように補完させる手法でも観客に「人間ってものは…」と問いかけているとしたら、非常に深い作品ではないだろうか。 ケタはずれのアクションから、シュワちゃん出演やジョンの顔の傷、過去作品のオマージュなど心憎い演出もバッチリで大満足の一作だ。 [試写会(字幕)] 8点(2009-05-29 16:21:19) |
9. 007/慰めの報酬
《ネタバレ》 ボンドにダニエル・クレイグを迎えての第二作目。007シリーズはシリーズ物の弱点でもあるマンネリ化に、主演俳優や監督、作風の変化によって対応してきたが、クレイグ版ボンドは過去の007作品とは更に一線を画す存在ではないだろうか。ダニエル・クレイグはリアリティと人間味を持って女王陛下に使える諜報員、新生ボンドのスタイルを確固たるものにした。前作「カジノ・ロワイヤル」ではシリーズ最長の時間をかけて、ボンドの愛と誕生を描き、今作「慰めの報酬」ではシリーズ初の連作(続編というよりは二部作といった感じの繋がり方である。)を最も短い上映時間で描いた。その中でも前作の倍近い質量の凄まじいアクションの連続なので、わずか100分ちょっとの時間で(シリーズおなじみのオープニング、エンディングもあるので正味はもっと少ない。)物語を破綻させることなく、しっかりと作品のテーマまで伝えきっている辺りは流石だといいたい。名匠マーク・フォスターならではの人間味のあるドラマに仕上がっている。アクション映画は初にもかかわらず、優秀なアクション監督のお陰か、リアルかつ手に汗にぎる迫力のシーンの連続。「こんな安ホテルなんて・・。」という台詞があったが、脚本、音楽、衣装など、最高級のスタッフを集めたからこそ、ジェームズ・ボンドのような洗練された感じが映画から漂ってくる。Qやマニーペニーが出ない、ガンバレルがラスト(前作と本作が途切れなく繋がっているため)にあるなど今までの007からは大きく逸脱している点もあるが、ゴールドフィンガーを思わせるシーンなど、オマージュもしっかり含まれており、見所が多い。 [映画館(字幕)] 9点(2009-01-25 14:48:51)(良:1票) |
10. ダークナイト(2008)
《ネタバレ》 クリストファー・ノーラン監督の描く新生バットマンシリーズ第二章。ヒース・レジャーは最期の最期にとんでもないモノを残していきやがった!!ただ事ではない異様な緊張感がみちており、ジョーカーが次々と仕掛ける生と死、善と悪の究極の選択からなる連続するクライマックス、怒涛のアクション、畳み掛ける音楽に終始引きこまれる。ノーラン監督の下で全く妥協を許さない姿勢が本年度最高の大傑作を誕生させた!クリスチャン・ベールを初めとする実力重視の超豪華俳優陣の演技も見応えがある。だが何といっても本作最大のみどころはヒース・レジャーの最期の怪演!!知恵と力、強固な意志で常人を超越した存在となったバットマンに対し、全ての規律を捨て去る事で常軌を逸した怪人、ジョーカーを爆発的な存在感と悪のカリスマ性で演じきった。必見だ。彼の名演は間違いなく映画史に刻まれるだろう。この映画はもはや単なるアメコミの映画化作品ではない。本格クライムアクション映画でありながら、スタイルは違えど自身のやり方で正義を貫こうとする三人の男達のドラマでもある。前作「ビギンズ」からさらにゴッサムの闇が掘り下げられており、正義の追求、希望とは何かを考えさせられるストーリーも秀逸。腐敗を一掃することをゴッサムに誓い、闘った正義漢であったデントですら闇に堕ちる。どんな人間でも心の底には悪を抱えていることを証明したいジョーカーの勝利に見えたが、バットマンが無法者の自警市民として罪を被りジョーカーの勝利を打ち砕く事で、デントを信じたゴッサムの人々の希望を守った。希望を絶やさないためにデントが自身をバットマンだと言ってブルースをかばったように。偽ることが時に正義、希望へと繋がることもある。希望を信じ闘うブルース自身すら最愛のレイチェルがデントを選んだことを知らないのも深く考えさせられるところだ。三人の男が求めた正義とはどれほど大きな犠牲を払おうと、たとえ偽りを伝えようと、人々に希望をついえさせないようにすることではないだろうか。三人の関係は、デントの死で変わってしまったが、正義をもとめる姿勢は変わることはない。バットマンはたとえ無法者として警察に追われても、決して日の光があたることがなくても自分の正義を貫きゴッサムの平和のために死力を尽くし闘い続けるだろう。それこそが彼がダークナイトと呼ばれる由縁ではないだろうか。 [映画館(字幕)] 10点(2008-08-03 17:22:01)(良:4票) |
11. ターミネーター2
《ネタバレ》 この映画はまさに「ターミネーター」という存在同様、今後どのような傑作にも負けることはない。 [DVD(字幕)] 10点(2008-04-10 20:45:13) |
12. 旅するジーンズと16歳の夏
《ネタバレ》 とても丁寧に作られていて好感が持てる。アレクシス・ブレデルとブレーク・ライブリーのエピソードが「恋」という面でかぶっていて最初は戸惑ったが話が進むと別々のメッセージでアプローチしてくるので安心して楽しめた。他の二人も良かった。特にアンバー・タンブリンのエピソードは一番好き。僕の好きな映画キャラクターの一人は「ゴーストワールド」でソーラ・バーチが演じたイーニドなんだけど、ティビーはイーニドっぽいところがあって魅力的だった。レオナルド・ナムもいい味出してる。 [映画館(字幕)] 7点(2008-03-30 14:49:02)(良:1票) |
13. ダージリン急行
《ネタバレ》 三兄弟をはじめとする個性派キャストが美しいインドと絶妙にマッチして、まったりとしたグダグダ感が逆に心地良い。音楽も印象深い。 [映画館(字幕)] 7点(2008-03-30 14:15:23) |
14. 団塊ボーイズ
《ネタバレ》 ハーレーとロード・トリップの魅力を十分に味わえる。ストーリーの方は特に新鮮なところは見受けられないが個性的なホグスの面々とキュートなマリサ・トメイ、またキレちゃってるレイ・リオッタなどキャラクターが印象的で所々笑えるとこもあり楽しむことができた。人生を諦めたようで全然諦めきれていないホグス。年齢や常識に縛られる事なく仲間のために行動したり、無茶をする彼らからいつまでも少年のこころと自由を持つ事の素晴らしさを感じた。ただ明るいコメディに徹しすぎているのは少々残念。彼らならではの「悲哀」のようなものが薄い気がした。しかしハーレーにのったオジサン達はひたすらカッコいい。 [映画館(字幕)] 6点(2008-02-11 12:20:35) |
15. 007/カジノ・ロワイヤル(2006)
《ネタバレ》 満点を付けざるを得ない傑作。全編において演技と演出が冴え、すべてのシーンが見所といえる。始まりからボンドとは思えない激しいファイトシーンで007になる前ということを見せ付けられ、またドライデンとボンドが向き合うシーンを黒主体、ドライデンの部下をボンドが殺すシーンを白主体の映像で描く演出も素晴らしい。マダガスカルの追跡シーンでは迫力のアクションだけでなく体術を駆使して逃げるモロカと知恵と力で追うボンドの対比も見ることができる。空港のシーンも緊張感がある。しかしこの映画が一番面白くなってくるのはやはりヴェスパーが登場してからだろう。二人が惹かれあっていく過程をハイテンションなポーカーゲームの間に丁寧に描いている。シャワールームでボンドがヴェスパーの血を舐めて拭うシーンは特に印象的だ。拷問の後の療養中にパスワードがVESPERと知った時の「笑顔と小指だけでも私にとっては立派な男よ。」という台詞とエヴァ・グリーンの表情からもボンドへの大きな愛を感じさせる。ラストのヴェニスに沈む家で必死で助けようとするボンドをヴェスパーが制止するところではやはりエヴァ・グリーンの表情がとても切なく涙してしまった。ラストでホワイトを殺さなかったのはボンドの00としての成長をあらわしていたと思う。きめ台詞にもしびれた。 you know my nameを基調としたスコアがパナマ、ヴェニスなどの映像にマッチし、アクション、脚本など全ての面においてパーフェクトだと感じた傑作。 [映画館(字幕)] 10点(2008-01-12 21:28:34)(良:2票) |