1. ドラキュラ デメテル号最期の航海
《ネタバレ》 1897年、とある帆船が50個の謎の木箱を積んで、ルーマニアから英国へと出発する。だが一か月後、英国の海岸で座礁したその船には誰も乗っていなかった。船の名は、デメテル号。残されていたものは、船長が記した数週間にも及ぶ航海日誌。これはその日誌を基に描かれた物語である――。これまで映画や小説、漫画やアニメ、果てはゲームにまで様々な影響を与えてきた怪奇ホラー小説の古典、ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』。もはや説明の必要のない超有名なこの小説の第7章「デメテル号船長の航海日誌」にのみ焦点を絞って映画化したのが本作。監督は、『スケアリーストーリーズ/怖い本』や『ジェーン・ドウの解剖』などでスマッシュヒットを飛ばしてきた新進気鋭のホラー監督アンドレ・ウーヴレダル。題材からも分かる通り、もう超が何個もつきそうなくらい超超超オーソドックスなホラー映画なので、もちろん新しい部分は一切ありません。が、そこはセンスでならしてきたエンタメ映画界の俊英、ツボを押さえた演出がバッチリ決まっているなかなかの佳品でございました。一から丸ごと一隻造ったという木造の小さな帆船の中で繰り広げられる、おどろおどろしいストーリーはやはり楽しい。まぁベタっちゃベタですけど、ここまでベタを貫き通してくれたらもはや清々しいですわ(笑)。コンプラやポリコレなんてゆう窮屈で退屈な代物なんて存在しなかった時代の古典だけあって、その容赦のない展開はさすがですね。今の時代、9歳の子供が全身火だるまになって焼死するシーンなんて誰もやりたがらないだろうけど、それを敢えて逃げず、ここまでちゃんと映像化してくれたウーヴレダル監督に素直に拍手!黒焦げになった子供の遺体が海に沈んでいくシーンは最近じゃ観られない暗鬱な美しさに満ちた名シーンでした。途中で意識を取り戻すドラキュラの食料用に詰まれていた女性もミステリアスな魅力に満ちていて大変グッド。徐々に狂ってゆく船長の不気味さも印象的。ただ、それ以外のキャラ(主人公含む)がいまいち魅力的でなかったのが残念だったかな。あと、後半に姿を現したドラキュラがいかにもなコウモリ怪人だったのも評価が分かれるところ。自分はもう少し見せない恐怖を貫いてほしかったような気がしなくもない。とは言え、ほとんどCGで描かれたうねるような海面描写もキレイだったし、いかにも年季の入った木造船の美術もリアルだったし、なかなか面白かった!6点! [DVD(字幕)] 6点(2024-08-08 10:43:56) |
2. ドント・ウォーリー・ダーリン
《ネタバレ》 砂漠のど真ん中に造られた、とある新興住宅地。ここは世界的な大企業が極秘裏に進めるプロジェクトのために建設された、完璧な町だ。大きなスーパーマーケットや美容院、映画館も併設され、他のどの町に行かなくてもここだけで生活に必要なものは全て揃うようになっている。定期的に巡行するバスに乗れば、町の何処にでも運んでくれる。そう、ここは誰もが幸せに暮らせる楽園のような世界――。プロジェクトに関わる夫ジャックとともに、何不自由ない生活を満喫する専業主婦アリス。従業員以外は許可なく町を出ることは禁止というルールに疑問を抱くことなくこれまで暮らしてきたアリスは、毎朝夫を送り出し、ママ友たちと日々優雅な昼下がりを楽しんでいる。自由な時間を楽しみたいとまだ子供を作る気もないアリス。だが、迷子になった子供を捜すためにルールを破って町の外に出てしまった隣人主婦マーガレットの存在が彼女の気持ちをざわつかせる。マーガレットの子供はいまだ行方不明のままで、彼女はそれからこの町に批判的な言動を繰り返しすようになっていた。ある日、そんなマーガレットが自らの喉を切って自殺する瞬間を目撃してしまったアリスは、真実を探るために町の外へと逃げ出そうとするのだが……。冒頭から描かれる、この冗談みたいな理想郷のカラフルで洗練されているのにどこか歪な世界観が強烈。何処にもゴミ一つ落ちておらず、家の壁も汚れなど一切なし、部屋の中も全て掃除が行き届いている。でも、主婦たちは料理以外の家事は全くせず、プールサイドで優雅にお酒を飲んで趣味のバレエにいそしみ、することと言えば夫と所かまわずセックス。彼女たちはみな夫の言うことを全て鵜呑みにして、今の生活に何も疑問を抱かない。そんな世界に響き渡る、何処までも陽気な音楽……。ここまで気持ちの悪い世界を緻密に構築した、この監督の手腕は確かに凄い。時折挟まれる悪夢的イメージも鮮烈で、生卵を割ってみたら中身がまったくの空だったなど印象に残るシーンも多い。ただ、問題となるのはストーリー。ここまで大風呂敷を拡げまくったお話をどうオチつけるのかと思っていたら、まさかの○○オチ。これまで様々な映画や小説で何度も見てきたような既視感満載のその真相は、さすがに肩透かし感が半端なかったです。こーゆー言ってみればなんでもありのオチは、よほど巧くやらないと納得感が得られませんって!!また、全編に貫かれる、「全ての女性を家庭という牢獄に縛り付けようとする男社会の論理」への抵抗というフェミニズムなテーマも、最近はそんな映画が余りに多すぎてちょっと辟易。なんなら説教臭ささえ感じました。映像や世界観はすこぶる良かっただけに、残念! [DVD(字幕)] 6点(2023-09-21 08:41:29)(良:1票) |
3. ドライブ・マイ・カー
《ネタバレ》 妻と娘を失い孤独に生きてきた舞台俳優と彼にドライバーとして雇われることになった若い女性。ともに生きづらさを抱えていた2人の交流を終始淡々と描いたヒューマン・ドラマ。原作は泣く子も黙る世界的大作家、村上春樹。基となった短編集はまだ読んでないんですけど、主人公たちが交わすセリフをちょっと聞くだけで「あぁ、これはもう完全に村上春樹だなぁ」と思わせるところが凄い。妻が亡くなる前の長いプロローグとも呼べるシーンで、主人公が妻とセックスしながらひたすら意味不明な会話を交わすところなんてまさにそう。片想い中の女子高生が好きな男の子の家にたびたび空き巣に入って最終的には人を殺す話をしながらエッチするってどんな夫婦やねん(笑)。その後、本編が始まってからも登場人物が交わす会話も全く同じ。よく言えば哲学的で深いのにどこかお洒落、悪く言えば空疎で薄っぺらく全編気持ちの悪いナルシズムに満ちている。やはり村上春樹の小説は映像化には不向きなんじゃないかと思わせたものの、中盤からは不思議とこのわざとらしいセリフ回しに心地良さを感じている自分がいました。それはおそらく、主人公たちが現在取り組んでいる多言語舞台という前衛的な劇中劇が功を奏しているからなんでしょうね。舞台稽古をしている俳優たちがそのまま私生活にまで影響を引きずっているというこのメタ構造が、この不自然なセリフ回しを巧く中和している。なかなか考えられた演出と言っていい。内容の方も、村上文学の主要テーマである喪失感からの再生が多面的に描かれており、深い。前述した、さまざまな言語が入り乱れる演出でチェーホフの戯曲を再演しようという舞台の稽古と、心に傷を負った若いドライバーとの繊細な交流を二重写しのように描いたところは称賛に値すると思います。同じテーマをそれぞれ違うアプローチで描いていたものがラストでぴったり重なったのが感動的ですらありました。喪失感を抱えて生きている自分たちの苦悩がほんの少しだけ浄化された、それだけでこの先も生きていける――。心地良いラストの余韻に自分は観てよかったと思えました。カセットに録音された今は亡き妻ともう不可能となってしまった会話を交わす主人公の声を、ただ静かに聞き続ける若い女性とか、なんて切ない構図なんだろう。ただ、不満点も幾つか。まず冒頭、妻が亡くなるまでのあの長いプロローグは正直いらない。中盤の高槻との会話への伏線として必要だったのでしょうけど、それも回想シーンなりの別の描き方があったはず。あの40分はばっさりカットしても良かったのでは。とは言え、人と人とが永遠に分かり合えないことの切なさを美しく描いた上質の物語でした。 [DVD(字幕)] 7点(2023-07-10 09:11:19)(良:1票) |
4. トロール
《ネタバレ》 北欧の神話や民間伝承に登場する恐ろしき怪物、トロール。人間などひょいと摘まみ上げて食べてしまうそんなモンスターが、山地開発をきっかけに現代に蘇ってしまった!前例のない驚くべき事態に人々は右往左往するばかり。政府や軍幹部、そして怪物を調査する古生物学者は果たしてこの危機を乗り越えられるのか?という、極めてシンプルなモンスターパニック映画。まぁバカバカしいっちゃバカバカしいんですけど、それでもCGで描かれたトロールの造形はけっこうお金がかかっていて暇潰しで見る分にはそこそこ楽しめました。このトロール君の見た目が何処か間抜けで、こいつが都会を破壊しながら練り歩くシーンは大真面目に作ってある分、なんか笑けてきちゃうのが本作のミソ。ただ、お話の方ももっとおバカに振り切っても良かったんじゃないかな。ところどころクスリとさせられるものの、中盤からはいまいち盛り上がりに欠けたまま終わっちゃいました。同じくノルウェー&トロールで言えば、今やハリウッドの第一線で活躍するアンドレ・ウーヴレダル監督の知る人ぞ知るカルト作『トロールハンター』があるけど、笑いも物語もあちらの方が一枚上手でしたね。以下余談。いかつい軍幹部がオタクっぽい首相補佐官に軍歴を聞いたところ、「あるよ。コールオブデューティだ」って答えたところが個人的にツボでした。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-01-23 06:15:25) |
5. ドント・ルック・アップ
《ネタバレ》 人類は、あと6ヶ月と14日後に滅亡する――。地方大学で教鞭をとる冴えない天文学者ランドール・ミンディ。ある日、教え子のケイトとともに天体観測をしていた彼は、未知の巨大な彗星を発見する。意気揚々と軌道計算を行った彼はその結果に愕然とするのだった。なんとこの彗星は確実に地球へと向かっているのだ。しかもこの大きさの星が衝突すれば、人類は滅亡をまぬかれない。すぐさま政府と連絡を取り、大統領と面会したミンディ教授はことの重大性を訴える。だが、次の中間選挙と閣僚のスキャンダル対応にしか興味がない大統領は真面目に聞こうとしない。朝のテレビ番組に出演したり、大手紙のインタビューを受けるも、日々の生活に追われる市民は彼の訴えなどへらへらと受け流すばかり。そればかりか、彼の愚直なまでの真剣さが逆に笑いの種となり、次第にネット上で人気を博すように。そこに若者に絶大な人気を誇るカリスマ歌手や彗星に内蔵する希少な鉱物を狙うIT企業のCEOなどが絡み、事態はますます複雑に。そんな中、ミンディ教授自身もテレビで知り合った美人キャスターと不倫の関係になってしまう。そうこうしているうちにも地球を壊滅させる彗星は着実に近づいてくる……。これまで難解な社会問題を分かりやすい目線で見つめてきたアダム・マッケイ監督が、地球滅亡までの狂騒の日々を豪華キャストを揃えて描くディザスター・ドラマ。いやー、久しぶりに来ましたね。こういう、笑えないのに笑えちゃうシニカルなネタ満載のブラック・コメディ。登場人物誰もが余りに愚かすぎてもはや笑うしかないような気分で笑っちゃったのは、キューブリックの『博士の異常な愛情』以来なんじゃないかしら。とにかくアホばっかり。アリアナ・グランデ演じる?頭の悪いカリスマ歌手が、「空を見上げて、みんなもうすぐ死ぬの。でも、本当の愛は死なない」と切々と歌い上げるコンサートシーンなんて、バカバカしすぎて思わず爆笑。抜群に歌が巧い分、この内容のない歌がより心に響きますねぇ(笑)。何より大統領を演じたメリル・ストリープ!よく引き受けたなと思うほど、うざったい正義感を振りかざす嫌なおばはんをのびのびと演じていて?素晴らしかったです。金儲けにしか興味がない、いかにも偏屈なIT企業社長も良い味出してましたし。とはいえ肝心の内容の方はよく考えられている分、すこぶる怖い。保身や自己の利益にしか興味がないセレブ、SNSで身勝手な言動に熱狂する市民、暴動や略奪、乱交に走る人々……。ここまで人間は愚かではない!と言い切れないところが、この監督の巧いところ。いや、この監督って相当性格悪いですね(悪口)。それは最後の最後まで徹底していて、新たなエデンへと降り立った男女がみんな素っ裸のおじさんおばさんばかりというのも皮肉が効いていて最高でした。余りにシニカルなため、かなり人を選ぶと思いますが自分は最高に楽しめました。 [インターネット(字幕)] 9点(2022-11-18 08:34:27) |
6. ドアマン
《ネタバレ》 要人警護中にテロリストに襲われ、幼い女の子を目の前で死なせてしまった元海兵隊員アリ。以来良心の呵責に悩まされ海兵隊も除隊した彼女は、生まれ育ったニューヨークへと戻ってくる。親戚の叔父に勧められ、アリはそのまま古い高級アパートでドアマンとして働くことに。そこは明日から大規模な改装工事が始まり、住民のほとんどが出払うことになっていた。残っていたのは足腰の弱い老夫婦と一日だけ部屋にとどまることを許された大学教授の家族のみ。アリは、不愛想な先輩ドアマンの元、無事に勤務初日を終えるのだった――。次の日、実は親戚だった大学教授家族からお誘いを受けたアリは彼らとディナーを楽しんでいた。だが、彼女はまだ知らなかった。同時刻、1階に住む老夫婦の部屋に屈強な強盗団が押し入っていたことを。彼らの狙いは、老人がかつて東ドイツから持ち出した高級な絵画を強奪すること。ところが何処をどう捜しても目的のものは見つからなかった。それも当然、足が弱くなった老夫婦は最近1階へと越してきたばかりだったのだ。絵画が隠されていると思しき部屋は、かつて彼らが暮らしていた10階の一室。偶然にもそこは今、アリたちがディナーを楽しんでいる大学教授の部屋だった……。率直な感想を述べさせてもらうと、まあまあ面白い。スケールのちっちゃな『ダイ・ハード』って感じでしたが、お話のテンポも良く、アクションのキレも良かったので最後までそこそこ楽しんで観ることが出来ました。古い時代の建物ということで、禁酒法時代に皆で隠れて飲む用の隠し部屋や隠し通路があるとかも面白い舞台設定。そんな閉ざされたビル内で繰り広げられる、元凄腕海兵隊ドアマンと強盗団の戦いは逆転に次ぐ逆転でけっこうハラハラドキドキ。主人公の姪っ子の女の子も可愛かったですし。ただ、脚本の細かいところに突っ込みどころがいっぱいあるのが惜しい。敵から隠れているのに、死んだ母親の話から思わず感情的になって机を叩いてしまい見つかってしまう少年はかなりアホですね。ドアマンと言いながら、主人公がほとんどその制服を着てないのも勿体ない。主人公、あの制服けっこう似合ってたのにね。アクションシーンもところどころ巧く繋がっていないようにも感じもしました。とは言え、何も考えずに暇つぶしで観る分にはそこそこ楽しめると思います。 [DVD(字幕)] 6点(2022-10-07 09:34:36) |
7. ドント・ブリーズ2
《ネタバレ》 あの最恐の盲目ジジイが帰ってきた!!スポイトに入れた自らの〝あれ〟を片手に何処までも襲ってくるというそのぶっ飛んだ設定でスマッシュヒットを飛ばした前作から数年、その強烈なインパクトを残したジジイが今回はなんと主役となって帰ってまいりました。とは言え、その余りにもキャラ立ちしたジジイの印象が鮮烈に残っていて、肝心のストーリーの方はほとんどうろ覚え状態で今回鑑賞したんですけどね。冒頭から、娘と思しき幼い女の子と2人で支え合って暮らしているという牧歌的な?設定に、「あ、これはきっと設定だけを受け継いだいわゆるリブート作品なのね」と信じて疑わず。途中で調べてみたら、なんと完全なる前作の続きということでした。いや、ちょっと無理ありすぎやろ(笑)。この女の子があのスポイト作戦の結果だとしたらさすがに悪趣味すぎだけど、そうじゃなくて一安心。まあそれでもアカンけどね。ただ、前作の続編であろうがなかろうが、単純にB級ホラーとして普通に良く出来ていて自分は最後まで楽しめました。どっちが善でどっちが悪なのか、二転三転する脚本もけっこう練られているしね。結局最後、どっちも悪人やったんかーい!というオチも突き抜けてて大変グッド。なのに、最後はちょっとお涙ちょうだい系になるのもバカバカしすぎて思わず笑っちゃいました。もはやほとんど目が見えてるんじゃないかとも思えるジジイが、若造相手にガンガン暴れまくるアクションシーンも終始キレッキレで格好良かったですし。うん、なかなか面白かった! [DVD(字幕)] 7点(2022-10-07 08:21:29) |
8. トムとジェリー
《ネタバレ》 トムとジェリーは子供の頃に何度も見てましたが、あれって10分程度の長さだから普通に楽しかったんだろうなと本作を観て思いました。さすがにこの内容で90分超えは厳しい!トムとジェリーのドタバタとさして面白くもないクロエ・グレース・モレッツのドラマパートがひたすら交互に繰り返されるので、全体的になんかちぐはぐな印象。2Dのアニメと実写もそんなにうまく融合しているとも思えず……。率直に言って、さっぱり面白くなかったです。 [DVD(字幕)] 4点(2022-06-28 01:39:49) |
9. ドリームランド
《ネタバレ》 ここは、荒涼とした大地が何処までも続く未墾の地、テキサス。家族とともに貧しい生活を送る17歳の青年ユージンは、何処にでも居る平凡な男の子だ。今は保安官の義父と暮らしているが、本当の父は彼がまだ幼いころに酒に溺れた挙句、夢を求めてメキシコへと旅立ったきり消息不明のままだった。心配性の母や幼い妹とともにそれでもこの地で生きていた彼は、ある日、町で不穏な噂を耳にする。銀行強盗を繰り返し何人も人を殺したという凶悪な犯罪者が、この町まで逃亡しているかもしれないというのだ。不安を感じながらも家に帰った彼は、納屋で驚きの事態に直面する――。なんと、その逃亡犯の女が、大怪我を負って隠れていたのだ。アリソンと名乗る彼女は、ユージンにどうか誰にも言わず逃亡に手を貸してほしいという。多額の報酬と彼女の魅惑的な笑顔に惹かれたユージンは、そのまま誰にも内緒で彼女を匿うのだった。罪は犯したが人は殺していないというアリソンの言葉を信じ、駄目だと分かりながらも潜伏生活に手を貸すユージン。だが、警察の手が間近に迫ってきたと感じた彼は、彼女とともに父が夢見たメキシコへと向かう決意をするのだが……。1930年代、アメリカ南部の閉塞感漂う田舎町を舞台に、犯罪者の女と大人しい青年との決死の逃避行を描いたクライム・ドラマ。そんな17歳の青年を惑わす犯罪者を演じたのは、いまやすっかり演技派としてのイメージが定着した人気女優マーゴット・ロビー。危険な匂いをぷんぷん漂わせる彼女はまさに嵌まり役としか言いようがなく、彼女に翻弄される純朴な青年との破滅的な恋の行方は終始ハラハラドキドキの連続で最後まで目が離せません。うだるような熱気に包まれたテキサスの空気も相俟って、なかなか緊張感に満ちた犯罪劇に仕上がっていたと思います。ただ、監督がこれが長編デビュー作ということもあってか、意味不明な演出がところどころにあったのが非常に惜しい。例えば冒頭のナレーション。実はこの青年の妹の回想という形で物語が進むのですが、これが非常に分かり辛く、しかも家族構成も説明不足でいったい誰が語り手なのかイマイチ分からない。物語の掴みとしてはマイナスというしかありません。致命的なのは、彼ら二人がホテルのバスルームで初めて関係を持つシーン。アリソンが切々ともう後戻り出来ないことを語るのですが、彼女の姿は画面の外で一切その姿が映らないんです。「あぁきっとマーゴット・ロビーがヌードNGで仕方なくこんな演出にしたんだろうなぁ」と思ってたらその後、普通にヌードの彼女が出てきて、「え、じゃあなんでこんな変な演出にしちゃったの?」と思わず呆然。きっと撮り方次第でものすごく印象的な良いシーンになったであろうに、何とも勿体ない。良い部分もたくさんあったのですが、それと同じくらい残念なところも目立つ作品でありました。ま、この監督の次作に期待ってことで。 [DVD(字幕)] 6点(2022-01-05 03:12:46) |
10. 21ブリッジ
《ネタバレ》 ある夜、マンハッタン島で凶悪な強盗事件が発生。密売組織が隠していた大量のコカインを二人組の男が強奪しようとしたのだ。連絡を受けた警察がすぐに駆け付けたものの、自動小銃で武装した犯人と激しい銃撃戦となり、瞬く間に8人もの警察官が犠牲となるのだった――。捜査に乗り出したのは、正義感の強さからこれまで何人もの犯人を射殺して当局から目をつけられているデイビス刑事。明らかにプロの仕業だと判断した彼は、すぐさま前代未聞の処置を講ずるのだった。なんと夜明けまでの5時間、マンハッタン島を全面封鎖しようというのだ。島と外部を繋ぐ21の橋全てに検問所を設け、蟻一匹逃げ出せないような厳戒態勢を敷くデイビス刑事。執拗に犯人の行方を追う彼だったが、事件を予想だにしない展開を見せ始める。果たして事件の真相とは?急逝した実力派俳優チャドウィック・ボーズマンが制作・主演を務めたという本作を今回鑑賞してみました。たった一晩の出来事をほぼリアルタイムで追うことで、なかなか緊迫感に満ちた作品に仕上がっていたと思います。正義感に燃える熱血刑事と常に冷静沈着な女性麻薬捜査官というコンビも対照的で大変グッド。彼らともはや後がない犯人たちとの息詰まるような攻防は、多少ベタではあるけれどなかなか見応えありました。と、全体的には普通に良かったと思うのですが、僕としては何だか物足りないものを感じたのも事実。面白いっちゃ面白いんですけど、全てがあまりにも優等生的でこちらの想定したものを一切越えてこないんですよね、これ。事件の真相も途中で「あぁ、きっとこういうことで、この人がたぶん事件の黒幕なんだろうなぁ。でも、それだとベタすぎひん?」と思ったら、まさかのそのまんまでちょっと肩透かし。もう少しこの作品ならではと言った一捻りが欲しかったところですね。とはいえ、肩の凝らないサスペンス・アクションとしてはぼちぼち楽しめると思います。 [インターネット(字幕)] 6点(2021-11-16 02:34:19) |
11. トゥルーノース
《ネタバレ》 実話を元に、今世紀初頭の北朝鮮で政治犯強制収容所に送られたとある少年の過酷な半生をフルCGで描いたアニメーション。監督が多くの脱北者から実際に聞いた話を元にしているため、非常に重く全編にわたって生々しいリアリティに溢れている。それまで普通に生活していた平凡な家族がある日突然、理由もわからぬまま捕らえられ極寒の地へと送られる。来る日も来る日も重労働を課せられ、配給される食料もごく僅か、しかも何か問題を起こせば過酷な拷問が待っている……。こんな酷いことが今もこの世界で続いていることに戦慄せざるをえません。それがピクサーのような明るいCGアニメで描かれているため、その重さが良い感じに中和され最後まで見やすくなっているのも新しい手法なのかもしれません。ただ、映画としての出来は正直「微妙」と言うのが僕の率直な感想。誤解を恐れずに言えば、そんな事実の重みに対してフィクションとしての物語が完全に負けてしまっている。お話がシンプルすぎるうえに演出もきわめてオーソドックスなため、物語としてはいまいち印象に残りにくいのだ。北朝鮮の強制収容所の実態を暴くのであればドキュメンタリーや再現VTRでいいわけだし、フィクションで勝負するならもっと見せ方を考えてほしかった。またCGアニメとして見ても、そのクオリティは恐ろしく低いと言わざるをえません。人物の顔などどれもモデリングで継ぎ接ぎしたのが丸わかりだし、その動きもカクカクしていてまるでCGが登場したころの初代プレステレベルでちょっとこれはきつい。今もなお苦しむ北朝鮮の人々の実態を世界に知らしめたいという、この監督の熱意には素直にエールを送りたいのですけどね。 [インターネット(字幕)] 5点(2021-11-11 10:02:58)(良:1票) |
12. 時の面影
《ネタバレ》 第二次大戦前夜、イギリスの歴史を揺るがすような世紀の大発見をなしたとあるアマチュア考古学者と地主の未亡人との交流を実話を元に描いたヒューマン・ドラマ。ベテラン俳優レイフ・ファインズとキャリー・マリガンが豪華共演ということで今回鑑賞。丁寧な演出と確かな時代考証、そして全体に漂う気品に満ちた美しい雰囲気とで終始心地よく観ることが出来ました。主演俳優二人の抑制の効いた静かな熱演も素晴らしく、何より第二次大戦前夜のイギリスを覆っていたであろう不穏な空気を忠実に再現することに成功している。と、作品の世界観はなかなか素晴らしかったのですが、肝心のお話の方には僕はちょっと物足りないものを感じてしまいました。一言で表すなら、「ザ・事実の羅列」。色んなエピソードが並列的に描かれるのですが、軸となるお話が何とも弱い。学会から軽視され続けた異端学者の偉業達成、戦争によって夫を失った未亡人の苦悩、宇宙に憧れる少年の鬱屈した青春の日々、これらのいったいどれをメインに見ればいいのか最後まで分かりません。特に、リリー・ジェイムズ演じる助手研究員の不倫話は明らかに不要。彼女が出てきて二人の男とチュッチュチュッチュするたびに何だか白けた気分になっちゃいましたわ。いや、見たいのはそこじゃないですから。全体に漂うこのノスタルジックな雰囲気や、世紀の大発見の裏に隠された市井の人々の努力を現代に蘇らせたその着想などは大変良かっただけに、惜しい。 [インターネット(字幕)] 6点(2021-10-12 00:30:14) |
13. 透明人間(2020)
《ネタバレ》 透明人間があんなことやらこんなことをやっちゃって、えらいこっちゃになっちゃうお話。だと思って観始めたら、これがもう暗いうえに展開がまどろっこしくて僕はさっぱり楽しめませんでした。だいたい透明人間が本格的に暴れはじめるのが映画も一時間を過ぎたあたりからって遅すぎるっしょ!それに透明人間って設定も充分活かされていたかというと特にそんなこともなく、お約束のエロ要素もヒロインが知らん間に妊娠させられていたと後から知らされるだけって…。いや、そこをちゃんと見せてくださいよ(笑)。対するヒロインの方も、「あの人は透明人間の研究をしてたから、きっと透明になって襲ってくるはず」って初めから知ってんのかーい。絶対、「私の回りで最近何かおかしな出来事が多発してるけどもしかしてこれって……、あー、あんなところに透明な何かがーー!」と途中で気づいた方がよっぽどサスペンスフルで面白くなったと思うんですけど!!まあ透明人間になる方法はこれまでだいたい薬でしたけど、今回は全身にカメラを取り付けたボディスーツだというのは新しかったですかね。このスーツのフォルムがけっこうスタイリッシュでそこは良かったかな。なのに、こいつが活躍するのが映画の半分過ぎたぐらいからってやぱ勿体なさすぎですわ。というわけで自分が求めていたものとはだいぶ違った内容で、僕はさっぱり楽しめませんでした。 [DVD(字幕)] 4点(2021-06-04 23:47:25) |
14. ドッグマン(2018)
《ネタバレ》 閉塞感漂う、イタリアの寂れた地方都市。そこで犬専門の美容室『ドッグマン』を細々と経営するマルチェロは、自己主張が大の苦手で頼まれたら嫌とは言えない気弱な男。それでも離婚した妻との間にできた娘との月に何度かの逢瀬だけを楽しみに、慎ましやかに生きていた。そんな彼の目下の悩み、それは小さなころからの腐れ縁である荒くれ者で街の厄介者として有名な親友シモーネとの関係だった。薬物に目がなく、気に入らないことがあるとすぐに暴力を振るい、マルチェロのことを都合のいい奴隷のようにしか見ていない彼に、それでもマルチェロは強く出ることは出来なかった。どんどんと調子に乗って暴走してゆくシモーネに、なすすべもなく引きずられてゆくマルチェロ。やがて、彼らのそんな歪な関係性は取り返しのつかない悲劇を生んでしまうのだった……。という見れば見るほど気が滅入るような暗いお話なのですが、ストーリーテリングの巧さや登場人物への深い洞察力等によって最後まで惹き込まれて観ることが出来ました。まあリアル版のび太とジャイアンのお話と言ってしまえばそれまでなんですけど、とにかくこの主人公の見事なまでのヘタレ具合が凄いです。明らかにいいようにこき使われているのにそれでも嫌といえず、理不尽な理由で酷い暴力まで受けているのに最後までその荒くれ者を親友だと信じようとする、まさに負け犬の見本のような男。最初は嫌悪感しか湧いてこないのだけど、ここまで徹底されるともはや圧倒されますね。だって、親友が犯した罪を被って刑務所にまで入ったりするんですもん。もはや馬鹿を通り越してある種の聖人なんじゃないかしらとまで思っちゃいますわ。そんな彼も最後はぶち切れて暴走しちゃうんですけど、惜しいのはこのぶち切れ具合がいまいち中途半端なところ。もっと突き抜けてくれないと、そこまでカタルシスが得られず、印象に残りにくいんですよね~。と、最後の方が腰砕けちゃいましたが、この濃密で殺伐とした雰囲気は嫌いじゃない。まあボチボチってとこでした。 [DVD(字幕)] 6点(2021-02-10 03:22:16) |
15. ドクター・スリープ
《ネタバレ》 スタンリー・キューブリックが創造した、あのホラー映画の古典的名作『シャイニング』の約四十年後を描いた続編。と、いうことでけっこう期待して今回鑑賞してみたのですが、正直、だいぶがっかりな出来なんですけど。僕はこれをあの完璧な名作の続編とは到底認めたくありません!まどるっこしいだけでさして面白くもないストーリー、前作の素晴らしい名場面におんぶで抱っこで全くセンスを感じさせない凡庸なシーンの数々、揃いも揃って魅力に欠ける登場人物たち…。数え上げればきりがないくらい、ダメ要素のてんこ盛り。致命的なのは、ホラー映画なのに最後まで一ミリたりとも怖くなかったこと。これを観るくらいなら、スピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』の中のシャイニングパートを観た方が遥かに有意義な時間を過ごせます。こんなお粗末なもので続編を名乗るなんて、かつての名作への冒涜であるとすら思っちゃいましたわ。と、前作を愛するあまり、思わず感情的になっちゃったかもですけど、それが僕の率直な感想です。 [DVD(字幕)] 3点(2020-08-20 02:00:25) |
16. トリプル・フロンティア
《ネタバレ》 ここは常に凶悪な犯罪が多発する危険な地、ブラジル。そこでは麻薬取引や殺人が日常茶飯事と化していた。そんな常に危険と隣り合わせの地で日々、犯罪と向き合ってきたアメリカ軍特殊部隊員サンティアゴは、いつまで経っても出口が見えない任務に嫌気が差していた。そんなある日、彼は内通者の女からとっておきの情報を聞く。なんとこの地に長年君臨する麻薬王ロレアの秘密のアジトを発見したというのだ。しかもそこには彼だけでなく、麻薬取引で得た大量の米ドル紙幣も隠されているという。「毎週日曜に教会に行くというロレアの隙を突けば、彼の命を奪うだけでなく、その大金も我が物に出来るはずだ」――。そう直感したサンティアゴは、秘密裏に計画を練り始める。今や退役しアメリカで暮らす元同僚たちと連絡を取り、着実に計画を進めていくサンティアゴ。自らの人生に一発逆転を図るため、彼と仲間たちは密かにブラジルのジャングルへと向かう。危険は承知のうえだった。だが、完璧だったはずの計画は少しずつ綻びを見せはじめ……。鬱蒼と茂るブラジルのジャングルを舞台に、金に目がくらんだ男どものひりひりするような現金強奪作戦を描いたクライム・アクション。主演を務めるのは、人気俳優ベン・アフレックとオスカー・アイザック。何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのですが、いやー、これがなかなか見応えのある犯罪ドラマの逸品に仕上がっておりました。麻薬王の現金を奪うため、危険をかえりみずに南米のジャングルへと分け入っていく男どもって、やぱ熱いですわ。最初はとんとん拍子で計画が巧くいき、調子に乗った彼らは計画よりもかなり多い額の現金を車に詰め込むのですが、ここら辺の緊迫感の煽り方はお見事。警備の人間が帰ってくるまであと10分、目の前には何億もの金、そりゃぎりぎりまで車に詰め込んじゃう気持ちは凄く分かります。こういう役をやらせるとベン・アフレックは巧いですね~。彼が生活に困っているという前半の描写がここで効いてきます。そして後半、この強欲のせいで重量オーバーとなったヘリが墜落。彼らは大量の重たい現金を前に途方に暮れることになります。現地でロバを調達し、なんとしても現金を持ってこの地を脱出しようとする彼ら。追手は迫り、責任のなすり合いから仲間割れが勃発、徐々に彼らは自滅への道を歩むことになる…。ここら辺のドラマの描き方も非常に丁寧。山腹で夜の冷気に凍えた彼らが、「どうせ持っていけないんだ」と何百万もの金で焚火をするシーンはなんとも皮肉が利いています。金に振り回される男どもの悲哀を充分堪能できました。8点! [インターネット(字幕)] 8点(2020-07-24 01:07:14) |
17. トラジディ・ガールズ
《ネタバレ》 「トラジティ・ガールズ(惨劇少女たち)」がサイコーだと思ったら、いいね!してね――。サディとマッケイラはいつも一緒に居る大の仲良し女子高生コンビ。目立ちたがり屋で楽しいことが大好きな二人には、最近ちょっぴり不満なことがあった。それは、二人で始めたブログのフォロアーがほとんど居ないこと。「プロムまでに10万人に増やしたい!」。そう決意した彼女たちは、とっておきの方法を思いつく。最近世間を騒がせている連続殺人鬼をこっそりと捕まえ、なんと自らの手で人を殺しちゃおうというのだ。そして連続殺人鬼の正体を探る自分たちの動画を作って、世間の注目を集める。完全に自作自演のヤバい方法だが、目立つことが大好きな彼女たちは無事に?殺人鬼を捕まえることに成功する。そして彼の犯行と見せかけ、人を殺しまくるのだった。見事に推理を的中させ、被害者の第一発見者となった彼女たち「トラジティ・ガールズ」はどんどんとフォロワー数が増えてゆくのだったが……。シリアルキラー女子高生コンビの血と汗に塗れた青春の日々をキュート&グログロに描いた青春ホラー。目立つことならなんでもあり、危険な殺人鬼を監禁するわ、次々と人を殺しまくるわという、完全にイッちゃってるそんな二人なのですが、これが見事に振り切れててなかなか面白かったっすね。罪悪感のかけらもなしに、気に入らない同級生を殺してバラバラにしちゃうとこなんてかなり血みどろでグロいのですが、それを一切感じさせないとこがまた凄い。もうひたすらポップで陽気。こういうぶっ飛んだ青春ものは昔から好みなので僕は普通に楽しめましたが、まあ人によっては眉をひそめちゃうかも。主役を演じた女優二人もそれぞれビッチ感満載で大変グッド。後半、片方に良い感じの男子が出来て友情にヒビが入るというのも面白い。人を殺しまくっといて何を今さら青春しとんねん(笑)。ただ残念だったのは、ストーリーの見せ方が幾分か雑なところ。肝心のこの二人のブログがどんなものか具体的に見せてくれないので、二人がネット上で有名人になってゆく過程にいまいち説得力がないんです。それに殺人鬼を監禁するくだりもストーリー的にうまく活かしきれていない。ここらへん、凄く勿体ないです。とはいえ、全編に散りばめられたホラー映画のパロディもなかなか通好みだったし(最後のプロムはもう完全に『キャリー』で思わず笑った!)、ちょっぴり百合っぽい主役二人も充分魅力的だったし、ぶっ飛んだ青春ドラマとして僕はけっこう楽しめました。少しおまけして7点! [DVD(字幕)] 7点(2020-04-10 00:02:13) |
18. トイ・ストーリー4
《ネタバレ》 大人気CGアニメの約9年ぶりとなるシリーズ最新作。あのほぼ完璧なラストを迎えた前作からどうやって新たな物語を紡ぐのだろうと思ったら、まさかのゴミから創られた新キャラ、フォーキー登場。物語はこのフォーキーを助けるためにお馴染みのおもちゃたちが悪戦苦闘する形で進んでゆきます。確かに頑張ってるのは分かるのだけど、やはりどうしても付きまとうこの蛇足感…。なんかこの先割れフォークのフォーキーを必死で救おうとするアンディに僕はいまいち共感できませんでした。持ち主の女の子のためと言いながら、ここでフォーキーに媚売っといて後々女の子の気を惹くための足掛かりにしようって計算じゃないの?なんて穿った見方をしてみたり……。それに、妙に恋愛要素をぶっこんでくるとこにも違和感が拭い切れません。いやいやトイストーリーにそんなんいりませんから!最後、ウッディとボーがキスするんじゃないかとひやひやしちゃいましたわ。あと、おもちゃたち、自分勝手に行動しすぎ!車のアクセルを勝手に踏み込むなんて危なすぎます!これで交通事故でも起こったらどう責任取るつもりなんですか。あのキャンピング・カーも好き勝手にぶっ壊してましたけど、これであの両親とレンタカー会社が料金や補償を巡って揉めたり、両親にネットで悪口書かれたりして業績が悪化でもしたらと思うと不憫でなりません。ここらへんもう少し考えて欲しかったです。とはいえ、ハイクオリティなCG映像はもう安定のピクサー印なのでその点に関しては普通に楽しめました。特にあのアンティークショップの不気味な雰囲気は、けっこうお気に入り。完全に『シャイニング』のパロディになってて(おばあさんの入浴シーンもあったし!笑)、これ子供が見たら泣くんちゃうかってくらい怖いんです。なんだか一作目の悪戯っ子シドの改造おもちゃたちを髣髴とさせて、ここら辺のダークな世界観は個人的に好きでした。結論。前シリーズのスピンオフくらいの感じで観たら、ぼちぼち楽しめるんじゃないでしょうか。 [DVD(字幕)] 6点(2020-04-04 00:19:42) |
19. ドゥームズデイ
《ネタバレ》 2035年、スコットランドはもはや世界から見捨てられた地と化していた。2008年に大発生した殺人ウィルスによって当時の住人は大多数が死滅。感染拡大を恐れたイギリス政府は、巨大な壁を建設し、スコットランドを完全に隔離してしまったのだ。取り残された人々は生きるために略奪や暴行、果ては食人行為にまで及んだが、それもやがて消えてしまった――。幼いころにその地から救い出されたシンクレアは、今や特殊部隊の精鋭として日々凶悪な犯罪と対峙していた。そんな折、彼女に極秘任務が下る。なんと、壁から遠く離れたロンドンで新たな感染者が確認されたというのだ。しかも時を同じくして、隔離地区内で生存者と思われる人間の姿も確認される。どうやらこの地に取り残された、免疫学の権威であるケイン博士がワクチンを開発したらしい。「人類の危機を救うため、今から壁の向こうに行きワクチンを取ってきてくれ」。やむなくその任務を受け入れたシンクレアは、仲間たちとともにすぐさま死の世界へと侵入する。期限は、48時間。だが、そこには感染者よりも恐ろしい存在が待ち受けていたのだった…。殺人ウィルスによって荒廃した近未来を舞台に、世界から見捨てられ暴徒と化した無法者たちを相手に戦う美しきヒロインを描いたダーク・アクション。もっとゾンビ的なやつと戦う内容かと思いきや、意外にもこれってパンクな無法者の食人族集団と戦うお話だったのですね。モヒカンやらタトゥーやらピアスやら、イカレタ敵の皆さんはもう完全に『マッドマックス』のそれ。他にも装甲車で侵入するシーンは『エイリアン2』だし、隔離地区内での戦闘はありがちなゾンビもの、そもそも主人公のスタイリッシュ・ヒロインという造形は完全に『アンダーワールド』。そして、中盤からはまさかの『ロード・オブ・ザ・リング』もどきの中世騎士ものになるというぶっ飛び展開。クライマックスは、もはや何が何だか分からない『マッドマックス』ばりのカーチェイス。いや、さすがに盛り込み過ぎっしょ!これだけ盛沢山な内容を一つに纏めようと言うのだから、さすがに脚本がしっちゃかめっちゃかになるのは自明の理。もう突っ込みどころのオンパレードです。主人公のカメラ付き義眼なんて凄くいいアイデアなのに、まったく活用されておりません。そもそも冒頭から生き別れたお母さんのメモをあないに強調しておきながら、まさかのお母さん最後まで登場せず(笑)。とはいえ、存分にお金を掛けたであろう美術に関してはかなり頑張っており、細かか小道具やちょい役のモブの衣装に至るまで監督の拘りが感じられてそこは大変グッド。やり過ぎグロ描写満載のアクション・シーンもけっこうスタイリッシュだったし、何も考えずにただボーっと観る分にはそこそこ楽しめるんじゃないでしょうか。 [DVD(字幕)] 6点(2020-03-21 22:31:10) |
20. トゥ・ヘル
《ネタバレ》 数年前に火事で妻と娘を失い、以来酒浸りの日々を送っている冴えないトラック運転手、ジョー。ある日、彼はたまたま立ち寄ったコンビニのトイレで謎の男に首を絞められている女性ジュリーを発見する。咄嗟に男を殴り倒し、彼女を救いだしたジョー。だが、感謝の言葉が聞けると思いきや、ジュリーから出てきたのは驚くべき言葉だった。「余計なことしないで!首を絞めるように頼んだのは私だから」――。なんと彼女は、バイク事故で瀕死の重傷を負った一人娘を助けるために自ら首を絞めてもらったのだと言う。詳しく訊いてみると、実はジュリーは、幼いころの臨死体験が原因で死の淵に立たされると死後の世界に入ることが出来るらしい。半信半疑で一緒に病院へと向かったジョーは、そこで彼女の娘が無事に意識を取り戻したことを知る。行く当てのなかったジョーは、そのまま彼女たち親子と一緒に暮らすことに。だが、ジョーはまだ知らなかった。実はちょっとした手違いから、生き返った娘の身体にはジョーの失った妻の魂が宿ってしまったことを……。毎度おなじみニコラス・ケイジ主演で送る、そんなオカルト・テイストのエロティック・サスペンス・スリラー。ぶっちゃけて言うと、最近のニコケイ・ブランドの映画の中でも一、二を争うくらいの恐ろしく程度の低い作品でしたね、これ。とにかく何もかもが適当すぎ!具体的に述べさせてもらうと、まず基本となる臨死体験のルールが曖昧過ぎて物語としての枠がふわふわし過ぎです。なんで首を絞められたら娘の命を救えるのか理屈が分からない。百歩譲ってそこを良しとしても、何故蘇生した娘の身体に間違ってニコケイの死んだ妻の魂が宿るのか、ほんと意味不明!!挙句、この母親とニコケイが速攻で一線を越えちゃうのはまあ分かるとしても、その後、何故か娘ともがんがんエッチやりまくるってどんなアホ展開?!そこら辺の親子丼ものAVの方がまだ説得力ありますって!最後もよー分からんまま、ニコケイが燃えて終わりってなんじゃそりゃ(笑)。こんなお粗末なもんで観客から金を取ろうなんて、もはや詐欺行為に等しいっすよ!娘とのエッチがバレて情けない顔で言い訳する白ブリーフ姿のニコケイに、母親が言った「早くズボン穿きなさい!」ってのが、この映画の中で唯一共感できるセリフでした(笑)。 [DVD(字幕)] 3点(2020-03-09 00:50:13) |