1. DUNE デューン/砂の惑星(2021)
《ネタバレ》 遅ればせながら鑑賞。 だいたい思ったことはレビューされてますので、短かめに感想を。 新生デューン、SF映画として観て最高でした。 架空の世界をどれだけリアルに描けるか・・・ その点において、複数の惑星の環境、民族性、政治、文化が見事に具現化されて、その情景は名画のように美しい。 映画芸術の極みとも思えるほどでした。ただ・・・ 描き出される世界は、緻密で壮大で深遠。しかし、その芸術性と引き換えに登場人物の演技をはじめ、総てに衝撃が無い。 あえて、感動を押しつけないヴィルヌーヴ監督の演出は「ブレードランナー2049」で評価されたけれど、ブレードランナーという傑作SF映画のビジュアルインパクトが前にあって、それとの対比で評価された側面もある筈。 果たして「デューン」という砂の惑星に、大衆を引きつける引力がどれほどあるだろうか・・・ 特にMCU(マーベル映画)の密度・スピード・過剰サービスで育った若い層が、どうヴィルヌーヴ演出を見るか?そこが運命の分かれ道かも知れない。 当然、続編も同じクオリティで、よりスケールアップした形で観たい!だからコケて欲しくはない。 そこで、我は声(ボイス)で命じる!“若者ヨ、投票シロ!”もとい“デューンヲ、見ロ!” おおっ!早速パート2の製作が決まったようだ・・・まぁ、若者にウケたかは知らんけどね(笑) [映画館(吹替)] 7点(2021-10-31 19:14:55)(笑:1票) (良:1票) |
2. ディック・ロングはなぜ死んだのか?
これは、落語の滑稽話(こっけいばなし)みたいな映画でしたね。 滑稽話とは、他人の馬鹿馬鹿しい行いや、失敗の顛末を笑い話にする演目のこと。 落語と違うのは「落ちが無い」ことで、映画で言えば、感動のハッピーエンドでも、恐怖のバッドエンドでもない。 ましてや、どんでん返しなど有る訳もない「なるようになる」物語です。 じゃあ、何が笑えるのか? それは語られる出来事が、地上の英知を気取る我々人間の馬鹿っぽさ=霊長類の“馬鹿あるある”だからです。 劇中の出来事は「有りそうにないけれど、無いとは言い切れない話」であればあるほど妙に笑える訳です。 例えば、やらかして謹慎くらう芸能人とか、うっかり発言でSNS大炎上とか、盗撮趣味で逮捕される教師などなど・・・ 馬鹿な本人には悲劇だけれど、客観的に見れば喜劇。 「ディック・ロングはなぜ死んだのか?」で起きる失敗も「有りそうにないけれど、無いとは言い切れない話」。 ポイントは、滑稽話はあくまで、笑う為の「お話」と知って聴くから笑えるという点で、これを真剣に受け取ったら笑えない。 (コメディでは無いので、出来事はリアルに描写され笑わせる為の露骨な演出はされていない) 英語圏の人なら、原題“The Death of Dick Long”で、笑い話だと察しがつくはず。 スラングに疎(うと)い人でも、劇中で説明されて気がつき、わかってしまえば、アメリカ版ポスターなんて爆笑ものです。 日本人には、映画の事件がピンと来ないかも知れませんね。 でも、映画ファンなら「羊」の例を知ってるはず。映画のタイトルはあえて、沈黙(笑) 人間だから、馬鹿やって大失敗することもあるし、それを誤魔化したくなる弱さもある。 厳しく責める人もいるし、発覚の恐怖や、辛さから逃げたくもなる。 その結果、失うものも沢山ある・・・でも わかってくれる友だちもいて、自分がわかってやることも出来る。 自分なりに、自分らしく生きていく道もきっとある・・・ 正しく完璧に生きることを強要され、些細なミスで吊るし上げられ脱落してしまう。 そんな社会で生きてると こういう映画を観て、何故か、ほっとするのだ。 評価は6点だけど、好きな映画でした。 [映画館(字幕)] 6点(2020-09-02 23:06:59)(良:2票) |
3. テリー・ギリアムのドン・キホーテ
米Screen Media版 Blu-rayで鑑賞 (2019年10月8日に書いたレビューです。) ドン・キホーテに着想を得た夢とも現ともつかない物語。というと如何にもギリアムらしいのだが... ビジュアル面では (類似点の多い)『バロン (1988)』の豪華絢爛さとは対極。とてもストレートでシンプルな絵作り。 ギリアム作品の集客 (一般ウケ) のポイントは、奇想天外な物語。そして、凝りに凝ったビジュアル (だと思う) それ故に、今作の一般ウケは望めないかも知れない。 そもそも、初期の構想では世界を股にかけた壮大な物語になる筈だった...が 製作上の苦難・災難の数々が発生し、それ自体がドキュメンタリー映画『ロスト・イン・ラ・マンチャ』として公開されることに。 黒澤明 然り、年齢とともに監督が映画に注ぎ込める熱量は自然と落ちてくる。 今回ギリアムは、それとは別の問題で妥協してしまったように見え、完成を祝うと同時に彼の運の無さに同情してしまった。 とは言え、満足とまでは行かないが、ギリアムらしさが感じられるファンタジックな作品であることは確か。 “受け継がれる夢想家の魂”とで言うべきか、ギリアムらしいテーマにも共感できる。 アダム・ドライバー、ジョナサン・プライスの熱演も光っているし、良いタイミングでの日本公開を切に願う。 2020年1月30日《追記》 同じくアダム・ドライバー熱演の某銀河大戦完結編と公開を合わせた日本公開に、お見事!と言いたいが、本質を無視した予告編には納得できないのでチャラですね。 [ブルーレイ(字幕なし「原語」)] 7点(2020-01-31 00:11:54) |
4. 天気の子
『天気の子』私は好きです。 猫が妙に漫画チックに描写されてて “これは青春の夢物語だよ” という寓話宣言だと思った。 だから、この映画には現実との不整合や歪曲 非常識やご都合主義、ゆらぎ、曖昧さ、雑味がある。 寓話的な映画で思い出すのは 『ストリート・オブ・ファイヤー』 『ブルース・ブラザーズ』 『ブレードランナー』 『ベイビー・ドライバー』 どれも、ロックンロールやR&B、アンドロイドの夢物語で ボーイ・ミーツ・ガール と逃亡の映画。 強力な絵力 (えぢから) と音楽で、グイグイ持って行く。 主人公は、気恥ずかしいまでに子供っぽく一途で無鉄砲。 『天気の子』も思春期少年のデタラメな夢物語。 方程式に則った前作より、自由で人間らしく素敵だった。 ネット上のレビューは共感できる出来ないが極端に分かれている。 常識や構造にこだわる大人には聴こえない (響かない) 《モスキート音》みたいな映画だなぁと(笑) 今もどこか夢見て生きている人にだけ伝わる映画だと感じた。 宮崎駿監督も初期の頃は 「アニメーションは子供のものだ」と言っていた。 新海監督には、思春期の若者たちに向けて作り続けて欲しい。 あの光り輝く世界は、大人にはもったいないから... 明日も“雨ときどき晴れ”でよろしく。 [映画館(邦画)] 9点(2019-07-31 19:24:48) |
5. デッドプール2
《ネタバレ》 何がしたいかよく解らない話。という声もあるようですが、私には凄くよく解る話でした。 以下【ネタバレ】を含みます。 今回は、ダニエル・クレイグ版007を強く意識した話だと思います。カジノロワイヤルに始まってスペクターに至る《大切なものを守れなかった男》が、何か(ボンドの場合は女性)を守りきることで自分を取り戻すまでの物語。 (自分と同じ境遇の)孤独な子供を守る設定は、勿論「ローガン」からのパクリ・・いやいや、インスパイア。 だから、映画の冒頭のローガンいじりとMVみたいなタイトルバックは、ローガンと007へ「デップーより愛をこめて」的な、今回はそんな話だぜ!っていう一種の事前の宣言なんですよね。 相変わらず下品なジョークを言いつつもヴァネッサを失って心が空っぽになったデップーは 死のうとする。が、何故か天国のヴァネッサから啓示を受け、現世での使命を与えられる。 これは、ブルースブラザースでもあった「罪深き者が神の啓示で良き行いをし 仲間を得て蘇える」(BBの場合は音楽に帰る)のと同じ。 デップーもラッセル(ファイヤー・フィスト)を救う使命を得て、仲間(エックスフォース)を集めて使命を果たし、ヴァネッサを失った(空虚な心)が救われる。という物語・・・普通ならば。 しかし、これは第四の壁を破る映画『デッドプール』なので、物語が決着したついでに、ヴァネッサの死をはじめ 嫌な過去をぜーんぶ改ざんしてしまう。つまり、予定調和(御都合主義)的な映画自体をポストクレジットシーンで自虐的に笑って、これ映画だし!嘘だし!ヴァネッサも死なないよ~ん!と全部チャラにしている訳だ。 そういうウルトラCみたいなオチをつけるところが、やはりデッドプール! スゲーの観た!って気持ちで帰れる素晴らしさです。 [映画館(吹替)] 8点(2018-06-02 11:16:20)(良:2票) |
6. 天空の城ラピュタ
日本映画最高の冒険活劇 まっすぐな少年と可憐で献身的な少女の大冒険を ハラハラ、ドキドキのアクション満載で描く。 地下から遥か天空まで、ファンタスティックでスケールの大きな舞台 善も悪も、個性的で人間味あふれる登場人物たち 夢と希望、勇気、そしてハッピーエンド・・・ まさに、まんが映画の最高峰!文句なし!! [映画館(邦画)] 10点(2017-04-11 14:31:26) |
7. 天才悪魔フー・マンチュー
《ネタバレ》 ピーター・セラーズの遺作となったナンセンスコメディー イギリス人俳優ピーター・セラーズは、1980年に54歳でこの世を去った天才コメディアンで、これはその遺作となった作品です。 作品としての評価は、公開当時(その後も)あまり高くありません。しかし個人的には「博士の異常な愛情-または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか-」「カジノロワイヤル」「ピンク・パンサー2」同「3」「名探偵登場」などと並んで〝愛すべき映画〟の1本です。 ピーター・セラーズの得意芸の一つが、珍妙極まりない変装。本作では奇怪な中国人フー・マンチューとその逮捕に人生を懸けた結果ヌケガラのようになってしまったスコットランドヤードのネイランド・スミスの二役ですが、フー・マンチューが登場するたびに変装するのでセラーズの(正体バレバレの)百面相が楽しめます。最後には某ロックスター風にも・・・。ストーリーは、ピンク・パンサー同様のシュールなだまし合いの応酬で、とても愛らしい映画です。 しかし、何より凄いのは、初老紳士の不条理なロマンチックコメディで名演と絶賛された「チャンス」と同時期の主演作だということ。この二面性は作品中の変装より、よほど名人芸です。 ただ、残念ながら現在はテレビ放映以外、海外版のDVD(字幕なし)でしか見ることができません。早く国内版のDVDやBlu-ray(できれば羽佐間道夫さんの吹替音声も収録して)発売されることを切に願います。 [地上波(吹替)] 6点(2016-08-08 18:08:27) |